【実験中】業界の流行にのってみた-脳波計Mindwave Mobile

最近のアーチェリー業界では脳波を使用したトレーニングが流行っています。国内ではまだノウハウがあるところは少ないようですが、それらのノウハウをパッケージした「Hit the Gold」などが市販されています。

前にも書きましたが、測定自体には大した意味はないです。振動(加速度)、ハイスピードカメラによるスーパースロー、3Dモーションキャプチャーなど、弊社でもいろいろな測定をしてきましたが、重要なのは測定することではなく(*)、その測定値をどう解釈いるかです。加速度と動画分析のノウハウはそれなりに蓄積できていますが、3Dモーションキャプションの解釈は困難過ぎて…。

*当然ですが、正しく測定することはすべての第一歩です。

さて、新しい流行にのって、弊社でも脳波測定のノウハウと、その解釈・分析についての実験を開始することにしました。まずは自分を実験体としてやります。ただ、現在最も新しい分野の一つなので、早くに結果を出すのは困難と感じています。

スポーツの分野では一般的に使用されているMindwave Mobileという脳波計です。これ付けて、今後射場に出没すると思いますが、怪しい人間ではないので、怖がらないでください(練習時に脳波計をつけてのシューティングは何の規則にも抵触しないと思いますが意見があればコメントをください)。

さて、脳波トレーニングの根拠、基礎研究とされている論文がいくつか存在します。まずテスト予定は2つです。

(HEART RATE VALUES AND LEVELS OF ATTENTION AND RELAXATION
IN EXPERT ARCHERS DURING SHOOTINGのTable 4. Mean values and standard deviation for each arrow score in compound shooters with noted significant differences between arrow scores.を翻訳)

横軸の8は8点を射った時、10は10点の時という意味です。この研究によれば、コンパウンドアーチャーがより高い点数を得た時、心拍は高い状態にあり、脳波レベルは、集中(attention value)レベル・リラックスレベル(meditation value)ともに低いレベルにあるとのことです。

*より詳細に知りたい方は全文を読んでください。当然ですが、示唆されていることはこれだけではありません。

HEART RATE VALUES AND LEVELS OF ATTENTION AND RELAXATION IN EXPERT ARCHERS DURING SHOOTING

もう一つは、アメリカのリー・キーシクコーチのサポートによって、US Olympic Training Centerで行われたテストです。

グラフ中のAが集中レベル、Mがリラックスレベルです。この論文ではアーチャーを4タイプに分別しており、実績と照らし合わせて、タイプ1のシューティング中に集中レベルとリラックスレベルがともに上昇するパターンが最もよい(エリート)とされています。次いでタイプ2の集中はするが、リラックスができないタイプ、タイプ3のリラックスはするが集中できないタイプはメンタルトレーニングが必要とされています。タイプ4はグラブに情報がないものの、論文中ではただの初心者とされ、特に問題があるわけではない練習が足りないだけという意味です。

*より詳細は全文を

Evaluation of Attention and Relaxation Levels of Archers in Shooting Process using Brain Wave Signal Analysis Algorithms

自分の脳波を測定するのは初めてなので、自分がどのタイプか含め、今後分析してみたいと思います。脳波計は1万円ちょっと(+スマホが必要)なので、興味ある方は試してみてはいかがでしょうか。ただ、現状国内にはあまり情報がないので、情報は英語で入手する必要があります。


プロはどうかんがえるか/イーストンシャフトのスパイン選択2016-2017

まずは整理します。先日から記事にしている通り、イーストンのチャート評価が2017年初版から2017年改定にかけて、コンパウンド側が2番手硬く変わったことをお伝えしています。

それに対して、

・弊社ではイーストンの変更に対して評価が落ち着くまで使用を停止し、実績のある2017年初版をベースとして、これまで通りの選択することをお勧めするとしました

・イーストンからは新しく2番硬くなったものは、細心の弓で再計算したもので、それが正しいというコメントがありました

・テクミチョフ氏に個人ツイッターを通りして、弊社が批判される(オフィシャルの意見に従えといった内容です)

・大手プロショップでは新しいもののダウンロードをお勧めしています

・それをうけて弊社では新しいものが正しいとすれば、ハンティングチャートとの整合性がないという判断のものベガスシュート終了までは引き続き2017年初版の使用をお勧めしています

という時系列です。弊社ではあくまでも注意喚起をしているだけですので、このままイーストンが新しいものが正しいという姿勢を貫くのであれば、弊社としても、納得のいく説明があり次第従うつもりでいます。

ただ、現時点では弊社と渋谷アーチェリーさんが立場を表明していますが、立場を表明しているプロショップはまだ多くありません。現在、新しい再計算版はイーストンのホームページでダウンロードできますが、そもそもこれを見る方はある程度の知識がある方ですので、ある程度にはこの変化を解釈できると思います。

問題が起こるすれば、今年の3-5月にかけて、多くのプロショップがこのチャートを自社のカタログに印刷して、配布が始まることです。プロショップのカタログのチャート表を使うという方のほうが割合としてはかなり多いはずですし、こちら側は初心者などの目にも触れるで、問題が生じるとするとこの時点でしょうか。

私たちが問題を提起してから、上位レーティング321-340fpsに関しては新しいイーストンのチャートの方向性に関しては、意見が分かれていますが、エントリー向けレーティング、例えば39800円のプリスム(291fps)も、500番から400番へ2番手硬くされていますが(59ポンド・28インチ)、これに関しては、批判的に意見しかないように思います。

さて、では、プロはどう見ているのか。現在、多くの選手はインドアセッティングに取り組んでいるところで、よりスパインの適切さを要求されるアウトドアセッティングをやっているトップがいないので、あまり多くの意見を見つけることができませんでした。また、友人からも私に意見が届いていますが、ここではあくまでも公開されているコメントを使用します。

I had to spend a little extra time spining my arrows properly, it’s different than a HalonX or a C4… It needs a slightly softer arrow – I had to bump up from 52 lbs to 55 lbs to get my groups a little tighter, and I’m going to make my next dozen arrows a little bit longer to test that too, because I feel like they might still be a little too stiff.

これはブレーデン(Braden Gellenthien)選手のコメントです。意訳すると、

ハロンX/C4のために作ったシャフト(X10 350)はTRX8には硬く、52ポンドで使用していたが、55ポンドにしないとよいグルーピングを得ることができなかった。ただ、それでも硬い感じがするから、もう少し矢を長くしようかと思う。

といった感じです。もちろん、これは1例にしかすぎませんが、2016年モデルから2017年モデルに変えた時、ブレーデン選手はイーストンとは反対に矢を”柔らかくする”必要性を感じているようです。

2016 Mathews Halon X (330fps)/ C4 (310ps)
2017 Mathews TRX 8(322fps)

次に、ホイットからマシューズに移籍したジェシー選手。2017年の3Dセッティングはまだわかりませんが、スーパードライブ23の発表時に2016年の3Dセッティングを明らかにしています。26.5インチ(26インチとする)/ 60ポンド(*64ポンドとする) / ファットボーイ 500/ 140gr となっています。使用している弓はプロコンプエリートFX・スパイラルX(328fps)です。

*通常よりも重いポイントなので4ポンド追加しました。

ジェシー選手は2016年の競技では500番を選択していました。2016年チャートではT8(500)、2017年初版チャートではT9(450)、イーストン再計算版ではT11(350)となっています。このデータは2016年のものですが、ジェシー選手は2016年競技においては、2016年のイーストンのチャート通りの選択で競技に臨んでいたことがわかります。


なんか自分の意見の擁護になってしまっているので…硬めのシャフトを選択する選手を探しています。パワーということで、一番に思い付いたのは左から2番目のビッグキャット・スティーブ選手ですが、見た目通り彼はドローレングス32.5インチと超大型の選手ですが、使用しているシャフトはプロツアーの340番で、案外柔らかいものでした。まぁ、再計算版だと250番(T14)相当なので、使用できるシャフトなんてなくなっちゃうんですけどね。


イーストンの新チャートに対する見解と対策。

解決しました。この記事は1月25日版について言及したもので、訂正された3月1日版についての記事ではありません。この問題は解決済みです。

昨日、イーストンから新しいチャートが正しいというコメントがあり、速報で記事としました。一日経ち、それに対して考えてみたいと思います。まずはイーストンのチャートの変化を見ていきましょう。16年間の変化です。

現在であればX10プロツアーで見ていくのが正解だと思いますが、2001年当時にはなかったシャフトなので、ずっと存在するACCで見ていきます。選択は競技用では一般的だと思われる325fpsで58ポンドで28インチの場合のイーストンの推薦です。

2001 440 (ACC 3-39)

2016 440

2017(旧) 470 (ACC 3-28/3-39)

弊社掲載 415 (ACC 3-39/3-49)

2017(新) 320 (ACC 3-60/3-71)

2001から2016年は同じです。2017年のカタログでは柔らかくなりましたが、統合的に判断し、弊社ではこれは編集ミスと判断し、415と少し硬めに変更されたと判断したものを掲載しています。そして、1月25日版では、これは320と少しではなく、ものすごく硬いものに変更されました。29インチになるともはやX10プロツアーで選択できるスパインすら存在しないくらいです。あまりにもおかしいので、使用を停止するよう呼びかけましたが、イーストンからはそれで正しいという回答でした。

その理由としては「近年のCPの傾向に合わせて再計算され、エネルギー蓄積力の高いモデルに合わせて」というコメントが出ています。

正直、私には理解できないです。2001-2016年の15年の変化でも推薦スパインが変わらなかったのに、2016-2017年だけで440から320へ変わるほど何かが変わった理由が理解できないのです。

しかし、理解できないというだけでは、事態は前進しません。どうすべきかという話になります。この問題で多くの専門家に連絡を取った時に、一番多かった返事は「チャートは目安に過ぎない」というものでした。まぁ、その通りだと思います。

現時点ではベガスシュートで事態が前進し、イーストンからさらなる説明があると思われます。その時点までは、やはり新しいチャートは使用すべきではないというのが私の意見です。イーストンからのコメントを受け私の方から再度質問を提出しました。

それはハンティングとの兼ね合いです。イーストンからは2017年版は最新のエネルギーが高いコンパウンドボウに合わせ再計算されたという回答でしたが、当然ですが、ターゲットモデルだけではなく、ハンティングモデルもエネルギーが高まっています。さらに言えば、ハンティングモデルのほうが安定性よりも、殺傷能力を上げるためによりエネルギー重視になっています。ですので、これまで業界ではハンティング用モデルの場合、チャートよりも1番手硬いものを選択するというノウハウがありました。ターゲットで440なら、ハンティングは390を選択しますし、ハンティング用のカタログでもそのようなチャートになっています。イーストン(2016年まで)、CX、ビクトリーともにです。ゴールドチップでは区別はしていません。

2017年のハンティングカタログ(これは訂正されておらず1バージョンしかない)では、これまで通り、390推薦となっており、ターゲットで推薦される320番手は、73-78ポンドで初めて推薦されます。

つまり、イーストンの現在のカタログ(ターゲット・ハンティング双方)に問題がないとすれば、ターゲットモデル58ポンドと、ハンティングモデルの76ポンドが同じエネルギーを持つという見解です。

これは…私の理解力ではおかしいとしか言えません。

また、現在自分がセッティングを進めているプライムでは、チャートより1つ柔らかいものをお勧めしていますが、それでも370となり、エリート時代にぴったりスパインがあった450よりも2番手も硬いシャフトが正解になります。プライムのアドバイスが作られた2016年のカタログに従えば、1番手どころか、2017年のチャートでは5番手ほど柔らかくする必要があります。

Arrow Selection and Setup for Target Bows
http://www.g5prime.com/target-bows-target-arrow-selection-shaft-setup/

安定性重視で低速のターゲットボウが320推薦で、エネルギー重視で矢速の速いハンティングボウが390番推薦という、ターゲットの方は硬いシャフトを使うべきという概念はアーチェリー業界に存在しないものでした。イーストンからの最新モデルによって再計算したという見解は受け入れるしかないですが、ハンティングボウのほうが柔らかいスパインをという概念は業界に存在しないものです。これの説明があり次第、新チャートへの移行を弊社では進めていくこととします。


3Dアーチェリーとフィールドアーチェリーの違い。

先日、3Dアーチェリーについての記事を書きましたが、少し情報が不足していたために、質問がありましたので、補足します。

3Dアーチェリーとフィールドアーチェリーとは当然異なる競技ですが、シャフトを選択する時の違いは的があるかという点です。フィールドアーチェリーはご存知のように、的があり、真ん中に行くほど点数が高いのです。

対して、3D競技はハンティングを競技にしたものですので、ターゲットは急所(バイタルエリア)が高得点ですが、ここが急所ですよとは教えてくれません。選手はハンティング同様にターゲットの形状から高得点の急所を予測してシューティングすることは求められます。

そのために、フィールド競技よりも、より矢は太いほうが有利とされていて、3D競技向けシャフト=大口径&軽量という意味でメーカーのカタログでは使用されています。


リック・マッキニー選手の真直度についての意見はV5で3インチ(ぎりぎり10点)

先日、真直度とシャフト性能について記事を書きました。真直度とグルーピングについて、オリンピック・世界選手権で多くのメダルを獲得したリック・マッキニー選手が以前コラムで書いていたのを思い出しました。

紹介します。


In the late 1980’s AFC and I ran tests to determine how straight does the arrow need to be in order to carry a 3 inch group at 50 meters or 55 yards. We used a recurve, fingers with a speed of near 200 feet per second. We found that .010″ T.I.R. (Total Indicator Reading) was the maximum in order to keep a 3 inch group at this distance.

リック選手は、1980年代後半にAFC社(現在はアーチェリー関係の製造はしていないと思います)とシャフトの精度とグルーピングについてのテストを行っています。その結果、リカーブボウを用いて200fps(現在のリムであれば40ポンド前後のリムでX10を射った時がこのくらいの矢速)で矢を射ち出した場合、50mにおいて3インチ(おおよそ10点の大きさと同じ)のグルーピングを作るために必要な精度はTIR 0.01″としています。これより精度が悪いシャフトでは、どんなに良いシューティングをしても矢の精度が問題で点数を失います。

TIR は Total Indicator Reading という意味で簡単に言えば、+-表記の倍です。ですので、TIR 0.010″ = +- 0.005″ = V5グレードとなります。

現在はもう80年代後半ではないので、すべてこの通りではないとは思いますが、矢の精度の問題で50mで10点を外さないで済むのは、V5 = +-0.005″ まで、V3以上であれば競技用として最低条件は満たしている(*)というのが、業界での一つの共通認識であるのは、このあたりのテストから来ています。

*イーストンでいうとカーボンワン/ACCグレード

参照
Carbon Tech :: Arrow Spine, Weight and Straightness


【MYBO オリジン】コンパウンドボウができるまで

マイボウ(MYBO)がコンパウンドボウ・オリジンが完成するまでの動画を公開しました。リカーブもおおよそ同じような感じで作られています。

一点、7:50くらいからのコンパウンドソリッドリムの作り方はリカーブとは大きく違いまでので興味がある方はぜひ見てみてください。

メーカーによってはアルマイトを外注に出しているメーカーもありますが、マイボウでは自社ですべて行っているようです。

mybo_edge2mybo_edge1ちなみに、週末、マイボウは2017年モデルの新しいコンパウンドボウ・エッジ(Edge)を発表しました。詳細のスペックはまだ出ていませんが、プロシューターの方が全英選手権などでかなり活躍しているので、WAの試合で実績を残すようになるのも時間の問題かなと思います。

楽しみです。


高性能の弓であなたのシャフトは??

%e3%82%b9%e3%83%91%e3%82%a4%e3%83%b3_%e6%9f%94%e3%82%89%e3%81%8b%e3%81%8f現在2017年に向けてサイトの説明などの更新を行っています。最新の弓具はあなたの矢(スパイン)にどのような影響を与えるのか?

チャートが毎年更新されるとき、リカーブとコンパウンドでは逆のことが起きていることはご存知でしょうか。

リカーブの場合、高性能なリムほど効率性が向上します。リムの効率性というのはアーチャーがリムを引いた時に使った力のうち、どれだけが矢に伝わったかという率です。この値が高いほど、矢に多くのエネルギーが伝わり、矢速が速くなります。

%e3%83%81%e3%83%a3%e3%83%bc%e3%83%882005-2017これは2005年のチャートと2017年のチャートとの比較です。私が加工して28インチだけ表示してあります。T9カテゴリーが示すスパインは同じものです。リカーブ、2005年当時では、56-60ポンドだけの強さがないとT9カテゴリー(X10 なら450)が使えません。しかし、2017年では53-57ポンド、3ポンド低い実質ポンドでもそれだけのエネルギーがシャフトに伝わることがわかります。つまり、高性能な弓に買い替えた時には、矢を”硬くしない”とスパインが合わなくなります

では、コンパウンドではどうか。コンパウンドは効率性ではなく、矢速のレーティングが存在します。この場合、自分の弓を55-60ポンド(試合で使用できる上限)を基準にした時、2005年の弓では291fpsあれば、T9カテゴリーとなりますが、2017年の弓では、T9で55-60ポンドが適合する弓は301fpssとなります。より速い矢速の弓となっても、スパインを硬くする必要がありません。これはつまり、高性能な弓に買い替えた時には、矢を”柔らかくしない”とスパインが合わなくなります

(下記技術的メモ)

リカーブの場合チャート表に出ているのは見かけ上のポンド数(リムに蓄えられるエネルギー)ですので、これを一定とすると、性能の向上ともに効率性の向上することで、実際に矢に伝わるエネルギーは向上する。よってスパインが硬くなる。


コンパウンドの場合チャートに表記されているのは実際の矢に伝わるエネルギー。つもり、すでに効率性を考慮した値である(効率性によって3つの欄が選択される)。よって効率性の向上の影響を受けない。つもり、効率性という性能はそもそもチャートには関係ない。チャートから読み取れるのは、矢に伝わるエネルギーが3.4%(301/291)向上しても、同じスパインが使用できることを示す。

その理由としては多様な要素があるが、基本的にはシャフトの受ける的方向以外のストレスは性能の向上とともに低下する方向にあるので、パラドックスを発生させる力は低下している(リカーブでいえばコンパウンドボウはどんどんリリースがうまくなっている)。矢に伝わるエネルギーを3.4%向上しても、シャフトがパラドックス方向に受けるストレスは同じであることを示す。


ホイット2017年の変更を理解するための前提知識。

%e3%83%9b%e3%82%a4%e3%83%83%e3%83%882017%e3%83%aa%e3%83%a0%e3%83%9c%e3%83%ab%e3%83%88もの事には順番があり、それによってより正しく物事を捉えることができるようになります。

ホイットの2017商品も納品されました。データもほぼ揃いました。ただ、販売開始はもう少し待ってください。まずは正しい情報を提供してからだと思ってます。

今回は自分が知る限り、ホイット史上、競技用モデルでは最大の変更量です。競技用の上位モデル、プロディジーシリーズ3種類、GMX、GPXと競技用の上位モデル5つがすべて販売終了です。この思い切り、かつ、販売店にも痛みをもたらす(全部の在庫がモデル落ちになる)変化を決定した裏には、以前に書いた問題があります

今回、ホイットではリムボルトの精度をコレット式に変更することで高め、問題に一掃を狙っていますが、その結果がどのなるかはレビューだけでは不十分だと思います。時間による検証が必要でしょう。

今回の問題は主にアメリカとヨーロッパで起きました。日本では大手が沈黙したこともあったかもしれませんが、あまり大きく取り上げられることはなかったと思います。その理由は、この問題を正しく理解するには知識が必要だったからだというのが自分の結論です。

ホイットの解決策の裏を取れば、ホイット自身が理解していた問題を知ることができます。最新のモデルでは軽量化がはかられと書いてあれば、前作は少し重かったというマーケティングのフィードバックがあったと考えてよいでしょう(もちろん、違う理由もあり得ます)。

今回、ホイットはリムポケットのシステム変更により、「究極の正確さとリムアライメントが得られる(The result is ultimate accuracy and precise limb alignment.)」としています。

この言葉は理解できますか? …理解できる方は下記の記事を読む必要はないです。

%e3%83%aa%e3%83%a0%e3%82%a2%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%a1%e3%83%b3%e3%83%88リムアライメント(limb alignment)とは、簡単に言えば、日本ではセンターショットとされているものです。信じられない方はグーグルで”center shot recurve”と検索してみてください。結果はほとんどが弦と矢の関係の話となるはずです。日本では、名前がついていないように感じますが、ポイントを弦から1/2幅程度出すといったチューニングが英語のCenter Shot(センターショット)です。

*違った意味で日本に伝えられた理由は知りません。

%e3%83%aa%e3%83%a0%e3%82%a2%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%a1%e3%83%b3%e3%83%882では、(日)センターショットと(英)リムアライメントが同じ作業からというと、作業は違うが結局同じことをしているのだと考えられます。アライメントとは一直線にするという意味ですが、この場合には4つの線が水平に並ぶことが求められます。

1. ハンドルの平面部
2. ハンドルとリムU字部分の接合部
3. ハンドルのダウエルピン(Dowel)がリムと接する部分
4. リムの面

リムがねじれていない限り、この4点揃っていれば、リムアライメント(日本でいうセンターショット)には問題がないと判断できます(*)。

*リムがねじれている、ハンドルがねじれている、センタースタビライザーのブッシングがまっすぐではない、センタースタビライザーがまっすくで出ない場合などは異なる

さて、ウィンでもホイットでも、この4点がそろうことを目標としています。違いはそのやり方です。ウィンやGMXでセンター調整をしてリムを左右に動かす(図でいえば3を赤線上で移動される)と、センタースタビライザーが的に対して、右に行ったり、左に行ったりすることが確認できると思います。これは、3と4の位置を変えることで、リムの力によってハンドルをねじり、1の線のアライメントを得る(1の線の2・3・4の線に対して水平に持っていく)作業だと考えられます。

逆にいくつかのメーカーで採用されている偏芯型のリムボルトによってリム根元の位置を2の直線状で移動させる作業も同様の効果をえます。

しかし、ホイットが採用した新しいシステムでは、2も動き、3も動き、さらに3は2軸で調整できます。胴部が多いと考える人もいるかもしれませんが、それは受け入りられませんでした。

私の方ではこの問題に対して、可動部が多すぎることがプロディジーシステムを不安性にさせていると判断し記事を書きました。それに対して、今回ホイットのエンジニアは可動部を減らすのではなく、そのかなめであるリムボルトの精度を向上させることで問題を解決しようとしています。

%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%83%81%e3%82%a7%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%b3%e3%83%ac%e3%83%83%e3%83%88%e5%bc%8f%e3%83%aa%e3%83%a0%e3%83%9c%e3%83%ab%e3%83%88ちなみに、コレット式は写真の通り、2016年のホイットのプロティラーがただのボルトなのに対して、SFなどの低価格モデルでも古くからコレット式は採用されています。

ホイットは精度という一言で片づけていますが、この意味はブレース時というよりも、リムボルトをよりしっかりとハンドルに固定し、可動部という範囲からこのボルトを逃すことだと考えています。

以上、予備知識として。残りはレビューに書きます。


初めの弓を購入する方へのアドバイス(リカーブ向け)

%e3%82%ab%e3%83%81%e3%83%a7%e3%82%ab%e3%83%90%e3%83%ad_%e7%a5%9e%e6%a5%bd%e5%9d%82週末行われた社会人フィールドに出場した弊社の通販スタッフの坂本が好成績を収めたようです。おめでとう!!

この半年間、自分は試合に出場・練習はお休みして、料理ばっかり作っています。先日は珍しい形のチーズ(カチョカバロ)を焼いてました…しかし、これはアーチェリーのための練習ですので頑張ります。料理とアーチェリーがどうつながるのかは後日記事にします。まだ、いい書き出しが思いつかなくて。

今日は初めて弓を購入する方で予算が決められない方向けの記事です。弊社では幅広い価格の弓を扱っていますので、見積もりを依頼されるときにいつも予算を確認しているのですが、逆にいくら必要なのですかと逆質問されることが多く、今回の記事では、初めて弓を買うときにどう予算を決めるべきかについて書きます。

*一式の場合、3万円~30万円くらいまでの幅があります。

6月に書いた記事をお客さま目線で書き直したものです。

低価格帯商品をいかにして日本で売ればよいか

アーチェリーは趣味・余暇であり、弓は嗜好品の一つだと思っていますので、予算がある方は自由に購入をしていただければよいと思います。最初から最高級の弓を買って塗装の美しさを楽しむのも、ベテランの方がエントリー向けの弓を使って当たらなさを楽しむのも、楽しむことが大事ですので、人が口を出すものではないと考えています。


要約
・弓はバランス重視
・ハンドルとリムの値段から決める
・人によって変わるのはケース

さて、予算が決まらず、「程よい」セットをそろえたい場合、アーチェリーにおいては一点豪華主義というものはあまり一般的ではなく、その効果も確認されてはいません。バランスよくそろえることをお勧めします。高い弓と安い矢、安い矢と高い弓など、ほかのパーツの予算を削ってても、一つのパーツにお金をかけるべきという意見はあまり一般的ではなく、弓は全体で働くので、競技向けの弓はバランスを重視で選択されるのが一般的です。

そのバランスの中心はハンドルです。まずはハンドルの予算を決めましょう。ハンドルは安いもので1万円、高いもので10万円弱です。しかし、値段が変わることでの変わるものと変わらないものがあります。例えば、チューニング性(簡単にチューニングできるか)はどの価格帯でも大きくは変わりません(*)。

*以前にチューニングすることは大変困難なミザールという弓がありまして…苦労したのはいい思い出です。。。この弓、センター調整機構が外からはアクセスできず、リムを外さないとインジケータすら見ることができないという恐ろしい仕様でした。

初心者としてのハンドルの評価(*)を大きく分けると、性能、品質、メンテナンス性、仕上げ、塗装、補修の6個かと思います。このうち、予算をあげていっても大きく変わらないのは、品質とメンテナンス性、3万円(実売)を超えると大きく変わらないのは性能、予算を上げれば上げるほど変わるのが仕上げと塗装と補修です。

*経験者であれば、この部分は変わり、グリップの形が自分に合うか、重さ、剛性、重心などと異なりますが、初めての弓を買う方にそれを提示して選択していただくことは困難だと思います。

まず、品質とメンテナンス性。これは高いほど良いということはありません。特に品質に関してはそうです。よく誤解されている方がいるのは品質の部分で、高いハンドルのほうが耐久性が高いと勘違いされていますが、これまでの10年近いプロショップ勤務での経験でいうと、むしろ低価格モデルのほうが故障が少なく耐久性が高いです。上位モデルではコストがかかった最新の技術が採用されているのに対して、下位モデルでは何年、何十年前の実績あるローコストの技術が採用されるからです。

100km当たりの故障率と価格が軽自動車とF1では反比例するのと一緒です。最新技術を使用したF1仕様の車のほうがはるかに価格は高いですが、故障は実績ある車台を採用する軽自動車のほうが少ないです。

次に、性能ですが、これは一般論とすることが難しいものの、10年ほど前にナショナルチームの選手の方が実売2万円後半のサミックのアスリートハンドルでシングル(WA1440)で1330点近くを射ち、近年の世界大会(ターゲット)でのメダル実績があるハンドルの中で最も安いハンドルがウィンのWINEXで、4万円台であるので、3万円台前後から上では性能は大きく変わらないというのが個人的な意見です。もちろん、上位モデルではハンドルの重量が簡単に調整できるなどの付加機能があり、これを性能の一つとしてとらえれば別です。

最後に仕上げ、塗装、補修(部品)ですが、この部分は大きく差が出ます。塗装はハンドルの価格に応じた手法が採用されていて、低価格モデルの場合は質があまり良くない場合もあります。これも3万円台が目安で、これ以上高いモデルでは見栄え(発色等)が大きく変わることはないのですが、コーティングの違いにより、耐久性・傷のつきにくさが変わってきます。塗装に関しては製造時のミスを除き、メーカーの保証対象外ですので、気にされる方は上位モデルを検討してください。

仕上げに関しては、ここでは見えない・性能に影響しない部分への配慮です。低価格のものでも、もちろん見える部分は塗装はされていますが、リムポケットの内部(リムを装着すると見えない部分)や、グリップが装着される部分(グリップを取りはずした時に初めて見える部分)のバリ取りや塗装は、されていないか、適当なものが多いです。対して、高いものはこの部分もしっかりとしているものが多いです(すべてではありません)。ただ、性能には影響しないし、使用時には見えない部分なので、見えない部分も丁寧に作られたかどうかという…メーカーの気持ち、心意気の差といったところでしょうか。

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最後の補修については故障したときの対応の違いです。この部分は価格差というよりもメーカーの規模が反映します。グリップが故障したとき、ホイットやウィンであれば、10年程度前のモデルくらいまでであれば、入手はできます。逆に小さいメーカーでは、生産が終了したら、1年程度でもう交換用のパーツが手に入らなくなることもあります。

長く使用し保証が終わっても、補修パーツを手に入れてメンテナンスしていきたいという気持ちがあれば、ホイット、ウィン(KAP/SF)の2大メーカーのものを選択することをお勧めします。

初心者の方で、予算が決まらない方は以上の観点で選択することをお勧めします。

ハンドルが決まれば、次はリムの選択です。リムは単純に高ければ性能が高いと考えていただいてもかまいません(*)。それ以外で低価格帯のモデルと高価格帯のモデルの違いはほぼありません。

*上達し、自分の好み、相性が良いスペックがわかってくれば別です。

ただ、ハンドルと違い、リムはサイズとポンドで同じリムでも多くの種類があり、最初のリムが自分のぴったりでずっと使っていくというケースは稀です。2-3年のうちに買い替えるケースが多いので、最初のリムは低価格でも全く問題ないと思います。また、リムを買い替える場合、同時に矢も買い替える(リムのポンドが変わると矢のスパインも合わなくなる)ので、結構な出費となります。基本的にリムは初心者の方にとっては消耗品です(**)。最初のリムは矢とセットで考えて、2年以内にまるっと買い替えても痛くない程度の金額で考えていただくのが良いかと思います。

**上達し、自身の引き尺・体力(ポンド)が決まってくれば、3-5年は使用できるようになります。リムが消耗品なのはリムの寿命が来るからではなく、自分に合わなくなってくるからです。

一式購入時にケースの購入する場合は事前にご自身でどうするか決めておいてください。基本的には4種類の選択があります。自分で用意するのが一番安くつきます。アーチェリー用でも他のスポーツ用でもメーカー原価はほぼ変わりませんが、大量に販売されるメジャースポーツ用のケースはコンテナ輸送で送料が非常の抑えられているので、アーチェリーショップでは到底対抗できない価格となっています。こればかりは企業努力ではどうしようもないので…安くしたい方は自分で用意することをお勧めしています。

次に、プロショップで販売されるソフトケース。ソフトケースは非常に軽く、電車移動などで段差が多い移動手段で射場に通われる方に最適です。価格は1万円前後です。

最後はハードケース。電車移動時の段差が弱点ですが、保護能力が高く、収納量も多いです。ジャージくらいまでであれば、どのケースでも基本的には入りますが、シューズやスコープも全部収納したい方は大型のものを選択してください。2万円前後です。

ケース類に関しては店舗側からのお勧めというよりも、お客さまがどのような環境での使用を予定しているかによって最適なものが決まるので、お客様の希望をお伝えください。

ハンドルとリムの合計額が決まれば、その金額をプロショップに伝え、残ったアクセサリー類にハンドル・リムに見合う程度のもので見積もりをとれば、初めての見積もりは完成です。あとは、財布の具合と相談しながら詳細を詰めていけばよいでしょう。1万円安くしたいなどの希望があれば、ショップの方にそのまま言えば全体のバランスから考えて調整してくれると思います。

以上、参考になれば幸いです。


コンパウンドボウの弦と追加ウェイトはどう働くのか

0.01.38.60先日、コンパウンド弦の働きについてお客様より質問があり、コメントで回答しました。お客様に伝わったのかどうかはともかく、非常に下手なイラストで説明したのが心苦しく、新しい記事とちゃんとした写真で再度説明させていただきます。

*理解には中学校レベルの物理学の知識が必要です。

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