もの事には順番があり、それによってより正しく物事を捉えることができるようになります。
ホイットの2017商品も納品されました。データもほぼ揃いました。ただ、販売開始はもう少し待ってください。まずは正しい情報を提供してからだと思ってます。
今回は自分が知る限り、ホイット史上、競技用モデルでは最大の変更量です。競技用の上位モデル、プロディジーシリーズ3種類、GMX、GPXと競技用の上位モデル5つがすべて販売終了です。この思い切り、かつ、販売店にも痛みをもたらす(全部の在庫がモデル落ちになる)変化を決定した裏には、以前に書いた問題があります。
今回、ホイットではリムボルトの精度をコレット式に変更することで高め、問題に一掃を狙っていますが、その結果がどのなるかはレビューだけでは不十分だと思います。時間による検証が必要でしょう。
今回の問題は主にアメリカとヨーロッパで起きました。日本では大手が沈黙したこともあったかもしれませんが、あまり大きく取り上げられることはなかったと思います。その理由は、この問題を正しく理解するには知識が必要だったからだというのが自分の結論です。
ホイットの解決策の裏を取れば、ホイット自身が理解していた問題を知ることができます。最新のモデルでは軽量化がはかられと書いてあれば、前作は少し重かったというマーケティングのフィードバックがあったと考えてよいでしょう(もちろん、違う理由もあり得ます)。
今回、ホイットはリムポケットのシステム変更により、「究極の正確さとリムアライメントが得られる(The result is ultimate accuracy and precise limb alignment.)」としています。
この言葉は理解できますか? …理解できる方は下記の記事を読む必要はないです。
リムアライメント(limb alignment)とは、簡単に言えば、日本ではセンターショットとされているものです。信じられない方はグーグルで”center shot recurve”と検索してみてください。結果はほとんどが弦と矢の関係の話となるはずです。日本では、名前がついていないように感じますが、ポイントを弦から1/2幅程度出すといったチューニングが英語のCenter Shot(センターショット)です。
*違った意味で日本に伝えられた理由は知りません。
では、(日)センターショットと(英)リムアライメントが同じ作業からというと、作業は違うが結局同じことをしているのだと考えられます。アライメントとは一直線にするという意味ですが、この場合には4つの線が水平に並ぶことが求められます。
1. ハンドルの平面部
2. ハンドルとリムU字部分の接合部
3. ハンドルのダウエルピン(Dowel)がリムと接する部分
4. リムの面
リムがねじれていない限り、この4点揃っていれば、リムアライメント(日本でいうセンターショット)には問題がないと判断できます(*)。
*リムがねじれている、ハンドルがねじれている、センタースタビライザーのブッシングがまっすぐではない、センタースタビライザーがまっすくで出ない場合などは異なる
さて、ウィンでもホイットでも、この4点がそろうことを目標としています。違いはそのやり方です。ウィンやGMXでセンター調整をしてリムを左右に動かす(図でいえば3を赤線上で移動される)と、センタースタビライザーが的に対して、右に行ったり、左に行ったりすることが確認できると思います。これは、3と4の位置を変えることで、リムの力によってハンドルをねじり、1の線のアライメントを得る(1の線の2・3・4の線に対して水平に持っていく)作業だと考えられます。
逆にいくつかのメーカーで採用されている偏芯型のリムボルトによってリム根元の位置を2の直線状で移動させる作業も同様の効果をえます。
しかし、ホイットが採用した新しいシステムでは、2も動き、3も動き、さらに3は2軸で調整できます。胴部が多いと考える人もいるかもしれませんが、それは受け入りられませんでした。
私の方ではこの問題に対して、可動部が多すぎることがプロディジーシステムを不安性にさせていると判断し記事を書きました。それに対して、今回ホイットのエンジニアは可動部を減らすのではなく、そのかなめであるリムボルトの精度を向上させることで問題を解決しようとしています。
ちなみに、コレット式は写真の通り、2016年のホイットのプロティラーがただのボルトなのに対して、SFなどの低価格モデルでも古くからコレット式は採用されています。
ホイットは精度という一言で片づけていますが、この意味はブレース時というよりも、リムボルトをよりしっかりとハンドルに固定し、可動部という範囲からこのボルトを逃すことだと考えています。
以上、予備知識として。残りはレビューに書きます。
山口 諒
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すみません、2017年のカタログにも載っているHOYTのACEリムについてなのですが、競技用として実際にはどの程度の性能を持っているのかが気になりました。曖昧な質問ではありますが、お答えしていただけたら幸いです。
お客様が性能に何を求めているのかわからないので…
一般論としてはACEリムは中位リムとなりますので、そのレベルでの性能です。
わかりやすいところでは、ウィンの同価格帯のリム(WINEX)は中位リムではなく、10年ほど前に発表された最上位の競技用リムです。
この価格帯には設計が”古くなった=実績のある”リムと、もともとこの価格帯のために開発された最新中位モデルがあります。ACEは後者です。
古くなった最新技術 vs 最新のお手頃価格の技術 といった視点での比較になるでしょうか。
どっちが良いかはもっと具体的な比較軸がないと評価は難しいです。
ご回答ありがとうございます、曖昧な質問失礼いたしました。
『古くなった最新技術 vs 最新のお手頃価格の技術 といった視点での比較になるでしょうか。』
まさにその通りです。
その上で、具体的な比較軸として考えたのは、主にドローイングの引きやすさや矢速といった点です。
例えば、2010年の新モデルであったINNO EX POWERなどのリムと比べて、2015年度の新モデルであるACEリムはこれらの点で優っているのか。
どのように評価の優劣がつくのかといったことが気になりました。
よろしければご意見をお聞かせください。
すみません、こちらのボルトの問題は、旧型のGMXとかならクリアされてるのでしょうか?
例えば、エリソン選手はボルトが可動ではない旧型の固定式のものを使用していました。また、リムも直接固定していたようです。ですので、写真でいう、2/3のラインは可動ではありません。もちろん、センター調整時のライン2の直線方向での動きはありますが、ワッシャーを入れ替えてボルトで固定するわけですので、信頼性は高いものと思われます。
ですのでどの時期のGMXでも、ソリッドタイプのリムボルトに変更すれば同じ効果があると思われます。また、女子ではこの動きがあまりなかったので低ポンドでは大きな違いがないかもしれません。
お客様がどのようなものを求めているのかによって異なるかと思います。お客様が現在どのようなリムを使用しており、どのような理由で買い替えを検討されているのか、また、この価格帯のものを検討された理由などを教えていただければ幸いです。競技としては、男子ターゲットなどをされているのでしょうか?
>例えば、2010年の新モデルであったINNO EX POWERなどのリムと比べて、2015年度の新モデルであるACEリムはこれらの点で優っているのか。
全日本や、世界大会を目指すレベルであれば、ACEリムのほうがすぐれているという評価軸は価格以外にはないと思います。
回答いただきありがとうございました。大学からアーチェリーを始めた者ですが、そろそろ自分の本リムを購入する時期なのです。
現在はHOYTのエクセルを使用しており、競技としてはSHが主なものです。結果を残したいと思っていますが、学生ゆえに生活等も考える必要があるため、価格帯についても考慮せざるを得なかったのです。
>回答いただきありがとうございました。大学からアーチェリーを始めた者ですが、そろそろ自分の本リムを購入する時期なのです。
>現在はHOYTのエクセルを使用しており、競技としてはSHが主なものです。
了解しました。大学生でショートハーフを注文に競技されるのであれば、現在のリムと同一メーカーACEリムはよい選択だと思います。
そのほうが、本リムへの移行もスムーズだと思われます。
WINEXはリム自体が軽いので、主として、ショートドローで長距離を競技、強化したい方にはお勧めしていますが、状況に該当しないかと思います。
すいません、全くの初心者ですが質問させてください。
いつかの記事にて拝見させていただいたと思うのですが、国際大会の決勝でHOYTのGMXハンドルとW&Wのリムを組み合わせて使用される方が多かったなんてのがありましたが、HOYTのGPエッピクでも他社のリムと組み合わせて使用することはできるのでしょうか?
はい、問題なく使用できます。ただ、ポンドは表示通りには出ず(これはGMXでも同じ)、ホイット40ポンド(表示ポンド)からWINの40ポンドに変更すると、1ポンドほど強く実質ポンドが出ます。
回答ありがとうございます。
もう一つ質問させてください。
現時点で、GPエピックでの評価をあまりみかけないのですが、個人的にはどう思われてますか?(性能面とリムとの組み合わせなど)
ウィンも出たので火曜日までにはレビューしたいと思います。しばらくお待ちいただけると幸いです。
こちらの HOYT グランプリ エピック ハンドル のレビュー、取り扱いはいつ頃からになるのでしょうか?
取り扱いを始めたようですが、この問題の今現在の見解をお教え願えませんか?