弓随想 弓道愛好家がアーチェリーを理解するために~弓の文化論~

部屋の片付けをしていたら出てきた本です。アマゾンによると2019年に買ったらしいのですが、ちょっと読んで放り投げた本です。まだ売っているのかなと思ってアマゾンを覗いたらまさかの評価3.7とそれなりの評価でまだ販売中でした…どういう人が読んでいるのかわかりませんが、この本でアーチェリーを勉強しないでください。

パラッと読み返しただけで、

1. 昔は弓道家が和弓でオリンピックに参加していた → な訳はない

2.現代のアーチェリーは女性参加を即すために競技距離を短くした → 19世紀から違う距離です

3.ベアボウ部門は和弓と同じでウェイトを装着できない → できます

ということで、ご理解ください。

【追記】処分予定ですがコメントの返信のためにもう少しはこの本を手元においておきます。ただ、次の掃除では処分するので、コメントのタイミングによってはもう中身の再確認ができないかもしれません。


一流になるために、まだないもの

バイターのシューティングレンジ

一流の選手と一般の選手との違いは当然技量ですが、同じ道具を使うことはできます。トップアーチャーがどのようなチューニングをしているのか、練習をしているのか、ネットが発達した現在ではトップレベルの知識にもアクセスできます。

トップレベルの情報も、道具も手に入りますが、一流選手のようにアクセスできないのがシューティンレンジ(アーチェリー場)です。上記の写真はヨーロッパのトップ選手が合宿を行う「Werner & Iris Beiter Centre」です。

天井にカメラが有り、自分の射形を上から確認できます。こういうラインの確認用ですね。的前にもカメラがあり、矢の的中を画面で確認できます。

遅延表示システムは4カメラに対応しています。

こちらはアメリカのトレーニング施設で近射的にプロジェクターで射形をうつしてのトレーニングは国内ではまだ導入されていないのではないかと思います。その他、3Dキャプションシステムなども利用できるそうです。

こちらは韓国のトレーニング施設。天井に高さを常設できるカメラが2台備え付けられています。こちらでも大画面に的中を表示するシステムがありますね。

ドイツのトレーニングセンターでは屋内では分析ソフトでのトレーニング、屋外のフィールドでは三脚を高くまで伸ばして、上からの動画を撮影しています。多くのチームが上からの目線を活用していることがわかるかと思いますが、学校のように専用の射場がない場合、公営の射場でトレーニングしている選手には難しいですね。

日本のトレーニングセンターにももちろんあり、遅延システム天井のカメラ、的中確認のためのカメラ、さらに、風を再現する送風機が導入されているそうですが、こちらの施設もトップアーチャー専用であり、一般の方は利用できません。

実はこれくらいしか情報がないのですが、どこの国でも写真や動画がいくつかあるだけで、どのような設備をどう活用しているのかは、そのまま、その国の競技競争力になるので公開されている情報は限定的です。日本の施設は見学できるようですが、ガイド付きで写真の撮影は禁止されています。

自分の新宿の会社にも似たように設備があったのですが、川崎に移転後は天井高の関係で、上からの撮影などはできなくなっており、解決策を模索している状況です。

https://www.sugiokasystem.co.jp/kakoroku-series より

近年、カメラ、センサ、解析装置自体は低価格化され、遅延システムは昔10万円近くしましたが、現在ではスマホのアプリでできますからね。ただ、自分が練習していた射場は、おそらくプライバシーの関係で、写真動画撮影が禁止されたりして、装置自体は普及が進んでいるのに、それを活用できる場所がないのは非常に残念に思います。

上達するための装置・システムなのに、上達したい一般のアーチャーがそれらにアクセスできず、逆にトップアーチャーはそれらを使用できるという状態を何らかの形で解決できないかは常に考えています。

使用したいくつかの写真は、WAのマイ・レンジで見ていただけます。


【追記】AIにアーチェリーはまだ早いようです。

(追記) 人生初めてAIに騙されました…ここまで回答されると、へぇー、研究あるんだと思ってしまい、検索したけど、全く見つからず、掲載されているジャーナルが公開されていたので、該当号をみたら、そもそもこの論文存在しません…論文ごと全部ウソついてくるとは怖いわ。

最近、ChatGPTのようなAIが話題なので、アーチェリーに使えるか調べてみました。基本の基本のリムアライメントですが、ちょっと何を言っているのかわからないですね…残念。ちなみに、AIは英語ベースで開発されているので、翻訳の問題かなと思い英語でも聞いてみましたが、

Adjust the limb alignment: Adjust the limb alignment by adjusting the limb bolts. Turn the limb bolts clockwise to increase the limb tension, which will decrease the bow’s draw weight and increase the bow’s speed. Turn the limb bolts counterclockwise to decrease the limb tension, which will increase the bow’s draw weight and decrease the bow’s speed.

Chat GPT March 14 ver

英語で聞くとティラー・ポンド調整のやり方が返ってきます。英語でもダメですね。

歴史の記事を書いたときに、いくら調べても情報が手に入らなかった18世紀のドイツのアーチェリー競技の情報を聞いてみると、正直にわかりませんという回答が返ってくるのはびっくりでした。グーグルなどの検索サイトでは、情報が本当はそこに存在しなくても、何かしらの、価値のない情報(バイオリンのBowとか)が紹介されて、それが本当に無価値であることを検証する時間を取られますが、AIの回答のように「情報が存在しないという情報」でも価値はあります。

ということでは、AIにアーチェリーはまだ早かったようです。仕事を奪われずに済んでホッとしています。

ただ、進化は早いそうなので来年くらいに再検証したいと思います。

ちなみに4月に大阪に行くのですが、人間と同じくらいに間違っていますw (東京から大阪に行く新幹線は東日本でも西日本でもなくJR東海で切符を買う必要があります)


ロングボウと日本の弓

源平合戦図屏風, 国立博物館所蔵

11-12世紀の西洋で防具の進化に対抗するためにイングリッシュロングボウが誕生した当時、日本ではどうだったのか。和弓には全然詳しくないので、語るつもりはありませんが、一応知識として知っておかないと、と思いこの時代の専門家の本を読んでみると、諸説ありますが、西洋同様に甲冑が進化したのに対して、弓を強くするのではなく、武士を射るのではなく、騎乗する馬を狙う戦法が広がっていったとのことです。「首をとる」文化と「捕まえて身代金」文化の違いによる差異なのでしょうか。

一方、その傾向を「昔は馬を射るようなことはしなかったが、近年はまず馬の太腹を射て、跳ね落とされ徒歩立ちになった敵を討つようになった。」と嘆く歴戦の老戦士もいたようです(*)。

*高橋昌明「騎兵と水軍」,日本史(2) 中世Ⅰ,有斐閣,1978

日本の弓に関しては多くの専門家がいますが、この本の内容は非常に興味深かったです。特に、中世においては「弓」が戦闘の中心にあったが、豊臣秀吉の刀狩りは武装解除ではなく、身分制度の固定化が目的であり、明治では権力側(軍・警・官)が帯刀権を独占し、靖国刀などの軍刀にいたり、「刀は武士の魂」となったという流れは、自分にとっては新鮮な見方でした(*)。

*著者は別に日本刀をディスっいるわけではなく(財)日本美術刀剣保存協会で鑑定審査をしていた日本刀側の人です。

「驍勇(ぎょうゆう)絶倫にして、騎射すること神の如し。」

すげぇ。


初期におけるセンターショットの研究

1942年、初期のセンターショットボウに関する研究についての資料を入手したので、一部翻訳してみました。ここからのモダンリカーブボウが誕生していきます。

A/B

In this group of experiments the arrow had no freedom to offset the faulty three finger release as it had to pass right through the center of the arrow rest.

PERFORMANCE CHARACTERISTICS OF CENTER SHOT BOWS AS AFFECTED BY TYPE OF RELEASE, ARROW SPINE AND GLOVE TIP THICKNESS By L. A. QUAYLE Cleveland, Ohio 1942.2 Bowman Review.

この実験では、矢はレストの中心を通らなければならないので、3本指リリースの不具合を相殺する自由はない。

Experiments Using Bows “C” and “D”

All arrows irrespective of their material, length, diameter or spine grouped around the point sighted whether shot with three-finger, pinch or mechanical release, with a glove or with bare fingers.

With the type of arrows rests used on “C” and “D” bows, the arrows were free to move to the left (bow held in left hand) without obstruction and the arrows had an opportunity to readjust themselves after receiving the side push caused by the string going around the finger tips, and they there fore grouped around the point aimed at.

弓「C」と「D」を使った実験

すべての矢は、素材、長さ、直径、スパインに関係なく、3 本指、ピンチ、メカニカル リリース、手袋または裸の指で射ったかどうかにかかわらず、サイトポイントの周りにグルーピングしました。

「C」と「D」の弓に使用されているアローレストのタイプでは、矢は妨げられることなく左に自由に移動でき(RH)、矢は弦が指先を通る時に起こるサイドプッシュ(*写真)を受けた後、自分自身を再調整する機会があり、狙ったところにグルーピングします。

サイドプッシュ

Tests Using Pinch Release

With the pinch release or its equivalent in a mechanical releasing device, all four sets of arrows shot from all four bows grouped around the point sighted on, the sight being kept in the vertical middle of the bow at all times and adjusted vertically to take care of the different weights of the arrows in the different sets.

If matching target arrows for spine to a fine degree is as difficult and important as many archers appear to believe, then the center shot bow of proper design has an advantage over other types, in that arrows of greatly different spines will group together on the target without any allowance being made for differences in spine.

トリガーリリーサーを使用したテスト


トリガーリリーサーを使用して、4 つの弓すべてから発射された 4 セットの矢すべてがサイトポイントの周りに集まり、サイトは常に弓の垂直方向の中央でよく、異なるセットの矢の異なる重量に対応するために垂直方向にだけ調整されます。


背骨のターゲット矢印を細かく一致させるのが難しい場合、多くのアーチャーが信じているように、適切な設計のセンターショットボウは、スパインの違いを考慮せずに、大きく異なるスパインの矢がターゲット上でグルーピングするという点で、他のタイプよりもメリットがあります。

The center shot bow also has the advantage that very light arrows may be shot with heavy bows giving flatter trajectories than are possible with bows that force the arrow to bend in order to go around it.

The 28″-7/32″ diameter 290 grain “Z” arrows performed very well when shot with a 45 lb. “D” type bow. This “Z” arrow has so little spine it became permanently bent when shot just once with a 45 lb. bow of conventional design.

センターショットの弓には、非常に軽い矢を高いポンドの弓(*)で射つことができ、クリアランスのために矢を迂回させる弓よりも、平らな弾道を与えることができます.

*注 50ポンド・28インチ引きの場合、ロングボウ、センターショットリカーブボウ、コンパウンドボウの順にエネルギー効率が高まるのに対して、推奨スパインは順に、400(ウッドアロー)、450(X10)、470(X10プロツアー)と柔らかく軽い矢が適合します。

直径 28″-7/32″ の 290 グレイン(スパイン 0.280) 矢は、45 ポンドの “D” タイプの弓で射つと非常に優れた性能を発揮しました。 この矢はスパインが非常に小さいため、従来の設計の 45 ポンドの弓で 1 回だけで曲がってしまいます。

No doubt hundreds of center shot bows have been made and shot but it is seldom that one is seen in use. However, as indicated above, properly designed center shot bows have certain inherent advantages which, when more generally recognized, should increase their use considerably, and may become the favorite type with many archers.

間違いなく何百ものセンター ショットボウが作られ、テストされていますが、実際に使用されているものはめったに見られません。 ただし、上記のように、適切に設計されたセンター ショットボウには固有の利点があり、より一般的に認識されるようになると、その使用が大幅に増加し、多くのアーチャーに好まれるタイプになる可能性があります。

PERFORMANCE CHARACTERISTICS OF CENTER SHOT BOWS AS AFFECTED BY TYPE OF RELEASE, ARROW SPINE AND GLOVE TIP THICKNESS By L. A. QUAYLE Cleveland, Ohio 1942.2 Bowman Review.


WINのマニュアルも読んでみたが??

ホイットのマニュアルを10年ぶりに翻訳したので、ついでにWINのマニュアルも見て、中身があるなら翻訳してみようと思ったのですが、書かれている内容が…指示はわかるのですが意味がわからない。

リム/ライザーのアライメントを確認した後、図のようにフルドローでのアライメントを確認することをお勧めします。 弓の最初のセットアップではセンター ショットが正しいとしても、リムが正確でないと、フルドローの時にリムがねじれます。 これは、シューティングでトルクを発生させる最も重要な理由の 1 つです。 アライメント チェック デバイスを使用すると、簡単にチェックできる場合があります。 

英語のざっくりとした訳

以上の内容が書かれているのですが、指示はわかります。ねじれを確認しろということです。しかし、ホイットであれば、この後、「x」の状態では、シムを移動して調整しろという指示が続くのですが、WINのマニュアルはここで終わっています。

えっ?

「x」の状態だったら?? この次のページが保証条件なので、保証を確認してくれということだろうか。

ちなみに解決方法は色々あるのですが、簡単なのは、正しい方向にリムチップをねじってあげることです。各メーカーがストリンガーで弓をはるように指示しているのも、はるときにリムにテンションが正しくかからないと、それが原因でリムがねじれてしまうためです。

それが原因でねじれたのであれば、基本反対側に同じテンションをかければ修正できます。低ポンドのグラスリムはそれで修正できます。最上位モデルの高ポンドはこの方法では修正できないで、リム側の問題であれば交換以外は打つ手がありません。

まぁ、マニュアル頼りでチューニングする人はほぼいないので、ここで詰む人もいないとは思いますが、翻訳する内容もないので、翻訳は行いません。MKのものは下記の記事のやり方での指示でしたので、参考にしてください。FIVICSは公式サイトで確認できず、Gilloは調節方法だけでした。


700万アクセスありがとうございます!!

気がついたら700万アクセス超えてました。3月12日に700万行ったのかな??本当にありがとうございます。今後ともよい情報を提供できるようにがんばります。

最近、「言語が違えば、世界も違って見えるわけ」という本を読みましたが、特に9章のロシア語の青、言語が変われば、見る空の色も変わるわけ、は、バイターノックの色で戸惑った経験があるアーチャーの方には良い答えになっているのではないかと思います。バイターノックユーザーにおすすめです♪

ではでは仕事に戻ります。


逆リムに注意を…電筋図への道。

先日、ハイスピードカメラの話をしていたら筋電図の話に。ハイスピードカメラは20年前には1000万円を超えていましたが、現在では、同じ性能のカメラは1/100の値段で手に入ります。10万円しません。

同じように、筋電図を測定するための機械も20年前には100万円以上したそうですが、現在では、センサ単体であれば、5000円で手にはいります。センサさえあれば、そのデータは無料の表計算ソフトとか、無料のKinoveaと分析できるので、5000円+人件費+諸経費で筋肉の動きを可視化できるのではないかと思い作ってみることに。

システムは簡単です。センサが筋肉の動きを電圧として出力→A/Dコンバータで電圧(アナログ)を数字(デジタル)に変換→その数字をパソコンで記録するだけです。しかし、その単純なシステムが動かず…結論、ICチップの向きを反対に挿していたというなんともみっともない事を。

問題なく動きました。一部セロハンテープで貼ってたりと、全部仮なので、あとはハンダ付けしたりしてしっかり作ればもうこれでほぼ完成なのですが、筋電図のウィキペディアを読むだけでも、ハイスピードカメラと違い、データを取るよりも遥かに、それを解釈する方が難しいようなので…続きは、シーズンオフに取り組みたいと思います。

・ラズベリーパイ 3 B

・MCP3008(8ch)

・MyoWare Muscle Sensor (AT-04-001)

*Stackable Header – 3 Pin (Female, 0.1″)も買わないとはんだ付け必要


【別解釈】KSLショットサイクルへの理解。

この記事は補足です。まずは、下記のリンク先の元の記事を読んでください

KSL Shot Cycle - 日本語版 (KSLインターナショナルのウェブサイト)

韓国代表、オーストラリア代表のコーチでの成功を得て、現在はアメリカチームのコーチをしているリー・キーシクさんのシューティング理論(KSL ショットサイクル)について、許可を得て、公開されている部分(収益目的でなければ利用可能)の翻訳を行いました。当然原文に忠実に翻訳したので、翻訳しながらも、ここは補足が必要だなと思った部分があったので、こちらで補足を加えたいと思います。ですので、まずは、こちらのリンク先の翻訳した記事を読んでから、または、読みながら、この記事をお読みください。

また、KSLショットサイクルは「インサイドアーチャー」という日本語に翻訳され本でも紹介されています。そちらのほうが先です。その本の理解について、あまり多くの方とディカッションしたことがありませんが、身近のリカーブアーチャーに聞くと、難しい・よくわからないという意見が多いです。これは本の翻訳にあまり成功していないからだと考えます。KSL理論に特に難しい部分はなく、今までのシューティング理論に加えて、新しく「角運動」「ローディング」「トランスファー」が追加されていますが、その翻訳があまり良いとは思えないのです。

角運動の説明(I:P.85)として「つまり、角運動とは常に変更している直線の運動で、常に変更している方向が曲線を描くということだ。」…いかがですか?

アバロンのときも思いましたが、私にも誤字・間違いはたくさんありますが、上のような通じない日本語は使用していないと思います。雑誌アーチェリーさんの通じない日本語を気にしないのはどうかと。

ということで、すで翻訳されていますので、私の方は別解釈とします。もともとKSL理論を十分に理解している方は、逆に混乱するかもしれないので、読まないほうが良いかもしれません。KSL理論を知らない方、まだ十分に理解できていない方向けに、新しい視点と解釈で理解をしていただくことを目的としています。

・私の翻訳 = Y / インサイドアーチャー = I

まずは、角運動(Y:9章,I:10章)について解説していきます。これは、私の翻訳したものでは、動きの比率(円形の動きの比率またはROCM:Ratio of Circular Movement)と呼ばれています。

いきなり難しい言葉ですね。角運動とはなにか、ぐぐってみると、あまりヒットしないと思います。最初に出てくるのは、角運動量でWikiの定義は、「角運動量とは、運動量のモーメントを表す力学の概念である。」とあります。いきなり挫折しそうな日本語ですが、ここで使うのは、角運動であり、角運動量ではないので安心してください。

角運動量はともかく、角運動とは単純に回転運動のことです。物体の運動は大きく2つに分類でき、直線的な「並進運動」と「回転運動(角運動)」です。では、なぜリーコーチは難しい言葉を使うのか。

KSL理論は2次元の理論です。今までの「まっすぐ引き・まっすぐ押す」という1次元の理論とは違います。1次元の理論を拡張するために、回転運動(角運動)が必要となり、更にそれを微分(後述)して、並進運動に変換し、2つの運動を組み合わせることで、2次元の動きに拡張しています。

以前には、回転による動きの比率( ROCM:Ratio of Circular Movement)と全部説明が入った言葉を用いていましたが、角運動のほうがスッキリしています。意味は同じです。

言葉は長くなりますが、 回転による動きの比率( ROCM:Ratio of Circular Movement) の方で説明します。造語のほうが個々人の理解が同じところから始まることが期待されます。上の図は(いつかちゃんとした写真に変えたい…)はシューティング時の引き手のひじの回転の回転運動による軌跡です。ドローイング中の青、これは曲線、曲がっていますね。アンカーに入っていく黄色では、曲がってはいますが、湾曲が少なくより直線に近いです。最期のクリッカーを落とす部分では、直線に近くほぼ曲がっていないことがわかると思います。つまり、回転による動きは曲線を描きますが、微分と同じ概念で、その一部を切り取ると、切り取る一部が短いほど、直線的な動きとみなせます。そして、肩甲骨は軸となる背骨により近いので、僅かな角度の回転でも、引き手の肩、引き手の肘によって動きが増幅され、大きな動きとなり、クリッカーを落とすのに十分な1-2mmの伸びあいとなります。

KSL International Q&Aより

アーチェリーにおいては一貫性が重要です。従来の理論、リーコーチが、”「継続的な外側の動き」での指導手法(Y:8章)”と呼ぶものは、「まっすぐ引いてまっすぐ押す」と単純ですが、人体は1次元的ではないので、合理的ではないと彼は考えます。そこで回転運動を中心とするKSL理論となるわけですが、ドローイングでは大きく回転する回転運動、伸び合いでは、その回転量をごくわずかとすることで、体幹とLAN2(写真参照)による回転運動という一貫性を維持しながら、それを直線的な動きに変換して、最終的には「まっすぐ引いて押す」従来の1次元の直線的なシューティングに収めていくわけです。

最初に取り上げた迷訳は”So angular motion can be thought of as continually changing linear direction, as long as the continually changing linear directions follow the path of a curve.”という英語ですが、「つまり、回転(角)運動は連続的に曲線の経路をたどり、絶えず方向を変えていく直線の向きだと考えることができます。」と私は訳しますが、理解していただけるだろうか。

次のあまり見覚えのない用語として「ローディング(Loading)ポジション」があります。インサイドアーチャーでは「負荷ポジション」という翻訳を使用しましたが、私としてはしっくり来ません。ローディングという言葉、カタカナで見ることはほぼありません。しかし、

・ロード

・LOAD

・Now Loading…

という言葉ならどうでしょうか? バイオハザード1で言えば、扉が開く瞬間ですが、読み込み/読み込み中という意味で、ゲームやパソコンで見かけることも多い言葉だと思います。LOADを負荷と翻訳することもできますが、スポーツ界ではあまり使わないと考えます。アーチェリーだと国際貨物の伝票や、クレーン車などで、「負荷」という意味で使われているだけです。

リーコーチの本では、バレル(銃身)やセーフティ(安全装置)、トリガー(引き金)といった射撃で使われる言葉を多く出てきます。射撃では、LOADは装填(火薬を込める)という意味で使用されます。私としては、LOADを「負荷」ではなく、装填に近い意味で翻訳、使用すべきだと思います。また、ローディングを負荷と翻訳すると、現在進行系にできず、色々と意味不明となります。

自分はそのままローディングと訳しました。写真上の赤い矢印(押し手から引き手の肩まで)を”銃身”とみなし、そこに矢を装填する(矢を”銃身”を同一直線上に置く)という動作となります。同一直線上に置く以上、これ以上、LAN2が回転してしまうと、ズレてしまうので、2次元的な回転運動はここまで。ここからは微小な回転運動に「移行」し、瞬間的な直線運動(instantaneous linear motion)になり、クリッカーを落とし、リリースに繋がります。

赤のVの部分が9章エイミング & 伸び合いに出てくる「Vディップ」

そこで最期の言葉がトランスファー(移行)です。私は移行と、そのままのトランスファーと両方の言葉を使って翻訳しましたが、上で説明した「回転運動から直線運動への移行」と、引き始めは人体の構造的な制限によって、背中の筋肉で引くことはできず、どうしても、腕や手の力で引き始めることになります。引き込むにつけて、背中側にテンションを転換(トランスファー)することが可能となります。リーコーチによれば、0.5秒ほどかかるそうですが、引き込まれた位置で、引き始めに発生した腕や手などの不要なテンションを背中側に転換するわけです。この2つの事を行うステップです。

・角運動 - 回転運動、または、瞬間的な直線運動

・ローディング - 射撃の装填のように、自分の”銃身”に矢を込める、同線上に置く動作

・トランスファー - 直線運動への移行・背中側の筋肉/LAN2へのテンションの転換

この3つの言葉が理解できれば、あとは難しいところはないと思います。もう一度、KSL理論を復習してみてはいかがでしょうか。不明な点があればコメントください。


久しぶりにトータルアーチェリーを読む。

そういえば、東京オリンピックにショートヘアで出場した、アンサン選手に非難・中傷という記事を見たことがありましたが、ロングヘアのときのほうが自分もいいと思いますが、わざわざ非難しなくたって、髪型はその人の自由ですからね。でもショートはショートで(という話ではなかった)。。

この試合が記憶に乗っているのは、同じ韓国チームでも、これだけ対象的な射型をしているのだなという点です。どちらかといえば、クラシカルな射型をしているアンサン選手が今回のオリンピックでは活躍しましたね。

トータルアーチェリーでの射型は基本的に合理性に重点を置いていますが、その分チェックポイントが多く、週2-3程度しか練習していない選手にとっては、身につけるのは大変困難だと思っています。プロを目指して週に2000射くらいしていればいいのでしょうが、読んだ当時、こりゃ無理だと諦めた記憶があります。

しかし、実践しなくても、その情報には価値があります。特に、Vバーによってスタビライザーは3次元のセッティングになったのに対して、スタンダードな射型の理論はダブルロッド(上下にサイドロッド程度のスタビを付けるセッティング)から進化がなく、ほぼ2次元にとどまっていました。前後に2枚の壁に囲まれているイメージで射つといった理論です。

それに対して、トータルアーチェリーのKSL理論では、これを3次元(的で言えば、3-9時方向の動きの説明)で説明しています。その軸での動きに問題を感じたら、読み返すといいことがあるかもしれません。下記の記事の肘の高さの問題でその解決策を探っているところです。

KSL理論の英語版は無料で公開されています。それと、さっき見にいったら翻訳してくれたら連絡頂戴とあったので、近いうちに日本語版を翻訳して送ろうと思います。自分がだいぶお世話になっているKinoveaやそのベースのOpenCVも無料で使えるのは、誰かが中で頑張っているからです。自分も少しでも貢献できればと思っています。