【更新】ティラーって何でしょうか

8499先日、お客様からティラーハイトについての質問がありました。問題自体は山田に引き継いで解決したという連絡がありましたが、ティラーとは何かについて記事にしたいと思います。

グーグルでティラーハイトとは何かを調べてみると、適切な説明をしているページを見つけることができます。しかし、ティラーハイトとは一つの言葉ではなく、ティラーの高さ(ハイト=Height)という2つの言葉です。ノッキングポイントがノッキングをする点(ポイント=point)を意味するのと同じです。ノッキングというのは、矢をつがえることだということは知られていると思いますが、ティラーとはどういう意味でしょうか。

冒頭の写真。この写真に写っているのが「ティラー(The Tiller)」というものです。ティラーとは弓のチューニングに使う道具の名前なのです。ご存知でしたか?

さて、この道具はどう使うのでしょうか。

image019(↑http://www.projectgridless.caより)
ティラーという道具はこのようにして使います。簡易型のドローイングマシンといったところでしょうか。古くからの弓というのはハンドルとリムが明確にはわかれておらず、このティラーという簡易型のドローイングマシンに弦をひっかけたとき、弓の任意の点から弦までの距離をティラーハイトと呼び、どこかの点だけを取って測定するのではなく、全体のバランスを見ながらチューニングを行っていました。この作業はティリング(Tilling)と呼びます。実際にはチューニングというよりも、ハイトを高いしたいところを削っていくという弓の製作の一環と考えたほうがよいかもしれません。

その後、リムとハンドルが2つのパーツとなり、ILF(HDS/GP)規格などによって、ティリング作業がリムを削って行うものから、ハンドルに対するリムの角度を変更することで行うようになったのに伴い、このティラーという装置の出番はなくなっていき、ティリング作業はティラーボルトでリムの角度を操作することで行われるようになります。


ティリング(Tilling) 弓を削りながら全体のカーブを整える作業
ティラー(Tiller) その時に使用する道具
ティラーハイト(Tiller Height) ティラーという簡易型のドローイングマシンに弓をひっかけた時の弦から弓までの距離

というのが正しい言葉の意味です。

その中で、競技アーチェリーでは、まず上下リムの形状の同一性は確実に確保されています(*)。なので、上下、各一か所だけティラーハイトを測定してやれば十分です。なので、現在のチューニング手順では上下一点だけを測定。その場所の高さをティラーハイトとし、その値を調整して弓の状態を改善していきます。

image0109
*上下のリムが同じ形状という意味。自分で弓を作ったり、ジグや金型を使用しないで削り出す手作り弓の場合はチェックが必要。以上、小ネタでした。

ティラーハイトという言葉は有名でよく知られていても、ティラーが知られていないのは、ティラーボルトの登場によって、ティラーが必要のない道具(*)となってしまったのが原因かと思います。

Brace_web
*Beiter Braceという同様の機能を持つチューニングツールがバイターから出ているので必要がないというのは言い過ぎかもしれません…。