令和のスタビライザー理論 – 2. 誤りを探る

(下記の記事の続きです)最新のスタビライザー理論を考えるのにまずは、過去に書かれた昭和・平成時代のスタビライザー論の間違っているところを探るところから始めます。自分が知る限り、一番まとまったスタビライザー論は全ア連が発行したアーチェリー教本の中で、ヤマハでアーチェリービジネスに関わっていた伊豆田さんによって書かれたものです。

これまでも何度か読んだことはありますが、改めて精読してみるとスタビライザーとはなにかの根本を正しく捉えられていない事がわかり、ちょっとショックでした。思った以上に間違っていました。彼の理論では、単純にスタビライザーを装着するとエイミングが安定します。しかし、これは試してみれば誰でもわかることです。押し手でハンドルを的に向けて狙ってみると、ベアボウの状態が最も安定するはずです。スタビライザーをつけるだけどんどん不安定になります。スタビライザーが「安定させる働き」をするのはフルドローのときと発射後だけだという前提がまるっと抜けています。

文書は「静的安定」「動的安定」という項目から始まります。その説明は正しいのですが、なぜこれを分けて考える必要があるのかの説明がまったくありませんでした。多くの間違いがありますが、この部分の間違い(説明がまるっと無い)が一番致命的なので、これだけでも読者の皆様に伝えたいと思います。

アッパーロッドの静的・動的効果

スタビライザー装着状態(150g)— 静的と動的で効果が逆転する

アッパー 150g ピボット(支点) 重心 (CG) 重力 36N ↓ 前傾抑制 (安定)

↑初めて導入します。ボタンを押すと切り替わります。


ここに「静的」と「動的」の違いを図示しました。静的はフルドロー時のスタビライザーの働きです。ハンドルにアッパーを装着したことで重心はピボットポイントから、的側、かつ、アッパー側に移動しました。「エイミング時=静的」ハンドルは重心が的側に移動したことにより、的側に倒れようとする力(緑の矢印)が働きます。

一方で、発射し押手によってハンドルが的側に押し出されたとき、「発射時=動的」ハンドルが的側に動こうとすると、重心は支点より上方にあるので、ハンドルは上向きに回転(赤の矢印)という全く逆の動きをします。この違いが「静的な安定」と「動的な安定」の違いです。同じスタビライザーセッティングでも、

(本当の静的状態) = 弓の重量が大事 =できるだけ無い(軽い)方が良い

(エイミング時) = 弓の重量が大事 = X軸の重心位置が支配的

(発射時) = 弓の重量の5倍以上の押し出し力が大事 = Y軸の重心位置が支配的

となります。静的安定性と動的安定性の中に適切なスタビライザーセッティングが存在することとなります。

令和のスタビライザー理論 – 1.重心位置

2021年に下記の記事を書きました。当時、自分の理解では(リカーブターゲットでの)スタビライザーセッティングは、重心はハンドル前方の下部にあるのが絶対条件で、その範囲内において、実射しながら調整していくものであるというものでした。

今回、リカーブボウチューニングマニュアルの更新において、個人的にもっと情報量を増やしたいのはスタビライザー選択理論のパートです。そこで、WA世界ランキングトップ5の男性選手のセッティングを読み込んで、セッティングの重心位置を推定しました。使用しているウェイトの素材は写真から判断できるものではないので、完璧に正しい計算結果ではないですが、概ね正しい結果が得られたかと思います。

その結果がこちらです。原点(0.0)はピボットポイントです。ドローフォース軸とは弓が手に押し付けられる力です。押す方のグリップは当然ピボットポイントにありますが、引く方の引手はその反対側4.5cm程度ほど上方にあるノッキングポイントを引くので、このラインは水平ではなく、角度を持ちます。

ピポットされている点はそれぞれの選手の重心位置です。Baptiste Addis選手はほぼ同一線上にいます。つまり弓をまっすぐ押していることを意味します。これは理論上最も正しい重心位置です。一方で、多くのトップ選手は理論上あるべき位置よりも下に弓の重心を押しています。なぜ、ドローフォース軸よりも下に重心を置くのか、その理由を解き明かして行きたいと思います。

*ここでしているのは重心位置だけの話で、そもそも論として、弓の重量に対して十分な体力がなければ意味がありません。すべての議論はあなたに十分な体力があることを前提としています。

おまけ: これは以前の全ア連発行のアーチェリー教本に掲載されていた図です。私もなんとなく眺めて理解したつもりでいました。しかし、ちゃんと見ると何かがおかしいことに気が付きますよね。ピッチングとはなにかは説明できていますが、矢の位置がおかしいです。Z軸はピボットポイントを通っていますが、一方その線は矢のノックに伸びいています。これは絶対的におかしいです。

Z軸が平行ならば、矢のノックエンドはピボットポイントから4-5cm上方にあるプランジャーホールの延長上にあるはずです。このパートは当時のヤマハが図を提供していると思うのですが、なぜ、こんなでたらめな図を作ったのか気になるところです。1988年に最初に出版された初版はもっていないので、次回国会図書館に行くときに確認してみたいと思います。

【閲覧注意】ハンドルとリムの相性とはなにか?

先日、web記事化したタイミングでチューニングマニュアルを見直してみました。そもそもは、本サイトの企画の一つとして書いたものなので、このサイトと合わせての参照を前提にしていたので、単独のサイトとして読むために、ハンドルとリムの「相性」とはなにか、という記事を追加しようと思います。内容的には何度も過去の記事で触れていますが、過去記事が2,000記事を超えているので…読んだこともない人がいるのかなと。最初に書いたのは10年以上前ですね。

【大切な注意点】リム・ハンドル単体の性能・品質とリムをハンドルにセットしたときの性能は全く違うのものですが、単体で製造上の基準を満たしている場合、それを組み合わせたときに本来の性能を引き出すことができなくても、相性の問題として扱われ、基本的に保証対象にはならないです。ご注意ください。

1. リムボルトとリムの相性(すべての弓)

長くアーチェリーをやっている方なら記憶に残っているかと思いますが、長らくエリソン選手をはじめアメリカのナショナルチームはホイット社の最新モデルに採用されたリムボルトを使用しませんでした。

その理由にはいくつかありますが、過去の記事で分析を行ってきました。そして、その問題の多くは現在解決されているので再度触れることはありませんが、残っている唯一の問題は、リムボルトとリムの接合精度の問題です。

Precision Tiller Bolts | A Passion for Precision

アメリカのナショナルチーム代表のカミンスキー(Jake Kaminsky)選手はこの問題について40分以上の動画をユーチューブに投稿しています。問題はリムのU字部分(リムボルトと接する部分)とリムボルトの太さで、この部分に遊びが全くなければ、リムに過剰なストレスがかかり、ねじれや破損の原因となり得ますので、基本的に遊びは存在します。一方で、この部分の遊びが大きければ、グルーピングに致命的な悪影響を与えます。テストは簡単です。上の写真のようにリムボルトだけにリムを差し込んで、ねじれ方向にリムを動かしてみれば、この遊びがあるかどうかがわかります。それがどれだけかはノギスが必要です。

この部分はたとえブレースしていようが、発射時に最もストレスがかかる接合部分で、精度が悪ければ、発射するたびに弓の状態が変化してしまいます。カミンスキー選手のテストによれば、この部分の遊びにおける”0.2mm”がある状態で、上下リムをともに意図的に左側へ最大限ずらして6射、次に右側へ最大限ずらして6射した実験では、70m先で4点の差が生じます(左右差は9時8点から3時8点でした)。

この問題には、トップ選手はリムボルトを交換することで対応します。その他のやり方にはリム側にコーティングを施して、遊びを減らすやり方があります(ベアボウであればこれで十分)。

2. リムの厚み(異メーカーの場合のみ)

20年前くらいでしょうか。特定のメーカーとリムの組み合わせで、リムボルトが破損するというトラブルが多発したことがありました。原因としては、リムのサイズがハンドル側メーカーの純正品と違っていたので、本来の設計とは部分にストレスがかかったこととされています。

この10年ほどはリムの厚みの相性問題で破損が発生するということは聞かないので、破損に関しては心配する必要はないと思います。問題はリムの厚みによって、ハンドル側で本来設計された角度でリムが装着されないことです。ただし、この問題はチューニングで解決でき、メーカー純正のリムよりも取り付けるリムが薄い場合は、よりリムボルトを締め込むことで。リムが純粋のリムが厚みがある場合は、リムボルトを緩めることで設計された角度にすることができるので、1の接合部分の遊びほど致命的な相性問題ではありません。

3. リムボルトの適正位置(異メーカーの場合のみ)

上記の問題が示すように、リムボルトの適正位置はハンドル側にされた設計です。一方で、ポンドはリム側に表示されています。そのために、異なるメーカーのハンドルとリムを組み合わせた場合には、表示ポンドがリムに刻印されたいますが、実際の(ポンドを定める)差し込み角度はハンドル側の設計によって決まり、ここに相性の問題が発生します。

整理するとポンドはリムボルトの位置(締め込み数)、支点の位置(リムの厚み&特殊機構)の2つによって決まります。写真は仏UUKHAハンドルのリムボルトの位置ですが、ラインの位置(Medium)を標準として、Mini~Maxiの間で、+-5%ほどの範囲内でポンド調整できます。これはUUKHA社のリムの場合にはリムに書かれた表示ポンドをベースとした+-5%になりますが、他社のリム場合にはMediumの位置での実質ポンドから+-5%を意味しています。他のハンドルメーカーもほぼ同じです、また、リムを締め込む方にしか調整できないメーカーも存在します。メーカーのマニュアルをご確認ください。

一方で、ホイット(HOYT)社はリムボルトの位置だけではなく、支点の位置も変更できる”LIMB ROCKER ADJUSTMENT SYSTEM”が上位モデルに存在します。リムロッカーの位置を調整することで、実質ハンドル長を調整でき、これによってもポンドが変化するので、特に異なるメーカーのリムを装着したときのリムボルトの適正位置の理論値を算出することはいよいよ困難で、チューニングの中で見つけていくしか無いのが現状かと思います。

リムボルトの位置、リム厚み、上記のような特殊な調整機構と、あなたのドローレングスによって、リムのリカーブの立ち上がりが定まります。リムには適切な角度が存在し、そこで最大限の効率性を発揮します。

一方で、写真の右はWAが最も偉大なアーチャーの3位に選んだPark Sung-hyun選手のフルドローです。写真で見ただけでもわかるように、リカーブが機能するほどドローイングできておらず、リムの性能を引き出せていません。写真左が正しい状態です。

それでも彼女はオリンピックで3つの金メダルと1つの銀メダルを獲得しています。彼女が自分にとって適正ではない長すぎる弓を選択した理由は、弦の角度がもっとも感覚よく鼻につくサイズを重視したためです。マニュアルで何度か言及していますが、弓の性能を最大限引き出すことは大切なことですが、グルーピングはもっと大切です。リムの効率性を最も引き出すことがチューニングの目的ではありません。最終的な目的は最適なグルーピングを引き出すことです。

リカーブチューニングマニュアルをWebに移行しました

2021年の発表したリカーブチューニングマニュアルですが、現場レベルで十分に普及していると友人からは聞きます。体系的に知っていただくために、まとまったマニュアルとしてPDFで配布してきましたが、7000部を一つの区切りとして、より簡単にアクセスしていただくWeb版に移行することにしました。あとはAIが編集用ドキュメントからWeb版を10分で作ってくれたことにも感謝。

それに伴いダウンロード部数のカウントを終了します。配布ページはサポートページとなります。また、今後PDF版のメンテは行いません。Web版のみ更新します。ありがとうございました。

リカーブボウ・チューニングマニュアル – Web

【7000部達成】リカーブチューニングマニュアル

チューニングマニュアル完成しました。もっとわかりやすいマニュアルもある思います。素早く知りたい方の需要はもう満たされていると思うので、時間がかかっても、しっかりとストーリーとして、チューニングを1つの流れとして理解できるものを目指しました。

2021年の発表以来、7000部以上のダウンロードありがとうございます。7000部を一つの区切りとして、十分に普及できたと思いますので、ダウンロード部数のカウントを終了し、サイト表記に切り替えました。より容易にアクセスいただけるかなと思います。

リカーブボウ・チューニングマニュアル 2026 – アーチャーリサーチ

このページは質問や意見をいただくサポートページとなります。また、誤字脱字に関するご指摘は、修正し最新版に反映後に削除しますのでご理解ください。

【ダウンロード↓】

リカーブボウ・チューニング・マニュアル(PDF 3MB) 

最新版(表紙に表記あり)は 240918 です(以降メンテなし、最新版はWebページになります)

履歴

260421 Webページに移行しました

251202 ダウンロード数 7000部 達成

240918 著者の経歴を加筆、リムのねじれ修正法を追加

230319 フォント変更、歴史についての記述修正

210910 ねじれたリムで達成された記録に具体的な日時を追加

210816 ポンドによるチューニングを追加

210815 高速度カメラチューニングを一部加筆

210812 完成版公開日

【更新】カムリーンチューニング

【更新2】2025年TitleとTRXを分割しました。

【更新1】2025年モデルとして発表されたホイット(HOYT)とダートン(Darton)を追加しました。

コンパウンドボウはストリングだけではなく、ケーブルと組み合わせて使用されるシステムです。ケーブルはフルドローの時にカムをサイト側に引っ張ります、そのため、プライムのシステムでも0.4度のカムの傾きがあります。その傾きはストリングに影響を与えます。

Bowtech https://www.youtube.com/watch?v=dbvVuH-nTks より

リリース後のストリングはまっすぐに返るのではなく、多少サイト側にカーブを描いて戻ります。映像はボウテックのチューニングガイドのものですが、シャフトが6mm系のものだとすると、1mm程度ストリングがシャフトに対して右にあるのが確認できると思います。

PSE ez.220

1mmというのはわずかな動きですが、競技で高いパフォーマンスを出すためには無視できない数値です。例えば、上記のPSEのEZ220システムでは、カムの位置を0.5mm単位で調整できます。特許の関係などで、各社カムリーン(カムの傾き)の調整方法、システム名が異なるので、ここにまとめました。

名称方法ボウプレス
PSEEZ.220スペーサーの入れ替え必要なし
(旧)MathewsTOP HAT筒状ワッシャーの入れ替え必要
HOYT(-2024)シムの入れ替え、ケーブルの長さ調整必要
HOYT(2025-)上下交互のシムの入れ替え必要
Dartonリムポケットでのポンド調整必要なし
BOWTECHDEADLOCKレンチでの無段階調整必要なし
ELITES.E.Tレンチでの無段階調整必要なし
Methews Limb Shiftレンチでの無段階調整必要なし
PRIMECOREできるだけ発生しない技術で工夫

PSE/Mathewsのスペーサーなどを入れ替えて調整するタイプ、HOYTのケーブルの長さと合わせて調整するタイプ、レンチだけで調整できるタイプの3パターンになります。

この技術がコンパウンドボウに搭載される前の古いチューニングマニュアルでは、ペーパーチューニング時の矢の左右差はレストを左右に動かすことで調整するとありますが、カムの傾き(位置)を変更することは相対的にストリングのレストの位置を変更することと同じです。

レストを左に出す = カムを右に動かす

レストを右に出す = カムを左に動かす

となります。矢が真っすぐ飛ばない理由は多々ありますが

①レストを動かして調整

②カムを動かして調整

③矢のスパインやポイントの重さを変更して調整

この順番がおすすめです。

チューニングは長い道のり

インドア ルクセンブルク

インドアワールドシリーズ2 ルクセンブルク、シュロッサー選手、ハーネスの反対側のケーブルを短くするチューニング(セッティング)で挑んできました。

リカーブチューニングマニュアルの最後にも書きましたが、チューニングのやり方を完璧に理解したからと言って、完璧なチューニングを得ることはできず、最終的にはたどり着いた、いくつかの「答えであろうもの」を実践で試しながら、探っていくことになります。

ホイットのコンセプトXが発表されて以降、初戦のワールドカップファイナルでは、ハーネス側上部を短く調整した青い弓。

インドアワールドシリーズ1では、微調整を一切に施していないケーブルセットを使用した黒いコンセプトXで参戦。そして、ステージ2では、ハーネスと反対側のケーブルを調整した赤い弓での参戦。弓何本持ってんだろ。

シュロッサー選手でもコンセプトXのチューニングの完成が見えていないようで、3月の最終戦に向けて、どんな答えにたどり着くのか楽しみです。

低価格帯のリムのねじれ修正について

http://archer-king.blogspot.com/より

リムのねじれの修正方法については先輩たちに教わってやり方を実践してきたし常識的な情報なのですが、その根拠を「俺がやってるから」とするわけにはいかず、リカーブチューニングマニュアルには載せなかったのですが、ヤマハアーチェリーのメンテナンスガイドにて、オフィシャル情報として確認できました。次回のチューニングマニュアルの更新にて、リムのねじれ修正法として追加します。

まず、原文を翻訳すると、

Q. リムがねじれてしまった場合の対処法はありますか?

A-1. 右にねじれている場合、左回りに2-3度修正して、一日中そのままにしておきます。

A-2. ねじれの逆方向に力を加えて、リムから20〜30cm離してドライヤーで温める。温めは焦らず繰り返し行う。決して急いで温めないこと。

A-3. リムのコーティングが傷んでいない(剥がれや傷がない)場合、リムをお湯(約40℃)に5分弱つけてから、逆方向にひねることを繰り返す。

ヤマハアーチェリー1988年 英語版 P.7

となります。追加情報を加えるとA-1に関してはそのとおりです。A-2に関しては、ヤマハのリムではバック面(イラストの面)でやっていますが、リムの構造によっては逆の面から温めたほうが有効的だったりしますので、両面試してみてください。A-3に関しては水の浸透が問題なので、フォーム素材であれば傷があっても問題ないと思います。また、もう少し温度が高くても良く効果的なのですが、手とお湯の熱さとの戦いになります。

*題名で低価格リムとしましたのは、これらのやり方は昔はすべてのリムで有効でしたが、製造技術が進化したことで、今では高ポンドの上位リムでは有効ではありません。低ポンド(30ポンドくらいかな)のリムや、低価格(3万円程度)のリムでしか有効ではなくなっています。

チューニングとはなにか。

熟成したウィスキー(左)と生まれたて(蒸留しただけ)

昨日酒屋に寄ったら、2017年にニューポット、蒸留しただけのそこまで美味しくはないリキュールが、熟成してウィスキーとして完成したボルトがあり、親子揃いました。完成したウィスキーにも「we don’t have enough aged whisky yet」と書かれていて、今後が楽しみです。

チューニングマニュアルの「本当のチューニングの始まり」という章の出来にはあまり満足しておらず、書き直したいと思っています。しかし、まとまらないので、一旦、まとめずに記事にします。

エイジド・ウィスキー(Aged Whisky)は日本語では熟成ウィスキーと翻訳されます。長年自分はこの翻訳、この呼び方に納得がいかずにいました。色々と文献も読みましたが、この問題を避けているものばかりです。エイジドというのは、直訳すれば、年をとった=経年変化をしたという意味しかないはずです。それがなぜ熟成なのか。

イチローズモルトを作った男 肥土伊知郎とジャパニーズウイスキーの未来 文藝春秋digital 2020年11月4日

先日、秩父でウィスキーを作っている方とお会い機会があり、せっかくなのでプロの方に直接聞いてみました。その答えは、エイジングは経年変化だという私の考えは何も間違いなく、その結果美味しくなっていれば人間は「熟成」とそれを呼び、美味しくならなければ、人間はそれを「劣化」と呼ぶ、人間の捉え方次第だというシンプルかつ、納得行く答えをいただきました。

この話はそのままチューニングと呼ばれる作業にも当てはまります。リムアライメント機能というのは、根本的には「リムをねじる」機構に過ぎないのです。それを正しく使用すればチューニングであり、正しく使用できていないと単純に「リムをねじってしまっている」という状態になります。行っていることに違いはなくとも、その結果によって違いが生じるのです。

というような意味のことをマニュアルに入れたいのですが、さて、どのようにまとめ上げるのか、もう少し悩みたいと思います。

ねじれているリムとねじられているリムの違い。

先日お客様から質問があり、記事にしました。リムのねじれについてです。プロショップにチェックしてもらう前のセルフチェックのための知識となります。フォーミュラーシステムでも同じことですが、ILF(グランプリ)システムで説明します。

ハンドルとリムを接合したとき、ブレースをしない限り、ハンドルとリムは接していません。赤い線のように少し隙間がある状態です。これは青の矢印で示したデタントピンの中にネバが入っているためです。これによって、ブレースしていなくても、リムが抜けないようになっています。

写真1

上の写真ではハンドルにリムを差し込んただけですが、この状態で、赤い面と青い面が同じ方向を向いていないことをリムがねじれていると言います(定義)。リムのねじれはブレースされていない状態、何なら、ハンドルにも接続されていない状態で定義されているものです。

しかし、これは実用的ではありません。製造時の誤差・接合部の誤差は存在し、この2つの面が100%、+-0.001mmの誤差もなく真っ直ぐであることを追求することはコスト面から現実的ではないです。また、ブレースするとリムとハンドルが接するので、ハンドル側のねじれ・ハンドルとの相性(*)の影響も受けます。そのために、リムの赤い面は非常に硬くブレース・ドローイング時のテンションを受けても影響を受けない、対して、青い面は柔らかいので、ブレース・ドローイング時のテンションを受けてわずかに変化する、というこの2つの面の特性の違いを利用して、最終的な誤差を調整する作業がリムアライメントの一つの側面となります。

*いくつか違うハンドルを持っているなら、同じリムを差し込んでみてください。差し込んだときのカチッとした感覚、接合後のバタつきに違いがあるはずです。これが相性と言われるものの原因です。ただ、どの状態がベストかは定義されていないので、相性としか呼べません。

写真2

写真は極端な例ですが、リムアライメントが正しく調整されていない場合、ブレース時にリムはその中心ではなく、弦(赤い線)から不均衡なテンションを受けて、そのテンションによって、リムがねじられてしまいます。その状態でシューティングをしたとき、発生する現象(弦溝に戻らない・ドローイングするとハンドルが回転する等)はリムがねじれているときと同じですが、その原因はリムがねじれているわけではなく、リムアライメントが正しくないためです。

また、写真2の状態で、長く使用すると不均衡なテンションによって本当にリムがねじれてきます。その場合には、リムに反対側からテンションをかけて、1-2日ブレースしたまま置いておくことで修正できます…が、自分で試さないで、購入したプロショップに持ち込んだほうが良いかと思います。