この記事は2013年5月15日に書かれたものです。最新の情報とは異なる可能性があります。ご注意ください。

新しいアプローチとしての竹コアリム

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傑作とかというわけではありません。あくまでも、良いリムを作るための一つの新しいブローチです。本日、竹をコアとしたリムが入荷しました。
カーボンは使われていません。竹(バンブー)とグラスファイバーだけで作られているリムです。
竹という素材は、今でも和弓の世界では一般的です。和弓は竹と竹を焼いて作った天然のカーボン(グラファイト構造)であるヒゴを使って作られます。ちなみに、竹の勉強をする中で、和弓の弓師の方が書いた面白い本を見つけたので、取り扱いすることにしました。探してみてください。
話を戻しますが、昔の日本では洋弓の世界でも竹の弓が使われていたようですが、雑誌アーチェリーの昔の記事を読むと、いい印象を持っている方は少ないようで、引きにくいという意見を持つ方が多いです。
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Mechanical properties of bambooより引用
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自分は昔の竹弓は引いたことがないですが、今はアメリカのロングボウの世界では竹の弓は活躍し、優秀な素材として上位モデルに使用されています。なんといっても、その特性は軽いこと。木と違って中が空洞になっているためです(リムの写真の切れ端からファイバーが見えるかと思います)。アメリカでは、フライト競技で(矢が飛ぶ距離を競う)一般的に使われています。マーチン社のバイパーという竹コアの弓は7万円以上もする弓です。
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(弓具の見方と扱い方 浦上栄著 P.81より)
昔の洋弓での竹弓がどういう構造か、資料を見つけることができませんでしたが、アメリカでの活躍から考えて、引き味が悪いのは、素材の問題ではなく、設計の問題だったのではないかと思います。上の図は和弓のFx曲線を測定したものですが、ほぼ直線で、アーチェリーの世界でよいとされているふくらみのあるものとは大きく違うことが分かるかと思います。
本来竹を弓に使うという文化はアメリカにはありませんでしたが、おそらく、日本、もしくはアジアから輸入された練習用の弓から伝わって、一般的になったのかもしれません。その技術をリカーブ用のリムに利用し、開発されたのが竹コアを使用したこのリムです。
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価格も、グラスファイバーしか使っていないことからも、決してこのリムは上位モデルとして作られたわけではありませんが、自然の中空素材をコアに使用することで、”良い”リムを作るための一つの新しいアプローチとしては、大変興味深いモデルなのではないかと思っています。
一番の特徴はやはり引きが大変柔らかい事です。非常に柔らかくスムーズです。ただし、写真の通りリムはかなりの厚みがあり、M34ポンドで、INNO EX POWERのM44ポンドよりも厚いです。重さはカーボン550より少し軽い程度で、M34で200グラムになっています。カーボンも使われていませんので、けっしてスピードが出るリムではありませんが、その引き心地は大変良いです。
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(左がバンブーファイバー、右がINNO EX POWER)
リムの設計はクラシックです。高速でシャープなINNO EX POWERに比べて、かなり緩やかなデザインです(なのでスピードは出ません)。
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チップは小さく作られています。

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COREアーチェリーは中国のメーカーで、いくつかの種類のリム・ハンドルを製造しています。記憶によれば、このブランドで営業を開始して、3年くらいです。
現在世界中で竹コアを使ってリカーブ競技用のリムを作っているのはこの会社と、アメリカのSKYアーチェリーだけです。SKYアーチェリーだけです(たぶん)。SKYのモデルは販売するとしたら6万円を超えるものですので、手軽に試していただけるものではありません。
そのために今回このモデルを仕入れました。好評であれば、SKYの竹をコアに使用した上位モデルの取り扱いも検討する予定です。また、低価格のリムですが、取り扱いしたことのない素材ですので、長期保証が付きます。60年代の竹の弓を引いたことはあっても、現在の技術で加工された竹の弓を引いたことがある人は少ないと思います。本当にスムーズなリムです。高速リムではないことを理解の上で、試していただければと思います。この新しいメーカーさんにも期待しています。

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山口 諒

熱海フィールド代表、サイト管理人。日本スポーツ人類学会員、弓の歴史を研究中。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、ベアボウ競技歴5年。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は準優勝。

4 thoughts on “新しいアプローチとしての竹コアリム

  1. 大分過去の記事にコメント失礼します。

    このリムに興味があるのですが、競技用として70mを射つのに特に問題はないのでしょうか?
    また在庫のポンド数の最高が36でしたが、38以上のポンドのものもあるのでしょうか?

  2. 「問題」とは何を指しているのでしょうか? カーボンなどを使用していないので、反発力(効率性)が良くありませんが、それらは「問題」という類のものではないかと思います。
    同価格帯で比較すれば、スムーズな引きが特徴です。

    メーカーに在庫確認しました。現在、在庫があるサイズが少なく、38ポンド以上では、下記のものの在庫があるようです。

    25″ 66-38 LBS 23″64-40 LBS
    25″ 66-42 LBS 23″64-44 LBS
    25″ 68-42 LBS 23″66-44 LBS

  3. 言葉が足りなくてすみません。

    一般的(?)にグラスファイバーは飛ばないものの、引きが柔らかいため初心者の練習用、カーボンはよく飛ぶため、競技用であると捉えられているように感じたため、このリムは競技用として使うには「問題」あるのでは、と思った次第です。

    仮に他と比較して飛ばなくとも、ポンドが高くても引きが柔らかいことと、ポンドがあれば十分70mに届くと考え、38以上のポンドのものもあるのか質問させていただきました。

  4. >一般的(?)にグラスファイバーは飛ばないものの、引きが柔らかいため初心者の練習用、カーボンはよく飛ぶため、競技用であると捉えられているように感じたため、

    はい。

    >このリムは競技用として使うには「問題」あるのでは、と思った次第です。

    お客様の競技レベルがわかりませんが、全日本ターゲットで決勝ラウンドまで残るレベルでの競技を目標とするのであれば、明らかに使うべきではないでしょう。
    問題ありです。

    >仮に他と比較して飛ばなくとも、ポンドが高くても引きが柔らかいことと、ポンドがあれば十分70mに届くと考え、38以上のポンドのものもあるのか質問させていただきました。

    70mは問題なく届きます。条件なしで「届く」だけ考えれば、ACEなら実質で24ポンド程度あれば十分です。ただし、例えば東京の場合、防矢ネットが低いので射場によっては、防矢ネットとの兼ね合いで届きません。

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