食欲とは 栄養・栄養学について考える 10

この記事は下記の記事からつながっています。先に読まれることをおすすめします。

写真はここで紹介する「科学者たちが語る食欲」という本の宣伝文句ですが、栄養・食事・健康に関する本では、ここで語られるべき話題は科学に属するはずなのに、内容が、エセ科学者以前に、料理は手作りのほうが体によい(根拠なし)か、食事に感謝した食べよう(反証不可能)、給食は三角食べがバランスが良い(食べる順番は血糖値に変化を与えるが、なぜそれを短時間の給食に当てはめた)など、本当にひどいものが多いです。

これはまだわかっていないことは多いからです。例えば、ネットで「打撲の治し方」と検索すると、無料情報でも、かなり正確な正しい情報にたどりつけます。逆に、「免疫の上げ方」で検索すると、出てくる記事はそれぞれに別々のことが書いてあり、調べれば調べるほど正しい情報がどれだかわからなくなります。その理由は、確実な打撲の治し方は判明しているが、確実に免疫を上げる方法が、そもそも判明していないからです。

さて、今回のテーマは食欲とは何かですが、ネットで調べてもホルモン(空腹感)の話くらいしか出てきません。免疫くらいに誰でも知っている日本語ではあると思います。その本質は何でしょうか。

生物学の研究者である、この本の著者(2名)は、野生の動物(ヒヒ)は食料が豊富にあって、食べたいものを食べても、肥満にならず、日々、一定のカロリーを摂取しているという調査結果から、研究を始めます。同じものばっかり食べれば、カロリー管理は簡単ですが、ヒヒは30日間で90種類の食品を食べて、日々同じカロリー量を維持した。これはプロの栄養士でもエクセルで計算する必要があるほどの高度な計算です。それをなぜ、知能が高いとは思えない動物にできるのか。

彼らは、単純な昆虫の食欲から研究を始め、昆虫に炭水化物とタンパク質の割合が異なる餌を与えて育てるとどうなるのか、すると、炭水化物とタンパク質の摂取量に相関関係があると判明します。そこから、これをより、複雑な動物にスケールアップしていき、最終的には63人の人間を対象に実験を行った。

その結論を彼らは「タンパク質レバレッジ仮説(The Protein-Leverage Hypothesis)」と名付けたが、この主張は非常に単純で、人間はタンパク質を一定量(必要カロリーの15%分のタンパク質)摂取するまで食欲があるという単純なものです。

一日に必要なカロリーが2000kcalなら、2000×0.15/4=75g となる。4は1gあたりのタンパク質のkcal。この量のタンパク質を摂取したら、食欲が満たされるということになる。

この仮説の結果は非常に単純なものですが、ここから、多くの理論がしっかり確立していない問題に対する引き出せるのが、この仮説のすごいところです。

食品のカロリーは基本タンパク質・炭水化物(糖質)・脂質の3つから成り立っています。すべてそのバランスです。人間の食欲がタンパク質量に対して一定なら、低タンパク質(高糖質・高脂質)の料理をよく食べる人は、より多くの量(カロリー)を摂取しないと食欲を満たすことができず、肥満となる。逆に高タンパク質(低糖質・低脂質)の料理をよく食べる人は、より少ない量(カロリー)で食欲を満たすことができ、痩せる。これは一般的にインリスン*によって説明される糖質制限(=高タンパク)ダイエットを別の側面から説明することともなります。

*糖質とタンパク質はともに1gで4kcalで、特別に糖質はカロリーが高いわけではない。

どうでしょうか。非常に興味深い説ではないでしょうか。より詳しい説明・理論に関してはぜひ本を読んでみてください。次回はこの結論から、更に導き出される話についてです。

続く


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Ryo

山口諒 - JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、2014年コンパウンドに転向、2018年よりベアボウに挑戦中。リカーブ・コンパウンド両方で全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。

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