シングルラウンド(1440ラウンド)の誕生

チューニングマニュアルを書き終わり、3000部以上ダウンロードされました。読んでいただきありがとうございます。もちろん、今後も最新の情報にメンテナンスしていきますが、次に着手すべきはアーチェリーの歴史だと思っています。

おそらく、このサイトを訪問している方の多くはあまり関心がないかもしれませんが(実際アクセス数はあるものの滅多にコメント付きません(T_T)、何事もしっかりとここに至る経緯・歴史をしっかりと知っておかないと、正しい場所にたどり着けないのではないかと思っていますし、チューニングマニュアルを書くときにも多くの過去の文献にあたってきました。

弓道の歴史はかなり詳細に文献として残っているのに対して、アーチェリーの歴史は、特に日本語で書かれたものは、なぜかありません(自分調べ)。もしありましたら、教えていただければ幸いです。書籍でも、論文でも、プログなどでも見つけることができませんでした(*)。

*個人のインタビューのようなものではなく、裏付けがあるものに限る

日本におけるアーチェリーの歴史

このようなサイトで貴重な写真を見る事はできますが、今後どうなっていくのでしょうか? 日本のアーチェリーの歴史に関して、どこかで管理・保管しない限り、失われる一方で良いのか。アメリカでは、イーストン財団が貴重なアーチェリーの資料を保管し管理していますが、日本でもやるべきではないかと思っています。自分ができる範囲でのことは努力していこうと思ってはいます。

こちらは日本で書かれた2番目に古いアーチェリーガイド。最も古いものに「洋弓手引書」という物があるらしいのですが、入手できていません。情報ありましたらお願いします。サイトピンの使用が認められ、クリッカーが日本に上陸し(*)、スタビライザーが禁止されていた時代に書かれたものです。

*白倉 仲, 武山 秀. Archery に於ける Klicker. 体育学研究. 1967;11(5):218.

今回の記事は現在では滅多に行われていないシングルラウンド(1440ラウンド)の誕生に関するものです。この競技形式は登場まで、どこでも行われておらず、妥協の産物であることはあまり知られていないと思います。下記の記事「歴史をすこし」をより詳細にしたものになっています。

事の始まりはオリンピックです。それぞれの国が独自の文化のもとアーチェリー競技をしている中、1896年に再開されたオリンピックの第二回大会、1900年のパリ・オリンピックからアーチェリー競技が追加されます。パリ・オリンピックでは、当時フランスで人気のあったAu Cordon Dore 33mなどの競技が行われますが、どのようなルールだったのかは記録に残っていません。ただ、33mでの競技だったと思われるので、メインを100ヤード(91.4m)で行われていたヨークラウンドに比べると短距離の競技だったようです。開催国フランスとベルギーとオランダの3カ国が参加しました。

つぎの1904年アメリカのセントルイスで行われたオリンピックでは、独自のアメリカンラウンド(22名参加)とともに、イギリスのヨークラウンド(16名参加)も競技に採用しています。ただ、海外からの参加選手はなく(イギリス・アメリカ間は船旅で片道5日間)、全員アメリカの選手で競技が行われます。こちらは長距離の競技です。

王室の庇護のもと、貴族のスポーツとして競技されたイギリスのヨークラウンドは100ヤード(91.4m)をメインとしていました。これは射場が貴族の社交場として機能していたためです。アメリカではメインがハンティングだったので、ターゲットでも50/60ヤード(54.8m)がメインでした。対して、フランスやベルギーではより娯楽色の強い参加のしやすい短距離で競技が行われていました。ベルギーではPopinjayと呼ばれる競技が人気です。

ポピンジェイ(wiki英語版の機械翻訳) - ポピンジェイの目的は、人工の鳥を止まり木から叩き落とすことです。止まり木は、90 フィート (27 m) のマストの上にある横木です。

https://en.wikipedia.org/wiki/Popinjay_(sport)

1908年のロンドン・オリンピックはもちろん長距離のヨークラウンドで行われ、フランス、アメリカから選手が参加しました。第一次世界大戦をはさみ、オリンピックが再開された1920年にはベルギーで開催されますが、競技方式はIndividual Fixed Large Bird で行われたと記録されており、これはおそらく現在の3Dアーチェリーのような、擬似的な狩猟競技と推測され、鳥を射るので的のサイズ的に短距離で行われたと推測されます。ベルギー・フランス・オランダの選手が参加しました。

開催ごとに競技方式が異なる状況に対して、1921年に行われた第七回オリンピックコングレスで、統一ルールの導入を求められたものの、アーチェリーは国際競技団体すらなく、競技方式を統一できず(*)、1924年のオリンピックよりアーチェリーとフィールドホッケー、ゴルフがオリンピック競技から削除されました。

*Fonds list, Olympic Congresses : Overview of the content of the archives concerning the organisation, running and decisions of the Congresses between 1894 and 1981, P22

この問題を解決するために、1931年に国際団体の世界アーチェリー連盟が創立されます。当初の参加国は、フランス、チェコスロバキア、スウェーデン、ポーランド、アメリカ合衆国、ハンガリー、イタリアの7カ国で、日本などの弓による競技(アーチェリー)が行われている国に参加要請を送ります。送付した国のリストはないものの、日本とエジプトの競技団体からは返信がありました(*)。

*Robert J. Rhode, HISTORY OF THE FEDERATION INTERNATIONALE DE TIR A L’ARC VOLUME I 1931-1961, P12

このときの日本側の反応についての記録を読むと、双方に大きな認識の違いがあったようです。連絡を受け取った大日本弓道会は世界アーチェリー連盟(WA/FITA)を「国際洋弓連盟」と受け止めています。つまり、洋弓の世界より和弓の世界と「交流」を持ちたいという連絡であると受け止めていたのに対して、WA側は最終目的はオリンピックへの再採用ではあるので、課題は弓術(アーチェリー)としての国際大会での競技方式の確立であり、「加盟」と「参加」をして欲しいという要請であり、初めからボタンの掛け違いがあり、日本側はその後連絡を絶ち、対応をしなくなります*。

*入江 康平, 昭和前期における弓道の国際交流について, 武道学研究, 1974-1975, 7 巻, 1 号, p. 29-30

当時の和弓側(大日本弓道界)の「弓術というだけでは意味が狭い。ただ弓に矢をつがえて的に当てることの技術が弓術である。これ以外のことは厳密にいえば、弓術の範囲には属せずして弓道の範囲に入る」(*)という意見、弓道は弓術とは違うという意見と、弓は、ターゲットアーチェリーで使用されるもので、常識的に「弓」という言葉に適合していれば、どのような形状でも使用することができる(競技規則)という弓道は弓術の一つであるというアーチェリーの定義は今でも多くの誤解を生んでいるように思います。

*根矢鹿兒 弓道の本義.弓道,87:1-3, 1919

さて、1931年に国際的な統括団体は設立されたものの、世界選手権の競技方式はなかなか決まりません。問題はイギリス、アメリカ、スウェーデンが90mや70mの長い距離で競技していたのに対して、フランス、ベルギー、オランダは25m、30m、50mの短距離で競技をしていたこと。それに最適化された射法を用いていたことです。例えば、ハイアンカーでは物理的に90mを競技することが困難で選手は新しい技術の習得が必要になります。

1931年の第一回世界選手権では、50m/40m/30mという形式が採用されます。1932年の世界選手権では70m/50m/30mという形式が採用されます。イギリスからは全距離を122cm的で行うことが提案されますが、ポーランドとフランスの協会の反対により、30mでは80cm的を採用することが決まりました。

1933年のイギリスで行われた世界選手権では、男子が90/70m/50m/30mという形式に変更されます。女子は引き続き70m/50m/30mで、競技する本数に差異があります。この年から10リングが導入されます。

1934年の世界選手権に向けての1933年の協議会でシングルラウンド形式(男子90m/70m/50m/30m各36射)という形式が提案され、6カ国賛成(イギリスは棄権)という投票結果によって確定し、ここで初めて、どの国でも競技されていなかったFITAシングルラウンドという競技形式が、短距離派と長距離派の妥協のもと誕生します

ただ、定着はせず、2度この形式で世界選手権が行われた後、初日を長距離(90/70/50)で競技し、二日目を短距離(50/35/25)で競技し、その合計でランキングする方法が提案されます(International Long and Short rounds)。1935年の世界選手権の成績を見ると、どちらかの競技にしか参加していない選手がいることが確認できます。

1953年の会議でMr.Neerbye氏(*)より競技者の増加に伴い競技時間が長くなりすぎているために参加者の削減が提案されました。2年間の委員会での議論を経て、1955年の会議で競技者の削減ではなく、競技する距離を削減することで競技時間を短縮する方向となり、再度シングルラウンドをFITAラウンドとして採用することが決まり、その後、1985年まで採用され、その後は2011年まで予選ラウンドにて使用されました。

*FITA Bulletin officiel No 13, 1953, P7

以上、FITAシングルラウンドは短距離から長距離までまんべんなく網羅した試合形式というよりは、国際的な合意形成が必要な中、妥協によって生まれた試合形式と考えるべきかと思います。

1921年から34年間かけてWAはアーチェリーの国際大会のルールを統一することに成功し、さらにその10年後の1965年の10月に72年のオリンピックに再採用されることが決まりました。

WAの過去の議事録は1931年の第一回目から下記のサイトで確認できます。すべて私が生まれる前の話ですので、過去の文献により構成しているために参考文献が大量になってしまい、読みづらかったら申し訳ございません。


初期におけるセンターショットの研究

1942年、初期のセンターショットボウに関する研究についての資料を入手したので、一部翻訳してみました。ここからのモダンリカーブボウが誕生していきます。

A/B

In this group of experiments the arrow had no freedom to offset the faulty three finger release as it had to pass right through the center of the arrow rest.

PERFORMANCE CHARACTERISTICS OF CENTER SHOT BOWS AS AFFECTED BY TYPE OF RELEASE, ARROW SPINE AND GLOVE TIP THICKNESS By L. A. QUAYLE Cleveland, Ohio 1942.2 Bowman Review.

この実験では、矢はレストの中心を通らなければならないので、3本指リリースの不具合を相殺する自由はない。

Experiments Using Bows “C” and “D”

All arrows irrespective of their material, length, diameter or spine grouped around the point sighted whether shot with three-finger, pinch or mechanical release, with a glove or with bare fingers.

With the type of arrows rests used on “C” and “D” bows, the arrows were free to move to the left (bow held in left hand) without obstruction and the arrows had an opportunity to readjust themselves after receiving the side push caused by the string going around the finger tips, and they there fore grouped around the point aimed at.

弓「C」と「D」を使った実験

すべての矢は、素材、長さ、直径、スパインに関係なく、3 本指、ピンチ、メカニカル リリース、手袋または裸の指で射ったかどうかにかかわらず、サイトポイントの周りにグルーピングしました。

「C」と「D」の弓に使用されているアローレストのタイプでは、矢は妨げられることなく左に自由に移動でき(RH)、矢は弦が指先を通る時に起こるサイドプッシュ(*写真)を受けた後、自分自身を再調整する機会があり、狙ったところにグルーピングします。

サイドプッシュ

Tests Using Pinch Release

With the pinch release or its equivalent in a mechanical releasing device, all four sets of arrows shot from all four bows grouped around the point sighted on, the sight being kept in the vertical middle of the bow at all times and adjusted vertically to take care of the different weights of the arrows in the different sets.

If matching target arrows for spine to a fine degree is as difficult and important as many archers appear to believe, then the center shot bow of proper design has an advantage over other types, in that arrows of greatly different spines will group together on the target without any allowance being made for differences in spine.

トリガーリリーサーを使用したテスト


トリガーリリーサーを使用して、4 つの弓すべてから発射された 4 セットの矢すべてがサイトポイントの周りに集まり、サイトは常に弓の垂直方向の中央でよく、異なるセットの矢の異なる重量に対応するために垂直方向にだけ調整されます。


背骨のターゲット矢印を細かく一致させるのが難しい場合、多くのアーチャーが信じているように、適切な設計のセンターショットボウは、スパインの違いを考慮せずに、大きく異なるスパインの矢がターゲット上でグルーピングするという点で、他のタイプよりもメリットがあります。

The center shot bow also has the advantage that very light arrows may be shot with heavy bows giving flatter trajectories than are possible with bows that force the arrow to bend in order to go around it.

The 28″-7/32″ diameter 290 grain “Z” arrows performed very well when shot with a 45 lb. “D” type bow. This “Z” arrow has so little spine it became permanently bent when shot just once with a 45 lb. bow of conventional design.

センターショットの弓には、非常に軽い矢を高いポンドの弓(*)で射つことができ、クリアランスのために矢を迂回させる弓よりも、平らな弾道を与えることができます.

*注 50ポンド・28インチ引きの場合、ロングボウ、センターショットリカーブボウ、コンパウンドボウの順にエネルギー効率が高まるのに対して、推奨スパインは順に、400(ウッドアロー)、450(X10)、470(X10プロツアー)と柔らかく軽い矢が適合します。

直径 28″-7/32″ の 290 グレイン(スパイン 0.280) 矢は、45 ポンドの “D” タイプの弓で射つと非常に優れた性能を発揮しました。 この矢はスパインが非常に小さいため、従来の設計の 45 ポンドの弓で 1 回だけで曲がってしまいます。

No doubt hundreds of center shot bows have been made and shot but it is seldom that one is seen in use. However, as indicated above, properly designed center shot bows have certain inherent advantages which, when more generally recognized, should increase their use considerably, and may become the favorite type with many archers.

間違いなく何百ものセンター ショットボウが作られ、テストされていますが、実際に使用されているものはめったに見られません。 ただし、上記のように、適切に設計されたセンター ショットボウには固有の利点があり、より一般的に認識されるようになると、その使用が大幅に増加し、多くのアーチャーに好まれるタイプになる可能性があります。

PERFORMANCE CHARACTERISTICS OF CENTER SHOT BOWS AS AFFECTED BY TYPE OF RELEASE, ARROW SPINE AND GLOVE TIP THICKNESS By L. A. QUAYLE Cleveland, Ohio 1942.2 Bowman Review.


Royal Company of Archers / 迎え酒

護衛がロンクボウのアーチャーなのはびっくりしました。ブレースは状態しないで護衛するのですね。

ロイヤル・カンパニー・オブ・アーチャーズ(Royal Company of Archers, the Queen’s Bodyguard for Scotland )はスコットランドにおける儀式の際に国王・女王を護衛する名誉職。1676年私的なアーチェリークラブとして発足し、1703年再建。ジョージ4世時代の1822年より護衛任務に就く。入隊資格はスコットランド人若しくはスコットランドと繋がりが深い人物であること。選挙により選ばれる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E8%A1%9B%E5%85%B5_(%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9)

話が変わりますが、自分はウィキペディアを調べ物に結構使いますが、言語には思想が結びつくので、言語が変わると書いてあることが全く違っていたりします。先日、久しぶりに迎え酒をしてみたら、結構効いたので、迎え酒について調べてみまたのですが、

いわば迎え酒による対処は「気のせい」「その場しのぎ」と考えられている

迎え酒 - 日本語のウィキ

迎え酒には効果がないと書かれているのですが、参考文献が適当すぎるだろ…医学的なことの根拠がブログレベルの記事と、文芸社だから読んでないけどおそらく文化について書かれた本って…と思い、英語版を見てみました。

In the second, hangovers are partly attributed to methanol metabolism.[15][16] Levels of methanol, present as a congener in alcohol, have been correlated with severity of hangover[17][18] and methanol metabolism to the highly toxic formate via formaldehyde[19] coincides with the rate of appearance of hangover symptoms.[20] As both ethanol and methanol are metabolised by alcohol dehydrogenase – and ethanol is a much better substrate for this enzyme – drinking more of the former then effectively prevents (or delays) the metabolism of the latter. As pure ethanol consumption has also been found to increase endogenous levels of methanol,[21] presumably for this reason, this suggests that if “hair of the dog” works in this way it effects a temporary hiatus rather than a cure.

迎え酒 - 英語版

AI翻訳(一部修正)

二日酔いはメタノール代謝に一部起因する[15][16]。アルコール中の共伴物質として存在するメタノールのレベルは二日酔いの重症度と相関しており[17][18]、メタノールからホルムアルデヒドを介して猛毒のギ酸塩への代謝は[19]、二日酔い症状の発現速度と一致する。[20]

エタノールとメタノールはともにアルコール脱水素酵素によって代謝され、エタノールはこの酵素にとってはるかに優れた基質であるため、エタノールを多く摂取すると後者の代謝が効果的に妨げられる(または遅延する)。純粋なエタノールの消費はまた、おそらくこの理由のために、メタノールの内因性レベルを増加させることが見出されているので[21]、これは、「迎え酒」がこのように機能する場合、治療というよりも一時的な休止に影響を与えることを示唆している。

たった2クリックで、より詳しく知るための論文レベルでの情報とともに知りたいことを知ることができます。迎え酒の効用は二日酔いの原因である代謝を遅延させることで、一気に来る痛みをゆっくりと進めさせることにあるとのことでした。

今はAIにより機械翻訳のレベルも上がっていますので、日本語で調べて答えが見つからない場合には、英語や、繋がりが深い言葉、ワインだったらフランス語で調べたり、ウォッカだったらロシア語で調べたりすると、白酒なら中国語で、簡単に答えが見つかる場合が多いので試してみてください。

日本語のウィキに海外の研究では違う結果が出ていることを追記しました。


【返信】弓のサイズについて。

コメントに対する返信です。

月間アーチェリーの3月号に2022ナショナルチーム弓具一覧が掲載されていましたが、男子ではMKユーザー、女子ではFIVICSユーザーが増えて来てるのに対して、HOYTユーザーは男子に1人だけでした。
これは何が要因だと思いますか?

まず、個人的に、現在、韓国メーカーとアメリカのメーカーに技術差があるとは考えていません。それを前提に考えると、まずは、JOCエリートアカデミーなど、日本で活躍しているコーチの多くが韓国の方だということ。韓国のコーチは当然韓国のメーカーとコミュニケーションが取りやすいので、指導している選手は韓国メーカーの弓を使用することが多いです。

また、そうでなくても、WINやMK、FIVICSでは日本語を話せる職員・担当が在籍していて、特にMKは近年日本市場の開拓に熱心なように思います。対して、ホイットや中国メーカーはそういう人材を採用していません。

また、WINはエントリー向けブランドとしてKAPとWNSを展開していて、FIVICSはKROSSENを持っています。これらを最初に買ってアーチェリーを始めた選手の一定数はそのまま上位ブランドのWIN/FIVICSに移行します、韓国メーカーがこれらのブランドに力を入れ始めたのが、10年前くらいで、その効果が出始めているのではないかと思います。

あと、多くの選手が一般的に言われている矢尺と弓の長さの適切値よりも長い弓、例えば27.5インチの矢尺に対して70の弓といった大きな弓を使っているのですが、何かメリットがあるのでしょうか?

この話は前にも記事にしましたが、簡単にいえば、”適切な”弓の長さというものは、アーチャーの存在を一切考えておらず、単純にその引き尺なら、その弓のサイズが一番弓の効率性が高いですよという数値です。写真上は適切な弓の長さで、リムのチップが90度よりアーチャー側を向いています。一方で、写真下は、トップ中のトップの選手ですが、明らかに弓が大きすぎて、チップが的側に向いてしまっています。弓の効率性・性能の最大化よりも、鼻に弦がつくことを優先した選択だと聞いています。矢速よりもチェックポイントを増やすことがより高いパフォーマンスにつながると考えての選択です。


【追記】2022年は波乱の年になりそうです。

【追記】2022年5月の価格改定から弊社と同じ価格で販売するという方針を撤回したようです。

先日、ホロホロ鳥を頂きました。昔、神奈川の動物園でホロホロ鳥を見たときに「うまそうだな」とつぶやいたところ、めっちゃ彼女に引かれたのを思い出し…食べたことのない方には、食材に見えないんでしょうね。今までに頂いたことのない大きなポーションでびっくりしました。

さて、渋谷アーチェリーさんが商品全体の値上げをするというお知らせがあり、今まで、概ね弊社と同じ価格で販売をする方針を撤回するのかなと思って、注目していましたが、蓋を開けてみると、そうではなく競合プロショップに対する一斉値上げが行われたようです。

説明すると販売価格が値上げされた分ポイント還元が更に拡大し、実質の販売価格は固定されています。販売価格1500円(ポイント400円で実質1100円)が値上げされて、1700円(ポイント600円で実質1100円)となってもお客様にはそこまで影響はないと思います。しかし、競合プロショップに販売するための卸価格は定価の60%といったように、定価からパーセンテージで計算されるので、定価が高くなった分、そのまま卸価格は高くなります。

ですので、今回の値上げは実質的には国内卸価格の10%の値上げとなり、卸価格は高くなったのに、渋谷アーチェリーの販売価格は(実質)値上げしていないので、他のプロショップはそれなりにきつくなります。一部の商品に関しては、ポイント還元を引いた実質価格よりも、卸価格のほうが高いのではないかと思います。

ここ何年かアーチェリー商品の価格は安定していたので、他のプロショップの動きや価格に注目することはありませんでしたが、2022年は他のプロショップさんの動向に久々に注目してみたいと思います。きつくなるところが出るんじゃないのかなと心配です。

ただ渋谷のやり方はもう限界に近いのではないかという思いもあり、例えば、セーカータブは10560円ですが、販売価格の半分以上(51%)にもなる5360円のポイント還元があり…販売価格の50%以上をポイント還元するような業界は思いつきません(あれば教えて下さい)。せいぜい20%くらいまでが適切ではないでしょうか。まぁ、お客様が疑問に思わず受け入れている限りは問題ないとは思いますが。

さて、弊社でいうと商品の仕入れ価格の変化はほぼありません。ただし、国際便の送料が20%程度値上げされています。このコストは販売価格に転換したいと思ってはいますが、送料ですので、どの商品に乗せるか迷っているところです。なので、タブとかノックとかの価格は変わらないと思いますが、アーチェリーケースとかの低価格の大型商品、ウェイトなどの重さがある商品については近いうちに10%程度値上げするかもしれないと言う状況です。ご理解いただければ幸いです。

EMS特別追加料金の導入のお知らせ


WAの情報公開がすごいじゃん!

ある調べ物をしていてグーグル検索でダウンロードした資料のリンク先が、知っているURLだったのでたどってみたら、WAの資料サイトなのですが、1931年からの開催された、最近ベアボウが追加されたり、国際大会が1射30秒になったりと、ルール改正などを決めるための会議(コングレス)の資料がすべて公開されていました!

これでだいぶ作業がはかどります、ありがとうございます。

ただ、古いものはフランス語での議事録なので自動翻訳で乗り切るしかないようです。

WA / Home / Events / Congress

業界が変わるか、それはあなた次第!

お客様からコメント欄で情報をいただき、いろいろと再調査しました。その結果、これまでのいくつかの記事に変更が必要となり、この記事にまとめました。この記事で変わった部分を集約して報告し、過去の記事はその時点では間違っていないので、書かれた日とともに変更修正は加えていません。

読んでいない方のためにかんたんに説明すると、渋谷アーチェリーは弊社と価格では競合せず、同じ価格で販売することを4年以上は継続してきました(始まった時期は不明)。そのとき、販売価格と卸価格と実質価格(販売価格から還元ポイントを引いた価格)とがあり、そのバランスがおかしい商品がありました。

それが2022年の価格改定で、渋谷アーチェリーは弊社との価格の連動を解消し、お客様から報告された商品では70%以上という過去に聞いたこともないほどの値上げがされています(この記事の執筆時点)。その過激な値上げによって、価格の歪みが概ね”解消”されたようです。

詳しくは上記の記事で詳細に説明していますが、卸価格は定価からパーセンテージで計算され、例えば、定価の55%といったように決められます。渋谷アーチェリーのオンラインショップでは概ね、定価の80%をベースに販売価格が定められています。そして、今回の値上げでは、(50%を超える)異常なポイント還元率を一律で30%を上限に設定されています。そのために、定価 x 80%(販売価格) x 70%(実質価格) = 56%となり、55%の掛け率で契約しているプロショップでは、渋谷の小売実質価格が卸価格より安いという商品は存在しなくなります。卸価格が小売価格より安いねじれ状態がついに解消しました。個人的には良いことだと思います。

久しぶりに渋谷アーチェリーのオンラインショップの価格みましたが、WINとKAP(仕入先は同じはず)で大幅に割引率が違う(KAPが高い)のと、FIVICSのハンドルとリム・シャフトの取り扱いがないのですね(タブは売っているので仕入れはできるはず)。それでうちに大量に注文があるのが納得です。FIVE-Xシャフトの主要スパインの在庫を1ダースずつから2ダースに変更しようと思います。

さて、これは現在の東京近郊のアーチェリーショップの分布です。北にアサヒさん、西に渋谷アーチェリーさん、東にエンゼルさん、南に弊社、中央にKプロさん、そして、結構離れた場所にクラウンさんがあります。もっとも近い渋谷アーチェリーから有料道路を使わずに1時間20分、電車でも同じくらいです。なので、過去にあった弊社の大宮店と同じくらいの距離感ではないかと思います。

私は身近にプロショップがあるべきだという信念のもとに、プロショップがなかった大宮にプロショップを出店しました。店長だった村田が家業を継ぐために退職したのが閉店の理由ですが、経営的に大成功かといえば、予想ほどではなかったです。自分の分析では、埼玉の方はみんな喜んではくれて、店舗に寄ってくれたものの、同じ価格なら、結局は大手で買ったほうがいいよねという流れに勝てませんでした。もちろん、自分の力不足です。

そして、時は令和。再度、若いアーチャー達が地元に根付く形でのプロショップの展開に挑戦してくれています。同じ価格なら近い店で買う、少し高くても近くの店で買うとなるかが再び彼らの挑戦の成功の鍵ではないかと思います。私は失敗しましたが、彼らが成功することを願っています。そして、それを決めるのはお客様です。

私の大宮の経験で言えば、長くても5年で結果が出ると思います。5年好調な経営ができれば、もう大丈夫です(*)。なので、弊社より独立した米田のKACグループはもう安泰だと思っています。若いプロショップたちがどうなっていくのか、2026年頃に答え合わせの記事を書きたいと思います。

*設立当初人間関係でお金と関係なく協力してくれた友人が、うちでいえば、日本代表で金メダルを獲得した田熊(結婚)、千葉国体代表の内海(結婚)、発送担当の佐藤(大学院卒業後の就職)、海外担当の塩飽(大学院卒業後の就職)、結婚や出産、家を買う・転勤などで離れていき、本当に給料を支払って雇用関係という中でプロショップを経営をしなければならなくなるまでの時間が5年位。今やメ〇〇リやリク〇ートなどの超一流企業に務める優秀な人材に時給1000円で仕事をしていただき本当に感謝しています。


久しぶりの業界昔話5 – 昔じゃない話

5回目の最終回です。これまでは昔の話ですが、現在進行・将来の話となりますので、ほぼ私見です。また、その予想に対しての会社としての対応も書いておきます。

ここまでの記事で書いたように、弊社は00年代のアーチェリーショップというローカルだったビジネスが、グロービルなビジネスになってしまったタイミングで参入しました。近年、ダイナシティのような国産メーカー再誕生や、前回の記事のように韓国メーカーを中心に、メーカーが日本語でのビジネスに対応することで、もしかしたら、アーチェリーショップというビジネスが再度ローカルビジネスに戻るのかもしれません。

ビジネスがローカルとなるということは、プロショップを始めることがより簡単になるので、多様なプロショップがこれからも登場するかもしれません。新しいプロショップがどんなことを仕掛けてくるのか楽しみです。

→ 弊社としてはローカライズされるとしても、利潤ベースとなるはずなので、お金になる競技リカーブ・学生向けアーチェリーだけと予想しています。10年代以降力を入れてきた、コンパウンド・ベアボウ/フィールドカテゴリーでは、そのような変化はなく、今後も影響はない分野を深堀りしていきます。

一方で心配しているのは、国内での韓国メーカー代理店のビジネスのやり方です。前回の記事を10月8日に書いて、会社も練習場の休みの今日に最終章を書こうと思っていたのですが、それに合わせたかのように(偶然だとは思いますが)、昨日まで、某メーカーの総日本代理店が「総代理店の真骨頂」と銘打ったセールを行いました。

価格自体は弊社や渋谷アーチェリーとそこまで変わらないものでしたが、まさに恐れていたというか、起きてほしくない事態が起きてしまったと感じています。特に「総代理店の真骨頂」という言葉は象徴的です。

私たちは代理店として業界でそれなりに評価されていて、近年新規メーカーとの契約で拒否されたことはほぼない(*)のですが、それは代理店として商品を適切な価格で販売しているからでしょう。説明として、代理店となったスカイロンのパラゴンシャフトを例にします。

*YOSTとは結べませんでした。

弊社が最初にパラゴンをリカーブ用として紹介し売り出しましたが、このときにつけた金額が13800円(2018年9月)です。もちろん商品が優れていることが一番大事ですが、商品の評判が良ければ、他のプロショップも当然この商品に目をつけ販売したいと思うでしょう。そのときに、私達が13800円で販売実績を積み上げている以上、同じような価格で販売して十分な利益を得ることができるかが、判断の基準です。

その後、渋谷アーチェリーなどがパラゴンの販売を開始します。ビジネスになると判断したのでしょう。競合するので、歓迎というわけには行きませんが、販売するプロショップが増えることはメーカーの成長につながるので、悪いことだとは思いません。また、競合が増えても、価格競争はせず、今も13800円です。

代理店として、メーカーと共に成長するためには、適切な価格で販売し、その商品の価値を維持することが求められていると考えています。近年、為替が100円~120円まで大きく動いていますが、弊社ではほぼすべての商品の販売価格を変えていません。セールも在庫の入れ替え以外ではしていません。これは長年のポリシーです。

代理店の真骨頂として、商品を安売りすることは出来ますが、それは禁じ手でした(と思っていました)。それを総代理店が、かつ、販売が継続している現行モデルで行ったことは驚きです。お客様にとってはより安く商品が手に入ることにつながるので、一時的にはいいことだと思いますが、長期的には販売するプロショップ、特に在庫リスクを抱えて販売するプロショップの減少につながることは間違いないと思います。

→ 弊社としては、このメーカーの価格が安売りされると前から予測していたので、近年少しずつ取り扱い商品数の削減、在庫数の削減を続けてきましたので影響は少ないです。今後も当分は取扱商品数・在庫数を増やさず、状況を見守ります。このようなメーカーが増えないことを祈るばかりです。

コロナの収束も見えてきたような気がしますが、2022年度からは普通にアーチェリーができる環境に戻るなら、アーチェリービジネスも2年間の我慢を終えて再スタートします。以上の書いたように、アーチェリー業界に身を置くものとして楽しみにしているところもあれば、心配しているところもあります。2030年ごろにまたこの10年間を振り返る記事を書きたいと思います。

終。


久しぶりの業界昔話3 – 定価の異常

記事の内容をまとめるために、副題つけました。前の2つも内容を見直して、副題つけます。先日、ふと従業員のメモを見たら、会社に対するクレームが…昨日、Windows 11への無料アップグレードが開始されましたが、会社にある一番性能の良いPCでも最小要件を満たしていないので…Wi-fiとPCのSSD化かな…がんばります。

さて、これまでに書いてきましたが、総合商社や国産メーカーが代理店業務から撤退したことで、大手のプロショップが代理店業務をすることとなりました。

プロショップの通常業務はメーカーや(直接お客様に販売していない)専業代理店(Distributor)から仕入れをします。それをコストと利益を載せて、定価としてお客様に販売します。弊社であれば、送料のかからない店頭納品では定価から割引をさせていただきます。通常の小売業、コンビニとか、スーパーとかはこの形になっています。新しいスーパーを作る時に近隣のスーパーから仕入れることはなく、メーカーか卸業者から仕入れるでしょう。

渋谷アーチェリーより 10/06時点

上のFLEXボンドを例にすれば、私達が500円で仕入れて、50%の利益を乗せて、750円で販売します(以降数字はすべて仮)。しかし、前の記事で書いたようにプロショップが代理店業務もするとなると話が変わってます。ルール(マナー)は2つあります。

1.代理店価格はお客様に販売する価格(小売価格)よりは安い。

2.代理店価格は率での契約。例) 定価 x 40% = 卸価格

ここで500円で仕入れたボンドを40%の利益をのせて、700円で卸販売したい場合、逆算すると、1750円を定価とする必要が出てきます。さらに、卸で買ってくれたプロショップに自分たちと同じ値段で販売すれば、100%の利益はとれますという営業(*1)をするために、自社の販売価格もそれにあわせなければなりません。なので販売価格は卸の倍の1400円とします。

しかし、実際の市場で流通している価格は750円ですので、この部分を独自のポイント還元で割戻することで、代理店業務と小売業務の両方を可能とする日本独自のシステムが誕生し、代理店業務も兼務するプロショップでは、定価と実質の価格が大きく乖離することとなります

海外のプロショップの見れば分かる通り、

通常 - 卸価格(500円) 実売価格(750円) メーカー希望価格(*1より 1000円) (*2実際は9.99ドル)

日本 - メーカー卸価格(同) 実売価格(同) メーカー希望価格(同) 

     プロショップ間卸価格(700円) ポイント還元後の実質負担額(750円) 販売価格(1400円) 定価(1750円)

というあまり正常ではな構造となっています。国産メーカー・専業代理店の撤退という歴史がない国では、このようなシステムが生まれる必然性がなく日本独自です(*3)。

*3 厳密に言えば海外にもあります。納品すべき一式の99%が揃って、1つだけメーカーにも代理店にもない時にプロショップ間取引は存在します。ただ、利益率はゼロに近いので、納期のための最終手段としてのみ存在します。

2000年以降に誕生したプロショップの多くはメーカーとの直接取引、専業代理店との取引がメインなので、あと10-20年も経てば、このような変な構造はなくなっていくのではないかと思っています。

続く。


久しぶりの業界昔話2。

前回では2000年代初めの混乱について書きましたが、ではその前はどうだったのか。アーチェリーすらはじめていなかった時代なので、推測も混じってしまいますが、アーチェリーの初期には、プロショップの人間は全員英語や海外取引に精通していました。そもそも、アメリカでアーチェリーをやっていた方たちが、日本に持ち帰ってきたので、当然でしょう。日本語ベースの情報すらない60年代には、そもそも英語ができなければ、プロショップの運営は不可能です。

そこから70年代に入ってから、三菱商事(写真の広告は1975年)のような商社がアーチェリーの輸入などをするようになり、このあたりから、商社と国産メーカーと取引していれば、それなりにプロショップの運営ができるようになり、70-90年ごろに日本語しかできないプロショップが次々に誕生していったものと考えています。プロショップを開業するハードルが低いことは、アーチェリーの普及には大切なことです。

しかし、アーチェリーブームが終わり、バブルが終わり、日本が人口減少期に入り、総合商社がアーチェリーの輸入から撤退し、国産メーカーもいろいろな事情によって次々に撤退しました。その後、大手プロショップが輸入(代理店)業務を代行するようになりましたが、関係がうまく行っているとはあまり言えません。

この部分をどう捉えるかは、人それぞれですが、1000円でメーカーから仕入れたものを、英語・国際取引に関わる部分をすべて代行して、国内のプロショップへ2000円で販売するという商取引が、ボッタクリ=暴利なのかは、正直私にはわかりません。高すぎるなら、英語と国際商取引の勉強をすればよいだけです。年商1000万円のプロショップなら、それだけで年200万円ほどは節約できるでしょう。その労力を天秤にかけて、お金を払う方を選ぶのなら、まぁ、その価格は適正ということでしょう。

他人が自分に変わって自分のダイエットを管理してくれるライザップの料金が高いと思うかと同じようなものだと思います。自己管理ができる人なら、暴利だと思うだろうし、その仕組でダイエットに成功している人はきっとその価格に納得しているのだと思います。

JPアーチェリーを始めるときには、アーチェリーの実力はそれなり、英語の能力もそれなり、その前はエンジニアをやっていたのでシステムの構築の能力もそれなり、そして、アーチェリーショップでの業務経験もそれなり、どれ一つを尖った能力はありませんでしたが、それらを全部自分でできるということは、海外(英語)からアーチェリー用品を輸入して(ショップ経験)、それをレビュー(アーチェリーの実績)して、ネットで販売する(システム構築)プロショップを自分だけ運営できるということです。当時の試算では、自分の家を倉庫にすれば家賃もかからないので、月の売上がかなり少なくても、持続可能という結果になり、それが後押しとなって、JPアーチェリーを創業しました。

続く。