モロッコのマラケシュで行われたワールドカップ・インドア・ステージ1が終了しました。前回の記事の続きから、この試合でのトップ選手のセッティングを見て、どうするか考えようと思っていましたが、結局、相対する2つのセッティングでの対決になりました。上の写真は個人コンパウンド決勝。
リカーブではトップ選手のセッティングはもうほぼ同じようなものになっていて、飛び出しという点において大きな対立軸がないような状態ですが、コンパウンドでは大きな対立軸があり、トップ選手の間でも、バランスセッティングと飛び出しセッティングでスタビライザーを設定する選手にはっきりと分かれています。数でいえば、バランス型のほうが少し多いですが、飛び出し型の方でも大きな実績があります。
ざっくり説明するとバランス型は重さと重心のバランスを重視します。先端のウェイトの数を1とすると、サイドに3-4程度のウェイトをつけて重心がグリップに来るようにします(もしくは若干キックパック)。また、バーの引き角度を狭まめにして、弓の重心グリップにおいてニュートラルになるようにします。弓が素直に動くようにするセッティングです。重心に偏りがないので、ホールドすることが簡単で、エイミングもしやすいです。上の写真では、Brade GELLENTHIEN選手がこのセッティングです。 他には、前回ポディウムのセッティングを紹介したジェシーもこのセッティングです。このセッティングでうつと、よほどハイグリップでない限り、リリース後も弓は水平のまま前を保ちます。
もう一つの飛び出しセッティングでは、全く逆に発想で、あえて、弓をアンバランスにします。先端のウェイトの数が1なら、サイドのウェイトの数も1にします。これによって弓の重心はかなり的側によります。サイドロッドの開き角度も大きくつけて、左右の重心もグリップの中心から若干ずらします。
これにセッティングで射つと、リリース直後から弓は前方に飛び出し、回転を始めます。エイミング/ホールディングはバランス型よりも難しいですが、重心がニュートラルではなく、常に弓に一定の力がかかっているので、この力が毎射ごとのわずかなグリップの違いを中和して、発射後の弓の飛び出しはこのほうが安定(一定)します。写真のMike SCHLOESSERのほかに、レオ・ワイルド選手などが採用しています。
シューティングでは、エイミングと射形の2つの部分から成り立っていますが、エイミングという点では、バランス型の方が有利です。逆に、毎回全く同じように射つことができれば、バランス型が絶対的に良いのですが、そもそもアーチャーのグリップがニュートラルでなければ、重心をニューラルにおいても意味がないように、「自分は毎回全く同じようには射てない」という前提に立ってセッティングした場合には、ニュートラルなスタビライザーセッティングではわずかな違いで、弓があらゆる方向に飛んでしまいますが、弓には毎回同じ方向のテンションがかかっていれば、そのテンションがわずかなグリップの間違いを吸収してくれます。
飛び出し重視セッティングのMike SCHLOESSER選手は予選1位の595点(296-299)、バランス重視セッティングのBraden GELLENTHIEN選手は予選2の594点(297-297)。そして、決勝戦では逆にGELLENTHIEN選手が148-145点で優勝です。
リカーブと比べて、こうした対立軸があるほうがセッティングするのは楽しんですけどね。
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山口 諒
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飛び出しセッティングで左右の重心をずらすという事は、カムを紐でつったときスコープのレベルがその方向に傾いているということなんでしょうか?
はい。写真はバンコクでの試合でのレオの弓のセッティングです。