【更新】カムリーンチューニング

【更新】2025年モデルとして発表されたホイット(HOYT)とダートン(Darton)を追加しました。

コンパウンドボウはストリングだけではなく、ケーブルと組み合わせて使用されるシステムです。ケーブルはフルドローの時にカムをサイト側に引っ張ります、そのため、プライムのシステムでも0.4度のカムの傾きがあります。その傾きはストリングに影響を与えます。

Bowtech https://www.youtube.com/watch?v=dbvVuH-nTks より

リリース後のストリングはまっすぐに返るのではなく、多少サイト側にカーブを描いて戻ります。映像はボウテックのチューニングガイドのものですが、シャフトが6mm系のものだとすると、1mm程度ストリングがシャフトに対して右にあるのが確認できると思います。

PSE ez.220

1mmというのはわずかな動きですが、競技で高いパフォーマンスを出すためには無視できない数値です。例えば、上記のPSEのEZ220システムでは、カムの位置を0.5mm単位で調整できます。特許の関係などで、各社カムリーン(カムの傾き)の調整方法、システム名が異なるので、ここにまとめました。

名称方法ボウプレス
PSEEZ.220スペーサーの入れ替え必要なし
MathewsTOP HAT筒状ワッシャーの入れ替え必要
HOYT(-2024)シムの入れ替え、ケーブルの長さ調整必要
HOYT(2025-)上下交互のシムの入れ替え必要
Dartonリムポケットでのポンド調整必要なし
BOWTECHDEADLOCKレンチでの無段階調整必要なし
ELITES.E.Tレンチでの無段階調整必要なし
PRIMECOREできるだけ発生しない技術で工夫

PSE/Mathewsのスペーサーなどを入れ替えて調整するタイプ、HOYTのケーブルの長さと合わせて調整するタイプ、レンチだけで調整できるタイプの3パターンになります。

この技術がコンパウンドボウに搭載される前の古いチューニングマニュアルでは、ペーパーチューニング時の矢の左右差はレストを左右に動かすことで調整するとありますが、カムの傾き(位置)を変更することは相対的にストリングのレストの位置を変更することと同じです。

レストを左に出す = カムを右に動かす

レストを右に出す = カムを左に動かす

となります。矢が真っすぐ飛ばない理由は多々ありますが

①レストを動かして調整

②カムを動かして調整

③矢のスパインやポイントの重さを変更して調整

この順番がおすすめです。

パラスポーツとルール

ルールとは何かについての質問をいただきました。回答を書いていたら長くなってしまったので、記事にしました。ただ、アーチェリーにとってルールとは何かという一般論は難しいので、今回の事件を前提とした記事になります。

ルールはつくられたものです。ルールを作っている人の頭の中では完璧な運用が見込まれていると思いますが、ルールは言語を介して表現されており、さらに、日本に入ってくるときには翻訳も介しています。言語ですら完璧な体系ではない以上、ルールは理論上完璧にはなりえません。では、どうするのか。WAが発行している審判のガイドブックはこのように考えています。

審判はどういう意味でしょうか。私のコンピューターの辞書と類語辞典には、JUDGEという単語の12以上の解釈が載っています。 検証、証明、確立、試行、立証、学習、確認、考慮などです。 その中で私が特に気に入っているのは、「正義」と「仲裁者」です。「審判はただルールを引用し適用するだけ」とはどこにも書かれていません。

盲目的と常識的なルールの適用における違いについて、簡単な例を挙げてみましょう。警察官が時速100キロ以上でスピード違反をしているドライバーを停止させた場面を想定してみましょう。ドライバーは飲酒運転をしていたことが判明し、警察官は職務を遂行し、そのドライバーに手錠をかけ、刑務所に連行しました。10分後、同じ警察官が同じエリアでまたも時速100キロ以上でスピード違反をしている別のドライバーを停止させます。2人目のドライバーは、トラックにはねられ、後部座席に重傷を負って意識不明の子供がいること、そして病院に急いで連れて行かなければならないことを説明し、見せました。同じ法律がほぼ同時に破られたのです。同じ罰則が適用されるべきでしょうか? もちろん違う!と皆さんは言うでしょう。

しかし、判事たちは時にそのようなことをします。①ただ本を開いて、射手のスコアを減点する罰則を見つけようとするのではなく、可能であれば、選手のスコアを救うルールを見つけましょう。もし選手が他の競技者に対して有利になるようなルール違反を犯していた場合、距離、時間、矢の本数、スコアなど、②その選手に有利になるようなルール違反を犯していた場合、厳格かつ即座に処罰しなければなりません。これは、ルール違反を犯していない他の選手の権利を守るためです。

このガイドブックは、審判や大会主催者が仕事をし、③アスリートが競技を楽しむのを助けることを目的としており、WAルールブックに代わるものではなく、また完全であると主張するものでもありません。 疑問がある場合は、ルールブックと④現在の解釈を参照してください。

WORLD ARCHERY JUDGES’ GUIDEBOOK V1.2024 意訳

さすが審判のトップの意見です。もう論点がすべて含まれており、私がお伝えしたいこともすべて含まれているのですが、解説しながら話を進めていきたいと思います。下線を引いた部分は4点です。まずは③と④、記事の最初に書いた通り、ルールブックも審判のガイドラインも完璧ではありません。そのためにWAに質問して解釈(Interpretations)を求めることができます。

https://www.worldarchery.sport/rulebook/article/82

今回にからめて言えば、WAのルールに関するページでは、オランダの協会からのパラアーチャーがパラ競技以外(つまりは一般の70mwラウンド等)でも1.25m以上のスペースを要求できるかという質問があり、パラアーチェリー委員会から、パラアーチェリーの規則はパラアーチェリー競技のみに適用されるという回答を得ています。

パラ競技ではなく、一般の競技にも適応されるパラアーチャーに関するはものは、一般大会のルールの中に盛り込まれています。例えば、上記の項目はパラアーチェリー競技に関する第19章ではなく、第12章にあります(全ア連競技規則)。

つまり、パラアーチャーの場合

→ パラ競技に参加する 第19章のルールが適応される

→ 一般大会に参加する 第19章のルールは適応されない

となるわけです。下線①(スコアを減点する罰則を見つけようとするのではなく、スコアを救うルールを見つけましょう)の精神にあるように、アーチャーは自由であるべきであり、危険でない限り、自由に大会に参加する権利がありますし、大会主催者側も私が知る限りは、多くの選手に参加してほしいと思っていますので、パラアーチャーが一般の大会に参加することを不快に感じる人はいないでしょう。

一方で、下線②(自身に有利になるようなルール違反を犯していた場合、厳格かつ即座に処罰する)の精神から見た場合、一般の大会でパラアーチャーがクラス分け時に使用して良いとされた補助具以外を使用したとき、一般の審判が、例えば、スツールから車椅子に変更した時に、この変更が選手にとって有利になるかどうか、判断基準が存在しません。なので、その大会での点数を非公認記録とすることで、他の選手の権利は守られると考えられます。

以上をルールがどうなっているのかと言えば、問題になっている第19章はWAの見解によれば、パラ競技だけに適応されるので、一般大会に参加するパラアーチャーには適応されない。パラアーチャーは健常者と同じレベルで自由に競技に参加する権利を持っている。しかし、他の競技者との公平性の担保のため、一般競技に一般の競技規則(第19条の除くもの)で参加したときの記録は、ランキング等には使用できず、非公認記録として記録されるが、私の理解するルールです。

WAがパラアーチェリーの章はパラ競技のみに適応されると判断している以上、その傘下の全ア連も当然同じ解釈を共有します。一方で、正式な資料を見つけることはできませんでしたが、日身ア連は全ア連の傘下にないという組織図が見つかりました。全ア連のホームページでも確認しましたが、加盟団体事務局一覧には日身ア連はありません。つまりは、日本身体障害者アーチェリー連盟はWAとは上下関係になく、WAのルール解釈を共有すべき立場ではないわけです。なので、独自の思想に基づいてアーチェリー競技のルールの解釈することは立場的には可能ですが、同じ内容の通知に対して、2つの解釈があるのはいかがなものでしょうか。

そして、これに巻き込まれたAさんBさんは…残念です。

アーチェリーとスーパースロー撮影の歴史

アーチェリーとハイスピード撮影についてのコメントが来ました。それに関しては別途返信ましたが、考えてみれば、このテーマについてちゃんとした情報発信をしてこなかった責任はあるので、まとめてみることとしました。

現在では動画と写真という概念がありますが、20世紀前半には同じものでした。写真を連続で撮影して、それを連続再生したものが動画です。記録映像で見たことがあると思いますが、当時は手回し撮影機で動画(連続写真)を撮っていました。手回しなので、現在のように30fpsと設定すれば、勝手に毎秒30枚の写真を撮ってくれるわけではなく、カメラマンの技術で一定にする、この記事を書くにあたって初めて知ったのですが、そのずれを更に上映する機械も手回しだったので、カメラマンの撮影速度のブレを上映技士が補正してあげていました。そのために定まったフレーム数という概念はなく、大正時代の日本映画は約11-13fpsと約20%程度の誤差もあります1

浦上栄、海軍兵学校関係者協力、120fps

カメラに自動設定がなく、手で調節できるわけですから、スローモーションを撮るためには「高速度」でレバーを回せばよいだけなので、高速度撮影と呼ばれます。時期を特定することができませんでしたが、戦前には弓道の動作分析に海軍の120fpsの高速度撮影写真機が使用された記録があります2

機械を速く回せばいいと言っても物理的な限界があるわけで、1951年に出版された「高速度写真: その問題と限界」3によれば、当時のカメラを250fps以上で回転させるとフィルムが損傷して判読できなくなったり、場合によってはカメラ自体が文字通りバラバラに分解してしまうという問題が発生するようです。まぁ、そりゃそーだろと思いますが…。

米国映画テレビ技術者協会は1949年の会合で250fps以上4で撮影できるカメラをハイスピードカメラとして定義づけます。現在に至るまで定義は変わっていないように見えますが、今は10fps低い240fps以上のカメラをハイスピードカメラと呼ぶことが多いと思います。

当時、高速度カメラでは回転プレズムという仕組みによって250fpsを達成していたようですが、この仕組みの限界点が10000fpsで、それ以上はスーパーハイスピードカメラと呼ばれ、ストリップカメラという別の仕組みが導入されているそうですが、ここでは取り扱いません。

上記は1980年代の1000fpsの撮影に使用されたシステムです。見ての通り、カメラはちょこっとあるだけで、それに比べシステム全体は大変な大きさです5

こちらはハイスピード撮影の父と呼ばれたハロルド・エジャートンによって、1939年に撮影されたアーチェリーの連続写真です。300-500fps程度で撮影されたものと推測します。1940年前後にはすでに500fps程度の撮影機材は存在していました。しかし、1990年頃までアーチェリーにおけるハイスピードカメラの利用は屋内に限定されていました6

ここで冒頭の1986年にバイター社によって撮影された8000fpsのフィルム式ハイスピードカメラによる映像になりますが、8000fpsの場合、シャッタースピードは16000-20000程度設定する必要があります。つまりシャッターは写真1枚につき1/20000秒しか開かないので、直視できないほどの光が必要になります。これが2個前のシステムでカメラ以外の装置がたくさんある理由です。また、核爆発など高速度動画が比較的早い時期に収録されているのは、撮影対象自体に十分な明るさがあったからです。

https://www.apex106.com/monthly/202012/

2000年代のカメラ機材のデジタル化によって、ハイスピードカメラの低価格化が進むと同時に、センサの改良も進んでいきます。よく少ない光でも補助光源を使わず、センサの感度を上げることで実用的な画像を取得してくれます。上の写真はApexレンタルのブログのものですが、目では真っ暗でもISO409600(α7S III)ではこれほど明るく映ります。

オリンピック競技中に撮影のためにバイターの動画のように選手に光源を当てるわけには行かないので、センサの感度が太陽光で実用に耐えるようになった、2010年代後半にハイスピードカメラが中継でも使用されるようになります。

Paris hosts archery test event for 2024 Olympic Games

これはパリオリンピックテストイベントで撮影されたハイスピード動画(240fps)を明るさ無加工で切り出したものですが、放送で使うには暗すぎる印象です7。まぁ、問題点・不具合を見つけるためのテストイベントなので、ここから1年間の調整がされて、2024年の見事なライブ中継に繋がっていくわけです。

パリオリンピックでは選手は背(体の引手側)が南に設定されており、南側からハイスピード撮影がされているので、十分な太陽があれば、この条件では240fpsまで自然光で、違和感のないハイスピード動画が撮影できるところまで技術は進化しています。

一方で研究目的ではないアーチェリー放送の場合は16倍速スローで十分です。現在ではテレビは30fpsなので480fpsが16倍速になりますが、一般的なパソコンで60fps(60Hz)で、人間の目は240fpsまで差を感じることができので8、今後テレビが1秒あたり240フレームで表現された場合、16倍速スローは3840fpsに相当します。ここが技術の終着点です。その時代まで人間が画面視聴するのかはわかりませんが…2028年ロスオリンピックではどんな動画が見られるか楽しみですね。

  1. 入江良郎,無声映画の映写速度:日本の場合(下) ↩︎
  2. 浦上 栄 (著), 浦上 直 (著), 浦上 博子 (著),紅葉重ね・離れの時機・弓具の見方と扱い方,1996 ↩︎
  3. Van Oss, Willis Burton, High Speed Photography: Its Problems And Limitations, 195 ↩︎
  4. Maynard L. Sandell, “What is High Speed Photography?” Journal of the Society of Motion Picture Engineers,52:5, March 1949 ↩︎
  5. Dalton, Stephen,Caught in motion : high-speed nature photography,1982 ↩︎
  6. Harold Eugene Edgerton, James Rhyne Killian, Flash!: Seeing the Unseen by Ultra High-speed Photography,1939 ↩︎
  7. Paris hosts archery test event for 2024 Olympic Games ↩︎
  8. 肉眼を凌駕するカメラの「目」、進化止まらず イメージセンサー[ソニー、キヤノン] ↩︎

アーチェリー指導とスポーツ科学

交流するために何名かの弓・弓術・弓道の研究家の方とツイッター(X)で繋がっていて、定期的に確認しているのですが、朝起きたら、こんな投稿がピックアップされて私のところに表示されてきました。

弓道界隈の人口を考えると投稿から半日で1.4万表示は結構盛り上がっているのではないでしょうか。この記事の中身ですが、ポイントとしては、

指導者としての技術レベルが低い人が多いというわけではありません。技術そのものがないのです。江戸時代ならまだしも、解剖学、運動学、数学・物理学が存在しない

医師から見て弓道の指導は終わっている 抜粋

書いている方はアーチェリーと弓道を両方経験している方のようですが、正直そこまで言わなくてもと思う反面、指導される側がもう「江戸時代じゃないんだから」と、現在科学をベースとした指導を希望する気持ちも理解は出来ます。

何年か前に母校のバイオメカニクスの教授の方に連絡して、アーチェリーをバイオメカニクスの視点から研究したいと相談しましたが、「それは難しすぎて現実的ではない」と言われました。そこから、分野の論文を読み漁っているのですが、今では教授の方の言葉はよく理解できます。科学はまだアーチェリーを語るレベルに来ていないのです。おそらく弓道も同様でしょう。

人体は驚くほど複雑な事を簡単にこなします。現在、ある程度わかっているのは単純な筋肉・腱・骨と栄養補給くらいかなと思います。アーチェリーで言えば、適切な栄養補給と、いかにしてポンドアップして、400-500本練習できるからだを作るか、46ポンドの弓が無理なく引けるようになるか程度で、どうしたら上達するかはほぼわかりません。

アーチェリーは複雑な動作です。角度・速度・リリースポイントの解析が必要である点では、「投げる」運動と重複する点が多く、野球・バスケットボールはアーチェリーと比べ物にならないほどの大きな市場で、大量の指導者が存在していますが、それらの人員・資金があっても、正確に投げるために何が重要かわかっただけの段階にすぎません。

現在、プロプリオセプション(proprioception = 固有感覚)が投げる動作の(リリースポイントの)正確性に関わる大切な要因であるとされています。

プロプリオセプション(固有受容感覚)は、スポーツ科学において重要な役割を果たす身体感覚システムです。筋肉、腱、関節からの情報を統合し、身体の位置や動きを無意識的に把握する能力を指します。これにより、アスリートは正確な動作制御や姿勢維持が可能となります。特に高速で複雑な動きを要するスポーツでは、プロプリオセプションが適切なタイミングと力加減を可能にし、パフォーマンス向上に寄与します。

AI(CLAUDE 3.5 SONNET)による要約

簡単に言えば、足元を見なくても、足の小指をタンスにぶつけないで歩ける能力ですが、これが加齢とともに低下すること、病気・事故によって低下した時にある程度回復させるためのリハビリ方法の研究が進んでいる程度で、アスリートとして、いかにこれを向上させるか、科学的な方法は発表もされていもいません。

野球・バスケットボールの投げるは難しすぎます。腕で投げるだけではなく、身体自体の重心移動を伴い、下半身も動作に関与します。科学というのは積み上げですので、まずは(変数の少ない)簡単な動作を研究しようとなります。研究が進んでいる分野の一つにダーツがあります。同じ投げる動作であっても、(厳密には無視できないかもしれませんが)下半身を使わず、ほぼ肘から先だけを使い、片手だけで投げ、体の重心移動はなく、風の影響がない屋内で行い、最も重要なポイントは、実験をするための熟練者が存在します。単純化した投げ動作をみんなにやらせて実験しても比較対象群が存在しません。一方、ダーツにはプロ選手が存在していて、素人とプロの比較が容易です(*)。

*当初私は偉い運動学の先生がなぜこぞってダーツ?? と思ってました、無知は怖い。

80年代に投げるスピードと正確性にはトレードオフの関係がある(speed-accuracy-trade-off)ことがわかってきます1。この説明としては、正しくリリースするためのポイントがあると定義したとき、投げるスピードが速いということは、そのポイントを手が通過する時間も速い2ので、正しくダースをリリースするための許容時間(Time in Success Zone: TSZ)が短くなるというものでした。

ダーツ研究をたくさん紹介しても仕方ないので、最近の研究としては、この発展として、プロ選手でも、そのタイミングをピタッと合わせる戦略を取りに行く作戦(B)と、タイミングのばらつきを手の動きによって補正することで、的中のための許容時間を倍に伸ばす作戦(A)の2つが存在しているというものです3

おそらく、この作戦の違いの後者は、経験則で知られているように、タイミングを逃しすなどのミスをした時に、最後まで矢の動きに影響を与えることのできる押し手の動きによって、それをリカバリーしようとする動きに関連付けることができると思いますが、ダーツという変数が5つ程度しかない運動に対して、アーチェリーは変数が10以上は存在するので、解明が進むのはまだまだ先だと考えます。

アーチェリーの動作の前に存在していたとされる投石・投槍(全身動作としての投げ)、その動きの単純化のダース投げの研究がやっと解明された時くらいです。もっと科学的な指導、科学的な裏付けという、被指導側のニーズはよく理解は出来ますが、もうしばらくお待ち下さい。

  1. Gross, J.B. and Gill, D.L. (1982) Competition and instructional set effects on the speed and accuracy of a throwing task. Res. Quart., 53(2): 125-132. ↩︎
  2. 桜井伸二,高槻先歩, 投げる科学,大修館書店,1992 ↩︎
  3. 那須 大毅, 松尾 知之, 投げの正確性に関わる上肢キネマティクス:ダーツ熟練者にみられる異なる方略間の比較, 体育学研究, ↩︎

税金のせいで台無し? 武器の進化と退化の学際的研究 弓矢編

トップの写真は研究の失敗の原因と思われる国からの交付金(税金)による研究のために行われた研究成果の公開展示の様子です。復元弓が完璧な姿で展示されています。

前に複合弓が奈良時代の終わりごろ、8世紀に日本で誕生していたと書きましたが、調べていくと、初期のコンポジットボウ(複合弓)はそれまでのセフルボウよりも性能が低かったという研究が存在するようです。それがこの記事で扱う「武器の進化と退化の学際的研究 : 弓矢編」です。性能が低かったといってもいろいろな観点があるので、どの視点で比較しているのかなと論文を読んでみたら…この共同研究したのは立派な学者さんたちですが、内容がとんでもないデタラメでした。毎回と思うのですが、なぜ弓の研究なのに弓の専門家を入れないで「学際的研究(多数の専門分野を跨ぐ)」と命名していながら、同じ分野の研究者メンバーを固めるのでしょうか。不思議です。

まずはこの報告書のメインとなっている「復元弓の工学実験」という研究について説明しますと、いろいろな時代の弓が見つかっていますが、貴重な文化財なのでその弓を引いて性能を調べるわけにはいかないので、同じ形状・材質でレプリカ(復元弓)を作成して、復元弓で実験を行って、どんな弓で、どのような性質を持つのかを研究しようという、テーマ自体はとても立派なものであります。

ここまでは良かったのですが、実際に復元弓で実験を行うと3号は少し引いただけで折れてしまったのです。ここから歯車が狂っていきます。その後、折れないように10-15cmしか引かないで、実験が進んでいきます。復元弓に関しては多様なデータを取ることが求められるので、弓を破壊しないで研究することは当然大事なのですが、すべてのデータを取得した後、その弓はどれだけ引けるのか(引いたら壊れるのか)を知ることも大切です。

科研費(税金)を使った研究は当然報告を求められます。最終段階で(レプリカに過ぎない)試料を研究のためには全部破壊しても問題ないと思いますが、(私の想像の域を超えませんが)最後に復元弓をきれいな状態で展示発表をするために、弓を壊す可能性のある実験はしなかったのでしょう。

それによって研究結果がでたらめになっていきます。復元弓1について見ると、有限要素解析というシミュレーションを行って、理論値は15.8cmが限界であるとしたうえで、10cmしか引きませんでした。

その上で、現代の成人男性が使う和弓が20キロと定義し、この弓を20キロ引いたときの初速を計算して、このグラフだと48cmくらい引いた時に初速189km/hです…実験で10cmしか引いておらず、その時点ですでに折れそうで、シミュレーションでは約16cmで破壊される弓を48cm引いたときの初速をこの弓の性能としているのです。しかも、試算してみたwwwならともかく、このデータを結論に使ってしまいます

コンポジットボウである弓(復元弓11号)は129km/hであり、復元弓1(189km)よりも遅く、当初の予想と違う結果でびっくりと結論付けています。そして、この結果が他の研究において、先行研究として参照され、初期のコンポジットボウはセルフボウに比べて遅かったという説が増えていきます。いや、弓1は189km出ないって…!

この図は比較論としては使えるのか悩んでいるところですが、5年前の最新のコンパウンドボウで弓の効率性はやっと90%を達成しています。最新のリカーブボウでも80-85%であるのに対して、初期の木と竹を張り合わせただけのコンポジットボウがいきなり効率性90%を達成することはありえないでしょう…ただ、コンポジットボウの効率性が一番高いという点では、数値は全部間違っていても、全部割合だけ間違っているなら、これらの弓の効率性の比較として論じることに使用することはできるのかもしれませんね。

せっかく税金を投入したのだから、研究の最後にすべての復元弓を壊れるまで引いて、その値の90-95%程度をその弓の性能(初速)とすれば、その結果はすごく有用な数字であったのに…残念です。展示するのそんなに大事かな?

九和の弓 周礼考工記

Traditional Archery from Six Continents より

ここで一旦、中国最古の弓製造マニュアルである「周礼 考工記」1に触れておきます。周礼について詳しくは触れませんので細かいところを知りたい方はwikiを読んでいただくとして、3000年前に書かれた本です。もっと後に書かれたという説2もありますが、その数字を採用しても2000年前に書かれた詳細な弓製造マニュアルで、中国最古、(合理的な指示としては)世界でも最古のものではないかと思います。細かな年代の議論は本質ではないと思うので、3000~2000年前の(古代中国)弓についてまとめます。

厳密ではありませんが()の中は私による注釈です。

弓は六つの素材を巧みに結合させることで完成します。

・幹(コアとなる木材)は矢を遠くまで飛ばす

・角(ファイス側のバッキング材)は矢を迅速に飛ばす

・筋(バッグ側のバッキング材)は矢が深く刺さるようにする

・膠は弓を接着して一体となす

・糸(絹糸)は弓身を堅くする

・漆は霜や露など水に対する抵抗力を増す

「幹・角・筋・膠・絲・漆」が弓をなす六材であり、木は冬、角は秋、漆は夏に準備する。膠は聞かず(いつでも良い)。幹(木)は叩いて澄んだ音がするものが良い。矢を遠くまで飛ばしたい者(射遠者)なら、形状は自然に曲を持っている材を選ぶ。矢を深く射ち込みたい((射深者))なら、まっすぐな材を選ぶ。幹は木目に対して斜めに裂いてはいけない。最上の材は柘(やまぐわ)であり、最下は竹である。

角は秋に殺した牛のものが厚みがあって良い。春に殺した牛は薄くて良くない。痩せた牛、病気の牛の角も良くない。角の根は白く、中央は青く、先は太い角が最良である。角は脳に近いほうが柔らかくその弾性を利用してやる。先端は脆いのでよく曲がるところに使ってはいけない。

筋は艶があるものが良い。機敏な動物の筋を使えば、その弓もまた機敏な弓となる。筋はくたくたになるまで叩いてから使う。

膠は最上の接着剤である。鹿、馬、牛、ネズミ、魚、犀(サイ)のものを使う。漆は澄んだものが良い。絹糸は水にあるような色のものが良い。

冬に幹を切り、(秋に獲た)角を春に浸し、夏に筋を作り始め、秋に接着する、冬にゆだめ(弓矯・檠=弓の形を成型するためのジグ)にかけて形を整え、大寒に漆の出来を試す。これで春には弓が完成する。

グリップ(写真の3)は薄いと力の抜けた弓になる、厚すぎるとスタッキングして引けない弓になってしまう。木材、角は火で炙って曲げる。弓は三尺(*)引く、引ききった時、弓は流水の如く曲線を描く。

*当時は20cm/尺=60cm、また1尺3(長さ)=1石(重さ)としているが、1石がどの程度なのかの確かな記録はない。およそ20キロ程度ではないか。つまり、3石とは60kgの弓である。

6尺6寸(122cm)は上製、6尺3寸は中製、6尺は下製である。射手の身長によって使い分ける。

・九和の弓

九和の弓は最高の弓である。九和とは三均の三均である。

一均.材・技・時 (良き素材・作り手の技術・正しい季節のバランス)

二均.角・幹・筋 (3つの反発力を生む素材のバランス = ブレース時)

三均.角・幹・筋 (3つの反発力を生む素材のバランス = 引き切った時)

これらが完璧である弓を九和といい、最高の弓なのである。

弱弓は狩猟と的あて競技に使用する、中弓は練習に使う、強弓は鎧などの硬いもの射抜くのに使う。

・スパイン調整とFOCの調整、シャフトの形状

この部分こそ理解にアーチャリーを知っている人が必要で、中国学の本田二郎先生は注釈で「あり得るのか?」と疑問を呈しているが、意味は明らかである。矢のシャフトを水に浮かべる。上を陽、下を陰。シャフトのノック溝は縦にいれる。

何をしているのかと言えば、水にシャフトを浮かべた時、素材が完璧に均一でない限り、比重が軽い部分(スパインが柔らかい)が上に来る。比重が重い部分(スパインが硬い)が下に行く。不完全な素材を使って矢を作る時、硬い部分と柔らかい部分が左右にあると矢は真っすぐ飛ばない。上下に配分するのが一番良い妥協案となるので、そのための製造工程ですね。3000年前から中国はこのような技術まで開発していたのはすごいです。

的あて・高射用の矢の重心は先端から1:2の場所に置く、兵矢・田矢(通常の矢だと思われる)は2:3の場所にに重心を置く、殺矢は3:4の場所に重心を置く。シャフトは前から1/3の部分まではストレートで、そこからノックに向かって細くテーパーしていく。

以上。

  1. 本田二郎 著『周礼通釈』下,秀英出版,1979.11. 国立国会図書館デジタルコレクション ↩︎
  2. 布野 修司,<エッセイ>『周礼』「考工記」匠人営国条考 ↩︎
  3. 浜口富士雄 著『射経』,明徳出版社 ↩︎

銃弾を空に向かって撃つとどうなる?

前回の記事で矢の位置エネルギーについての計算をしていますが、銃弾にもそれがあるはずだというコメントを頂きました。コメントには返信しました。存在はしますが、それは理論上のものであり、使用はされていないと書きましたが、書いたあとに…なんでだろうとふっと思いました。

AIに向かい合う2つの塹壕書いてもらったら…繋がった

第一次世界大戦での塹壕戦では、直線では相手を狙えないために手榴弾など上から降ってくる系の兵器が活躍しています。であれば、銃も上に向かって撃てば、弧を描いて相手の塹壕に届き、敵を殺傷できるはずで、そのような戦法がないとも言えないですね。良い気付きをありがとうございます。

調べました。やはり、軍事家でも同じようなことを考えていて、マグヌス効果を観測したベンジャミン・ロビンズが1761年にて最初の実験が行われています。その後、詳細な実験は20世紀に前半に集中して行われ、ジュリアン・ゾンマヴィル・ハッチャーという日本語のウィキもある有名な技術者がこれらをまとめ、「役に立たない戦法」であると結論づけて一連の研究は終わりを迎えます。

ジュリアン・ゾンマヴィル・ハッチャー(Julian Sommerville Hatcher、1888年6月26日 – 1963年12月4日)はアメリカ陸軍の軍人で銃技術者。ストッピングパワーの研究を行った初期の学者でハッチャースケールを作成し、銃の研究開発でいくつかの著作を残している。引退後は全米ライフル協会の発行誌アメリカンライフルマンのテクニカルライターを務めていた。

https://ja.wikipedia.org/
マイアミにあった垂直発射実験装置

詳細はその著書「Hatcher’s Notebook(第20章:Bullets from the Sky)1」で詳細に書かれています。10ページ程度ですので、文書をテキストファイルにして、Notebook LMにぶち込んで、AIに要約してもらいました。

まず、弾丸を垂直に発射した場合、その落下地点を予測することは非常に困難であることが述べられています。これは、高高度における風の影響が大きいためです。高高度の風は地上とは異なる方向に吹いていることが多く、弾丸の軌道を大きく変化させる可能性があります。特に、弾丸の上昇速度が低下する頂点付近では、風の影響を長時間受けるため、落下地点の予測はさらに難しくなります。

次に、資料では弾丸の落下速度と危険性について、実験結果に基づいて詳しく解説されています。実験の結果、.30口径の弾丸の場合、落下時の速度は約300フィート/秒(約91メートル/秒)で、そのエネルギーは約30フィートポンド(約41ジュール)であることが明らかになりました。このエネルギー量は、一般的に致命傷を与えるには不十分であるとされています。つまり、.30口径の弾丸の場合、垂直に発射しても落下時に致命傷を与える可能性は低いと言えます。ただし、.50口径の機関銃弾や12インチ砲弾など、より口径の大きい弾丸の場合、落下時の速度とエネルギーは著しく増大するため、非常に危険であるとされています。

さらに、資料では落下地点の予測可能性について、弾丸の弾道係数との関連性が指摘されています。弾道係数は、弾丸の空気抵抗に対する性能を表す指標であり、値が大きいほど空気抵抗の影響を受けにくいことを意味します。資料によると、12インチ迫撃砲弾や航空爆弾、ロケット弾などのように、重量が大きく弾道係数の高い飛翔体は、落下地点を正確に予測することが可能です。これは、これらの飛翔体が空気抵抗の影響を比較的小さく受け、安定した軌道を描くためです。

一方、小銃弾や機関銃弾のような小型の弾丸は、弾道係数が小さく空気抵抗の影響を受けやすいため、落下地点の予測が困難であるとされています。特に、高高度における風の影響が大きいため、垂直に発射された弾丸は落下地点が大きくばらつく可能性があります。

AIによる要約の抜粋

つまり、矢に比べて遥かに高くまで届くので、1.上空の風の予測まで必要にになる、2.風の影響を受ける落下時間が長い、3.小型の弾丸は空気抵抗の影響が大きい、4.そもそも十分に致命的なエネルギー量がない、という以上の理由から、位置エネルギーを利用した空からの銃弾(Bullets from the Sky)は現実的ではないと論じています。

*これは90度での発射についての実験ですが、3の致傷エネルギー量以外は45度などでの発射にも適応できる議論だと考えます。

一方で、科学ライターのMike Followsは関連するコラム(Can bullets fired upwards cause injuries when they return to earth?)で、

(矢の位置エネルギー)を利用したのが、1066年にイングランドで行われたヘイスティングスの戦いで征服王ウィリアムであろう。ハロルド王率いる相手軍は高台に防御陣地を構えていたため、ウィリアムのノルマン人弓兵の矢は盾の壁に当たって無害に跳ね返った。一部の学者は、戦いの終盤にウィリアムが弓兵に命じて、矢を盾の壁の上に高く放ち、上からイングランド軍に降り注がせたと考えている。重力の力で落下する矢は、直接放たれた矢ほどの速度は出なかっただろうが、そのエネルギーは、上空からの矢を予期していなかった兵士たちを殺すには十分だったのかもしれない2

と語っています。ハッチャーの研究を引用すれば、1.矢はせいぜい40mほど上空までしか飛ばないので地上から上空の風の予想が容易、2.落下時間が短い、3.重さに対しての空気抵抗は小さい、4.十分なエネルギーを有していて落下地点の予測が困難ではない&銃弾に比べて大きいので目視可能性が高い、という点で、非現実的な「空からの銃弾」と違って、「空からの矢」は有効だったと考えます。

前の記事、なぜか嘘の記事だと思った人がいるようですが、真面目に書いているつもりです。

追記メモ : 3人以上で操作するマシンガンでの弾道を利用した間接射撃は存在していたようです3

  1. Julian S. Hatcher, Hatcher’s Notebook, Harrisburg, Pa., Military Service Pub. Co., 1947 ↩︎
  2. https://www.newscientist.com/lastword/mg25233622-900-can-bullets-fired-upwards-cause-injuries-when-they-return-to-earth/ ↩︎
  3. https://vickersmg.blog/2021/01/17/indirect-fire-a-primer/ ↩︎

矢の速度と再加速の計算

5月に更新された新型AIではもう十分にアーチェリー業務で実用的なレベルにあるという記事を書いてからは結構利用させていただいています。先日、歴史学で弓についての研究(?)というか研究の中で、矢の威力を扱っているものを読みましたが、計算がぜんぜん違うよな…となりまして、具体的には矢と銃弾を混同していて、銃弾は基本的にほぼ真っすぐ飛び、長距離になると下に落ちていきますが、矢は高さの到達点から落ちていきながら、位置エネルギーによって再加速されるのです。

質問をするために自分で矢の威力を計算したいとなりましたが、運動方程式が難しすぎるので、AIに任せてみました。AI(Copilot Pro)は自分では計算できないようです。よく考えれば、LLM(大規模言語モデル)ですので、計算はしないか。計算するためのコードは書いてくれるので、自分で計算することにしました。

計算するに当たり、初期設定としては初速などが当然必要ですが、この数値の中で、空気抵抗係数だけがわからないのですが、ここも勉強してみたら難しそうだったので、調べたら直径7mm・20gのイーストンシャフトで測定した論文がありました。

こちらの論文では空気抵抗係数は1.94ということになっていましたのでこの数字を使って1、計算すると、一発で結果が出ました。

60m/sで40度で打ち出した場合、到達距離は237m、129m時点で最高高度に到達して59m。そこからは59mからものを落とすと加速するのと同じ理由で、最高点での33m/sから、的中までに7m/s(22%)、40m/sまで加速します。Copilotありがとう。考古学や歴史学で弓の威力について書かれる場合に、矢が再加速する性質を持っていることが無視される傾向にあると思います。

  1. H. O. Meyer, Applications of Physics to Archery, 2015 ↩︎
使用コード(Google Colab)
import math
import csv

# 初期設定
v0 = 60.0  # 初速度 (m/s)
angle = 40.0  # 発射角度 (度)
mass = 0.02  # 矢の重さ (kg)
Cd = 1.9  # 空気抵抗係数
rho = 1.225  # 空気の密度 (kg/m^3)
A = 0.000036  # 矢の断面積 (m^2)
g = 9.81  # 重力加速度 (m/s^2)
time_interval = 0.01  # 時間間隔 (s)
total_time = 10  # 計算する総時間 (s)


# 角度をラジアンに変換
angle_rad = math.radians(angle)

# 水平方向と垂直方向の初速度成分
v0x = v0 * math.cos(angle_rad)
v0y = v0 * math.sin(angle_rad)

# 速度と位置の初期値
vx = v0x
vy = v0y
x = 0
y = 0

# 結果を保存するリスト
trajectory_data = []

# 時間経過に伴う位置と速度の計算
for t in range(int(total_time / time_interval)):
    # 空気抵抗力
    Fd = 0.5 * Cd * rho * (vx**2 + vy**2) * A
    # 空気抵抗による加速度
    ax = -Fd / mass * (vx / math.sqrt(vx**2 + vy**2))
    ay = -Fd / mass * (vy / math.sqrt(vx**2 + vy**2))
    
    # 重力の影響を加えた垂直方向の加速度
    ay -= g
    
    # 速度の更新
    vx += ax * time_interval
    vy += ay * time_interval
    
    # 位置の更新
    x += vx * time_interval
    y += vy * time_interval
    
    # 現在の速度
    velocity = math.sqrt(vx**2 + vy**2)
    
    # 地面に達したら計算終了
    if y <= 0:
        break
    
    # 結果をリストに追加
    trajectory_data.append((t * time_interval, x, y, vx, vy, velocity))

# CSVファイルに保存
with open('trajectory_with_drag_and_velocity.csv', 'w', newline='') as file:
    writer = csv.writer(file)
    # ヘッダーを書き込む
    writer.writerow(['Time (s)', 'X Position (m)', 'Y Position (m)', 'X Velocity (m/s)', 'Y Velocity (m/s)', 'Total Velocity (m/s)'])
    # データを書き込む
    writer.writerows(trajectory_data)

print('CSVファイルに軌道と速度のデータが保存されました。')

ヤマハの技術をちょっとだけ

資料を漁っていたらヤマハのアーチェリー製造に関する技術資料をちょっとだけ発見。メモです。まとめると、

・アーチェリーのハンドルにはWPC(ウッド・プラスチック・コンビネーション)材を使用してい、その接着にはレゾルシノール樹脂系接着剤を用いる

・アーチェリーリムにはカエデ/マトアを木心材としてもちいて、心材同士はレゾルシノール樹脂系接着剤で接着、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)やGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)をエポキシ接着剤で接着し、その上からFRP(繊維強化プラスチック)をウレタン系接着剤で接着する。リムチップなどにはABS樹脂を用いる

・衝撃が強く場所には厚さ0.2mm程度のSBR(スチレンブタジェンゴム)を介在させて緩和する

・圧締にはエアーバック方式を採用して、ねじれを最小限にする

の4点がポイントかと思います。素材に関しては特に新しい知識はないですが、3種類もの接着剤を使い分けていたこと、圧締に空気を使うのは面白いアイデアだなと思います。以上、90年代前半のヤマハのアーチェリー用品製造に関するメモでした。使うタイミングが来るのかはわかりませんが、一応共有として。

AIにアーチェリーはもうイケます

昨年の3月にAIの実用性をテストしてみました。GPT3.5だったと思います。あれからだった一年、今は結構な頻度でAI(Copilot)を使っていて、1年前の記事を更新させていただきます。上の画面が2024年の5月にホイットアーチェリーのホームページを開いた状態でAIに答えさせたチューニング方法のやり方です。概ね正しいと思います。詳細さに欠けますが、右下の「もっと詳しく教えて」を押すと、より詳細なな情報が提供され、今を称賛し、過去を否定するわけではありませんが、私が学生時代に渡された一体いつ書かれたのかわからない部秘伝のチューニング書よりは信用性は高いと考えます。

下記はお話にならない去年の回答。Copilotというサービスですが、中身は同じGPTなので、1年間でこれほど進歩するとは驚くばかりです。これは無料のサービスです。課金モデルのあるらしいので、もしかしたら有料AIでは完璧な答えがすでにできるレベルかも知れません。

私はもうホイットのチューニング方法を調べたりはしませんが、今勉強している狩猟魔術(Hunting Magic)について聞いても、典拠付きで情報を整理してくれます。たった1年でこれか…しかも無料。すごすぎます。一般的な質問を人間に聞く時代が終わりますね。