復刻ドインカーAボム…続々と入荷

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ゴールデンウィークの連休の間の平日で、昨日関税から出た荷物が続々と入荷しています。
まずは、ドインカーの復刻Aボムダンパーです。発売は…いつだったでしょうか…少なくとも10年前にはありました。当時(10年前)は圧倒的に硬く振動吸収が優れており、センター用のダンパーといえば、このAボムでした。
3年前にドインカーがAVANCEEなどに搭載されているカプセルタイプのダンパーを開発し、Aボムの製造を止めてしまいましたが、2013年のラインナップで復刻されました。確認しましたが、前のものからマイナーチェンジしたところはないと思います。
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34gで重量感があり、ゴムの硬さはV-ZEROとほぼ同じですが、使用されている量が違いますので、センターなど高い負荷がかかる場所では、今でも優れているダンパーだと思います。

アンカーの発明者 ホレース・フォード

アンカーの発明者 ホレース・フォードによって書かれた「アーチェリーの理論と実践」の翻訳を少しずつアップしていきます。5月中には全部アップできるはずです。現在第2章の編集中です。
ホレース・フォードという選手は19世紀最強の選手で、その記録は70年間破られませんでした。周りのアーチャーが700点台をうっていた中で、なんと、1251点という点数をマークし、10年間イギリスのチャンピンとして君臨します。
その革新的なところは何と言っても、アンカーを発明したことです。それまで、アーチェリーの世界にアンカーはありませんでした。イメージとしては、和弓のようなうち方をしていました。アンカーの発明に関して、アーチェリーの歴史家のロングマンは次のように書いています。

 


フォード氏の成功の大きな要因の一つは、長年信じ続けられてきた「アーチャーは耳まで引いてくる必要がある」という慣習の欠点を認識したことにあると考えられます。実際耳まで引いてくると、矢の一部分が目から的の真ん中までを結ぶ直線の外側に来ることは明らかです。結果として、もし矢の先端が金の先を狙っているとしても、リリース時にターゲットの左側に向かって放たれることになるので、耳まで引いてくるアーチャーがターゲットにちゃんと当てるためには、ターゲットの左側を狙う必要が出てくるはずです。そこでフォード氏は、矢はエイミングしている目の下に来て、矢線全体が目とターゲットを結んだ垂直面の直線上に来るようにしなければならないという理論を提唱しました。

 

…中略

 


戦闘を目標とした場合、最も重視される点は長く、重い矢を引くことです。1ヤード(91センチ)ほどの矢を使うとしたら、アーチャーの腕がものすごく長くない限り、目を通り越して引くことは必然になってきます。それによって、命中の精度は下がりますが、戦闘では的中の精度よりも威力が重視されていたので、フォード氏は、エイミングの精度が求められる現在のスポーツとしてのアーチェリーにおいて、そのような古い慣習はもはや必要ないと判断したのでしょう。

 


今から150年前に書かれた本ですが、学ぶことは多いと思います。皆さんのアーチェリー生活の参考になれば幸いです。


アーチェリーの理論と実践 / ホレース・フォード 著

 

GMXとFormula RXは2013年4月からマイナーチェンジ。

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新しくHOYTから出荷されたものが届いてきましたが、GMXとFormula RXに使用されていた従来のミドルグリップにかわって、4月出荷分からハイリストグリップが標準装備になりました。
今後、ハイリストグリップで納品されますので、ご注意ください。
また、従来の標準グリップ(ミドルグリップ)は…たぶん在庫限りです。一応、若干HOYTから納品されていない注残があるので、もしかしたら、少しは再入荷するかもしれません。

古い本の収集

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昨日、人類学の院試を控えたスタッフと話し、アーチェリーの古い本の収集を始めることにしました。
日本で現在のアーチェリーがはじまったのは戦後ですが、日本には現在の弓が完成した形で伝わってきたようで、アーチェリーの弓具の進化の歴史についての、(知っている人はいると思いますが)完成された形の記録が日本にはありません。
個人で所蔵している方はいらっしゃるかもしれませんが、国立国会図書館でも戦前に出版されたアーチェリーの本はないです(何冊かありますが、どれも文化的な視点からみたアーチェリーの本です)。
もちろん、今の弓は突然完成されたものではなく、30~40年代のロングボウ安定性の改善(ハンドルが生まれる)、材料工学の点からのリムの合理化(平たいリムの誕生)、トルコ弓の”発見”(イスラム文化学者には昔から知られていたが、ついに弓職人がそれに気づく)によってコンポジットとリカーブという2つのトルコ弓の特徴を取り入れて、やっと現在の弓が完成します。
日本にない本を世界中からかき集めて、このあたりの歴史をもう少し詳しく理解できたらと思っています。
写真はアーチェリーの業界団体(ATAの前身、AMDA)を作ったラリー・ウィフェン(Larry C. Whiffen)さんの本から。「自分の弓を作ってみよう」という授業。読んでいると自分でも弓が作りたくなってくる…しかし、一番左の彼、木工作業しているのに、ほぼ正装??…作るところから紳士のスポーツだったようです。木くずだらけになって奥さんに怒られないのだろうか。

ほんのちょっとした工夫…SF NEW Tゲージ

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SFの新しいTゲージが入荷しました。まぁ、ほんのちょっとした工夫を2つ。でも、結構便利だと思います。これまで販売していたカーテルのTゲージは値下げしました。結構在庫残っていますが、在庫限りで販売終了します。
最初の工夫は…目盛りが読みやすくなりました。上の比較写真はこれまで弊社で販売してきた、また、日本国内で一番売れているカーテルのもの。見やすさの違いは説明するまでもないでしょう(銀色のゲージは赤で着色されています)。
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次の工夫は2か所から正しく値が測れるように、目盛りを左右でずらしています。1は弦からの距離(クリップを使用するとき)を測るとき用の目盛り。プランジャーチップまでの距離などを測定するときのためのものです。2はゲージエンドからの距離を測るとき用の目盛り。ティラーやブレースハイトなどを測定するときのためのものです。
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もちろん、インチ・ミリの両方の目盛りがついています。これでカーテルのTゲージと同じ値段です。どちらもちょっとした工夫ですが、どちらも利便性は高いかと思います。
-追記
最近忙しくしていたら、いつの間にか、アクセス数(累計)が150万アクセスを超えました。本当にありがとうございます!!!
これからも頑張ります。

Carbon Express 2013 ついにプロトタイプから製品に

まず最初に断っておきますが、現在、トップアーチャーのほぼ全員がイーストンのシャフトを使用しており、その性能をかなり良いものです。よく、トップアーチャーはお金を貰ってイーストンのシャフトを使っていると勘違いしている人がいますが、イーストンの優れた作戦は、そういったところではなく、非常に優れた高性能のアルミシャフトをかなりの低価格で販売することで、アーチェリーを始めた時からイーストンのブランドに親しみさせ、そのまま、上記モデルに乗り換えてもらうというものです。
そのため、競合他社では上位モデルでイーストンよりいいものを作ろうとする会社は多くあるものの、イーストンが廉売しているモデル(XX75など)でイーストンと同等の性能で同等の価格で販売する(もしくは、することを試みようとする)メーカーは、現状存在しません。
その上位モデルでの競争に多いて、唯一イーストンと戦える段階まで来ている(2012オリンピックでイーストン以外で唯一金メダルを獲得)、カーボンエクスプレス(CX)がターゲットモデルとして新しいシャフトを発表しました。
3年前の2010年から、このプロトタイプの話は聞いていました。イーストンは上位モデルで樽型(真ん中が膨れている)デザインを採用していますが、本当にこれが最も優れた答えなのだろうかという疑問は昔からありますが、しかし、中央に重さがあり、両端が柔らかく、中央が硬いシャフトのほうがグルーピングがよいのも確かです。
この事実から、新しい可能性を考えると、CXでは、逆樽型シャフト(外側はストレートで内部に厚みの変化を持たせている)を開発してきました。2010年から3年もかかったことを考えるといろいろあったのでしょう。ずっとは進展していなかったので、プロジェクト自体消滅したものだと勘違いしていたほどで…。
X10とACEはインナーコアにアルミを使用していますので、自然に(外側)樽型シャフトデザインになります。イーストンの人に聞いても、これが最高だといいますが、”樽型”シャフトが最高だということは正しいですが、考えてみれば、それが外側に膨らんでいる必要性はあまりないのではないかと思います。
3年間かかったCXの新しいシャフトにぜひご期待ください。また、これまでコンパウンドでしか販売してこなかったCXのシャフトですが、テストの結果がよければ、リカーブでの取り扱いも考えているところです。
2013年新商品(5~6月発売)

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(取引先のランカスターの写真を引用)
CX Nano-SST 30トン・カーボン 100% || Straightness +/- .002” || Weight Tolerance +/-1.0 grain || Spine Select Tolerance +/- .002”
CX Nano Pro X-Treme 46トン・カーボン 100% || Straightness +/- .002” || Weight Tolerance +/-1.0 grain || Spine Select Tolerance +/- .002”

Doinkerが新しいブランドを正式に発表

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2月末にこんな記事を書きました。要約すると、もともと、お店を始めた時からアメリカのスタビライザーメーカーとしては、ドインカーを扱って来ましたが、最近の新商品(特に2013年モデル)は値段が上がるばかりで、根本的な革新がないということにちょっとがっかりしました。
そこで、1月から最新のデザインでアメリカで勢いがあり、ドインカーがないものをもっているビー・スティンガー(B-stinger)社と代理店交渉をはじめて、2月末に代理店となったタイミングで、ドインカーがビー・スティンガーと同じようなコンセプトの新規ブランドを発表してびっくり…早く言えよ(まぁ、言えない事情は分かるが)…という記事です。
3月に詳細が出るといっていたのですが、3週間くらい遅れで、本日詳細が発表されました。
先端の構造はビー・スティンガーのデザインに、FIVICSのウェイトダンパーを足したもののようです。
ただ、詳細は発表されていませんが、最近のロッド自身に振動吸収をさせるというトレンドにのっかり、このブランドのスタビライザーは内部にゴムを内蔵しており、その部分にウェイトを取り付けているそうです。発射時の振動で中のウェイトが移動し、ロッドの重心・バランスに変化をもたらすことで、ロッドの一定した振動パターンを崩し、振動を無くすというコンセプトのようです。
アイデアとしては、昔からあったと思いますが、このような機構を持ちながら、かつ、何万射・何十万射に耐えるものを作ることは大変困難なために(普通のゴムダンパーなら劣化したら交換すればいいですが、内蔵ダンパーは壊れたらロッドが使用できなくなります)、現実に発売されて、成功したものはほぼないので、今度こそドインカーの新作には期待です。
納期は全くの未定…このペースだと夏くらいに入ってくればいい方かなと思います。

ブローネルのRHINO(ライノー)はやっぱり硬かった。

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ブローネルの2013年の新作RHINO(ライノー)弦をテストしてみました。硬く伸びない弦の愛用者、そういった弦をご希望のお客様に紹介できるのかなと思い発注してみました。
開発の経緯は以前の記事に書きましたが、150ポンド~160ポンドが一般的なクロスボウ向けの原糸です。
火曜日に16本弦を手作りし、一晩弓にはった状態で伸ばしました。ハイトの変化は1/16でした。まぁ、この部分は原糸が伸びたのではなく、手作りした分がストレッチしたものと思われます。
完成した弦(164-16)の重さは重さは94gr(グレイン)でした。ちなみに、Spectraの黒ワックス(163-18)が101.4gr、8190 ユニバーサル (163-18)が 87.8gr ですので、その中間にあたる重さです。
ワックスはほぼついていません。若干感じられるワックスもペタッとする感じではなく、さらさらしたワックスになっています。16本弦と細めのセンターサービングか14本弦で、イーストンのSサイズノックにフィットします。
うった感じはやはり硬いです。さすがという感じがします。8190弦との比較でも硬いので、現在市場に出ているものの中で、最強という事前情報はほぼ正しかったと思います。柔らかさが全くなく、厚めのタブがほしいくらいの感覚ですので、すべてのお客様にお勧めできるような弦ではないと思います。
入荷した分で余った材料で何本か作れますので、硬い弦に興味がある方向けに在庫にあげました。数量限定というよりは、期間限定にしようと思います。まだ、10本くらい作る量はあるそうです。
注文はライノー弦を注文した頂いたのち、こちらのスタッフがお客様にサイズの確認をさせていただきます。色は黒だけとなりますが、サイズはご自由に指定してください。14本弦からお作りました。お勧めは14本か16本です。
ライノーの原糸がほしい方は取り寄せとなります。連絡いただければ、手配させていただきます。納期は色次第ですが、価格は4800円です。

現代アーチェリーの歴史…その一

(ちょっとしたメモ書きです)
先日、アーチェリー雑誌に弓具に関する技術的な文書を投稿したところ「その程度の研究・知識がある人間は日本に山ほどいるんですよ」と諭されました。自分がこの記事に書いていることは、常識レベルにちょっと毛が生えた程度のようです。
まだまだ、勉強が足りないことは理解していますが、それでも、ブログを読んでくれている方に、次の日の射場でネタになるような話が書ければと思います。また、ネット上に上がっているアーチェリーの情報が少しでも豊富になっていくことを願っています。
弓具に対する考え方のことで、ちょっと迷った部分があり、アーチェリーの歴史をもう一度おさらいしています。歴史といっても、弓が出現した時代の話などではなく、現代の弓具の始まりについての歴史です。英語では多くの文献があり、ネットで読めるものも多いのですが、日本語で正しく記載されているものは見つけることができませんでした。
まだ手に入っていない本が何冊かあり(アマゾンで新品が13万円の値段ついていたりして)入手しようと頑張っているのですが、これまでの理解を一度まとめてみたメモです。


進歩の始まり

まず、スポーツとしてのモダンアーチェリーはイギリスではじまりました。その様子は、当時イギリス国内で無敵の成績を誇った、Horace A. Ford(*)の著書「Archery, its theory and practice」(1859年 著者死後133年のため著作権切れ)などで知ることができます。
*11度のイギリスチャンピオン。1857年に記録したタプル・ヨークラウンド – 100ヤード(91m)で12エンド、80ヤード(73m)で8エンド、そして60ヤード(54m)で4エンド – の1271点というスコア70年間破られていません。
その後、アーチェリーはアメリカにわたります。アメリカでベストセラーになった最初のアーチェリー本は「The Witchery of Archery」(1878年 著者死後112年のため著作権切れ)というもので、こちらはターゲットではなく、ハンティングについて主に書かれた本でした。その後、著者は初代USA ARCHERYの会長に就任。これによって、アメリカではターゲットよりも、ハンティングアーチェリーのほうが大きく発展していきます。
ここまで書くと、アーチェリーの弓具はハンティングがメインのアメリカではなく、イギリスで発展するように思われますが、イギリスの弓具の職人はデザインや仕組みを研究することより、それらを与えられたものとして考え、素材の選別する能力や木材の乾燥技術を高度化させることに専念したため、イギリスでは新しい今日のような弓は生まれませんでした。
アメリカで現在の弓が生まれた最大の貢献者は、ヒックマン(Hickman)博士です。そのほかに共同研究をしていたクロップステグ(Klopsteg – サイトの発明者 – US1961517)などがおります。
彼らは最初は個別に研究し、当時のアメリカで唯一のアーチェリー雑誌(Ye Sylvan Archer)に互いに投稿し、高めあっていきました。
ヒックマン博士は当時かなりの変人扱いを受け、馬鹿なマスコミに叩かれていたゴダード博士(*)とともにロケット研究をしていた人物で、その中で得た砲内弾道学(発射してから砲身内での弾頭の振る舞い)と、砲外弾道学(砲身から出た後の弾頭の振る舞い)の知識をアーチェリーに応用して、アーチェリーの研究を進めました。
*ニューヨーク・タイムズ紙は、物質が存在しない真空中ではロケットが飛行できないことを「誰でも知っている」とし、ゴダードが「高校で習う知識を持っていないようだ」と酷評した。(ウィキペディアより引用)…怖い時代だったんですね。。
ここから、アーチェリー弓具の進歩が一気に進みます。


ハンドルとリム
20世紀初旬のアーチェリーで使用されていたロングボウと、現代の弓との大きな違いは、ハンドルのデザインとリムのデザインです。
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リムは現在のような長方形の断面ではなく、楕円のような形の断面でした。楕円形の棒を弓として、そこグリップを張り付けることでロングボウを製作していました。弓全体がリムの役割り果たしているため、リムはとても重く、逆に弓全体は軽く、シューティング後には弓全体が振動し、押し手に大きな反動があり、とても不安定な構造の弓です。さらに、物理的にも不安定な構造をしているために(後述)、弓を破損を防ぐ意味合いでも、弓を短く作ることができず、さらに、矢とびをきれいにするためには、下リムが上リムよりも2インチほど短く作られています(和弓と同じ)。
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(写真上は1850年代のロングボウでスミソニアン協会の年次レポートより、下の写真はBear Archeryの現行モデルパトリオット)
ロングボウが作られてから、30年代のアメリカで進化するまでの間に、ハンドルは少しずつ変化しています。グリップの部分はますます重く・長く・硬くなり、初期のグリップ(3~4インチ)から、今日のハンドルと呼ばれる部分(20インチ程度)に少しずつ変化していきます。これは。職人が弓の発射時の反動を減少させるための工夫でしたが、これによって、弓(bow)における握る部分(グリップ)にすぎなかったものが、ハンドル(handle)と呼ばれるようになり、さらにリム(limb)と呼ばれる部分が明確に定義できるようになります。
そして、1930年代に、ヒックマン博士がリムを進化させます。ロングボウのリムの分析・解析をした結果、物理学的に見てロングボウのデザインはあまりにも、非効率的だということが判明します。下にその理由を書きますが、難しい話なので、とにかく、丸いリムは非効率だと理解していただければ、飛ばしていただいてもよいです。
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写真(スミソニアン協会年次レポートより引用)はロングボウのリムの断面です。Bellyと呼ばれる側は、現在ではフェイスと呼ばれる側です。CDのラインはリムのデザイン時に、ニュートラル・レイヤーと呼ばれるものです。
リムがフルドローまで引かれるとき、リムのバック側は引っ張られ(引張)、フェイス側は圧縮される。そのとき、リムの中に引っ張られも、圧縮もされない中立軸(ニュートラルレイヤー)が存在します。ずれこむ力(わかりやすく言えば接着の剥がれやすさ)が最大になるポイントでもあります。
単層のウッドで弓を作ることは当時でもあまりなかったことですが、もし、リムがラミネート(多層)ではなく、単層だった場合、ウッドでは、リムのニュートラルレイヤーはリムの真ん中ではなく、かなりバック寄りになります。これは、ウッドが引っ張られる力と圧縮される力に対して、同じように反応しないためです。詳しくは、もうお手上げなのですが、ウィキペディアによれば、ウッドの圧縮強さは引張強さの1/3程度だとのことです。
単層であれば、これで話は終わるのですが、多層のウッドを張り合わせてリムを作るとき、使用されるウッドの物理的な特性をすべて生かすことは難しいということになります。また、当時の技術では断面が円の場合に、どのように素材を配置すれば、フルに性能を生かすことができるかシミュレーションすることも困難でした。
そこで、博士は現代では一般的な長方形の断面でリム(ニュートラルレイヤーの計算はかなり楽)を作り、そのリムを先端に行くにつれてテーパーさせる(薄くする・幅を細くする)ことで、ラミネートリムの効率性を大幅に高めることができるという設計を考案しました。
当時の計測では(アーチェリー用の矢速計を発明したのもヒックマン博士)、伝統的なロングボウの効率性が40%程度だったのに対して、新しいデザインのリムは75%の効率性を達成したとあります。これは驚くべき数字で、そこから半世紀たった今でも、効率性はその時点から10~15%程しか改善されていません。
ヒックマン博士と共同研究者たちは、この研究成果を「Archery the Technical Side(1947年)」として出版します。ちなみに、彼らはあくまでも物理学の研究者であって、その後メーカーの立ち上げなどは行っていません。


メーカーでの採用
さっそく、1947年にHOYTの設立者であるEarl Hoyt Jr.さんが、この理論を参考に、ダイナミック・リムバランスという名の、(今では当たり前の)上下のリムの長さが同じ弓を開発します。1951年に断面が長方形でテーパーしている異なるカーブを持ったリムを40ペア製造し、その中でもっと効率性がよかったリムが、(Earl Hoytさんによれば…そして、僕もそう思いますが)、今日もっともコピーされている形のリムとなっています。
同じ、1951年にベアアーチェリーが単一指向性ファイバーグラス繊維とウッドのラミネートリムの製造に成功し、現在でも使用されるグラスリムが市場に登場し、今に至るまで、ラミネートされる素材は時代に応じて変化しているものの、その基本構造は変化していません。
この後、1956年に丸いグリップに代わるピストルグリップ(現在のクリップ)が登場し、1961年にスタビライザーが登場したくらいで、もちろん、素材はウッドからアルミ、マグネシウム、カーボンなどといろいろと変わっていきますが、現在のハンドル・リムの概念、リムのデザインとその理論は驚くべきことに、1930~1950年の20年の間に一気に登場したものです。
次の大躍進が待遠しいです。コンポジットだとは思うのですが…基本設計はまだ大きく変わっていません。
参考文献
-Traditional Bowyer’s Encyclopedia: The Bowhunting and Bowmaking World of the Nation’s Top Crafters of Longbows and Recurves 2011 Edition
-Annual Report Smithsonian Institution 1962(スミソニアン協会年次レポート)
-Archery, its theory and practice 2nd Edition 1859