ホイットターゲットが限界のCam & 1/2 システムから撤退へ

一部のハンティング・低価格モデルを除き、ホイットが長年の伝統だったCam & 1/2 システムから撤退します。

2025年のターゲットモデルはすべてSCTRカムに移行し、長年のホイットの伝統だったリムに直接ケーブルを接続する方式が廃止されるのにはびっくりしました。一点、理論は理解しているつもりですが、このタイプのシステムを長い時間向き合ってチューニングした経験が私にはありません。が、このタイプの弓を長年使用してきたアーチャーが蓄積してきたチューニングのし知識・ノウハウが価値を持たなくなるのは残念です。

多くの既存顧客にとって全く新しい技術であると感じたからか、ホイットとしては珍しくチューニング方法を含めた技術資料を同時に発表しています。

A.Iはホイットは厳密なスピード測定をしているので他社と同じスピードでも実際は速いという説明。

A.IIはATAは数字上ではブレース時の値ですが、ハンドルを長くし、リムがたわむ量が少なくなったことで、フルドロー時のATAが大きくなります。そのことにより、同じATAの全モデルよりも、弦の角度が大きくなり、フルドロー時の目のピープの距離が近づくことになります。これによってアンカーポイントとエイミング時の快適さを得ることができるとのこと。

A.IIIはブレースハイトについて、議論は尽きないが、テストの結果として最適な数字が存在するわけではなく、それは好みであり、それぞれのアーチャー固有のドローレングスに大きく左右されるので、23.5インチから対応するショートドローのFXで6.25インチ、中間の37インチモデルでは7インチ、26インチから対応する40インチモデルでは7.25インチに設定されています。

A.III は重量配分の見直しと軽量化(0.2ポンド=約100g)により、数値上よりも多くのテストシューターは軽く感じる設定になっていることと、他社ですでに採用されているように、通常のセンタースタビライザーブッシングよりも、5インチ下・2インチ前方に新規に設けられます。

B.I いよいよ肝心のSCTRカムシステムの説明です。また、カム&1/2と違い、このタイプのカムは良くチューニングしたので、知っているカムシステムですね。今回の新モデルは、長らくホイットではなたった専用の新規設計のハンドル・リム・カムの全とっかえです。このあたりは、なかなか正直に説明されていて、

ホイットカム&ハーフシステムの成功は疑いようがありません。ホイットが特許を取得したこのカムシステムは、競技アーチェリー最高レベルで数えきれないほどの勝利をもたらしました。SVXカムはカム&ハーフシステムの最後の改良版であり、近年、競技の最前線にありました。このシステムを変更するという決定は、ホイットとその経験豊富なエンジニアチーム、そして競技アーチャーたちにとって、軽々しく下せるものではありませんでした。しかし、SVX カムは設計上の改善の限界に達していました

新規に設計されたSCTRカムシステムはより簡単に多様に設定を可能にできるよう設計されています。

B.II モジュールについて。以前にはカムで選択されていたドローイングの感覚の調整はモジュールで選択できるようになります。3インチ幅の中でドローイングレングスを調整可能でソフトなウォールの感覚を持つ「CDM」と、同じドローレングスでも、最大でCDMモジュールより5fps速い、調整不可でハードなウォールを持つ「SPEC」モジュールの2つから選択することができます。

B.III レットオフについて。ドローストップを現在ホイットではモジュールフットは読んでいるようです。まぁ、役割ではなく、モジュールの末端にあり、位置として呼べば「フット」なのでしょう。通常は5%刻みでの調整(65/70/75)ですが、オプションのフット(TWEENER FOOT)で、2.5%刻みの調整が可能になります。これは60ポンドモデルの場合、レットオフは1.5ポンド刻みで調整できるということです。また、上下を入れ替えることで、ケーブルへの接触位置を変更し、ウォールの感覚も調整できます。2.5%の調整はドローレングスに1/16インチの違いを与えます。

B.IIII はどのメーカーも主張しているトルクに対しての影響を受けにくい設計にしましたよというお話。

コンセプトX (Concept X)はストラトスに比べて、SVXモデルで27%、HBTモデルとの比較で13%静かになっています。また、振動に関しては35%減を記録しています。これはちょっと驚きの数字ですね。私はホイットの弓は音も振動も大きいので、選択してこなかったのですが、コンセプトXのこの数字は他社ユーザーにも魅力的ではないでしょうか。まぁ、カムシステムが他社と同じ様になったわけですから、乗り換えもしやすいと思います。

B.V は弦について。カスタム弦が一般的になってきた中で、ホイットは標準弦についても、新しい製法を取り入れて頑張っていますが、今回はかなり詳細にスペックを公表してきていて、カスタム弦を発注する側にとっても価値のある情報かなと思います。

(一番左と右の組み合わせではケーブルがカムにこすれる可能性があるので確認を)

B.VI はチューニングガイドです。従来のリムにかかっているケーブルでカムの傾きの調整をすることはもうできないので、完全にワッシャーの入れ替えだけでチューニングする必要があります。PSEのような簡単にできるシステムはなく、ボウプレスが必要です。

また、私はやったことはないのですが、このチューニングはカムの位置を左右に変えるものですが、ホイットはわざわざ注意書きで、上下のカムの位置を一致させる必要しないとしています。これはなかなか興味深いノウハウですが…試してみる機会は当分ないので、調整してなにか得た人がいたら教えてくれたら嬉しいです。

上のチャートはでは赤・黒・グレーの3種のスペーサーがあり、一緒に移動させるのではなく、上をまず移動、それで改善しない場合は下を移動というふうして、上下をいっぺんには変えないというチューニング方法が紹介されています。

非常に楽しみに弓ですね。

HOYT 2025、TLAにて取り扱いますのでぜひお問合わせください。

HOYT Archery Concept X Complete White Paper(PDF 11MB)

改訂しました。アーチェリーの理論と実践

*2013/5/20投稿(旧題 古いこと)、2023/3/19に加筆して再投稿

(加筆) ボジョレーの2016年を2023年に飲みましたが、熟成させることもできるのは本当みたいです。さて、現在の射形のベースとなっているスタイルを完成させたホレート・フォードの著作を2013年に翻訳しましたが、この10年で手直ししたいところ、解説を入れるべきところを、解説付き改訂版として再編集しました。下記リンクからダウンロードできます。(加筆ここまで)

【改訂版】アーチェリーの理論と実践 – The Theory and Practice of Archery ホレース・フォード 著 (PDF 3MB)

(以下、2013年の5月の記事ですので、最近の話ではありません)

長くブログを書いているといろいろな反応が返ってきます。誤字脱字はともかく、今でも覚えているのは、ミザールハンドルを間違って「アルミ製」と書いてしまったことなどで、お叱りを受けて直ちに訂正しました。逆に、正しいことを書いていてお叱りを受ける記事もあります。中国工場の製作技術の低さを批判したところ、それを売っているショップが自作していると勘違いされた読者が、作り手に対して経験不足と評したことを、大先輩でもあるベテランの販売店に対して経験不足と言ったと受け取られ、お叱りを受けました。

正しい知識もあれば、間違っている知識もありますが、一番怖いのは、正しいと思い込んでいる間違った知識・情報ではないかと思います。今回、コメントを頂いたのでお客様の間違いを正すことができましたが、コメントを頂かなければ、すっど勘違いで私が批判される事態が続いたのかと思うと…恐ろしいです。

単純に自分が間違ったことを書いてしまったなら自己責任ですが、受け取り手の勘違いによって思わぬトラブルや批判が生まれるのはなぜか。アメリカやヨーロッパでは、自分がやろうとしているような弓具の評価・レビューというのは当然の様にアーチェリー雑誌に掲載され、広く読まれています。欧米人にできて、日本人にできないはずはないでしょう。その違いはどこにあるのかと考えたのが、2月。

そして、「古いこと」…つまり、それは歴史があるのかないのか、正確には歴史が語られているのかどうか、そこに違いがあるのではないかと思うようになりました。欧米のアーチェリー用品のレビューには、1920年代から積み重ねられた知識と常識があり、レビューをする人間はその文法・文脈にのっとり、発言しているからこそ、誤解されずに、正しい情報が流通するのではないかというのが自分の現在の仮説です。対して日本のアーチェリーのメディアの多くの商業主義に上に成り立っているものです。商業にとって歴史は積み重なるものではなく、流れていくもので、過去はむしろ邪魔です。

有名な話ですが、これはボジョレーの毎年の”自己”評価です。

1995年「ここ数年で一番出来が良い」[1]
1996年「10年に1度の逸品」[1]
1997年「1976年以来の品質」[1]
1998年「10年に1度の当たり年」[1]
1999年「品質は昨年より良い」[1]
2000年「出来は上々で申し分の無い仕上がり」[1]
2001年「ここ10年で最高」[1]
2002年「過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄え」「1995年以来の出来」[1]
2003年「100年に1度の出来」「近年にない良い出来」[1]
2004年「香りが強く中々の出来栄え」[1]
2005年「ここ数年で最高」[1]
2006年「昨年同様良い出来栄え」[1] (ウィキペディアからの引用)

さあ、どれが一番いい出来だかわかりますかね…「エスキモーに氷を売る―魅力のない商品を、いかにセールスするか」なんて本が出版されるくらいですから、商品にとって、マーケティングが全てなら、過去の話(歴史)を蒸し返されては、いろいろと困ることは想像できると思います。

日本ではアーチェリーの歴史がまとまった形、整理された形で存在しないことをいいことに、勝手に書き換えられたりしています。例えば、私たちも行っているハイスピードでの弓具の研究は、日本のヤマハが初めてだと某雑誌の記事には書かれていますが、アメリカでは1930年代から行われており有名な話です。その研究を1930年代に始めたの現在の弓具の形を作ったヒックマン博士です。ホイット氏(HOYT創業者)は彼に感謝の手紙を送っています。また、同時期には和弓の世界でも、旧海軍兵学校の協力のもと、120fpsで弓の動きを撮影し、弓の研究が行われていました。どちらも80年以上前の話です。

日本での戦前の研究は「紅葉重ね」でその写真を見ることができますし、ヒックマン博士は「Hickman: The Father of Scientific Archery」という伝記が英語で出版されているほどの有名人です。

現在のアーチェリーは19世紀の後半から、脈々と続いてきたもので、多くの研究によって進歩してきたものです。メディアにアーチェリーの記事を書くほどの人達が、これらの常識を知らないとは思えません。日本人には知られていないのをいいことに、商業的に歪曲しているのでしょう。

5月にホレース・フォードの本を翻訳したのをはじめ、ホイット氏のインタビューの編集など、弓具のレビュー以前に取り組むべきことがあるように感じます。

欧米にあって、日本にはない(と自分は感じる)のは、今に続く歴史を知っているかの差、そして、正しいアーチェリーの歴史を語ることで、日本でもそのようなものが、時間はかかっても熟成していくのではないかと思っている今日この頃です。

ホイット Formula XDハンドル入荷

本日ホイットの新作ハンドルとコンパウンドが入荷しました。新しく追加されたリムポケットダンパーとリムポケットウェイトです。長いリムポケットを生かした設計。

リムポケットウェイトは2つ付属します。

一つ大きな変更点は今まで同梱されていたマニュアルが付属しなくなりました。一枚の薄い紙が入っており、法的事項・注意事項のみ書かれていて、左上にあるQRコードを読み取ってマニュアルをダウンロードするやり方になりましたのでご注意ください。

Product Manuals – Target Recurve

上記のリンクからもダウンロード可能です。2022-2023のマニュアル近く翻訳予定です。

追記: 翻訳しました。(8/30)

HOYT2023 Formula XD ハンドル発表。

先日、Formulaシリーズとリムの終売を発表したホイットが新しいモデルを発表しました。事前情報通り、終売になっていなかったXceedは2023年にそのまま移行です。

新しいモデルはXシリーズの名前をそのまま継いでいるので、機能はほぼXiのものを引き継ぎ、ライザーウェイトのみ、XDでは使用できません。その代わりにリムポケットのサイドではなく、センターにウェイトを入れるPerfect Balance Weight Systemが採用されています。

また、リムポケットにはダンパーも標準で取り付けられていて、かつ、重さはXiとほぼ同じです。このリムポケットの設計(リムボルト+ウェイト搭載+ダンパー+センター調整機能)は長さがあるフォーミュラーだからこそできるもので、リムポケットの長さを生かした他社には”物理的に”真似できない設計です。塗装はXiの後期モデルと同じセラコート塗装です。

6色展開ですが、ピンクが結構個性的な塗装になっているのかなと思います。来週実物が入荷するので、また、取り上げたいと思います。

HOYT Formula-XD ハンドル

HOYT Formula-Xi / Velos 終売に。

先日のコンパウンドラインに続き、リカーブラインでも、Formula-XiとVelosリムの販売終了すると発表されました。それぞれ在庫品に関しては値下げして在庫限りで販売します。

新商品の発表を心待ちにしているのですが、昨日発表されたのは…上位モデルではなかったですね。

HOYTのエントリーモデルのコバルトに関しては販売価格がミッションのSWITCHと同じくらいなるに、より優れている部分がほぼないので販売予定はありません。取り寄せは可能です。

リカーブで新しい構造のリムが発売されるのは確実ですので、ご期待ください。

HOYT Formula-Xi ハンドル

HOYT Velos バンブーリム

エリソン選手も試作品をゲットした模様で。

先々週のワールドカップステージ1、こちらは通常のベロスリム

公開されているアカウントへの投稿でしたので、記事にしました。エリソン先週のインスタより。明らかにステージ1に使用していたVelosリムとは違う構造のリム&リムの表示も手書きのものをこれから使うとのこと。10月発表が恒例なので、どんなリムを出してくるか楽しみです。

ケーシー(Casey)選手、新型リムをテスト中??

リムは全部べロスですが、左だけラミネートが違いませんか? (クリックすると拡大します)

先日アメリカで行われたアリゾナカップ、一応アメリカのローカルな試合なのですが、コロナ前は海外選手も多く参加する大きな大会でした。ただ、現状まだ海外からの参加は少なく、今回もアメリカのトップ選手が上位を独占しました。

実績を残した弓もリカーブ部門に限って言えば、ホイットでした。ケーシー選手が使用したリムもVelosリムなのですが、側面がバンブーコア(竹なので白く見えます)ではなく、黒(なので天然素材のコアではないかと)く見えません?

ホイットが新しいリムの発売前に、中身が違うリムを大きな大会でテストするのはよくある話なので、これからワールドカップも始まりますので、Velosの断面に注目してみるのも面白いかもしれません。初戦は来週のトルコです

テストしているくらいなので、確実に発売されるとは限りませんが、10月の発表が楽しみです。

ホイット(HOYT)の2022年セラコートモデルの出荷始まる。

左がセラコートスレート、右がセラコート黒

2月中頃にホイットの2022年セラコートモデルの出荷が始まり、弊社にも入荷しました。フォーミュラーXiハンドルは入荷したものすべて売り切れ、Xceedの方は黒とスレート1台ずつ在庫であります。Xiについてはいくつか問い合わせがありましたが、次回入荷は3月末予定の第2回分の出荷になるかと思います。また、ホイットの2022年モデルのアルタスFXも週末に届く予定です。

以前の記事に書いた近年アメリカのトップ選手に人気が出ているQ2iベインが入荷しました。良いベインだと思いますので、近日販売を始めたいと思います。取り扱いモデルはZEON FUSION X-Ⅱ2.1です。一番の特徴は赤いラインを引いたベインのトップにファイバーのような蛍光加工( fiber optic edge glow)がされていて、暗い場所でも矢の確認がしやすくなっているところです。

【追記】ホイット(HOYT)ターゲット新色発表、今後の納品から切り替え。

【追記】1月12日に新色の加工はセラコート(Cerakote)になるとの連絡がありました。

昨日、突然連絡があり、2022年より新色になるという連絡とともに、昨日時点での全注文の色変更、つまり、現在納品待ちのお客様は発注日に関わらず、すべて新色で納品されるとのことでした。

ただ、色見本を見る限りでは、黒、白、BEエディションでは変更はなく、お客様に影響はないものと思われます。下記の色では色味が変更されます。

写真上が現在の色、下が、2022年の色となります。スレートが少し濃く、青と赤は鮮やかになります。全アルマイトカラーのモデルが対象で、コンパウンドとリカーブの両方で変更されます。

詳細なモデル名は

Slate Satin → Slate

Championship Red Satin → Podium Red

Cobalt Blue Satin → Charger Blue

となります。

全色の新色はホイットのホームページで確認できます。

HOYT ターゲット 2022新色

ホイット2022年唯一のターゲット商品、アルタスFX

昨日、ホイットの2022年の発表があり、ターゲットとしては唯一アルタス(Altus)FXが発表されました。アルタスは38インチのバランスの良い競技用モデル(328fps)ですが、こちらはATA35.75インチで337fps(SVXカム)のハイスピードモデルになります。

ドローレングスは22.5インチから用意されています。弊社ではSVXカム/60ポンド/26.5″-27.5″ (Cam 3)を即納用として発注しています。1月頃の入荷を予定しています。

ハンティング用のカーボンモデルでは、ネジ穴無しでレストを取り付けるIntegrate Mounting Systemをサイト側にも採用しついにハンドルから、リカーブで言うプランジャーホール、サイトマウントホールがなくなりました。なんか未来の弓って感じですね。その分、サイトもレストも安い選択肢はなく、一式で揃えるとえらい金額になります…インフレってやつですかね??