サンマリノ共和国の美しいクロスボウ競技場

https://www.instagram.com/giornatemedioevalisanmarino より

ツイッターでおそらく旅行の方が、サンマリノのきれいなクロスボウ場の写真を掲載していたので、紹介させていただきます。

サンマリノの最古い軍隊組織として、14 世紀から国防を担う存在としてクロスボウの部隊があったとのことで、現在のこの美しいクロスボウ競技場はもともと採石場だった場所で、使用されなくなったのち、1960年頃からクロスボウの練習場となり、1971年に現在の形で開発されました。

Wikimedia : EvelinaRibarova

毎年、9月3日の「サンマリノ共和国の建国記念日」に祭事として、クロスボウ競技が行われているようです。また、今年であれば、7月の26-28日の日程で「中世の日」としてイベントが開催されていて、そこでもクロスボウ競技の会場として使用されているようです。

Crossbowmen’s Quarry – Cava dei Balestrieri

Googleマップの口コミを見てみたら、冬はアイススケート場になってるぽい。ユーロが120円位になったら参加してみたいですね。

https://lerimearezzo.it/portfolio-item/palio-della-balestra

イタリア文化圏では現在でもクロスボウ競技があり、さらに写真のようにこれだけの観客を集めるだけの大規模な競技会ですが、日本でもクロスボウが事実上禁止されてしまったのは、歴史的なつながりの乏しさも一因でしょうね。

信長の三段撃ちとクロスボウの輪流射撃

蹶張心法1卷長鎗法選1卷單刀法選1卷 1621年

弓の研究家の皆様とツイッターで交流させていただいているのですが、今朝、信長の三段撃ちが盛り上がっていました。信長が導入したこの戦術が実際に行われていたのか、実践可能だったのかについて、議論があることはなんとなく知ってはいましたが、いつの間にか、信長が自分で考えたことになっているのにはびっくりしました。

信長が考案したといわれる「三段撃ち」は無敵の武田騎馬軍を撃破した火縄銃の撃ち方です。

所さんの目がテン 織田信長 の科学 第1204回 2013年11月24日

三段撃ちには詳しくないのですが、海外では一般的に知られている*輪流射ち(Volley fire)の歴史について、もしかして日本では歴史研究者に知られていないのではないかと思い、記事にしました。

*英語のウィキペディアに詳細の記事があることを持って一般に知られていると判断しました。

まず、三段撃ちをどのように捉えるかですが、ここでは、「一列目が射撃を行っている間に、二列目と三列目が弾込めを行うことで、連続して射撃を行うことができる」戦術・戦法であるとすると、その歴史はそもそも火縄銃の誕生より遥かに古いもので、同様に装填に時間のかかるクロスボウ(弩)による輪流撃ちが始まりです。

『漢書』は紀元前169年に「クロスボウ兵が交互に前進しては射撃し、後退しては装填する訓練」を行わっているという記述があります。これはさしずめ二段撃ちと言ったところでしょうか。ただし、フォーメーションについての情報は残されていません。

神機制敵太白陰經 759年

759年の『太白陰經』には、輪流撃ちに関する最古の描写があります。「発弩(射る兵)」と「張弩(弩をブレースする兵)」と、おそらく指示のため「鼓(楽器)」がセットになって、100人ほどの兵士が一つの部隊として運用されています。

唐の学者杜佑(735年~812年)によって書かれた『通典』には「弩は装填に時間がかかり、突撃されると1~2回しか撃てない」「(弩部隊は)矢を集中して撃てるようにチームに分けるべきである。隊列の中央にいる者は弩に矢を番え、隊列の外側にいる者は撃つ。彼らは交代で、回転する。このようにすれば、クロスボウの音が途切れることはなく、敵は私たちに危害を加えることはできない。」と書かれており、800年頃に中国の二段撃ちと呼べる弩の戦法は完成します。

しかし、宋代に書かれた『武経宗瑶』には、二段撃ちは突撃に対して弱いと書かれています。二段撃ちでは、前列が撃ち終えた時に突撃されてしまうと、後列の隊が武器の準備が不十分なまま、突撃する歩兵に対して前進しなければいけなくなるため、「発弩」と「張弩」の間にすでに完全に弩の準備を終えて、心の準備を整えて、あとは射るだけ「進弩」と追加することで、突撃に弱いタイミングをなくすことができるとして、ここに輪流三段撃ち戦法が完成します。射る兵と準備する兵が前後するだけの戦法から1000年以上経過しています。

軍器圖說 1639

1621年の蹶張心法には、より詳細に書かれており、100名を1列として3列の300名を1つの部隊として運用し、1万本の矢を射るとしています。

古代人は敵に勝利するために一万本のクロスボウを一斉に撃ちましたが、今日はそれを簡潔に説明します。300 人のクロスボウ兵がいるとします。最初の 100 人はすでに矢を装填し、すでに前方に並んでいます。彼らは「射撃用クロスボウ」と呼ばれています。次の 100 人のクロスボウ兵も矢を装填していますが、次の列に並んでおり、「前進用クロスボウ」と呼ばれています。最後に、最後の 100 人が彼らの後ろ、最後の 3 列目に並んでいます。彼らはクロスボウを装填しており、「装填用クロスボウ」と呼ばれています。最初の 100 人、つまり「射撃用クロスボウ」が射撃します。射撃が終わると彼らは後方に退き、2 番目の 100 人、つまり「前進用クロスボウ」が前方に移動し、自分たちも「射撃用クロスボウ」になります。後ろの 100 人、つまり「装填用クロスボウ」が前方に移動し、「前進用クロスボウ」になります。最初の100人が射撃を終えて後方に戻ると、彼らは「装填用クロスボウ」となる。そしてこのようにして彼らは回転し、交代で一定の流れで射撃し、クロスボウの音は絶え間なく鳴り響く

蹶張心法1卷長鎗法選1卷單刀法選1卷

武田軍の「風林火山」が中国の兵法書から引用されたように、日本は遣唐使の時代から中国の兵法書を輸入して研究していたので、信長の三段撃ちはこの戦法をクロスボウから、火縄銃の運用に転用しただけものであることは明らかです。

もちろん、そのアイデアは素晴らしいと思いますが、そもそもの三段撃ちを信長が考案したとするのは称え過ぎではないかと思う次第です。

参考文献 : 黒色火薬の時代: 中華帝国の火薬兵器興亡史 トニオ・アンドラーデ (著) *英語版読んだのでこちらの2024年6月出版の日本語訳は本当は読んでいません…

Die Armbrust – Schrecken und Schönheit

先月ドイツから取り寄せしたおそらく現時点では最新のクロスボウに関する本、Die Armbrust – Schrecken und Schönheit(クロスボウ – 恐怖と美しさ,2019)が届きました。中世のクロスボウの本場はドイツでしたので、ドイツ語ですが、機械翻訳の精度も上がったし、夏休みを使って、読破したいと思います。

パラパラ見てみたら早速知らないクロスボウの室内競技が掲載されています。まだまだ知らないことばかりです。

近代の弾弓 中世~20世紀

Accession Number: 79.2.441 MET
弦に弾弓用の革製アタッチメントがあり、右のテーブルの上に弾(玉)がある

弾弓について、近代の使用などの情報を追加するものです。弾弓自体に関しては、前回の記事をご確認ください。

弾(石)と鏃は出てきても、弓もスリングも多く出土しない

前回、弾弓についての記事を書きましたが、調べていくにつれて、弾弓の研究が少ないこと、その理由として、2000年前の弓、弦やスリングがセットで出土することはまずなく、弾(石・陶)や鏃は出土することが多いこと、そして、考古学者は往々にして、鏃は弓の存在の証であり、弾はスリングの存在と結びつけたがり、その他の可能性を考慮しません。そこで現代まで続く弾弓の記録をまとめてみることにしました。

G 3997 © Réunion des musées nationaux – Grand Palais, 2023

これはトップの写真と同じ場面を描いた中国の皿(美術館提供の画像の解像が低い…)ですが、中国の戦国時代(紀元前5世紀〜紀元前3世紀頃)に成立したとされる春秋左氏伝の一場面です。

霊光は不徳であった。物見櫓の上から石を弾いて、下を通る者が慌てて避けるのに興じたりした。

常石茂 著『新・春秋左氏伝物語』,河出書房新社,1958.P.170

まぁ、とんでもない王様なわけですが、不名誉なことに「石を弾く」という表現はこれが最古で、当時の道具を考慮すると、弓で弾いていたと考えられています。その1000年後に唐か、唐の物を模した正倉院の弾弓が日本に伝わっていますし、その後、14世紀に書かれた大元聖政国朝典章(政治書)では弾弓規制に触れており、

都城の小民、弾弓を作り及び執る者は、杖打ち77回、その家の財の半を没す。

梅原郁,(訳註)中国近世刑法志(下),創文社

と、都市住民には弾弓の所持を禁止することが書かれており、この時代でも平民に用いられていたことがわかります。実は20世紀に入り、中国で弾弓の一大ブームが起こるのですが、それは後半に。

この本は16世紀のはじめにドイツで書かれた技術書ですが、ここには弾弓が描かれています。5世紀までの状況についての資料は全くありませんが、多くの学者はヨーロッパでは弾(玉)を飛ばす手段としては、弓ではなく、スリングであったと考えています。この状況が変わっていくのは権力者の領地に対する所有の概念の変化で、国は領地は王の所有物であり、そこに生息する動物もまた王の所有物であり、庶民に対する狩猟規制が導入され始めます。

Pietro Longhi 弾弓による鴨狩 18世紀 ヴェネチア

庶民は当然のような反発して密猟をはじめますが、大型の狩猟具は見つかる可能性が高いので選択されないようになり、小型の罠など密猟に適した狩猟具が選ばれるようになっていきます1

一方で、(日本の戦国時代の)戦後に武士の間で火縄銃が実用品から贅沢品に変化してように、ヨーロッパ貴族の間でも狩猟用具は豪華なものに変化していきます。クロスボウも弾弓(弾弩弓*)として再デザインされ、貴族にふさわしい装飾が施されるようになります。

*弾弩弓って…「弾」「弩」「弓」3つとも単体で弓という意味あるよ…

Pellet Crossbow 1550-1600年 イタリアか南ドイツ Accession Number: 29.158.651 MET
Pellet Crossbow 16世紀後半か17世紀 フランス Accession Number: 14.25.1584 MET
下に(左から順に)クロスボウ、銃、弓、弾弓が置かれている2

用途としては、鴨やうさぎのような鳥・小動物に用いられたようです。現代でもスリングの一種として、弾弓タイプのクロスボウは規制されていないので、どこかで使用されているかもしれません。このタイプのクロスボウは日本でも規制対象ではない可能性が高いです。

https://www.mandarinmansion.com/item/chinese-pellet-crossbowより

では、中国はどうだったかというは写真は20世紀前半の近代中国弾弓(写真はオークションサイトより)ですが、戦後一大ブームになります。

北京市のガイドブックで推奨の雀の駆除方法3

戦後、中国の毛沢東が四害駆除運動として雀の駆除を指示し、そのガイドブックの中で、弩、及び、弾弓が推奨されたことから、中国におけるこれらの需要が一気に高まります。中国の研究者Stephen Selbyが当時を知る弓職人にインタビューした記事では、職人は匿名を条件に雀の駆除運動によって一気に需要が高まり、しかし、その3年後に雀が実は昆虫も食べていたことが毛沢東にも理解され、生態系が著しく変化したことで、1000万以上が餓死する事態になり、もはや、雀を駆除するどころではなく、ソ連から25万羽輸入する事態になったことで、当然弓に対する特需はなくなり、現在に至るとのことです4

wiki「打麻雀运动」より 標語は「みんな雀を殺しにおいで」

このインタビューがされた1999年には北京に7つの弓職人店があったようですが、現在ではどうなっているのでしょうか? 戦前に中国で弾弓を購入した研究者の方も何人かいるそうなので、探せばどっかにあるのかな。続く。

  1. Almond Richard, Medieval Hunting, 2003 ↩︎
  2. Baillie-Grohman, William A. (William Adolph), Sport in art; an iconography of sport during four hundred years from the beginning of the fifteenth of the end of the eighteenth centuries.1913 ↩︎
  3. 除害灭病爱国卫生运动手册 (中央爱国卫生运动委员会办公室), 1959,北京 ↩︎
  4. https://www.atarn.org/chinese/juyuan/juyuan.htm ↩︎

狩猟に使われたローコスト・クロスボウ

Annual report of the Board of Regents of the Smithsonian Institution 1936.P439

クロスボウについては特に専門ではありませんが、原始的な狩猟用に使われているクロスボウに関する情報が少なかったので、まとめて記事にしました。クロスボウの起源は(地域としての)中国のあたりで、紀元前7世紀頃とされていますが、記録に残っている物、出土しているものはほとんどが武器・副葬品として製作されたもので、贅沢に高価に金属が使用されています。

ナイジェリア、ベナンの戦士によって使用されていた物(裏返し)
The Trustees of the British Museum. Asset number 1613686494
The Origin Of West African Crossbows

では、庶民が狩猟に使用していた「低価格」なクロスボウはどんなものだったかというと、原材料は木と糸…ほぼセルフボウですね。引いた弦を上の溝に入れて固定し、発射時にはピンで下から弦を押し上げて発射するという至ってシンプルな構造になっています。狩猟具は武器や副葬品と違い、作りはシンプルで、金属も使われていないために、古いものが出土することはほぼないのですが、現在でも西アフリカやアジア、20世紀前半のノルウェー(捕鯨のためなので多分もう使ってない)とネイティブアメリカンによって使用されています。

見ての通り、ストロークが短いので、強い矢を発射することは出来ず、西アフリカでは4-5m(15フィート)の距離で小型動物か毒矢との組み合わせで使用されました1。伝播としてはアジア島しょ部へは直接中国から、またはベトナムを通してと考えられており、東アフリカにはクロスボウ文化がことから、ヨーロッパからは陸伝いではなく、船によって14-15世紀にクロスボウが、航路的にヨーロッパに近い西アフリカに伝わったと考えられています2

また、ベナン地域には独自の伝説が存在し、

ベナンの伝承では、普通の弓を発明したオバ・エウアレの治世に生きたベナンの神格化された英雄の一人、イシのアケ・オブ・イロビ(Ake of Ilobi)がクロスボウの考案者でもあるとされている。

https://www.britishmuseum.org/collection/object/E_Af1940-22-2

とされていますが、専門家の間ではアフリカ土着の発明品ではないとする学者が多数派のようです3

山陰中央新報より

もちろん、日本でもクロスボウ(弩)は使用され、近年出土していますが、いずれも、金属製のトリガーで使用するタイプのもので、庶民が使うような低価格クロスボウはまだ発見されていません。上の記事、専門家がクロウボウを復元してその性能実験を行っていますが、もう違法な研究になってしまったのでしょうか。これから日本における弩の研究はどうするんですかね。残念です。

  1. Paul Belloni Du Chaillu, Explorations & Adventures in Equatorial Africa ↩︎
  2. Henry Balfour,The Origin Of West African Crossbows,1911 ↩︎
  3. Newsletter of the African-American Archaeology Network,Number 16, Spring-Summer 1996 ↩︎

警察からのお達し

本日、二度寝していたら警察からの電話でびっくり。今のスマホって画面に警察と表示されるんですね。

クロスボウの規制が3年前くらいに始まったのですが、この法律が微妙で、「矢を発射する機構を有する弓」として定義しています。弓ではなければ大丈夫なのですが、法律で弓とはなにを定義しておらず、警察の高井1は定義しなくても運営上ではすでに関税定率法別表第19部第93類注1(e)に「弓」という言葉があり、税関で問題なく運用されているので、「常識的に弓」で判断すればよいとする。

となると、私が持っているシューティングマシンが合法なのかがグレーゾーンでは。ただ、これはどう見ても弓ではないので、警察に「矢を発射する機構を有する弓」は禁止されたが「矢を発射する弓を有する機構」は合法で所持して良いよねと軽い気持ちで確認したところ、あっという間に警官5人に囲まれて、屁理屈をこねくり回して、脱法クロスボウの所持製造を企てた犯罪者予備軍としての取り調べが始まって…えっ??

ただ、素人の警察にいくら口頭で説明しても、埒が明かないことが判明したので、身分証を提出して、正式なやり方だけ聞き、後日、書類にてシューティングマシンとはいかなるものであるのかを解説付きで提出して許可を求めました。これが5月22日。

そして、本日、警察より、「弓を固定して開放する装置部分が携帯できるか」で規制するか決める&提出した資料の3パターンは規制対象ではないという連絡をいただきました。

いやー、良かったです。皆さんの警察に伺いを立てる際には気軽にではなく、十分な量の説明資料を準備していくことをおすすめします。

  1. 高井良浩,鉄砲刀剣類所持等取締法によるクロスボウの規制について, 警察政策24巻 ↩︎

クロスボウを諦めきれないあなたにACCUBOW

アーチェリーシミュレーションを製造するAccubowからクロスボウ型のシミュレータが発表されました。矢を発射する機能は装備されていないので、問題なく日本でも使用できます。

出荷はまだ始まっていませんが、なかなか面白そうですよ。

ACCUBOWは昔テスト販売したことがあるのですが、そのときにはトレーニング装置としてでした。商品自体は良いものですが、アメリカからの送料が高く、正式販売は断念した経緯があります。

今回、改めて調べた所、商品はそこまで変わっていないのですが、使用できるトレーニング用アプリが毎年更新されて進化しており、2023年バージョンでは流鏑馬とか、対ゾンビ戦といったモードがあるようです。定期的にチェックしないとですね。

2018
2022

上が2018年のアプリ、下が2022年です。この4年間の進化はすごいですね。取り扱い予定ですが、ただ、現在のテストで新しいアプリがなかなかリッチでして、業務用携帯(Snapdragon 680/4GB)でたまにフリーズします。

【2023最新】これはもうアーチェリーではないですね…最新クロスボウRAVIN R500E

【追記】アーチェリーのサイトですが、アクセス数4位と人気の記事のようなので2023年の最新トレンドに合わせて更新しました。

ユニークなクロスボウを製作するRAVINから初速500fpsの最新モデルR500Eが発表されました。初速だけではなく、その運動エネルギーは222 FT/LBSに達し、ウェキペディアによれば、日本の警察が使用している拳銃とほぼ同じ威力があります。

さらに新しく12Vバッテリーによるモーターコッキング機能が搭載されていて、ボタン一つでドローイング(コッキング)できるので、アーチェリーの特徴の一つである、弓を自身で引く必要すらなくなります。取りう使う予定ないですが、これはもう弓ですないっすよね。規制されました。成人に関しては国内規制はないので、だれでも買えてしまいます(少しの英語能力とクレジットカードが必須ですが)。

【以下加筆】

その後、Tenpointが矢速505fps、エネルギー量243ft/lbsと更に10%強力なクロスボウを発表しました。ただ、最近のクロスボウ界のトレンドは弓ではなく、サイトの進化にあります。

最近発表されたXero X1iデジタルスコープは、獲物までの距離を測定し、更にそれに合わせてエイムポイントを自動計算してレンズ上に表示し、振動とレベル(水平)を測定して、トリガーのタイミングまで判定してくれます。

やったことはないのですが、人気ゲームのフォートナイトでは、

(クロスボウは)スナイパーライフルの中でも弾道落下が激しいです。

https://70okugame.com/fortnite/

と攻略サイトに書かれており、つまりエイミングポイントはレンジファインダーによる補正を受けていないことになります。このゲームを作った人は最近のクロスボウを知らないのでしょうね。現実がゲームを超えています(笑)

もちろん事前調整とチューニングはしなければならないので、狩り場に行く前に完璧に調整できれば、後はトリガーを押すだけ…と言うか技術的にはAIが判定し、正しい位置にあるときに、自動的に矢が発射される機能もやろうと思えば可能です。

そこまで行くと、もう人間の役割はこの弓の調整とメンテナンス、それをフィールドまで持っていくだけという、どっちが主人かわからない世界がすぐそこまで来ていますよ。

クロスボウ規制、大まかに決まる、売れるものはありそうな規制に。

https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/crossbow/crossbowpower.html

クロスボウの法律ができてから半年以上経ちますが、いよいよ、規制の中身が見えてきました。これまでこの問題を取り上げてきましたので、最後まで見守りたいと思います。また、ここで書いているだけではなく、実際に警視庁さんとも意見交換させていただいています。

以上の図が警察庁科学警察研究所で測定したクロスボウのエネルギー量だそうです。50ポンドで150fpsのレーティングで7.3Jとのことで、規制値が6J(4.5ft-lbs)なので、弊社で取り扱えるところだと、下記のモデルは規制を突破できるのではないかと思います。

現在、警視庁の公式見解では、

クロスボウで発射する矢の運動エネルギーは、使用する矢の種類、重さ、クロスボウの構造との相性等の様々な要素により影響を受けますが、そのクロスボウが発射できる矢のうち、最大の運動エネルギーとなる矢の運動エネルギーの値をもって規制対象となるかを判断します。

となっていますが、ちょっとどういう意味かわかりません。実際、具体的にはまだ決まっていないようで、回答待ちですが、文字通りの運用なら、「規制対象かどう科学警察研究所に持ち込まれたクロスボウを担当者が最高の性能になるようにチューニングしてから値を測定する」となりますが、そんな運用が技術的・倫理的(*)に可能とはとても思えません。

*包丁で言えば、子供用のほぼ切れない樹脂製の包丁を持ち歩いていたら、それが危険か判断するときには、一旦警察で研ぎ上げてから危険か判断しますということでしょう。だめだろそんなの。。

そして、まさかのここでATA/IBOのレーティングの知識が活きるとは。コンパウンドボウのカタログ値の矢速を測定するときにはいくつかのルール(*)があるのですが、より高い値を出すための裏技がいくつか知られています。例えば、測定時に矢の重さは決まっていますが、長さは決まっていなく、また、羽根を貼る必要もないので、28インチのベアシャフトなどを使って測定すると数値を盛ることができます。今回の場合は、規制を満たすためには矢速を下げることを求められるので、そのノウハウを逆に使えば、7.3Jの弓の出力を6Jまで下げるのはそんなに難しいことではないと思います。

*米国国家規格協会 F 1544 – 9904 Standard Specification for Determining the Rating Velocities of an Archery Bow

3月15日の施行までには全部決まるのかな??