写真は現在競技用として最も普及している4つの羽です。左から1.75インチ(45mm)のゴム羽、2.5インチのガスプロ・ターゲット、2インチのガスプロ・スピン、スピンウィングです。
先日、屋外のテストの時に、これらの完成矢でシューティングマシンによる実射テストを行い、性能の比較を行いました。
結果報告の前に、まず理想的な羽とは何かについて書きます。羽の役割は矢を安定させ、ミスによるブレに対する修力を矢に与えることです。そのために、良い羽とは矢速の速い羽根ではないことには十分に注意してください。リムの性能比較において、矢速が速い方が優れているのはそれがエネルギーの変換効率が高いことを示しているからです。矢において、羽は矢速からエネルギーを得ることで矢を安定させ、修正力を与えます。そのために、矢速が”遅い”方(減速率が高い)がミスに対する修正力が高いことになります。
今回、このテストを行うきっかけになったのは、ガスプロの修正力のテストをしたかったためです。下の結果報告に詳細がありますが、ガスプロの最大の特徴は背が低いことです。スピンウィングと比べ、24%も背が低く設計されています。このために、横風に対して強いのが最大の特徴です。では、なぜみんな背を低く設計しないのかと言えば、背が低いと矢速を修正力に変換することが困難となり、修正力が不足してしまうためです。
ガスプロは背を低く設計しながらも十分な修正力があることが最大の売りでした。実射テストなどではテスト済みですが、今回初めて矢速計で実測しました。
その結果の報告です。サイズは羽のサイズです。高さは羽単体の高さではなく、貼って完成矢にしたときの高さを写真の方向で測定したものです。値が低いほど風に対する抵抗力が高く、風の影響を受けにくいです。初速は弓から1m時点での矢速です。終速手前1m時点での矢速です。注意していただきたいのは、矢の弾道は重力の影響を受けるため、同一の条件下でも50mを射った時の18m地点の通過速度と、18mを射った時の18m地点の終速はお粉ります。減速率は初速と終速の差です。
修正力ですが、今回は条件を整えるために同じシャフトに違う羽を貼ってテストしました。そのために、すべての矢は重さが違います。最大で1.6%も違っています。減速率から、矢の重さによる誤差を理論値を使っては除去したものが、修正力となります。
今日は時間がないので…そろそろ帰ります。続きは明日書きます。
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山口 諒
熱海フィールド代表、サイト管理人。日本スポーツ人類学会員、弓の歴史を研究中。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、ベアボウ競技歴5年。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は準優勝。
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減速率の関数としての修正力だけを見れば、フルフルが最強、ってことになりそうですね。
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はい、次回のテストに鳥羽根もいれることは可能ですが、どういった視点でのテストをご希望でしょうか。昔からある商品ですので、多くの場合新規にデータを取らなくても、すでに知られているデータでお客様の疑問に答えられるかと思います。
> 減速率の関数としての修正力だけを見れば、フルフルが最強、ってことになりそうですね。
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レスありがとうございます。18メートルと50メートルでの各減速率に興味があります。
1 インドアで鳥羽根を積極的に利用する数字上の意味があるか
2 アルミ矢に鳥羽根をつけて50メートルを飛ばしていた時代の大変さが数字で分かるかどうか
の2点が知りたいのです。
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たとえば、矢のお尻を思いっきり振りながら飛んでいく矢は当然初速より終速が落ちる事になりますが、
この計算式だと、このような矢が修正力が高いと判定されてしまいます。
スピンウィングとガスプロの修正力は推進力が回転エネルギーに変換される事により実現されるのであると思いますので、回転エネルギーへの変換効率によって議論されるべきではないでしょうか?
修正力の定義が少しおかしい気がします。
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すみません。コメントの返信漏れていました。わざわざコメントを頂いたのに大変申し訳ございません。
> 1 インドアで鳥羽根を積極的に利用する数字上の意味があるか
当店では取り寄せ以外では鳥羽根を販売していません。
これは性能面でというよりも、第一にクリアランスの調整が難しいためにお勧めできない、クリアランスの問題を解決するためにはセッティングを変更する必要性がある場合が多い。
第二に現状、インドアの世界選手権でもX10などを使用した選手が優勝しています。インドア専用のセッティングとアウトドアのセッティングを両方シューティングマシンでうち比べれば、必ず、インドアセッティングの方が良い結果を残しますが、しかし、シューターは人間であり、多くのシューターは、道具面での優位性を得るために、セッティングを大幅に変更するよりも、アウトドアシーズンを通して、体が慣れたセッティングで試合に臨んだ方が、より良い結果が出ると判断しているためです。
ですので、鳥羽根をシューティングマシン等でテストし、有意な結果が出ても、それによって、鳥羽根をお勧めすることはできないです。
> 2 アルミ矢に鳥羽根をつけて50メートルを飛ばしていた時代の大変さが数字で分かるかどうか
これはなかなか考えさせられるテストですね。現在、鳥羽根の一番の活躍の場は、その修正力の高さで、スパインがあまりあっていないシャフトを飛ばしてしまうところです。
その鳥羽根をスパインが正しくあっているシャフトにつけて飛ばしていた時代はあまり知りませんが、英語の文献を調べた限りでは、50年ほど前の事のようです。モールド型の現在のゴム羽は45年くらい前に登場しています。
当時の弓を再現して、現在の弓とその性能を比較するという企画はなかなか面白いと思います。いつかやってみたいと思います。
> レスありがとうございます。18メートルと50メートルでの各減速率に興味があります。
> 1 インドアで鳥羽根を積極的に利用する数字上の意味があるか
> 2 アルミ矢に鳥羽根をつけて50メートルを飛ばしていた時代の大変さが数字で分かるかどうか
> の2点が知りたいのです。
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> たとえば、矢のお尻を思いっきり振りながら飛んでいく矢は当然初速より終速が落ちる事になりますが、
> この計算式だと、このような矢が修正力が高いと判定されてしまいます。
テストをするにあたり、当然チューニングをベストの状態で、ベアシャフトでもまっすぐ状態にしています。そもそも使用している矢は自分の矢でレッドバッチをゲットした時に使用したものです。
お客様が懸念することは理解できますし、おっしゃる通りです。このテストをそのような状態で行っていれば、テストの結果には何の価値もありません。
そして、このテストをスパインが完璧にあっている状態で行ったという証拠は持っておりません。テストデータを取得する前提(セッティングがあっている)を疑われるのであれば、疑っていただいて構いません。正直、何ともコメントしがたいです。
> スピンウィングとガスプロの修正力は推進力が回転エネルギーに変換される事により実現されるのであると思いますので、回転エネルギーへの変換効率によって議論されるべきではないでしょうか?
変換効率に大きな違いはありません。変換効率とは矢がある程度の抵抗を受けた時、その抵抗がどの程度回転力に変換されるかを指しているかと思います。
このテストは風洞・回転計・秤があればできる簡単なもので、多くの人が行っています。(うる覚えですが)スピンでいうと、20grの抵抗を受けた時、120回転/秒に変換されます。
結論から言うと、同型の羽で同一ピッチで貼った場合には、変換効率に大きな違いはありません。もちろん、ソリッドな羽(ゴム羽等)と風が通り抜けていく羽(鳥羽根)などでは違いますし、ハイブリッド構造のゴム羽(クイックスピン等)では話が違います。
下記のサイトで公開されている論文が参考になるかと思います。
http://www.miyazaki.mce.uec.ac.jp/?p=publications
「Aerodynamic properties of an archery arrow」という国内の研究で、電気通信大学 複雑流体研究室で行われているのですが、残念ながら日本語版を見たことがありません。英語版しかない可能性があります。
> たとえば、矢のお尻を思いっきり振りながら飛んでいく矢は当然初速より終速が落ちる事になりますが、
> この計算式だと、このような矢が修正力が高いと判定されてしまいます。
>
> スピンウィングとガスプロの修正力は推進力が回転エネルギーに変換される事により実現されるのであると思いますので、回転エネルギーへの変換効率によって議論されるべきではないでしょうか?
>
> 修正力の定義が少しおかしい気がします。