最強の原糸届きました(テスト用です)。

IMG_20130415_184510.jpg

最強の原糸が届きました。RHINO(↑写真の通り、サイという意味)という原糸で、ブローネルの2013年発売の新商品です。
アーチェリーの古いガイドブックには、弦は高強度・高弾性率のものがよいと書かれていますが、2000年後半からでしょうか、原糸が進化しすぎて、強度があまりにも強くなり、ストリングメーカー(完成弦)ではリカーブ向けには若干柔軟性があるのがいいのではないかという認識が広まってきました。
現在では、マテリアルメーカー(原糸)でも、とにかく強い原糸(クロスボウ向け)、耐久性が高い原糸(コンパウンド向け)、柔軟性がある原糸(リカーブ向け)…後はダクロンの様な初心者向けの4つを用意するのが一般的です
この原糸は最新のクロスボウ向けの原糸で最強の伸びない原糸です。100%UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)。メーカーいわく、20本弦でクロスボウに対応できるとのこと…クロスボウはだいたい150~160ポンドです(パワーストロークが短いので全体のパワーは60ポンドのコンパウンドの2倍程度です)。
今回はショップとしてのテストのための入荷です。今週時間ができた時にテストしてみる予定です。
販売予定はありませんが、1/4ポンドすべて使うこともないので、興味がある方には、大久保店で若干おつくりできるかと思います。
*現在手作りの完成弦をストレッチ中です。


次世代サイト AXCEL(アクセル) アチーブ(Achieve)サイト

RXL_9_BB_LO.jpg

次世代のリカーブサイト、アメリカのアクセル社製のアチーブサイトが入荷しました。入荷自体は2週間前にしていたのですが、価格の問題で、ずっとメーカーと話し合いしていました。
はじめに書きますが、このサイトはかなり高いです。高くなってしまった一番の理由は、高度な加工をしているためです。最軽量の競技用サイトを開発するため、設計を頑張ってしまって、組立てと加工がかなり複雑になってしまったようで、原材料費は他のサイトと大きく変わらないのですが、パーツの加工時間(加工するための機械を占有するので原価高騰の原因になります)と組立てにかかる時間が長いのが、高騰の理由のようです。
このサイトはロック(後述)があるRXLと、ロックのないRXの2種類があります。メーカーの地元のランカスター・アーチェリー(アメリカの大手アーチェリーショップ)では、RXが36,000円(359.99USD)、RXLが37,000円(369.99USD)となっています。日本で販売する場合には消費税と日本までの国際送料がかかるので、4万円を超えます。
この価格の問題についてメーカーとずっと話し合って来ました。高性能のサイトですので、多くのお客様に選んでいただきたいのですが、アルティマサイトが23,000円程度なので、40,000円もしてしまうのでは、あまりにコストパフォーマンスが悪くなります。
今回、メーカーから特別にオファーを頂き、1年間限定でかなり安い価格で提供させていただきます。それでも、他社のサイトと比べると安いとは言えませんが、精いっぱいの努力です。RXサイトが33,800円、RXLが34,800円となります。期間限定価格が延長されるかは、2014年までの販売量で決まります。好評であれば、延長していただけるそうです。よろしくお願いします。
DSC01174.jpg

では、商品の話に入ります。現在、競技用のリカーブサイトで最もシェアがあるのは、アメリカ大陸(アメリカ・カナダ・メキシコなど)とオーストラリアではアクセルのAX4500サイト、アジアとヨーロッパでは渋谷のアルティマサイトかなと思います。HOYTを使うアーチャーがアクセル、WIN&WINやSAMICKを使う人が渋谷のサイトを使うことが多いです。もちろん、この2つのサイトには性能差がありますが、それよりも、この傾向が強いのは流通の問題(代理店としてどこのメーカーに強いか)が大きく関係しているかと思います。
アチーブサイトの開発のコンセプトは、今のお客様を満足させつつ、新しいヨーロッパ・アジア市場を開拓するということです。そのためにサイトをとにかく軽くしながらも、重くでき(ウェイトを追加)、力を入れずに操作できるし、レンチひとつで、これまでのアメリカ製サイトのようにしっかりとしたテンションにもすることができます。
特徴をまとめると、
素晴らしい点
・重さはとにかく軽く、調整可能(エリソン選手は軽すぎるのかウェイトを足して使っているそうです)
・組立ては正確に可能(エクステンダーバーとエレベーションバーの接合が3点式)
・調整するときのテンションは自分の好みにセットできる
・サイトボックスを完全にロックできる(RXLのみ)
悪い点
・値段が高い
お客様によって変わる点(アルティマとの比較)
・振動吸収をもとめるお客様はアルティマサイトの方がお勧め
 (カーボンバーを使用・サイトは重いほど振動吸収が良い)
・軽いサイト、弓のバランス、ソリッド感を求めるお客様はアチーブサイトの方がお勧め
 (全体にアルミを使用・軽い・サイトボックスを強く固定、またはロックできる)
という感じかと思います。ソリッド感については、あまり聞きなれない言葉だと思うので、改めて記事を書く予定です(3時間書きましたが、わかりづらい記事なのでボツにしました…書き直し中です)。
DSC01187.jpg
DSC01182.jpg

出来上がった重さですが、比較として、カーボンエクステンダーを採用する渋谷のアルティマサイト(RC520カーボン)と比べて、8.5%軽くなっています。数字では17g…ウェイト3/4個程度です。上の写真を見た印象では、どう見てもアルティマの方が軽そうですが、実際は逆です。


全体で 8.5% (219g vs 202g)
サイト本体 6% (174g vs 164g)
マウント・ノブ 18% (45g vs 38g)


アルミを採用しながら、この重さを達成したのはかなり素晴らしいことだと思います。高性能の競技用サイトの中ではこのアチーブサイトが最軽量のサイトです。
*パーツにアルミ合金やカーボン樹脂出来なく、たっぷりとプラスチック樹脂を使った韓国・中国製の1万円以下の低価格サイトではもっと軽いものがあります。
DA1_3575.jpg

このサイトは持ってみると驚くほど軽いです。しかし、ちょっと残念なことに、ずっとアクセルのサイトを愛用しているエリソン選手(写真はベガスシュート)には、このサイトは軽すぎるようで、サイトに重りを付けています(エレベーションバーの上下)…。。。
DSC01190.jpg

組立てですが、エクステンダーバーとエレベーションバーの取り付けが、より正確に、よりしっかりと、三点(写真のボッチと2本のステンレスネジ)で固定する方式になっています。また、ボッチはガイドにもなっており、このぽっちを穴に入れれば、自動的にステンレスネジのネジ穴に合わせることができます。他のサイトにはない機能その一です。
DSC01176.jpg
DSC01177.jpg

上の写真はサイトブロックを上から(写真上)と下から(写真下)から撮ったものです。上の銀のボタンはサイトボックスを大きく調整するときに使用するものですが、下の銀のアジャスターはサイトボックスとエレベーションバーとのテンションを調整するためのものです。RXLサイトでは、ワンタッチで調整できますが、RXサイトでは、アジャスタースイッチがついておらず、左側のレンチでのみ調整可能です。
アルティマサイト同様に微調整はサイト上部のノブを回ることで行うのですが、この時のテンションが強いほど、エレベーションバーとサイトボックスはしっかりと接合しており、サイトの振動が減少します。しかし、このテンションが強すぎると、調整するときにかなりの力を要します。
女性のお客様からは、アメリカ製のサイトではノブが硬いという意見は以前からありました。しかし、トップアーチェリーの多くは硬い方を好みます(まぁ、40ポンド後半の弓を楽々引く人にはそれは硬くないのだと思いますが…)。ということで、このサイトでは、この部分のテンションをお客様の好みで調整できるようになりました。
振動を減らしたい方はテンションを強く、軽く調整しやすいようにしたい方はテンションを弱めに設定してください。他のサイトにはない機能その二です。
さらに、上位モデルのRXLサイトでは、ロット機能がついています。このロックをかけることで、サイトボックスはがっちりとエレベーションバーに押し付けられ、この部分で生じる振動を最小にします。ただ、ロックをかけたまま調整しようとすると、サイトボックスが故障するので、動かす時は必ずロックを外してください。他のサイトにはない機能その三です。
ロックをかけるかどうか。世界選手権の予選を見ればわかるように、予選や練習場ではトップアーチェリーの多くはサイトの調整を行いながら射っていますが、ワールドカップや世界選手権の決勝ラウンドでサイトを調整するアーチャーはあまり見られないと思います。
12~20本程度で勝敗が出る試合でスので、サイトをいじっていたら、試合が終わってしまいます。それなら、サイトボックスを動かさないのであれば、サイトボックスをしっかりとエレベーションバーにロックし、振動を最小限にすることでサイトとハンドルの一体感をより強くします。
DSC01188.jpg

後は、サイトチャート・ステッカー・パッチがおまけでついてきます。こんな感じです。一つ、このサイトのキーワードになっているソリッド感に関しては、別途記事にします。また、今回はテスト入荷で5台しか入荷していません。次回は5月にまとまった量が入ってくる予定です。

追記、コメントの返信です。サイトピンはコンパウンドのスコープ同様、ナットで固定する形になります。


1876年のアーチェリーカタログ

Archery_1876.jpg
Archery_1876_2.jpg

新しい道具の話ばかりなので、古い道具の話もたまには…というか、資料を整理していたら出てきました。
こちらは1876年の制作されたアーチェリーカタログです。
Archery_1876_3.jpg

この時代のテイクダウン式の弓は、現在の3ピース式ではなく、2ピースのものが一般的でした。当時の資料を読むと、まだリムとハンドルの区別ははっきりとなかったのが原因のようで、ハンドルとリムを分解するというよりは、弓を分解するのが目的だったため、このような作りになったのでしょうか。
最上位モデルは鉄刀木(Pheasant wood)という木材を使用したもので、現在のウッドコアに使用されているメイプルよりも、3~4倍の値段はします。そんな最上位モデルが1本9ドル。未使用品で保管していたら、結構いい値段のアンティークになっているかもしれないですね。


新規取り扱い LeBrunet(ルブルネ) アームガード

最近読んだ漫画に面白い一文(三文か??)がありました。
いつの時代も新たな潮流は古きを押し流し、算盤に合わない物は、ドライに切り捨てられてきました。しかし、人間の本質が変わらない以上、生み出されるものには限界があります。時代はどこかで過去を必要とします。
アーチェリーの道具屋で仕入れを担当していますが、古き良きなんてものが存在したためしはないし、逆に、新しければいいというものでもないことを、日々実感しています。その中で、良い商品を見つけて、皆様にお届けできるよう努力しています。ちょっと、心に響いた文書でした。
さて、本日の新入荷はフランスのLeBrunet(ルブルネ)社です。長い付き合いというわけではないですが、4年前から注目し、いろいろとコンタクトをとっていたメーカーです。下が、2009年3月、ちょうど4年前の記事です。
プロの職人が作ったアームガード(2009-03-27)
http://jparchery.blog62.fc2.com/blog-entry-54.html

覚えてくれている読者の方がいたらすごいと思いますが、当時は価格が20ユーロ以上で日本で販売すると3,200円以上、利益をとろうとしたら4,000円近くになってしまう商品で、とても、アームガードとして販売できる価格ではありませんでした。
それからの4年間、このメーカー少しずつ成長をし、コストも毎年下がり、自分としては現在の価格であれば、日本のお客様にも受け入れられるようになったのではないかと思い、本日より取り扱いを開始しました。アームガードとしては、まだ高い部類だと思いますが、職人が木からハンドメードで作った作品として考えれば、この価格なら十分価値ある商品だと思います。

DSC01136.jpg
DSC01153.jpg
LeBrunet.jpg

サイズは2種類、大きめのクラシックと小さなスモールです。素材は9種類あり、7種類の木材と、レッド・ブルーという集成材を使ったものがあります。ほかにはカーボン製のものも取り扱いします。耐久性については、カーボン、プラスチック、ウッドの順になります。木目の美しさと実用性(=薄い)を重視した設計で、厚みがあまりないので、アームガードを一度買ったら買い替えたくない耐久性重視の方にはお勧めできません。では、素材を紹介します。紹介文の一部はウィキペディアと木材図鑑を参考にしました。
DSC01137.jpg

マホガニー – 辺心材の区分は明瞭で、辺材は黄色っぽく、心材は淡紅褐色から淡橙褐色を呈し、金色の光沢がある。 長い間、光にさらすと色合いが濃くなる。また、柾目面にはリボン杢が現れることがある。(木材図鑑)
DSC01139.jpg

メイプル – 辺材は淡い灰白色、心材は灰色を帯びた黄褐色。(木材図鑑)

DSC01140.jpg

バリオーク – 北アメリカ中部と東部の中型から大型の落葉性のオーク。高級車の内装などに使用されている。

DSC01142.jpg

クルミ – 辺心材の区分は明瞭で、辺材は灰白色、心材は褐色を呈す。年輪はやや不明瞭。 (木材図鑑)

DSC01145.jpg

ワイルド・チェリー – 辺心材の区別は明瞭で、辺材は黄白色から乳白色、心材は淡い紅褐色から濃い紅褐色を呈する。使い込むほどに飴色に変色し、高級感がある。 (木材図鑑)

DSC01144.jpg

チーク – 辺材は黄白色で比較的狭い。心材は濃い黄金色で、しばしば暗色の縞をもつ。材面にロウ状の感触がある。 (木材図鑑)

DSC01149.jpg

エルム – 辺心材の境界は明瞭で、辺材は黄白色、心材は灰色を帯びた淡褐色。木目は明瞭で美しい。 (木材図鑑)

DSC01143.jpg
DSC01138.jpg
以上の7種の素材に2つの集成材(写真上がレッド・下がブルー)を加えた9種類からお選びいただけます。


アメリカから、ボーニングさんが来店

IMG_20130311_213045.jpg

創立70年近い歴史を持つアメリカの老舗アーチェリーメーカーのボーニング(Bohning)さんが来店しました。現在アジアを中心に代理店巡りをしているそうで、大久保店来店後、一緒にごはんを食べに行きました。
日本に来てくださったお客様には、ビジネスの話よりも、何よりも、日本っていい国だなと思って帰っていただきたいです。
impulse_logo.jpg

さて、商品の方ですが、フレッチングテープ、フレッチタイト、弦ワックスなどが日本では有名かと思います。ほかにも、ノックや羽などを作っており、新作での一押しは「IMPULSE」という細長いターゲット用ベイン。
あいさつに来たという感じのミーティングだったので、すぐにお客様にお伝えできるような話はしていませんが、ハンティングのマーケットではかなりのシェアがあるものの、弱かったターゲットアーチェリーに、2年前から本格的に力を入れ始めたそうなので、これからにご期待ください。


新技術登場!? HOYTのリムダンパー

US08365712-20130205-D00008.png
↑アメリカ特許番号 US8365712 B2 / 2013年2月5日公開
ちょっとUSA ARCHERYの編集作業につかれたので、アーチェリー業界のエンジニアさん達が最近何をしているのか検索していたら、面白いものを見つけました。
詳しい知りたい方はアメリカ特許庁のホームページを見ていただくとして、簡単に説明すると、現在のFormulaリムはロッドを取り付けるための穴が開いていますが、そのブッシングをそのままリムにつけるのではなく、その間にダンパー(この特許の参照先にSIMSの特許があるのでたぶんリムセーバーのようなゴム)を入れるというアイデアです。
「リム→ブッシング→ロッド」だったのが、「リム→ゴムダンパー(FIG10・11)→ブッシング→ロッド」になって、さらに振動吸収性能が向上するという素晴らしいアイデア。
特許なので、ただのアイデアで実際の技術として完成しているわけではないと思いますが、HOYTの2014年のラインナップで実現したら面白いですね。
US 8,365,712 B2 Limb connection apparatus for archery bows
Assigned to Hoyt Archery, Inc., Salt Lake City, Utah (US)


道具に関してのまとまってない話…


お客様からの質問に答えていて、思ったことがあるので少し。最後まで書いて思ったのですが…全然まとまっていない記事になってしまった。でも、削除するのはもったいないほど書いてしまったので、暇があれば読んでみてください。
上の動画は韓国のパク選手(Park Sung-Hyun)です。トップ選手の方やナショナルチームのコーチの方と話している中で、今世紀で一番すごい選手としてよく名前が挙がる方です。
実績としては、シングル1405点(更新される前の記録は1388点)と70mwと70mと50mの世界記録、2度のオリンピック出場で金メダル3に銀メダルが1つ、世界選手権は4度出場し、毎回個人か団体で金メダルを取り、とれなかったときは銀か銅メダルというすごい選手です。
park_20130302160401.jpg
park3.jpg

そんなすごい選手ですが、こちらの写真を見てみてください。奥の選手がパク選手です。
何か違和感を感じませんか。


そうです。弓が長いのです。パク選手の身長は170cmですが、弓は彼女の身長とほぼ同じです。66インチの弓は長さにすると、158~160cmほどですので、こんなに長いはずがありません。写真から見ると168~169cmほどの長さがあるかと思いますが、これは70インチの弓です。
では、170cmのパク選手は矢尺が特別に長かったから、70インチを使っていたのかというと、2枚目の写真。
フルドローに入った時のリムチップを拡大したものですが、リムチップは立ち上がってすらいません。今お持ちの弓を引いてみてください。”常識”で弓を選んでいれば、必ずリムチップは垂直よりもノック側に傾くはずです。このスナップの効果によって、はじめてリカーブが活きて来るので、必ずリムはそう設計されています。
da1_2011.jpg

この写真の状態が正解です。
しかし、パク選手が使っているリムチップの状態から矢を発射しても、リムの性能を生かすことは全くできません。パク選手の引き尺はちょっと覚えていませんが…すみません…このリムチップの位置から推測するに、後3インチほどひかないといけない位置にあるので、27インチ前後だと思います。
では、なぜパク選手が70インチを選んだのか、しかも、それをオリンピックという大舞台で使用したのか、その結果は個人・団体での2つの金メダル。
本人から直接話を聞いたわけではないので、まわりのコーチたちの推測ですが、矢速、リムの性能よりも、弦が鼻につくことにこだわった結果だといわれています。これだけの選手ですから、要望すれば、メーカーはいくらでも特注の道具を作りますが、弦を鼻につけるためには、弓を長くする以外に方法は存在しません。その結果、一般論では考えられない、リムの一番性能が発揮されるリカーブ部分を使わないで、オリンピックに出ることになったのです。
park2.jpg

写真を見ると、確かにしっかりとアンカーした状態でも、ぎりぎり鼻についているくらいなので、68インチだとだめだったのでしょう。
パク選手の選択が正しかったことは、その実績が証明していますが、これは今の時代だからできる選択です。十分に弓具の性能が向上し、リムの性能を生かさなくても、十分な性能を確保できるようになったからこそです。グラスリム・ダクロン弦・アルミ矢で70mを射っていた時代で、鼻につけるためだけに、ここまでリムの性能を犠牲にしていたら、同じ実績を残すのは到底無理だったと思います。

みんな鼻につけるの大事だから、そこで弓のサイズを選んでねという話ではありません。上達するために大事なことは、常に考えるということです。そして、常識に縛られないこと。常識の多くは生まれた時代には正しかったことですが、道具に関していえば、道具は常に進化していますので、1~2年もあれば、変わっていきます。
DSC01089.jpg

まえがきが長くなりましたが、伝えたかったことは、リムの柔らかさは「リムの柔らかさ」にすぎないということです。リムの柔らかさが語るのは引き味だけの問題です。
例えば、リムの柔らかさをリリースのミスを拾いやすい、拾いにくいといった話を関連付ける説は、UDカーボンをはじめとする新しい素材が出てから、あまり意味を持たなくなっています。ミスを拾うかというのはリムチップやリムの硬さのうち、写真でいうと、左右にストレスを与えた時の反応と関係します(もちろん、それだけじゃないですが)。しかし、引き味というのは、写真でいうとリムの前後にストレスを与えた時の反応と関係します。
expow3.jpg

アーチェリーのリムにカーボンが使われ始めた時には、リムの反応は全方向に対して同様だったから、そのような説ができたのかなと個人的には思っていますが、現在のリムには方向性があるカーボンが使われています。簡単にいえば、ある方向のストレスにだけ反応する素材です。例えば、U/Dカーボンは単一方向性カーボンという意味で、漢字の通り、並べられた繊維の方向にしか力を発揮しません。
*実際のUDカーボンの写真はこちらに
https://archerreports.org/?page_id=33

そのために、以前と違いリムの硬さは引く方向とねじれる方向とでは、全く別にテスト・測定する必要があります。単一方向や三軸カーボンが使われ始めたことで、リムの引きの柔らかさは、引きの柔らかさ以外の意味を持たなくなってきまいます。引きが柔らかいことは、他の部分の柔らかいことを意味しません。

言いたかったのはそれだけです。長くなりました。
こちらの知識とお客様の知識が食い違ったりすることもあるので、お客様からの質問に対しては、まずお客様の考えている事、実現したいこと、求めていることをしっかりと確認してから、返信するようにしています。やり取りが長くなったりしてしまいますが、ご理解ください。
追記、USA ARCHERYの翻訳が終了しましたので、今日から編集作業に入ります。3月中に終わるといいなぁ~。


新規代理店契約 Bee Stinger アーチェリー

samurai.jpg

本題の前に小ネタを二つ。今月の雑誌アーチェリーにWIN&WINの新しいHMC22スタビライザーについて、5色のカラーが存在すると書かれていますが、確認したところ、12月に発表されたカタログ通り、カーボンブラックの1色しかないです。ゴールドなどのカラーが出る予定はありません。
次に、SCOTT(スコット)アーチェリーから「侍」という名のリリーサーが出るようです…確認しましたが、どこら辺が侍なのかはわかりませんでした…でも、せっかくその名を付けていただいたのですから、日本のプロショップとしては、少量発注しないといけないような気に。販売価格5,000円前後のエントリー向けのリリーサーです。3月~4月の入荷予定です。
さて、これから書く記事は今年の初めには考えていたことで、それに向けて準備をして、今週の月曜日にはすべての用意が整ったのですが…昨日の夜に驚きの発表があり、書く内容の価値が半減し、ちょっとショックですが、読んでいただけたら幸いです。
以前にこんな記事を書きましたが、今年のドインカーの新作はさらに剛性を高めているとはいうものの、販売するとしたら、センター一本で3万円を超えてしまう価格です(Doinker Elite Estremo Platinum Hi-Mod 30インチの場合)。定価をつけて、そこから25%引きで販売する大手の慣習から考えると、国内での定価は4万円になります。センター一本の価格です。
そのドインカーの2013年の発表を年始に聞いたときには、びっくりしました。ロッドのスペックは業界をリードする会社ですが、ひたすらに高価な材料から高価なスタビライザーを製造する近年のドインカーの方針には少し失望しました。
例えば、WIN&WINはカーボンハンドルにフィットするようにHMC Plusを開発し、売れ行きは好調ですし、HOYTはプロコンプエリートという弓を特定のスタビライザーセッティングを想定して開発し、発売以来、すごい勢いで実績を上げています。
近年の、商品単体のスペックではなく、その商品をシステム全体(弓全体)に組み込んだ時の性能を見ながら開発していく方向性の方が正しいと思いますが、ドインカーの方向性はちょっとずれていると考えています。
おまけに今年ドインカーではAボムというダンパーがカタログに加わりましたが、ほぼ以前のAボム(2007年ごろにカタログ落ちした商品)を復刻しただけのものです。まぁ、それでも十分にいいダンパーだったので、こちらは販売を考えていますが(4月ごろに入荷予定)、この間、5年以上の時間があったのですから、進化した商品を提示して欲しかったです。
NIMESでもドインカーの人と少し話ししましたが、ドインカーの商品単体でのスペック強化と、それによるラインナップ全体の価格のインフレには、もうついていけないと思い、これから書くのですが、アメリカで現在急成長しているB-Stinger(Bスティンガー)と1月に代理店契約をして、今週の初めに初めての荷物が届いたのですが、なんと、昨日のドインカー社のフェイスブックで驚きの発表がありました。
856206_10151494876805622_1330198844_o.jpg


Doinker’s NEW sister company line of products Precision Balance, to be launched next month. It will be a completely separate line of Target and Hunting stabilizers. It will have a Non-Doinker dampener on it, and include two 1oz weights on a nice looking glossy finished carbon rod with machined Aluminum and anodized flat black ends, at a retail for about $140.00 on a 33″. The Hunting products will be similar in configuration… just shorter and Dipped in full camo.
All the rest of the details to follow next month 😉


簡単に意訳すると「2013年の3月に小売価格で1万円前半の新しい商品ラインを発表します。」ということです…早く言ってくれよ…と。。。
この想定外の展開にどう対応するかは、詳細の発表を待って、今後考えます…どういった商品を出してくるのか、140ドルの新しいラインナップと、330ドルの現行の上位ラインとをどう共存させるのか見守りたいと思います。まだ、コメントできる段階にはないのでしょう。
さて、戦略が迷走し(*)ている様に感じるドインカーですが、リカーブではFIVICSやWIN&WINにシェアを奪われていますが、コンパウンドの世界でのシェアを急激な勢いで奪っているのが、1月に代理店契約をしたB-Stinger社(とFUSE)です。
*昨日の低価格の新ラインナップの発表でドインカーはより良い方向に向かうと思いますが、ここからの部分はそのニュースを知る前に書いたものです。


本当に世の中便利になったもので…上の動画は2007年の世界選手権のコンパウンド決勝です。団体を選んだので6人の選手が出てきますが、多くの選手がドインカーのスタビライザーやダンパーを使用しているのが確認できるかと思います。この頃がドインカーの最盛期でした。
下の動画は、最新の世界戦(ベガスシュート)の様子ですが、使用している選手が激減しているのがわかるかと思います。別に意図的に選んだわけではありません。リンクは張っていませんが、検索していただければ、2012年後半の世界戦の映像がいくつもあると思いますが、どの試合でも同じ傾向です。
B-Stingerという会社の特徴はドインカーと違い、ゴムダンパーを使用しないことです。ロッドの性能だけで振動を取り除きます。下にカタログのリンクを張っておきますが、カタログにもウェイトとロッドの間に装着するタイプのゴムダンパーはのっていません(ウェイトの先端につけるタイプのエンハンサーはラインナップにあります)。あくまでも、ロッド単体で振動を吸収するという設計をしています。
B-Stinger(Bスティンガー)アーチェリー カタログ 2013
https://archery.co.jp/catalog_CP/BeeStinger2013.pdf

Beea.jpg

写真はカタログに掲載されている主な使用選手ですが、見ての通り、ほぼコンパウンドです。ロッド単体だけで振動吸収する設計はもしかしたらリカーブには向いていないのかもしれませんが、コンパウンドの世界では多くのトップ選手がドインカーからB-Stingerに変えました。
振動をしっかりと吸収するために、剛性の高いロッドを使用していますが、それでも価格はある程度に抑えられています(それでも2万円を少し切るくらいなので安いとは言いませんが…)。B-Stingerの関連会社はGold Tipという大口径シャフトでは有名なカーボンシャフトメーカーです。カーボンシャフトメーカーと一緒に原材料の仕入れを行うために、高性能のカーボンを安く仕入れることができ、それによりスタビライザーの価格を抑えています…というわけで、カーボンスタビライザーは他社の同クラスのものに比べて安いのですが、金属製品(Vバーやウェイト)は特に安くなく、競合他社と同じか逆に少し高いくらいになっています…。。。
Gold Tip
http://www.goldtip.com/

ドインカーがここ近年失っていたもの、新しい設計方針(ダンパーなしのロッド)、ラインナップのこまめな更新、価格を抑えた高剛性ロッド…これらを、今一番アメリカで持っているのがB-Stingerです。
*↑ただし、昨日突然発表された新しいラインナップはまさにこの3つを満たしています…1月から準備してきたのに…
と、まぁ、B-Stingerの商品の宣伝というよりは、メーカーの宣伝です。B-Stingerのスタビライザーはコンパウンドの通販を始めた時から販売していましたが、知る人ぞ知るメーカーで、弊社としても、あくまでも代理店の在庫を仕入れて販売するだけでしたが、今後はドインカーにかわるトップメーカーとして成長するのではないかという期待も込めて、今年から直接取引する代理店として新しく契約をしました。
beeba.jpg

今週、第一便が入荷したばかりですが、いろいろとテストをして、よりいい形でメーカーとともに成長していけたらと思っています。現在はまだコンパウンドの方にしかお勧めしていませんが、リカーブの方も新しいモデルを開発するようですので、リカーブ・アーチャーの方もこの黄色の蜂がトレードマークのB-Stinger(ビー・スティンガー)、覚えていただけたら幸いです。


PSEの折りたたみ傘入荷しました。

IMG_20130214_192024.jpg

前に試しにとってみたFIVICSのアーチェリー傘が結構人気で、入荷してすぐに売り切れてしまいました(現在在庫切れ…韓国メーカーは旧正月休みのため、2月末の入荷予定)。
IMG_20130214_192425.jpg

FIVICSの傘は75cmとかなり大きなものですが、大きすぎるために通常のアーチェリーケースに入れることはできません。ということで、少し小さくなりますが、70cmのPSEの傘も仕入れてみました。折りたたむと約60cm(=24インチ)になり、ハンドルとほぼ同じ長さでアーチェリーケースに入れることができます。
IMG_20130214_192048.jpg

卸値がだいぶ高いなと思いましたが、入荷して検品してみると、強風にも対応している二重構造で結構しっかりとした傘でした。来月くらいからアウトドアの試合がはじまるのでいかがでしょうか。


ベガスシュートから戻りました。

IMG_20130207_110451.jpg

ベガスシュートから戻り、たまっていた仕事をこなして、やっと少し落ち着いてきました。この1か月で15回も飛行機に乗り、さすがにちょっと体がきついです。。。頑張ります。
先日の記事の後、町から車で3時間ほどのところにあるマヤの遺跡(チチェンイッツア)に行ってきました。2012年で世界終了みたいなことを言ってる人いましたが、無事2013年を迎えられてよかったです。メキシコのカンクンは26度なので半袖です。
DSC01023.jpg
DSC01014.jpg

さて、ワールドカップ・ステージ3と同時開催となったベガスシュートですが、当然、開催場所はラスベガス…正直、ラスベガスは苦手です。それで、これまで一度もベガスシュートに行ったことがなかったのですが、まぁ、仕事ですから、一度は行ってみることにしました。でも、まぁ…やっぱりこの町は苦手です。こういう試合のいいところは、トップアーチャーを間近に見ることができて、交流できることですが、ベガスは…タバコ吸いながら酒飲んで、みっともないような姿勢でスロットやっている女性アーチャーの姿を見たりすると、間近というか、逆に残念な気持ちになります。
DSC01021.jpg
DSC01025.jpg

会場はNimes同様に2つに分かれていて、誰でも参加できる試合の会場(写真上)と世界戦が行われているメインの試合会場(写真下)があります。目的のメーカーのブースは世界戦が行われている会場の横のスペースにあり、出店しているメーカーの数はATAに比べるとわずかです。会場の広さもATAの1/20くらいだと思います。
DSC01035.jpg
ベガスシュートにしか出店していないメーカーもありますが、基本的に1月のATAがプロショップ向けの展示会で、ベガスシュートは一般のアーチャー向けの展示会になります。HOYTは一番いい場所に陣取ってアパレルを頑張って売ってました。
DSC01034.jpg

新商品はほとんどNimesで見てきましたので、新しいものはほとんどありませんでしたが、上は初めてお会いしたFIRST STRINGさん。急成長している完成弦メーカーです。
世界で最も評価の高い完成弦メーカーはウィナーズ・チョイスですが、ずっとここと契約していたコンパウンドの世界で現在一番勢いのあるレオ・ワイルド選手が、2012年にこのメーカーに乗り換えました。2013年に入っても結果を出し続けてるので、良い弦なのでしょう。取り扱うかは決めていませんが、継続的に話していこうと思っているメーカーの一つです。今後に期待です。
DSC01030.jpg

こちらの会社はアーチェリーのセミナーなどをメインとしているところで、最近はいろいろと面白いアーチェリー用品を作るようになっています。こちらも、取引はしていませんが、定期的にチェックしているメーカーさんです。すごい軽いのが売りのスタビライザーや、ユニークな形のVバーなどが展示されていましたが、生産量が少ないためか、値段はかなり高めです。今後に期待しています。
DSC01026.jpg

MKコリアのMKX10ハンドルの新色のペイントの白です。写真にはありませんが、1月に発表された新色のライムは発注していますが、この白はどうするか未定です。見た感じ、ちょっと心配なレベルの仕上がりです。HOYTでいうと、カスタムペイント(GMXなどに使われています)レベルではなく、パウダーコート(EXCELに使われています)レベルのペイントです。ただ、白は需要はある色なので、改善要求を出して、しばらく様子を見たら、取り扱いしようと思っています。
DSC01033_20130212192308.jpg

こちらは最近ちょっと元気がなかったSKYアーチェリー。ホイットを引退したホイットさんが、トラディショナルボウのベテランJim Belcherさんと立ち上げた会社です。
老舗のアーチェリーメーカーにありがちな、世代交代などの問題だったと思いますが、取引がないメーカーにはあまり裏事情は聞けないので…詳しくは知りません。
SKYアーチェリー
http://www.skyarchery.com/

ともかく、いろいろとあってあまり積極的な営業はしていなかったのですが、新しいスタッフを迎えて、もう一回頑張るようです。写真はTR7というハンドルです。
ハンドルの方がなかなか良い出来でした。ただ、リムは…2000~2004年あたりのモデルからどの程度進歩しているのか疑問です。引いただけで実際にうってはいないので断言はできませんが、リムも新しいものを開発してくれれば魅力的なリカーブメーカーになるのではないかと思います。
製造の技術力には業界の中でも定評があります。リムでは一般的なフォームコアやウッドコア以外にも、バンブー(竹)コアのリムなどを作っています。製造には定評がありますが、ホイットさんが90年代に設計したリムのデザインをずっと使っていて、新しい素材や技術は試しても、リムのカーブ(リム全体の曲線)はずっと新しくしていません。もう20年近くになるので…そろそろ、新しいカーブに挑戦してもいいころ合いではないかと思うのですが。
SKYも取り扱いはしていませんが、定期的にチェックしています。最近元気な会社の一つで、あとは、元気に頑張った結果を今後出せるかどうかです。後、取引先のJagerアーチェリーの社長が仲良くしているメーカーで、SKYアーチェリーにグリップを供給しています。
DSC01018.jpg
DSC01019.jpg

ここまで、取引していないメーカーの話でしたが、取引先ではSIMSが新しいリムセーバーを発表しました。
1997-Speed_without_the_Kick-247x300.jpg

振動の測定をすると、よく見るような振動のグラフを得ることができますが、さらにあるアルゴリズムを使用して、FFT解析をすると、どの周波数の振動が一番多いのかを知ることができます。ゆったりした大きな振動が多い弓なのか、細かい振動が多い弓なのか、いろいろなパターンがあります。
この分析から振動の大きい周波数に合わせて、その振動を吸収するために開発されたのが、ブロードバンド・リムセーバーです。
DSC01017.jpg

なんかちょっとすごそうな商品ですが、開発と製造のチューニングにはすごいテクノロジーが使用されていますが、完成された構造は簡単に言えば、柔らかいゴムダンパーと硬いNAVCOM素材(手触りはシリコンの様な素材です)を組み合わせたハイブリット構造のリムセーバーになっています。2つ以上の素材を使用しているリムセーバーは初めてではないかと思います。
リンクが着色されていて、このリングだけの交換も可能です。この2つの素材をうまく組み合わせたことで、ピークの振動をうまく吸収できるそうです。2月後半か3月初めに入荷する予定です。
と、新商品はこのくらいでした。あまり見ごたえがある会場ではなく、また、メーカーも一般アーチャーを想定してブースを出しているので、プロショップ向けの価格表なども用意されていません。ちょっと残念な感じでした。

試合の方はあまりじっくりと観戦する余裕がありませんでしたが、もう、ArcheryTVにアップされているようなので、どうぞ。