プロアーチャーの選択 栄養・栄養学について考える 7

ゴールデンウィーク最終日、皆さんはどうお過ごしでしたか。自分は読書をしておりました。ゴールデンウィーク前に手配していたジェーク・カミンスキー選手が書いた「トレーニング・フォー・アーチェリー(Training for archery)」が届いていたので、さっそく読み込んでみました。英語ですが、間もなく販売も始める予定です。

中身ですが、題名通り、アーチェリーのトレーニングについて書かれたものです。シューティング技術やチューニングに関する内容は含まれていません。

アーチェリー専用のトレーニングについて書かれた本が多くない中では、なかなか読み応えのある本でしたが、今回は本を参考にして日本アーチャー向けのサプリメントについて考えます。というのは、この本の中で、ジェーク選手は「Wilderness Athlete」というブランドのラインナップを使用して、アーチャーに必要なサプリメントの選択方法と摂取方法を説明してくれているのですが、このブランドはアメリカでしか販売されておらず、代理店はなく、並行輸入で入手する事すら難しいようです。

ですので、今回のこの記事では、日本国内で入手可能なサプリメントで、アーチャーにとって必要なものについて書いていきたいと思います。

ちなみに、アーチャー向けのサプリも販売されています(アメリカ国内で)。その中身については前回の記事を参照してください。

アーチャー向けのサプリの中身は 栄養・栄養学について考える 6

さて、アーチェリーで必要なサプリを考えるとき、その役割は大まかにいくつかに分けることができます。

*下記、すべての情報に関しては完全な科学的なエビデンスはないです。エビデンスに乏しいことを前提に読んでください。

– エネルギー/電解質の補給
– 筋肉の回復
– 関節のけが防止・抗炎症効果
– 不足しがちな栄養素の補給

です。ジェシー選手が紹介するブランドではそれらをすべて単一のブランドで賄うことができるようですが、国内でそのようなブランドを見つけることができませんでした。それぞればらばらのブランドになりますが、同様な効果があるものを探してみました。

目的別

ビーシーエーエー アルギニンプラス - DNS

・トレーニング直前 – BCAAの摂取で集中力を持続させ、アルギニンで血流の増進をはかる。

–(メーカー商品情報 抜粋)–
BCAA(Branched Chain Amino Acid :分岐鎖アミノ酸)は、身体作りにも役立つし、運動時のエネルギーになるが、それに加えて脳内の疲労物質を抑えることにも、関係してくる。高強度の運動や長時間の運動により、血液中のトリプトファンの濃度が高まり、脳に移行してセロトニンという物質を作り出す。セロトニンは精神を安定させたり身体の生理機能を調節したりと重要な役割を果たしているアミノ酸であるが、これが運動時には、厄介な存在となる。運動中にセロトニンが脳内に移行し、脳の中で増え過ぎると集中力を低下させ、精神的な疲労を引き起こしてしまうからだ。

そんな時強力な味方になるのがBCAAだ。

BCAAとトリプトファンは脳に移行する時、同じトランスポーターであるため、血液中BCAAがたくさんあると、限られたトランスポーターでは相対的に多いBCAAの脳への移行が増え、トリプトファンの移行が減る。勝負どころで君の強い味方になってくれること間違いないだろう。

また、アルギニンもアスリートには有効な武器となる。血流も増進し、BCAAを身体中に素早く届けることで、パフォーマンスをサポートしてくれる。
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パワーシェイク

・トレーニング後 – トレーニング前と違い、プロテイン(タンパク質)だけではなく、たんぱくの割合し減っても、他の栄養素も含まれているバランスの良いものほ摂取する事。

–(メーカー商品情報 抜粋)–
理想的な身体とはどのような身体の事か?それは筋肉質で、無駄な脂肪が無い身体。その身体を作るためには、1日を通してたんぱく質をはじめとした様々な栄養素を摂取することが鍵となる。

その時こそパワーシェイクの出番。ストローを挿すだけで1本で10gの良質なホエイプロテインが摂取できるだけでなく、炭水化物や良質な脂質、22種類のビタミンやミネラルも摂取できる。
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アクエリアス(ポカリでも)

・エネルギー/電解質の補給 – どんな運動でも必要です。

–(メーカー商品情報 抜粋)–
汗で失われるミネラルをはじめ、動くカラダに必要なアミノ酸、クエン酸を配合。カラダを動かすあらゆるシーンで、水分バランスをサポートします。

※1 ミネラルとは、ナトリウムのことです。
※2 BCAA・アルギニン
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(その1)スーパーフィッシュオイル – 大塚製薬

・関節のけが防止・抗炎症効果 – DHAとEPAを摂取する事。関節・筋肉損傷を抑えて、筋肉痛を緩和する効果。

–(メーカー商品情報 抜粋)–
「日本人の食事摂取基準」(2015年)では、EPA+DHAを積極的に摂取することが望ましいとされています。 EPA・DHAを積極的に摂取することにより、血中中性脂肪の上昇を抑えるなど様々な健康機能が報告されています。
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(その2)ジョイントスーパープレミアム – DNS

・関節のけが防止・抗炎症効果 – 関節を守る効果。グルコサミンやMSMなどが中身。毎日摂取する必要はなく、特にハードなトレーニングをした日に摂取することが望ましい

–(メーカー商品情報 抜粋)–
強くするのは筋肉だけじゃない。本来スポーツの動作は、人間の身体には不向きな動作の連続だ。

跳んだり、投げたり、捻ったり、切り返したり…。不向きな動作を何度も何度も反復することで”巧さ”を身に着けていくが、もともと身体にとって不向きな動作だ。身体によかろうはずもない。その時身体のどこに負担がかかるのか?それは腱や靭帯、軟骨といった結合組織だ。

日々の反復練習では常に結合組織にダメージを与えることになり、ケガの要因になり得る。

現役で活躍できる時間は限られている。ましてや、高校、大学の部活は入学から卒業までの短い間だし、実業団の選手でいる時間は限られている。ケガをしている暇はない。
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(その1)マルチビタミン(メーカーはどこでも)

・体調を整える – 様々な仕事をしているビタミンは不足の内容に。

–(メーカー商品情報 抜粋)–
マルチビタミン1粒で、1日に必要なビタミンの摂取目安量をクリア。まずは、ベースサプリメントで健康の土台作りを始めましょう。人間に必要なさまざまな栄養素はチームプレーで働きます。
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(その2)ドクターズチョイス 3種ビフィズス菌+5種乳酸菌=350億個の善玉菌サプリメント(できるだけ多くの種類が入っているものを)

・体調を整える – 日本では特定の乳酸菌を含むものが人気だが、体調を整える意味では多種の乳酸菌を含むものが良いとされている。

–(メーカー商品情報 抜粋)–
ビフィズス菌、オリゴ糖、食物繊維のすべてを配合。
5種類の乳酸菌、3種類のビフィズス菌、あわせて350億個のプロバイオティクス配合。
ダニスコ社の特殊3重コーティングで善玉菌を腸まで生きたまま届ける技術を使用。
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(その2)オリヒロ 植物酵素カプセル 60粒(できるだけ多くの種類が入っているものを)

・体調を整える – 天然の植物から微量栄養素を取り入れて、バランスを整える。特に安全な生野菜が手に入らないような地域への遠征時に必要。

–(メーカー商品情報 抜粋)–
野草64種類、果物10種類、野菜9種類、海藻2種類の合計85種類の果物を使用。熟成に用いる陶製のかめは遠赤外線効果と微妙な通気性を持ち植物エキスを呼吸しながら熟成させます。
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以上、8種類のサプリメントを紹介させていただきます。気になるものはありましたか?

種類(=摂取量とはなりませんが)をみると、筋肉・体力というよりも、コンディショニングとけが防止のためにサプリを活用しているようです。

個人的には長く乳酸菌とプロティン(10g/日程度)は摂取していて、効果を実感できています。まぁ、マルチビタミンは食事のとりよう次第ですので、個人的にはあまり必要性を感じませんが、最後の天然の植物を多種集めて作られたものには関心があり、さっそくアマゾンで購入しました。

効果があるかわかるのは半年後くらいですかね。

続く。


参考文献 : Training for archery by Jake and Heather Kaminski


アーチャー向けのサプリの中身は 栄養・栄養学について考える 6

前回の記事では一般的なトレーニング用のプロテインについて解析しましたが、今回はアーチェリー向けのサプリメントについて考えます。国内の競技人口の関係だと思いますが、自分が知っている限りでは、日本ではアーチェリー用のアーチャー向けのサプリは製造されいていません。しかし、海外にはいくつか存在します。その中で今回は、アメリカのトップ選手も使用するMTN OPSのものを研究しましょう。

(ジェシー選手のフェイスブックより)

メーカーの説明では、アーチェリー向けの製品を開発するにあたり、トップ選手たちからの聞き取りを行ったところ、4つの機能が特に要望が多く、それに沿う形で開発を進めたとのことです。その機能とは、

・エネルギー補給
・水分補給
・リカバリー
・Cardio Enhancement

の4つとのことです。前半の3つはどのような運動でも必要なものだと思いますが、最後のものはあまり見かけない機能ではないかと思います。つまり、海外からアーチェリー向けのサプリを輸入するか、既存の3機能を持つサプリに最後の機能を足せば、アメリカで開発されたアーチェリー用サプリに近いものを自作できるということです。

日本語に翻訳するのも難しいのですが、「Cardio Enhancement」を直訳すると心臓強化という意味になります。その効果(*)は血管を広げ、血流量を増やし、それによって血圧を下げ、血圧が下がることで間接的に心拍数を下げることです。心拍数を下げる、または運動中の心拍数の増加を抑えることがが期待されているわけです。

*独自研究にもづくものでアメリカ食品医薬品局によって承認された効果ではないとのこと

アーチェリー競技において心拍数の安定はある程度にはパフォーマンスと関係があるとされているか思います。では、その中身はどうなっているのか。

主たる原材料は、L-アルギニンと-LシトルリンとOPS Bio-Protectant Blendいう独自成分の3つです。L-アルギニンと-Lシトルリンの2つを調べると、国内では精力剤として利用されていることが多いようです。なるほど…血流を増やすと…まぁ、そうですね。どちらも比較的にそちら方面では有名な栄養素のようでサプリメントは簡単にDHCなどの大手も出しています。

難しいのはOPSの独自ブレンドのBio-Protectantの方で、中身はイノシトール、不安感の発生頻度を低下させるためのものから、伝統的に抗血液凝固作用を持つとされる霊芝エキスなどまで入っています。こちらの方を自分でブレンドするのにはちょっと知識が必要になるかもしれません。

決して、この記事をもって読者の方に何かのサプリをお勧めするつもりはありません。効果については人それぞれです。

ただ、アメリカではアーチェリー用にサプリが開発されており、それには一般的なものに日本では精力剤として用いられている原材料が使われ、血流を増やすことでパフォーマンスの向上が図られるよう設計されているということです。試すかどうかは自己責任で、まぁ、大手のDHCから出ているものでも1か月1,000円程度なので、弦を変えたくらいの気持ちでいかがでしょう。

続く。