
スタビライザーセッティングについて説明する時、上のような写真をよく見ると思います。スタビライザー(=安定器)は文字通り、弓を安定させるためのものですか、トルク、ローリング、ピッチングの3つ方向に対して、弓を安定(動きにくくする)させることです。ただ、この中でグルーピングに影響を与えるのは、トルクだけです。
上の動画を確認してください。480pの高速度カメラで撮影したリリースの瞬間のハンドルの挙動です。




20フレーム、約、0.05秒の間の出来事です。ただし、動画は編集されていて、クリッカーが落ちてから、リリース(矢が動き出す)までの時間も入れると、0.1秒強です。
ニュートンの運動の第3法則(作用・反作用)によって、押し手は弓を押しますが、弓も押し手を押し込みます。リリース直後に(A)弓はチップ1/2分押し手を押し込みます。その後に、(A)の時に弓が押し手から受けた力の方向に影響を受けて前方に飛び出します。まっすぐ押せていれば、まっすぐ弓は飛び出します。まっすぐからずれてしまった時、その影響を低減させるのがスタビライザーです。
写真からわかるように、トルクの影響は矢が飛び出すまでの間でチップ1個分もあります。ピッチング方向・ローリング方向への動きは始まっていません。そのため矢(グルーピング)に直接の影響を与えるのはトルクだけです。

スタビライザーのセッテイングにおいて、直接的中に影響するのは、グリップのピボットポイントから弓全体の重心までの距離です。この距離が長いほど、トルクの影響を受けにくくなります。原則はこれだけです。しかし、遠ければよいというわけではなく、Aの方向に移動させすぎる(センターを重くする)と動的ティラーに大きく影響を与え、グルーピングが逆に悪化します。友人からスタビライザーを借りて、アッパーにもロングロッドつけて引いてみれば、どういうことか理解できます。
Bの方向に重心を移動させるためには単純に弓を重くすればよく、理論上何も悪影響はないのですが、保持する体力がなければ、射形を維持できないでしょう。

残りの要素はセッティングによるエイミングのしやすさと振動吸収、弓の飛び出しがテーマとなりますが、原則があるわけではなく、個人の感覚も問題ですので、いろいろと試してみてください。韓国の選手はA方向に重心を持っていくことが多く、アメリカの選手はB方向に重心を持っていくことが多いように感じます。

山口 諒

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