ワールドカップ・バンコク・ステージ2の夜。長年代理店として仕事を一緒にしてきたPSEの担当者の協力によって、デンマークのトップアーチャーで、ステージ1を優勝で飾ったステファン・ハンセン選手にインタビューをすることができました。その前にアメリカ代表だけではなく、イーストンとエリートと、メーカーの技術を担当してきたローガン選手に対して、ステファン選手は純粋なシューターです。その違いを引き出せるようインタビューを行いました。まぁ、それでも、せっかく最高の選手にインタビューする訳ですから、マニアックなことしか聞いていませんが、マニアック(高いレベル?)なレベルで悩んでいる方の参考になれば幸いです。
以下、インタビューです。
山口: 久しぶりに登場したPSEのターゲットフラッグシップモデルですが、どうですか? 私は見た瞬間グリップが広いなと思いました。
ステファン: グリップは広いです。最初は違和感がありました。しかし、使っていくうちにこのグリップ方が安定性があり、引き初めの時点でグリップの位置を正しく決めやすいことに気が付きました。気に入っています。
山口: 新しいシステムとしてLASというシステムが搭載されましたね。以前、ドミネーターを使っているあなたなら、このシステムを使わなくても調整できると思いますが、使ってみましたか?
ステファン: 使っています。この新しいシステムはチューニングを非常に楽にしてくれます。以前の弓では、上カムはヨークで調整し、下カムはワッシャーの移動でチューニングしていました。新しいシステムはボウプレスを必要としないので楽です。
ペーパーテストとベアシャフトテストで確認しながら調整した結果はこの位置です(弓を見せてくれる)。
山口: (写真は下リム)どちらの位置も、リム(カム)をケーブルガードに寄せるほうに調整していますね。これは何か意図がありますか?
ステファン: ベストな位置を探していろいろやったらここになっただけです。
山口: 他に何か違いはありますか?
ステファン: 弓が重くなったので、ウェイトを減らしました。ハンドルにつけいたらウェイトを7オンス減らしました。また、リムの幅が広くなったので、カムリーンが少なくなりましたね。
山口: カムリーンといえば、LASはカムリーンの調整にも使えます。フルドローでカムリーンがゼロのほうが良いという意見も聞きますが、あなたはどう思いますか?
ステファン: ドローボード(シューティングマシン)を持っていないので比べたことがないです。ブレースの位置でカムリーンがないように調整すれば十分です。
山口: あなたはストリングストップを外していますね。その理由は何ですか?
ステファン: ストリングストップがあったほうが感覚は良いかもれません。しかし、グリップのトルクなどによって、弦が毎回同じところに当たるとは限りません。つけている人はゴムを見てみればついている弦の跡は弦の幅よりも広いでしょう。また、ストップはゴムで劣化していきます。信頼性がないので使いません。
山口: フレックスガードはどう調整していますか?
ステファン: 他にすべきチューニングがあるので、羽根に触れないくらいで固定しています。それだけ。チューニングしたことはないです。
山口: PSEではレットオフをモジュールで変更できるようにしていますが、あなたはどうしていますか?
ステファン: 75%です。ずっと。これ以外使ったことがないです。
山口: では、ホールディングウェイトはどのくらいですか?
ステファン: 記録していないですね。引いてみて何か違和感を感じないと確認はしないです。まぁ、たぶん16ポンドくらいです。
山口: スタビライザーのセッティングはどうでしょうか。重心はニュートラルですか?左にありますか?
ステファン: レオのようにかなり左に置いたこともあるけど、うまくいかなかったですね。今のチューニングでは、目を閉じて弓を引いたときにバブルが真ん中に来るようにしています。
山口: その結果は?
ステファン: わからないな。この場で確認してみようか。
(弓を持って確認)
少しだけ左に重さがあるけど、ほぼニュートラルにあるね(バブルは1メモリだけ右に)。
山口: 私たちはCXの販売もしています。インドアではCXLとX-Busterがあり、私はCXLを使っていますが、
あなたはX-Busterを選択しましたね?
ステファン: (画像を見せてくれて) この写真を見てください。左がCXLで、右がX-Busterです。CXLのタイトなグルーピングですが、ミスが大きく、X-Busterのほうがグルーピングは広いですが、ミスが小さいです。それはおそらくシャフトの重さが問題で、より重いX-Busterのほうがミスに対して寛容なように思えます。これは実際にシューティングして比べた結果です。
山口: シャフトもNano ProとXrを使っていた時期がありましたね?
ステファン: Nano Proのほうが良いグレードの高いカーボン繊維を使っているので耐摩耗性が高いのは間違いないですが、長い使い続けない限り、大きな違いはなく、私はこまめにシャフトを変えるので、安いほうのXRを選択することもあります。
山口: シューズはどう選択していますか?
ステファン: ソールはフラットがベスト。かかとをサポートする部分(カウンターと呼ぶらしい)は固くないとだめです。ただし、シューズ全部が固いと疲れてしまうので、それ以外の部分は柔らかいシューズがベストです。
坂本: 食事で気を付けていることはありますか?
ステファン: ジェシーを見ればわかるように、トップアーチャーになるためにマッスルマッスルする必要はないです。私はジムでもトレーニングしますが、全体では射場での練習を重視しています。なので、サプリなどを摂取したりはしていません。 食事で気を付けていることも特にないです。ファストフード・ジャンクフードを食べないことくらいでしょうか。幸い私のママはすごく料理が上手なので、サポートしてもらっています。試合中はバナナなどで栄養補給しています。良い食材を摂取することが大事だと思います。
山口: リリーサーは重いバックテンションを使っていますよね?
ステファン: フルクラムを使っています。重いリリーサーのほうがリリースした時のブレが小さいです。以前は人差し指だけにテンションをかけて射っていましたが、指が痛くなってしまいました。フルクラムはフックの位置を変更できるので、均等にテンションをかけやすく、指にやさしいです。
山口: 射形はどうしていますか?ビデオチェックの時どこを主に見ますか?
ステファン: リリースの流れですね。アンカーからリリースの流れが正しくできるているかは常にチェックしています。
PSEの担当スタッフの方、ご協力ありがとうございました!
山口 諒
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ストリングストッパーのメリット/デメリットについて教えてください。
このインタビューでハンセン選手はストリングストッパーを使っていない理由を語っています。
プロの選手の映像を見ると他にも使っていない選手が多いようですね。
私の弓はHOYTのFreestyleで、もともとストリングストッパー用のマウントがフェイス側についていないので、Q2i String Tamer (Front Mount)を
使用しています。あまりいろんなものをつけるのは好きじゃないんですが、つけたほうが確実に射った瞬間のショックが少ないので仕方なく使っているという状態です。
気持ちがいいからというよりは、弓本体にかかる衝撃が少なそうだと思ってのことですが、本当にそうなのかどうかよくわかりません。
ちなみに私の弓はピークウェイトが40ポンド弱と柔らかいですので、本来はその程度のストリングの跳ね返りの衝撃には耐えられる強度を持っているものだろうと考えると外してしまっても良いのかと思います。
そもそものストリングストッパーのメリットとデメリットについてあまり書かれているものがないのですが、教えていただけますか。
>そもそものストリングストッパーのメリットとデメリットについてあまり書かれているものがないのですが、教えていただけますか。
完全に感覚的なものだと思います。もちろん、機種によってはないと腕に当たってしまったりと設計上欠かせない場合もありますが、ブレースハイトが7インチ以上のようなターゲット競技用モデルであれば、外して勝ても性能に大きな影響はないと考えます。
メリットは振動が小さくなり、弓が安定している(ように感じられる)ことで、デメリットはゴムはそこまで安定している素材とは言えないので、天候の影響を受けやすいこと、摩耗・劣化しやすいことなどがありますが、ざっくりいってしまえば、そのどっちが気になるのかということだと思います。
ちなみに私はその中間、つまり、ストッパーはつけるが、弦からは少し距離を離すことで、確実にシャフトがリリースされてからゴムに当たるようにすねることで、両方のハーフ&ハーフのような効果を得られるようにしています。
回答ありがとうございます、納得です。
外して射つとショックが大きいような気がしますが、実際は弓が揺れている時間が長いだけで、弓が受ける衝撃の大きさは変わらないのかもしれませんね。逆にストッパーを付けると一気にガツッとくるので瞬間的な衝撃は大きいのかもしれません。ストッパーを外してからはサイトの緩みが少なくなったように感じています。
どうもありがとうございました。
弓が受ける負担という観点でしたら、発射時の音が最も参考となります。
ここでの「ショック」というのがお客様の押し手が感じているものでしたら、それはあくまでもハンドルのグリップ部分で起きている振動を表しているだけですので、弓全体の負荷とはあまり一致しないことに気をつけてください。