ホイット、ハンドルができるまで - Building my Hoyt Formula Xi from scratch!

Triple Trouble Archeryチャンネルにホイットの工場の動画がアップされました。ハンドルができるまでを追ったもので、なかなか興味深いです。個人的には今の機械なら、50-60分でハンドルを削り出せるとは思いませんでした。それと、以前にアルマイトのせいで生産が遅れているという理由もわかってよかったです。一度工場外に出しているのですね。


我々は技術で負けたのか。国産アーチェリーがベガスで発表。

昨日、ベガスシュートで久しぶりの国産ハンドルが発表発表されました。詳細が明らかになったので、一度レビューを書いたのですが、読み返して、なんか違うと思い、すべて削除し、前田建設ファンタジー営業部という映画を見てきました。映画のおかげか、一晩寝て、睡眠学習したおかげかはわかりませんが、自分の中で謎が解けました。

発表当初からこの企画の応援をする気があまりしなかったのは、キーとなる技術そのもののインパクトもありますが、それよりも大きなモヤモヤとして、そもそも日本のメーカーは技術で負けたのか? ということです。

私がアーチェリーを始めたのが、20年前の2000年なので、それより前のことは詳しくありませんが、2000年にはヤマハとNプロという2社の国産アーチェリーメーカーがありました。それが2010年には1社もなくなってしまいました。

競争に負けたことは間違いないと思いますが、しかし、それは技術だったのでしょうか?判断は個々人がするものですが、私には技術で負けたとは思えません。私の近くの関係者にもそのような思いの人は多いです。技術ではないところで競争に負けたのに、もう一度技術でよみがえろうとしているところに、失敗の反省が全く生かされていないところが、私の違和感の正体です。

***以下、国産メーカー2社は少なくとも2000年段階では技術では海外メーカーに負けていなかったという前提に書かれています。単純に性能が悪かったから淘汰されたと思っている方は読む価値がないかと思いますし、その点でいまさら議論はしません。***

今回のプロジャクトにも参加しているNプロの本郷さんの2007年のブログが残っています(会社はもうないので発注は無理だと思います)。内容には言及しませんが、このような方が入ってやっているということです。

アーチェリー界への提言

さて、技術ではないとしたら、なぜ日本から国産メーカーがなくなってしまったのか。コストではないことは明らかでしょうか。日本とほぼ同じ給与レベルであるイギリス(Mybo)やフランス(UUKHA)、イタリア(SPIGA/Gillo)、もちろんアメリカ(HOYT)にもアーチェリーメーカーがあります。これらの国でハンドルを製造するコストは日本とは大きく違わないでしょう。

アーチェリーショップを経営する立場から見ると、国産メーカーが失敗しゼロになった理由は流通と価格にあると考えます。

まず、流通です。商品はメーカー → 卸・ディストリビュータ → ディーラー(プロショップ) → お客様という流れで動いていきます。この中間を省いて、メーカーから直接プロショップに納品されることもありますが、その部分は大事ではありません。メーカーは価格表を公開しています。そこには、定価(Retail Price)、ディーラー価格(Dealer Price)、ディストリビュータ価格(Distributor Price) が掲載されています(完全版の場合)。

私たちにとって大事なのは、メーカーが弊社にどの価格を提示してくるかです。一般的に言えば、大きなメーカーや老舗は販売したいと言っても、ディーラー価格しか提示しません。その価格は多くの場合、ディストリビュータから仕入れる方が安いくらいです。逆に新しいメーカー、小さいメーカーは販売網を増やしたいので、初回の注文量が少なくとも、ディストリビュータ価格で提示してくれることが多く、安く仕入れることが可能です。

当時、ホイットが日本の各プロショップにどの程度の金額で商品を卸していたかは、もちろん私にはわかりませんが、しかし、少なくとも当時日本に5つのディストリビュータが存在していました。この狭い日本に5つもです。これがどれだけ異常なことか。例えば、2020年現在、ヨーロッパ全体には1社しかディストリビュータがありません。ヨーロッパ全体で1社に対して、日本には5社ですよ。アーチェリー競技者人口で割れば、日本代理店密度はヨーロッパの100倍以上です。

それだけ、ホイットは日本には特別に安く商品を入れていました。同時期、競合メーカーがあったイタリアなどには、そのようなことはなかったと聞いています。韓国にもです。それだけ日本メーカーを競争相手としてライバル視していたということです。

定価は決まっています。定価から2割引いて売るとすれば、どれだけ儲かるかは、単純にどれだけ安く仕入れできるかです。つまり、国産メーカーを売っても儲からない、海外のメーカーを売れば儲かるという状況が国産メーカーの敗因の一つです

もう一つは価格です。記憶ではヤマハの最も安いリムでも6万円でした。ただのグラスリムでこれは高すぎます。そもそも、国内でグラスリムを作る必要があるのでしょうか。例えば、現在のウィンがそうですが、ウィン&ウィンラインで最も安いリムはWINEXで、大手での販売価格約6万円です、価格で見れば、当時のヤマハと同じですが、低価格のグラスリムは中国で作って、別のブランド(WNS/KAP)で売っています。

技術が必要な上位の商品は国内で作り、価格が重視されるエントリー向けの商品はコストダウンを第一に製法・製造場所を計画して安く作る。現在のグラスリムが1万円で買えることを考えれば、6万円は高過ぎます。ぼったくりということではなく、最上位のリムとほぼ同じ製法を採用していたことを考えると、コストから逆算した価格だとは思いますが、そういう事情はお客様には関係のないことです。より安く作る(コストダウン)のも大事です。

ウィン(WNSブランド)でも、SpigaやMyboなどのヨーロッパのメーカーも低価格商品をラインナップしています。逆にホイットは近年上位モデル帯のみに注力し、グラスリムの製造をやめました。どちらも正しい判断というか、まぁ、メーカーそれぞれの戦略かなとは思いますが、最上位モデルと同じ製法で、手間暇かけて、丁寧に国産にこだわって、「グラスリム」を作るという戦略は負け戦としか思えません。単純にV1グレードのインスパイアシャフトには需要がないのです。

(PRWireより)

技術では負けていなかった日本メーカーが負けた理由はこの二つだと思っています。この反省を今回のプロジェクトに生かせるか。逆に言えば、既存のメーカーと同等かそれ以上の性能を有するという条件をクリアし、かつ、既存のメーカーよりも、SH-02をプロショップが売りたくなるコミュニケーションが必要です。そして、低価格モデルの導入。ホイットは現在上位モデルのみで勝負していますが、それはホイットというブランドがあるからです。近年の新規メーカーで、その方法で成功したのは、トップ選手とともに開発し、発売とともにトップ選手が世界大会で実績を残した、MKとChaserだけです。現状、この売り出し方法ができるとは思えません。

やればできる!中国メーカーのハンドルが4か月で銀メダル獲得。

MyboやGilloなど多くのメーカーは、実績を残すまでの3-4年間、幅広い価格帯の商品ラインナップで売り上げを確保してきました。個人的には、3-4万円で購入できる国産ハンドルがあったら、それなりの需要はあると思います。イタリア(Spiga)で出来るのですから、日本で出来ないことはないでしょう。コストではなくな、やるかどうかでしょう。

昨日書いた技術的な記事は消したので、この記事ではSH-02についての技術的なことは書きません。大事なのはそこよりも、流通、価格帯、プロショップとのコミュニケーションです。以前に下町ボブスレーについて書きましたが、あれも技術以前に、選手とのコミュニケーションの失敗の話でしたね。

テレビ東京・ガイアの夜明け・下町ボブスレーの真実について。

NISHIKAWA-archeryさんには本郷さんがいるので、日本メーカーが海外メーカーの技術的な競争で敗れたとは考えていないとは思っています。しかし、負けたのは事実であり、総括が必要でしょう。その部分を反省しての再挑戦となることを願っています。ホイットの最上位モデル以上の価格で、販売するプロショップも少なく、ネット直販もするとかなったら…頑張ってください。


SANLIDA TEAM-700スタビライザー

中国の新興メーカーSANLIDAからスタビライザーが届きました。
TEAM-700シリーズには3タイプのロッドが用意され、その中でCP用として「エクストラ・スティフ(ES)」を在庫する事になりました。

TEAM-700ESは昨今流行のスリムタイプ高剛性スタビ。ロッドの直径は14.3mm(実測値)

参考までにメジャーどころの数値がこちら。
*実測値
・AAE アドバンテ-X  12.6mm
・B-Stinger マイクロ-HEX 13.8mm
・ドインカー エストレモ・プラチナムHi-Mod 16mm
・アバロン インフレキシブル 15.7mm
・コンクエスト スマックダウン625  15.8mm

採用されているウエイトシステムは1/4インチ。付属ウエイトは4オンスが1個。ほかにロッドの締付レンチ「サムスプール」1本、接続ネジが5種です。

*4.7mm/7.4mm/12mm/15mm/25mm 各1個

厚めのクリア塗装が施されたグロッシーなロッド表面はカーボンメッシュ模様をより奥深く立体的に映し出しています。

在庫はロングが30インチとサイドが12インチ。他のサイズは取り寄せです。
価格と性能の両面でこれまでコスパ断トツだったアバロン・インフレキシブルにライバル登場といった感じですね。
まもなく販売開始です。


シュルード(Shrewd)から新しいスタビライザーRevXを明日発表へ。

ニーム(Nimes)で何人ものトップ選手が使用し注目された新しいスタビライザーがRev-Xという名称で、シュルード(Shrewd)から本日の深夜発表されることがアナウンスされました。

シュルードは個人的にはも好きなメーカーで、自分の弓でも使用しています。この仕事をしていると、本当に金もうけばっかりのメーカーがいたりして、嫌になるときもありますが、シュルードの営業方針にはすごく共感できます。グールグル翻訳でざっくり訳しましたのでどうぞ。

(グーグル翻訳-一部修正-シュルードのカタログより)

私たちは、消費主義の時代に生きており、私たち全員の自然な本能は、購入、購入、購入することです。私たちのほとんどは不必要にアップグレードし、耐用年数の終わりに近づいていないアイテムでも使うことをやめます。

顧客は製品の破損と保証の期限切れに慣れています。多くの企業は、顧客が以前に生産したものより良くない製品に年々お金を使うように促すことに成功しています。

私たちの目標は、より多く購入してもらうことではなく、シュルード製品を購入することを選択した場合に、より少ない購入で済むことです。当社の製品は製品ラインに何年もの間、何十年も続くことが多く、これらの製品に対する当社のサポートは、カタログや価格表から削除されても続きます。

(原文-抜粋)
We live in an age of consumerism where the natural instinct in all of us to is to buy, buy, buy. Most of us upgrade unnecessarily and shelve items that haven’t come close to the end of their useful lives.

Customers are used to products breaking and warranties expiring. Many companies succeed by pushing customers to spend money year after year on products that aren’t better than what they’ve produced previously.

Our goal is not to get you to buy more, rather our goal is to ensure that if you choose to purchase a Shrewd product, you’re able to purchase less. Our products stay in our product line for years, many times lasting for over a decade, and our support for these products extend well beyond the time where they’re pulled from our catalog and price lists.

Buy Smart, Purchase Less, Shoot More


Flex PowerBall

Flexから販売されている「FLEX ターボ・ボタン2.0」の販売終了(在庫限り)を受け、その後継となる商品が入荷しました。
FLEX PowerBall(パワーボール)

C環状のウエイトは1つ約10gr前後*(9~11)。12個付属します。2カムモデルなら上下のカム付近両方に。ワンカムならカム側の片方に適宜個数を装着します。
*マニュアルには約8.5グレイン/1個とありますが、実測値を記しました。

装着には金属ノックセットプライヤーがあればきれいに装着できます。通常の平たい箇所しかないプライヤーでも可能ですが均等に丸くかしめるのにやや苦労するかもしれません。
また、黒およびカラータイプのヒートシュリンク(熱収縮チューブ)が付属するので、かぶせる際は一旦ストリングをカムから外さないとなりませんが通した後、ヒートガンで温めてカバーします。
黒のチューブは約8センチ、その他のカラーは約5センチです。
ただ、一般家庭にヒートガンなんてめったに無いので代わりにドライヤー…と、なりそうですが、最近のドライヤーは風量は強いもののあまり高温にはならずチューブが収縮してくれる温度(約70~80度)に到達しないのでやや苦戦するかと思います。

FLEX PowerBall(パワーボール)は店舗およびオンラインショップにて販売中ですヽ(^。^)ノ


キネティック(KINETIC)の第三世代モデル、90点、いいですね。


キネティック(KINETIC)の第三世代モデルのソヴレン(SOVREN)がテスト入荷しました。いいハンドルですね。メーカーの将来に期待できます。現在6061の黒のみ在庫していますが、今後増やしていく予定です。また、現在、3万円台でもっもとお勧めできるハンドルとしてフォージドをセレトクしていますが、実績を重視する方は今後もフォージドをお勧めしますが、新デザインでお勧めできるとしたら間違いなくこれです。

まず、キネティックですが、2016年ごろに初めて登場したメーカーです。第一世代はHaloなどの鋳造低価格モデルというラインナップでした。まぁ、設計などを語る価格帯ではありませんが、塗装の品質が同価格帯では非常に高かったことを覚えています。

第二世代として独自に設計したスタイライズド(STYLIZED)を2018年に発表します。デザインはなかなか好評でしたが、オリジナル設計のリムボルトの形状が干渉し、リムによってはポンド調整幅が2回転ほどしかないのが問題になり、生産が終了しました。短命でちょっと残念なハンドルでしたね。

キネティック(KINETIC)のスタイライズド(STYLIZED)ハンドルが入荷しました。

2016年、2018年からの2020年にいよいよ独自設計で、かつ、他社のリムにもぴったりとフィットするハンドルが発表されました。

まずは、このリムポケットは私としては現状ベストな設計だと思います。1つは閉鎖型になっているので、一度ハメたリムが、抜けることはまずありません。安全です。

もしもの時のためのストリンガーの使い方

そして、さらにリムポケットの可動部がリムと接する設計になっています。これはどういうことかというと、メーカーがリムをブレースしたまま、センター調整できると言っているハンドルがありますが、個人的にはこのタイプでしかやりません。リムがハンドルと接しているタイプのハンドルで、リムをセンター調整をすると、リムとハンドルがすれるので、コーティングが剥がれたり、傷がつく可能性がありますのでお勧めできません。

しかし、このタイプであれば、リムとハンドルは接せず、センター調整パーツと一緒に動くので、傷がつく心配はなくなります。3万円台でこのタイプのリムポケットを備えているハンドルはないかと思います。

順番最後にしようと思っていましたが、リムポケットの話なので。100点といってもいいかなと思っていましたが、一点問題が。リムボルトとリムが接する限界(ポンドを下げるときの限界点)がこのあたりなのですが、ちょうど見えません(-_-;)非常に確認しずらいです。次世代モデルでは改善してほしいところで、90点とさせていただきました。



ハンドル全体としての特徴は、やはりこの厚みでしょう。写真はAL1との比較です。もっとも分厚いところでは、AL1が57mmに対して、ソヴレンでは75mmもあります。ハンドルの両端に重量と厚みを持たせることで、ねじれる方向の振動を減らし、ハンドルがより素直な挙動になることが期待されます。ホイットが上位モデルで近年取り入れていますが、3万円台でこの設計も今のハンドルが初めてではないでしょうか。

前回の反省を踏まえて、このハンドルではしっかりと4回転調整できるようにしたと言われました。こちらでテストした限りでは、間違いなく4回転は調整できますが、すべてのリムをテストしたわけではないので、商品説明では3回転半と表記しておきます。

また、ユニークな選択肢として、ハンドルの素材を6061合金と7075合金が選択できます。価格と重さが異なりますが、基本的には実質ポンドを基準に選ぶと良いと思います。35ポンドくらいまでは6061、45ポンド以上は7075、35-45ポンドはどちらでもよいかと思います。

・3万円台(6061)
・安全なリムポケット
・ブレースしたままのセンター調整が可能
・ハンドルの挙動を改善するデザイン
・ハンドルの素材を選択可

とお勧めできるポイントは多数です。いいハンドルですよ!!

KINETIC SOVREN ハンドル