最初の記事は2017年に書きましたが、一部、最新の知識によって不適切であるものがありましたので、内容を更新します。
夏の練習で、よく水分補給をしてと言われますが、スポーツ栄養学での「水分補給とは何か」についてる考えたことはありますか?
水分補給とは何か。当然ですが、水分を飲むことではなく、水分を体内に取り入れることです。簡単に言えば、摂取した水分量から、排尿された分を引いた量が、水分補給された量となります。多めに水を飲んでも、全部おしっこになってしまったら意味がないということです。
*https://www.acefitness.org/education-and-resources/professional/prosource/april-2016/5855/the-newest-index-on-the-block-the-hydration-indexより引用
そこで、科学的な実験によって、数値化されているBHI(Beverage Hydration Index = 飲料水分補給指数)という値があります。このグラフでは水の飲料水分補給指数を1とした場合に、それぞれの飲み物にどれだけ水分補給能力があるのかを示しています。数値が高いほど、能力が高いということです。
ただ、この数値には正しい理解が必要です。私は以前、医者が監修した産経新聞の「アルコールはなぜ水分補給にならない」という記事を引用しましたが、この記事は間違っています。BHIはあくまでも水を1としたときの比較をしているに過ぎず、コーヒーやアルコールが1を割っているからと言って、入ってくる水分より、出でいく水分が多くなるわけではありません。
現在では、コーヒーでも水分補給の手段として適切とされています(4杯程度=カフェイン約300mg=エナジードリンク2-3本分)1。コーヒーの利尿効果はほとんどは、すでに膀胱にある水分に影響に与えるだけのようです(利尿効果の仕組みは解明されていない)。また、運動中にはカフェインの利尿効果が抑制され、むしろ運動のパフォーマンスを向上させる効果が期待されます2。運動開始の1時間前に、体重1kgあたり3-6mmのカフェインを摂取することが目安となります3。
また、真夏の運動中、スポーツドリンク等、ミネラルである電解質を補給することは大切ですが、必要量には相当な個人差があります。上の図は506人のアスリート(成人367人、青少年139人、男性404人、女性102人)で計測された汗に含まれるナトリウムの濃度ですが、人によって4-5倍濃度に個人差があることがわかると思います4。そのため、同じ2Lの汗をかいたとしても、失われている電解質の量は人にかなり違い、自分にあった量の補給をすることが大切です。
最後に、私はあまりならないのですが、筋肉の痙攣(筋肉がつる)に対して、酢、シナモン、カプサイシン、ショウガを含む液体に回復効果があることが報告されています5。アメリカの報告なので…ピクルスジュースがよいと書かれていますが…そんな物が日本で売っているの見たことないので、より身近な唐辛子や生姜の利用が現実的かなと思います。
以上、ここ10年ほどの新しい知識のアップデートでした。
運動用のピクルスジュース本当にアメリカに売ってた…すげぇ。
- Killer SC, Blannin AK, Jeukendrup AE. No evidence of dehydration with moderate daily coffee intake: a counterbalanced cross-over study in a free-living population. PLoS One. 2014 ↩︎
- Zhang Y, Coca A, Casa DJ, Antonio J, Green JM, Bishop PA. Caffeine and diuresis during rest and exercise: A meta-analysis. J Sci Med Sport. 2015 ↩︎
- Ganio, Matthew & Klau, Jennifer & Casa, Douglas & Armstrong, Lawrence & Maresh, Carl. (2008). Effect of Caffeine on Sport-Specific Endurance Performance: A Systematic Review. Journal of strength and conditioning research / National Strength & Conditioning Association. 23. ↩︎
- Baker LB, Barnes KA, Anderson ML, Passe DH, Stofan JR. Normative data for regional sweat sodium concentration and whole-body sweating rate in athletes. J Sports Sci. 2016; ↩︎
- Miller KC, McDermott BP, Yeargin SW, Fiol A, Schwellnus MP. An Evidence-Based Review of the Pathophysiology, Treatment, and Prevention of Exercise-Associated Muscle Cramps. J Athl Train. 2022 ↩︎