
ベアボウターゲット練習用の122cmサイズ相当の5リング的が入荷しました。写真に写っているのが28インチの矢で、丸めてアローケースへの収納にぴったりです。防水加工がされています。

ベアボウターゲット練習用の122cmサイズ相当の5リング的が入荷しました。写真に写っているのが28インチの矢で、丸めてアローケースへの収納にぴったりです。防水加工がされています。

スタビライザーセッティングについて説明する時、上のような写真をよく見ると思います。スタビライザー(=安定器)は文字通り、弓を安定させるためのものですか、トルク、ローリング、ピッチングの3つ方向に対して、弓を安定(動きにくくする)させることです。ただ、この中でグルーピングに影響を与えるのは、トルクだけです。
上の動画を確認してください。480pの高速度カメラで撮影したリリースの瞬間のハンドルの挙動です。




20フレーム、約、0.05秒の間の出来事です。ただし、動画は編集されていて、クリッカーが落ちてから、リリース(矢が動き出す)までの時間も入れると、0.1秒強です。
ニュートンの運動の第3法則(作用・反作用)によって、押し手は弓を押しますが、弓も押し手を押し込みます。リリース直後に(A)弓はチップ1/2分押し手を押し込みます。その後に、(A)の時に弓が押し手から受けた力の方向に影響を受けて前方に飛び出します。まっすぐ押せていれば、まっすぐ弓は飛び出します。まっすぐからずれてしまった時、その影響を低減させるのがスタビライザーです。
写真からわかるように、トルクの影響は矢が飛び出すまでの間でチップ1個分もあります。ピッチング方向・ローリング方向への動きは始まっていません。そのため矢(グルーピング)に直接の影響を与えるのはトルクだけです。

スタビライザーのセッテイングにおいて、直接的中に影響するのは、グリップのピボットポイントから弓全体の重心までの距離です。この距離が長いほど、トルクの影響を受けにくくなります。原則はこれだけです。しかし、遠ければよいというわけではなく、Aの方向に移動させすぎる(センターを重くする)と動的ティラーに大きく影響を与え、グルーピングが逆に悪化します。友人からスタビライザーを借りて、アッパーにもロングロッドつけて引いてみれば、どういうことか理解できます。
Bの方向に重心を移動させるためには単純に弓を重くすればよく、理論上何も悪影響はないのですが、保持する体力がなければ、射形を維持できないでしょう。

残りの要素はセッティングによるエイミングのしやすさと振動吸収、弓の飛び出しがテーマとなりますが、原則があるわけではなく、個人の感覚も問題ですので、いろいろと試してみてください。韓国の選手はA方向に重心を持っていくことが多く、アメリカの選手はB方向に重心を持っていくことが多いように感じます。
センターショットを正しい意味で使うと、それは弦の真ん中から矢を発射する事を意味しています。そのために矢の位置を弦の真ん中に合わせるのは当然のことです。アルミシャフトの時代でも、DIVA(初期のストレートカーボンシャフト)のチューニングガイドでも、矢を弦のセンターに置くのが当然でした。センターショットなのですから、シャフトがセンターにあるのは当然です。
しかし、90年代に入り、X10やACEのようなバレルタイプのシャフトがターゲットで使用されるようになります。このシャフトがプランジャーに接しているときにには先端の細くなっているパートで、プランジャーに接しているので、ブレース時点で真ん中に設定すると、フルドロー時点では、矢は右を向くこととなります。つまり、ブレース時点ではセンターに矢を持ってくるのではなく、少し左側にセッティングしてあげる必要があります。
このオフセット量を理論によって計算するためには、大量の複雑な計算が必要になります。また、シャフトの細くなった分だけオフセットすればよいわけではなく、矢は発射されてから、パワーストロークの1/6を進むまではシャフトはプランジャーに触れません。
そこでイーストンの技術者はより簡単な方法として、弦がシャフトの真ん中(スイートスポット)を押し出したときに最も多く矢にエネルギーが伝わるという原理を用いて、いろいろなプランジャーの位置でテストした結果、(右打ちの場合ブレース位置で)ポイントの右側が弦の左側と接している位置が最も矢にエネルギーを与えることがわかりました。
そのテストの結果より、今日では初期チューニングの位置として、バレルタイプのシャフトの場合には、その位置に設定します。
However, I don’t feel so bad about these theories when you consider that doctors “practice” medicine.
Tuning Tips for Small Diameter Arrow Shafts by Don Rabska
意訳すると「この結論はあくまでも実験の結果ですが、これでうまくいくなら、細かいことは気にするな」です。

いろいろと細かい記事を書いていて、まとまりがないですが、(順調に記事に出ているにも関わらず今日中に終わらない気が…)、最終的には一本にまとめるのでご勘弁ください。
さて、ホイットがアバロンハンドルに「アジャスタブルリムポット機能」を搭載し、ヤマハはリム側に「リムセンター調節機構」を搭載しました。その調整をホイットでは「リムアライメント」と統一したのに対して、ヤマハでは、海外ではホイットと同じリムアライメントにしておきながら、国内では「ストリングセンター調整」と違う名称を採用しています。

この傾向は70年代から見られます。ホイットがティラー調整を導入したときには、「ポンド/ティラー調整機能」として発表されました。対して、ヤマハはスペーサーによる「ティラー・アジャスト」を導入します。これは実質的には同じことですが(ヤマハの方調整幅が狭いだけ)、ホイットの機能に「ポンド」という名前があったがために、ホイットのやり方はティラーを調整するとポンドが変わるという話として誤解されます。ヤマハの方はティラーを変更してもポンドが変わらないと理解されていたようです(*)。
*実際には国産か外国製か関係ない。ホイットで言えば、リムを片方(例えば1/2回転)調整するとポンドが変わる。リムを両方(上リムを1/4回転、下リムを1/4回転逆に)調整すれば、ポンドは変わらない。
その流れで当時を見ていくと、ホイットは写真トップで雑誌アーチェリーで見開き2ページ(誤訳なので参照しません)、自社のホームページに掲載された本文(英語)で6ページにも渡って、リムアライメント機能は性能の低下を意味しないとメダリストのデニス・パーカーさんの署名記事で主張していきます。しかし、ヤマハがリムセンター機能の必要性を声を大にして主張した文書はありません。

具体的なチューニング法を含めて、6ページの文書を公表したホイットに対して、ヤマハからのリリースはこれだけです。リムアライメントの議論からも逃れ、国内ではストリングセンターと言う名前にして、パワーリカーブ(深い弦溝)の真ん中にストリングを持ってくるための機能という主張でした。
私はリムアライメントによるコスト低減は必要だったと考える人間なので、最初から批判していませんが、当時の批判に対して、声を大にして、陣営総勢で立ち向かったのがホイット、声を小にしたのがヤマハであったという考えます(*)。
*ヤマハ撤退時のインタビューで広瀬明さんが「ここ数年、また安い弓、普及タイプの弓が必要になってきたんです。しかし、ヤマハは会社として、それに対応できる態勢に戻れなくなってしまいました」と述べています。よくわかります。
さて、ホイットの主張を見ていきますと(*)、まずは、ホイットの開発者ではなく、オリンピックメダリストのデニス・パーカーさん(ホイットと雇用関係はあったはず)の署名記事という形で発表します。日本で言えば、メダルとった古川選手に技術の正当性・優位性を主張させるようことでしょう。

興味深いので始まりからは全文を。一部意訳、原文全文はネットに掲載されています。
リカーブでは1990年代にアジャスタブルリムポケットの製造が開始されたが、実際のルーツは70年代にあります。ホイットは1978年5月にこの特許を取得しました。彼の特許では、グリップに応じてチューニングしたり、矢のクリアランスを改善するために弓のセンターラインをわずかに調整したりできるという利点を説いています。
今日の誤解は、ホイットが今日までアジャスタブルリムポケットを導入しなかったのと同じ理由です。このキノを導入すると、ホイットがお客様から良い製品を作るのではなく、不完全なチューニングに頼ろうとしているように見える。そう思われないためにホイットは製造時の精度を高める事にフォーカスした。
90年代にお客様に求められるまで、ホイットはこの機能を搭載しませんでした。しかし、ホイットが1978年に主張したように、この機能は弓のチューニングの可能性を拡大し、より弓をアーチャーに合わせるためのものです。私は、多くのアーチャーがこの機能を使いこなせていないことを発見しました。ほとんどの場合、ハンドルとリムの中心に弦が通るようにするだけです。これはスタートには適した場所ですが、チューニングプロセスの始まりにすぎません。トップシューターのマイク・ジェラードが見つけた見つけた最高の方法を紹介しよう。
Tuning your Hoyt Avalon Plus By Denise Parker
歴史的な経緯から始まり、批判的なユーザーの意見も受け止めた上、メダリストに原因は君たちが使いこなしていないからだと言われたら…なかなか、ぐうの音も出ない良い構成です(^_^;)
アメリカでは新しいチューニングメソッドとして受け止められましたが、日本での悲劇はこのガイドラインの翻訳でしょう。
Earl described the advantages in that you could adjust the tune according to individual’s hand placement or adjust the line slightly to improve clearance.
Tuning your Hoyt Avalon Plus By Denise Parker
彼は、アーチェリーの手の位置に合わせてチューニングするメリット、つまり、クリアランスを良くするためにラインを調整する。
雑誌アーチェリーの翻訳
「Or」は一般的には、「また」、と訳され、前後のロジックの関係はありません。しかし、これを、「つまり」と訳されると文書を理解するのが困難であり、今は2020年ですので、検索して彼女の原文を読むことで理解しましたが、グーグルすらない1999年に、これを読んだ方は、ただ理解ができないだけで終わったと思います。こうして、2000年に入っても、正しいリムアライメントのやり方が、一般に理解されることはあまりありませんでした。
さて、このあとに紹介されるマイク・ジェラードの方法ですが、そのまま、現在推奨されいる一般的なやり方です。ただ一点、特殊な点があります。それはスタビライザーを使用しないという点です。
現在では、リムのねじれを確認し、弦を両リムのセンターを通すことでリム面のアライメント、さらにハンドルのセンターとハンドルのスタビライザーのセンターを通すことで、ハンドル面をくわえた3面のアライメントを整えていきますが、当時はシャフトの使用が推奨されていました。

ベテランの方に話を聞くとスタビライザーに対する信頼度が本当に低いんだと思わされますが、そんなにスタビライザーって曲がってたのかと?
ここでもホイットはスタビライザーのストレートさを使用(信頼)せず、リム面に対して90度の角度で削られているハンドルのウィンドウ部分に、真っ直ぐなシャフトを押し当てる事でハンドル面とリム面とのアライメントの正しさを測定するというやり方を推奨します。
ただ、2021年現在、あなたがスタビライザーが曲がっていないと信用できるのであれば、この初期のホイットのやり方を今やるメリットはなく、やっていることはより現代的なメソッドと同じですのでご安心ください。
そして、最後には、
As I mentioned in the first of this article, adjustable pockets have been around a long time and anyone who is afraid of them simply doesn’t understand the benefits.
Tuning your Hoyt Avalon Plus By Denise Parker
グーグルにその意味を聞けば「恐れている人は単にその利点を理解していません。」とのことで。アメリカ人らしい?挑戦的な結びで終わっています。逆に雑誌アーチェリーの翻訳では、「afraid of them」をとても穏やな日本語に翻訳していました。ここだけナイス?

ついに原文見つけました。ホイット社はアバロンハンドルからリムアライメントをハンドルに搭載します。その説明を探していて、雑誌アーチェリーの99年5月号の「ホイット アバロンプラスのチューニング」という記事を見つけましたが、その日本語がとてつもなく難しいもので、読めそうになかったので英語の原文を探したいたらありました。
ホイットは、不完全な誤差範囲を埋めるため、正確なチューニングに頼るのではなく、アジャスタブル・ポケットシステムを生産ベースに載せようとした。そこで、彼は誤差に正確性を求めようとしたのである。
雑誌アーチェリーの99年5月号の「ホイット アバロンプラスのチューニング」
コメント欄でも意見をいただきましたが、正解は
Bringing an adjustable pocket system into manufacturing would give the appearance that Hoyt was making up for imperfect tolerances, not improved and more accurate tuning methods. So Hoyt focused its attention back to exacting its tolerances.
という原文ですが、グーグル翻訳するだけで、
調整可能なポケットシステムを製造に持ち込むと、不完全な公差を補っているように見え、改善されたより正確な調整方法ではありません. そのため、Hoyt は公差の厳守に注意を向けました。
AIの方の日本語も完璧とは言えませんが、意味が通じます。というか、雑誌アーチェリーの記事は難解なのではなく、完璧な誤訳であると考えることができると思います。生産ベースに載せようとしたのではなく、載せなかったのだ。さらにグーグルの自動翻訳に手を入れて意訳するとしたら、
アジャスタブルリムポケットを導入することで、お客様からはホイットがいいものを作るのではなく、不完全なチューニングに頼ろうとしているように見える。だから、そう思われないために製造時の精度を高める事にフォーカスした。
となるでしょう。原文(Tuning your Hoyt Avalon Plus By Denise Parker)が手に入ったので、デニスパーカーさんの英語でも記事をもとに読み解いていきたいと思います。
【お願い】ヤマハとホイットを書きましたがニシザワに関する知識がなく、手を付けられない状態にいます。ヤマハのページを読んでいただければ、必要な情報はわかっていただけると思いますが、執筆していただけるニシザワの愛好家の方がいましたらお願いします。
最近仕事していて思うのは、海外では、古い弓に対しての有志の取り組みがすごいということです。日本のメーカーであるにも関わらず、ヤマハの情報の多くは海外に保存管理されています(死蔵されている情報は日本が多いと思いますが)。
メーカーは発売して5-10年、ヤマハやニシザワに至ってはアーチェリーから撤退していますが、それらを有志の愛好家が引き継いで、情報発信をして、できるだけのサポート・情報交換をしているサイトが多くあります。
先日、コメントで頂いて確認したのが、ヤフオクで買った弓がヤマハのEX規格とαEX規格で、接合できないというものでした。それはネタにもなるし、ユーチューブはそうやって盛り上がる場所なのだと思いますが、しかし、そのような弓が、動画撮影後、再出品されずに、倉庫行きとなってしまったら、非常に残念なことだと思います。なんなら自分が引き取ります。
私はものが好きではない(今どきで言えば断捨離?)ので、コレクターの気持ちがわからないからなのか、弓は使われてこそ、美しい物だと思っています。自分が全日本で使用した弓も、使う予定がなくなれば譲渡しています。自分のために良い働きをしてくれた素敵な弓だからこそ、誰かに使っていただきたいです。
ということで、現状集まった情報をまとめたサイトを作りました。現状、ヴィンテージボウが流通シているのはオークションサイトだけだと思いますが、そこで弓を買うときのガイドになり、自分がほしい弓を正しく手に入れる参考になればと思います。
また、入手したあとに正しく使える情報も掲載していきます。ただ、近所の射場でもオークションサイトで弓を手に入れた未経験者が問題を起こしたそうなので、アーチェリー未経験者が読んで理解できるレベルにはしません。ある程度アーチェリーの知識がある前提で書きます。
ちなみにベアボウでコンパウンドグリップは有効なのか気になったので、個人的にRadian(*)を試してみようと思っています。
*ホイットがリムアライメントを搭載しなかった最後のモデル。ただ、製造中にハンドルのねじれが多く発生した。当時のホイット関係者によると、Radianは「非常に安定している」そうで、入手したハンドルがねじれていれば直しようはない(それ以上ねじれもしない)し、ねじれていなければその後ねじれることもないそうです。どっちがあたるかな?
また、情報提供してただける方がいましたら連絡ください。

1970年代にセンターショット調整が大事とされ、70年代後半にはほぼすべての選手がプランジャーを使用するようになったのに対して、スパインに対する意識は非常に低く、ペーパーチューニングなどは、あまり知られていなかった。
その理由はなんと言っても、アルミシャフトとダクロンの組み合わせによる、まったりとしたクリアランスだったために、矢飛びはスパインよりも射形に大きく影響を受け、スパインを正しく合わせても、射形が悪いと、矢が正しく飛ばなかったための思われる。
トップの写真は当時のサイトのセッティングですが、このライン(距離ごとのサイト)が直線状にないことは、スパインが正しくなく、矢がカーブして飛んでいることを示している。トップ選手でもそのように曲げてサイトを取り付けていました(*)。
*全日本強化合宿における調査では、郷里が伸びるにつれてサイトが出る(スパインが硬い)選手が多かった。
現在はこのラインが真っ直ぐでないと、すぐにスパインがあっていないという指摘を受けますが、当時はそれで良いとされていたか、もしくは、
サイトを斜めに取り付けることより射形を直すことが先決問題と言えよう。
73年12月号 雑誌アーチェリー
とその原因をスパインの修正・プランジャーの調整ではなく、射形の改善に求められていた。
スパインの正しさを重視しない理由がアルミシャフトにある以上、その終わりは当然カーボンシャフトの登場によってです。カーボンシャフトと弦の進化により、シャフトはあっという間に飛び出します。更にカーボンシャフトは軽いので、クリアランス時のちょっとした接触でも、正しく飛びません。
そのため、1980年後半にカーボンシャフトの登場で、一気にスパインを正しくチューニングすることの大切さが注目されるようになります。
当時のトップ選手の「カーボンシャフトは正しく射たなくても勝手に飛んでいってしまう」という表現がその時代感を表しているように思う。
参考文献
1973年 弓について 榎本 新
1975年 誰でも容易に。確実にできるチューニング法 竹内 貞夫
1975年 クッション・プランジャーとその用法 Archery World
1973年 トップアーチャーへのいざない 高柳 憲昭
1987年 特集 ニューカーボンアローついに登場。キミは、これを新兵器になしうるか。

以前記事(下記)で「ロッドスタビライザーの登場によって、リムとハンドルの3面を水平にするリムアライメントの調整が必要になります。」と書きました。それは当然のことです。
しかし、一時期、空白の時期が存在します。リムアライメントをしなければ、スタビは変な方向を向き、グルーピングしません。その時のアーチャーの方はどう対応したのでしょうか。それが気になっていましたが…。
1960年代頃はスタビライザーが非常に高額で買えなかったので、器用な友人に作ってもらった。けど、それを取り付けるとき、自分の弓のブッシングをあけるのにどうしてもまっすぐドリルが入らなくて、スタビライザーを取り付けたら、まっすぐ前を向かないの。だから、まっすぐ前に向くようにスタビライザー曲げたよ。
雑誌アーチェリー 関 政敏さんの記事より
間違ってはいないですが、解決策がダイナミックすぎました(笑) ちなみにアルミのスタビライザーは曲がりますが、現在一般的なカーボン入りのものは曲がらない(折れてしまう)ので真似はしないでください。センタースタビライザーでもX23くらいの強度しかなかった時代の話です。

TFCという装置をご存じでしょうか。先程、記事にしたアジャスタブル・レスト・プレートはさすがに使ったことがないのですが、これは使ったことがあります。ダンパーの代わりとして使ったことがありますが、感覚が好きではなく、2日くらいしか縁がなかった記憶があります。

1970年代から1980年代には、Vバーの根本につけて振動吸収用に使っていました。もちろん、そのようにダンパーとしても使えますが、本来の用途ではありません。このTFCという装置から次のチューニングが始まったようにも思います(*)。
*TFCを知らない時代の人が書いているのか、英語で検索すれば、当然正しい情報が出ますが、日本語で「TFC アーチェリー」で調べると、全く正しい情報がヒットしません。ダンパーと勘違いしている記事があるほどです。TFCはダンパーではない。そのために読者の方もTFCとは何かを知らないと想定して説明させていただきます。TFCを知っている方は読み飛ばしてください。チューニングマニュアルでスタビセッティングにつながるパートです。
TFCは英語ですと、「Torque Flight Compensator」となります。「トルク/フライト(矢飛び)/補正器」という意味です。トルクと矢飛びを補正するわけですが、これがどういう意味かが難しいところです。
(以下、チューニングマニュアルでは、もう少し詳細に説明します。トルクとはなにか、なぜスタビはトルクをとるのかはここでは飛ばします)
トルクが最もグルーピングに影響を与える問題児なわけですが、この問題は、スタビライザーを使用することで解決できます。スタビライザーを使用して発射時に弓を「固定」することでトルクをなくすことができます。
しかし、TFCが発明された当時は弓を固定してはいけませんでした。それは、プランジャーがなかったからです。
ホイット氏はTFCのメリットとして、
I have found through extensive experimentation that when the mass moment of inertia is increased by this means beyond a critical value, some interference with the clear passage of an arrow may occur.
特許文書より
意訳すると、「トルクを取り除くために弓をスタビライザーで発射の瞬間固定すると、クリアランスに問題が生じる」ということです。
(後で誰にちゃんとイラストにさせますので…)

私のイラスト(涙)ですが、新が現在です。矢がプランジャーにあたっていて、矢が通過するときには、矢はプランジャーチップを押し込みますが、バネの力でパラドックスを吸収して、そして、同じテンションで反発することで、矢のクリアランスは弓が固定されていても確保されます。
しかし、旧と書かれた、プランジャー以前では、発射後、矢がパラドックスによって、同様にレスト(弓のウィンドウ)を押し込んできたときに、弓が右に動くことでクリアランスを確保していたのです。つまり、プランジャーができるまで、弓が動くことで矢のクリアランスを確保していて、弓を固定していては、クリアランスに問題が生じることとなります。

そこでホイット氏が考案したのが、 「トルク/フライト(矢飛び)/補正器」 =TFCです。この装置の役割は、まさに広告(写真トップ)にあるように「interference free arrow passenge results, even for plastic vanes.」(意訳:ハンドルに当たるとクリアランスに影響する硬いベインでもきれいに飛びます)です。
この装置(TFC)は中にはバネ・または、ゴムが内蔵されていて、発射時の強いテンションがかかったときだけ、弓を固定せずに、弓はクリアランスのために動き、矢が飛び出したあとの、残った弱い振動はゴムとバランスさせることで、弓を安定させて、取り除きます。しかし、そのテンションには、当然個人差があるので、センターショットの調節の次には、このテンションの調節をするという作業が生まれたわけです。
ただ、その後、プランジャーが誕生すると、矢をクリアさせる仕事はプランジャーに移行し、TFCはそま副業的な作用として、ただのダンパーとして扱われるようになっていくわけです。

古い時代になると、解釈が難しい事が多々発生します。例えば、この特許を日本メーカーも使っていた(ホイット氏が特許権を主張しなかった)のですが、ネットがない時代、知って使っていたのか、この特許を知らなかったのかは、想像するしかありません(*)。
*途中から主張するためにホイットは特許番号を発表したので、どこかの時点では知っていたと思います。
また、ネットがない時代には1984年に日本選手団がルール改正(プランジャー/ストリングウォーキング解禁)を知らずに、世界フィールドに出場して惨敗するという事件が起こっています…恐ろしいです。。
さて、この記事ではチューニングの歴史について触れます。
1960年代までに(今の意味での)チューニングという概念は、ほぼなかったと理解していいと思います。1971年の世界選手権でも、3位の選手は自作の弓(セルフメイド)で出場しています。ウッドの弓というのは、そもそも職人が、木から作っていくので、特注するとしてもそれほど大変なことではありません。また、多少の技術があれば、選手自身で、完成品を再度削っててティラー出しすることも可能です。
チューニングという概念は、職人が1本1本作るウッドボウから、金属製に移行する過程で必要性が生じてきます。弓は製造された段階で、完成されており、それをユーザーが再加工することは困難とあり、調整できることが求められます。
トップ写真はおそらく現代的な意味での最初のチューニング機構、アジャスタブル・レスト・プレートです。
ところでレストはどこに貼りますか?
いまこんなことで悩む人はいないと思います。プランジャーを使って射つなら、プランジャーホールに貼るしかありません。しかし、プランジャーがまだ使用されていなかった時代(1971年解禁)、レストはどこにでも貼ることができました。
ウィンドウの中であれば、どこにでも貼ることができましたが、今のプランジャーの出し入れで調整していた軸では調整できません。今のスーパーレストのように接着ベースの厚みを変更するくらいしかなかったのですが、ホイットはこの部分調整可能にしました。
Fig4 36番のツマミを回していくと、12番のプレートを出し入れできます。このプレート上にレストを貼れば、レストの位置を変更できます。Fig2 36番の のツマミを回していくと、12番のプレート上の10番のレストを出し入れできます。
これによって、センターショット調整というチューニングが生まれます。1960年代後半から1975年あたりまでのチューニングです。
1971年にプランジャーの使用がFITAで解禁されますが、感覚に頼るところが多かった時代の選手はなかなか保守的で、私ならすぐ飛びついた気もしますが、4年後の75年の世界選手権でも、使用選手は70%程度だったようです。

プランジャーが解禁されたことで、アジャスタブル・レスト・プレート(テーブル)は廃止され、プランジャーホールが標準装備になります。プランジャーに抵抗があった選手は上記のような、プランジャーホールに取り付けできる、レストプレートを使用していました。ただ、70年代後半にはほぼすべての競技的アーチャーがプランジャーを使用するようになります。
同時にセンターショットの調整もレストのチューニングではなく、プランジャーを出し入れして行うチューニングとして変化していきます。
【歴史の流れ】
1960年代前半まで - 職人に依頼するか、自分で加工してセンターショットを出す
1960年代後半から1971年 - レストを動かすことでセンターショットを調整する
1971年から現在 - プランジャーの出し入れをすることでセンターショットを調整する