エリート(Elite)のエナジー35の使用レビューです。ただし、現行の2015年モデルではなく2014年モデルです。違うはリムボルトとバックストップの設計です。
この弓は2014年にコンパウンドに転向するときに購入したものです。シンプルな設計が好みですのでワンカムのApex7とバイナリーカム(シンメトリックツーカム)のエナジー35を購入し、その2つを試してみた結果、Apex7を選択し、2014年シーズンを過ごしました。
2015年、マシューズがApex7の生産を終了し、ノーカムシステム(エナジーと同様にバイナリーカムに分類される)を発表したことで、自分もそれに合わせて1月にTRG7を購入しました。そこから3か月程度、TRG7をいじり、たどり着いた結果は、ローレットオフ(65%)で引き尺を少し短めにして、弓が飛び出さないセッティングでした。しかし、TRG7は非常に重い弓でそのセッティングでは体力が持ちません。横浜で行われている1日に2試合(50mwを2回)というフォーマットでは、風があると後半体力が持ちません。トレーニングをして体力をつけるというアスリートとして一番まっとうな選択肢もありますが、6月に控えている全日本社会人ターゲット選手権に間に合うか、4月末の時点だったので、悩んだ結果、悩みすぎてつまらなくなったので、買ってから3回程度して実射していなかったエナジー35をもって射場に気分転換に行くことになりました。
(エナジーに変えて1週間後に練習でのベストを更新 50m356点)
そこで1年ぶりにエナジーを使用したのですが、遊びのつもりが、かなりのグルーピングをたたき出し、そこで本気で2か月間この弓をいじって、これで全日に出場することを決めました。
この弓の大きな特徴の一つはこのライザーゲージと名付けられた設計で、簡単に言えばシュートスルーシステムと同じ考え方で、かつ、ハンドルが軽くなるようにウィンドウの部分を省いたものです。この設計にプラスしてリムはパラレルタイプなので相当におとなしい弓に仕上がっています。なので、スタビライザーの設計では、今までダウン角にしていたスタビライザーをストレートに戻し、少しは飛び出しを得られるようにしました。
もう一つの特徴は硬いウォール感覚を得るためのリムストップの位置を変えることができることです。これを変えることでレットオフ・ホールディングウェイトが変わりますが、同時に引き尺も変わるので、細かい引き尺の調整に利用することもでき、非常に便利でした。もちろん、これをいじって引き尺が決まったら、プレスしてストリング/ケーブルでその引き尺に設定することが必要です。ちなみに、カタログ値の引き尺はレットオフを最も高い位置に設計した時に出るので、低いセットオフでの利用も考えている方は0.5インチ長い引き尺のモデルを購入することが推奨されています。
また、この調整幅がかなりすごいのですが、実測で、最も高いレットオフが約90%(ピークが58でホールディングが5.6ポンド)、最も低いレットオフは約70%(ピークが58でホールディングが16.5ポンド)で位置を変えるだけで20%分レットオフを変更できます。これは使ってみると思った以上の便利なシステムでした。ちなみに、最終的には全日には8ポンド(85%)で出場しました。
使用して1か月ほどでここまでのセッティングが決まり、後はチューニングです。シンメトリックカムの場合のチューニングはかなりシンプルです。上下同じデザインのカムですので、基本的にはケーブルを調整して回転するタイミングを同じになるようにしてあげるだけです。上下のカムは同じ形ですので、同じタイミングで回転さえすれば、完璧にまっすぐなノックトラベルを実現で来ます。これで矢の上下のばらつきはなくなります。
問題はカムの傾きです。カムシステムのチューニングがチョー簡単な代償にカムの傾きの調整は少し厄介です。Apex7やホイットのカムシステムのようにケーブルがカムではなくリムにかかっていれば、スプリットになっているケーブルの左右の長さを調整することでカムの傾きを変更できます。しかし、エリートのシステムではケーブルはカム同士だけをつないでいて、その調整方法は使用できません。
エリートのカムの傾きを調整するための方法は二つです。1つはケーブルガードの位置を変更することです。エリートのケーブルガイドはへの字になっていて、これを回転させることで、ケーブルとリムの距離を変更できます(入れすぎると羽に接触するので限界はあります)。距離を離すことで弓によりトルクがかかり、カムの傾きが変わります。これを利用してカムの傾きを正しく合わせます。
もう一つのやり方はリムとカムの位置を変更することです。エリートのカムには2つのワッシャーが入っていますが、一つは厚みがあるもので、もう一つは薄いものです。これを左右交換することで(必ず上下ともに交換する事)、リムに対してのカムの位置を変更できます。写真のようにケーブル側に薄いワッシャーを入れた時にはカムはより弓のセンターに来ていて、ここに厚みのあるワッシャーを入れるとカムは押し手側に移動します。これによってもカムの傾きを調整することができます。
この2つの調整を行うことでカムの傾きをなくし(完全になくすのは理論上無理)、センターショットを正しい位置に合わせることで、矢の左右のばらつきをなくすことができます。この2つ(カム同期とカムの傾き・センターショット)の調整には2週間ほどかかりました。
ここまでくれば十分な精度がある弓になっています。あとは、バックストップの位置を調整してあげ、2014年モデルでは8190がストリングに使われていましたが、十分におとなしい弓なので、より強靭なBCY-Xに交換しました。2015年モデルでは最初からBCY-Xですので交換は必要ありません。
また、エナジーはハンティングとしても使用できるスピードを持ったモデルなのですが、静音性向上のためにケーブルとストリングに挟むタイプのダンパーがついています(右上のは違い被せるタイプのダンパー)。ケーブルやストリングの間にゴムダンパーをはさむことはシステムの精度を低下させるので、ターゲットで使用するのであればこれらのダンパーは取り外したほうがよいと思います。ちなみに、ターゲット特化のビクトリーには最初から取り付けられていません。
エナジー35のチューニングを終えて3週間ほど練習して全日に出場しましたが、非常に完成度の高い弓だと思います。エナジーはグリップに少し丸みがあるので、それが嫌いな方にはビクトリーという選択肢がありますが、その部分を除けば癖がなく、シンブルで、ねじひとつでピークポンドとホールディングポンドの調整ができるので、自分の体力に合わせることが簡単です。また、ストップの位置が変わる機能を利用することで、1/16インチ単位での引き尺のフィッティング(お試し)も簡単です。
重さは4.3ポンドでTRG7より約1ポンド(450g)軽い弓でした。チューニングが終わってからの1か月は本当に楽しめました。全日も終わったので、まずはエナジーのレットオフを下げて(70%)体力をつけ、10月の全日本ターゲットに向けて、再度、TRG7(65%)に向き合ってみようかなと思っています。
以上、エナジー35の使用した後のレビューでした。