この記事は2013年5月14日に書かれたものです。1年以上前の記事は内容が書かれた当時とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

雑誌アーチェリー…1995年という節目…メーカーさんごめんない。

2010年の1月から、3年かけて、雑誌アーチェリーのバックナンバーをすべて読み返しています。本日、1997年まで読み、2001年からはリアルタイムで読んでいるので、もう少しです。
本日は図書館で5時間かけて、1989年から1997年まで読みました。以前にこんな記事を書いた時に、コメント欄に1995年を節目に、雑誌アーチェリーが変わったというコメントありました。
いつから雑誌アーチェリーは沈黙したのか(70号~91号)
http://jparchery.blog62.fc2.com/blog-entry-498.html

2013_05_14_15_54_42.jpg

現在の雑誌アーチェリーは試合の写真集とアーチェリーショップで商売している人間が書いた記事ばかりですが、昔の雑誌アーチェリーはなかなか、キレのある雑誌で、ものを言う雑誌でした。
上の写真は91年の7月号です。当時の学連を知らないので記事の内容についてはコメントできませんが、特定の大学に対する意見申し立てで、今の雑誌アーチェリーでは絶対載せないような内容です。
雑誌アーチェリーが口を閉ざすきっかけとなった記事はどうなものだったのか、いろいろと予想を立てて、本日、初めて読みました。

>1995年の3・5月号ですね。
>僕もこの記事を見て、スタビライザーをイーストンに変えて正解だったと思っています。
>スキーに関しても、いろいろなメーカーの板やブーツを、でもスキーヤーなどが評価しているのをみると、
>アーチェリーメーカーの商品をアーチャーが評価するのは何も問題ないと思います。
>ただ、世界が小さいせいか、どうしてもお互いが気になって正しいことが書けるかどうか…
>ただ、技術的にしっかりしている人間が評価をするのであれば、とても面白い特集ができるだろうし、
>別冊として出しても売れそうではあると思います。
上のようなコメントをいただいていましたので、道具を評価したら、悪い評価がついたメーカーから、クレームがついたのか(つまり、メーカーがクレーマーだった)のかと思っていましたが、読んでみると全く違っていました。

流れを整理します。
(1995年3月号) 
感性の科学という弓具研究の記事がスタート。執筆者不明(監修は弓具科学研究班…誰?)。趣旨は弓具の進化は、行き着くところに行きついた、今後はもうスペックではない、感性が求められる時代だから、感性について語るというものすごい野心的なもの。
IMG_20130514_202059.jpg

しかし、記事の中身は…間違っていないけど、完全にずれている。記事の中身は「スタビライザーの理想形とは」について書いているのに、最後にいきなり、上の図が掲載されている。でたらめな記事なので、比較された商品名は省きますが、イーストン、エンゼル、ヤマハ、K、Kプロ、シブヤ、ハスコという7社9モデルでした。
本当に載っているのはこの図だけ…何ポンドでテストしたのか、だれがテストしたのか、長さはそろえたのか、重さを、それとも、みんなトップウェイト1つだと、ウェイトの数をそろえたのか…何一つ根拠が乗っていません。さらに次号で訂正のデータが出るのですが、重さ157gでテストしたイーストンのロッドの軽さが二重丸で、105gでテストしたエンゼルのロッドの重さを丸、150gのヤマハのロッドは三角印…いったい何を基準に評価したのか、軽さ…重さという意味以外にどういう評価基準があるのかわかりませんが…謎すぎます。
これは完全にクレームをつけたメーカーの問題ではなく、記事を書いた人間の問題です。
このグラフ以外の記事は「理想のスタビライザー」についてです。例えば、その結論が「振動吸収」だったとすると、次のステップは、何を持って振動とするかです。以前に書いた比較記事では、センサーはグリップに付けました。結論は振動が30%減ったというものですが、つまり、グリップ(=体に伝わる振動)と定義して計測しています。発射音の一つの発生源はリムポケットです。おそらくですが、ここにセンサーをつければ、振動は30%減っているか疑問です。
振動吸収を比較するのであれば、まずは何を持って振動とするかを定義しなければなりません。その次は、どのように測定したかを記録します。第三者機関に依頼した場合は、必要ないかもしれませんが、自分でやるなら、他人が追試できるようにする責任があります。
そうしてようやく、点数付して、上のような表を作るものです。
しかし、この記事では、スタビライザーの理想形をたかった後は、用語の定義(何を持って振動吸収とするか)と試験のやり方(どのようにすれば記事が正しいと確認できるか)を全部すっ飛ばして、自分の結果だけを載せています。
(1995年5月号)
冒頭、謝罪から始まります。
「前回、掲載した「各社カーボンセンターロッド比較表」にいくつかの誤りがあった。硬さ、軽さ、振動吸収、経済性の4項目に分け、それぞれに「◎」「○」「△」の3段階評価をしたが、その評価基準があいまいで、中には事実と完全に異なる評価もいくつかあった。」
(雑誌アーチェリー 1995年5月号)
その後謝罪だけではなく、けじめとして、長野県工業試験場にテストを依頼…しかし、ここがまた素人でダメなのだが…高価な機械を使ってスタビライザーのテストをします。また、日本バイメタルさんは辞退したので、テストしないとのこと(商品提供を受けているから?)。
長野県の試験場の風間さん(アーチェリーの素人)はかなり努力したと思うが…なんの実験をしているのかわからない。ハイスピードカメラで商品のテストをするとき大事なのは、どこに絵に収めるか、どのシャッタースピードで収録するか、どこにピントを合わせるかである。プロのカメラマンはカメラについては、プロでもアーチェリーを知らなければ、正しいテストができない。レンズ合わせのテストで撮ってもらうとき…たいていのカメラマンはなぜか、弓を射つ僕にピントを合わせる…弓具テストなので…レストに合わせてください…。。。
さて、長野県工業試験場のテストが意味をなさないのは、振動モードごとにテストをするという不思議な設定をしたいるためです。
ono.jpg

(小野測器さんのホームページより引用)
振動モードというのは、スタビライザーがどのように振動するかということです。見ればわかるように一次モードのように振動するようなスタビライザーは何の役にも立たないでしょう。自由端(ウェイトがついている側)が上下に振られ、そのカウンターとなる振動がないので、その揺れはそのままハンドルに戻ります。
5月号の試験では、なぜかそれぞれのモードでの振動吸収能力を測定しています。
この測定に何の意味があるのか全くの不明です。なぜなら、(少なくとも自分の知識の範囲内で)アーチャーが振動モードをコントロールことは不可能です。
「このスタビ2次で振動してるけど、チューニングして、3次に変えて、うってみよう」
といったチューニングができるとは思いません。


以前ハイスピードカメラでFUSEのカーボンブレードの24インチ~33インチまでを撮影しましたが、すべて2次モードで振動していました。長さを変えることでコントロールできるかもという自分の淡い期待は見事に打ち砕かれました。。。
つまり、大事なのは「そのスタビライザーがどのように振動するか」(=何次モードで振動するか)であり、振動モードはある程度固有なものなのに、1次モードではA社が、2次モードではB社が、3次モードではC社が優勝とやっても…で、だれが総合優勝になるのでしょうか。。。。
風間さん、本当にご苦労様でした。
(1995年7月号)
2号続けてピントはずれの弓具評価記事(しかも、辞退したい会社は辞退できるシステムはちょっと違う気がします)で、3回目…そして、これが大きな野望を持った「感性の科学」の最終後になるのですが、構成は弓具科学研究班から、本誌編集部にかわります。
そして、記事の中身はホイットのテクミチョフさんの資料を参考にしているというもの。さすがにこの記事は何の問題もなく、いい記事ですが、今度は具体的な商品名には一度も触れられることなく、全体を通して、理想的なスタビライザーの一般論で終わります。
考えてみると、独自で資料を集めないで、メーカー・プロショップが書いた記事を使うのはこのあたりからが始まりかもしれません。それより前はアメリカ、韓国、フランス、スウェーデンなどのトップアーチャー・コーチが書いた記事が中心ですが、だんだんとトップメーカー、大手プロショップの人間が各記事がほとんどになっていきます…実業団の減少で、ショップで働いていないトップアーチャーの減少という問題もかかわっているのは思いますが。
ということで、1997年まで読み進めました。95年のこの事件以降、キレている記事はほとんどなくなります。道具についての記事は、それぞれの良い点とスペックの紹介だけになり、ハンドルやリムについての語るのは、メーカーの人間だけになっていきます。
1998~2001年はまだ読んでいません。それと、サラリーマンとして海外赴任していた2004~2005年の雑誌アーチェリーも読んでいませんが、70年代から通して読んできて、やはり、95年のこの事が”何も語らない”きっかけになったのかと思います。
(追記)
…昔に雑誌アーチェリーさんに記事を投稿したら、レベルが低い(誰でも知ってる)といわれ、却下されましたが…まぁ、いいです。


The following two tabs change content below.
Ryo

Ryo

山口諒 - JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、その後コンパウンドに転向。リカーブ・コンパウンド両方で全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。

4 thoughts on “雑誌アーチェリー…1995年という節目…メーカーさんごめんない。

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    95年ごろ社会人になって弓をいったん置いたものですが、今のようにインターネットも高速カメラもなかった時代でした。
    久しぶりに弓を再開してみれば愛用していたメーカは撤退し、ゴミ(表現は悪いですが)のような弓を作っていた会社が今やトップメーカーです。カタログを年代によって見てみるとよく似た、どこかで見たような製品のリメイク(パクリか)ほとんどです。
    社会人になって最後に買った10万するリムにセンター調整ついたのにはいささかショックでしたが、最近の製品は、矢速と製品の耐久性(保証期間さえ持てば折れる前に使い捨て)をないがしろにしたものばかりのような気がします。
    この間、試合で見かけた弓にはいささかびっくりしました。
    H社の最新ハンドルとリムにリムセーバー、すべてのロッドの先にダンバー、さらにリムの上下の穴にダンパーとアッパーロッド、さらにVバーの先のセンターの根元にダンバー。振動吸収というより、振動増幅装置・・・見た瞬間、え!!。
    所詮、上記の動画のでもわかるのですが矢が飛んで行った後の事象です。
    弓の根本的な性能とはなんだろうか。不思議な時代ですね。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 95年ごろ社会人になって弓をいったん置いたものですが、今のようにインターネットも高速カメラもなかった時代でした。
    コメントありがとうございます。当時から、バイターやイーストンでは高速カメラを使用して道具の開発を行っており、ユーチューブがないので、確か、VHSで販売していたと思います。
    > 弓の根本的な性能とはなんだろうか。不思議な時代ですね。
    結局は当たる(グルーピングする)弓がよい弓という認識で間違いないのではないかと思います。世界記録もどんどんと更新されていますし、国内では選抜大会の8位の点数を毎年チェックしていますが、この点数も上がってきています。ほぼすべての年齢層で点数は向上しています。もちろん、指導者のレベルが上がったという見方もできますが、道具の性能が下がっている判断できるデータはないと思います。
    やはり、点数を出すことが道具の根本的な性能だと思います。
    > 社会人になって最後に買った10万するリムにセンター調整ついたのにはいささかショックでしたが、
    センター調整機能が付くことでどのようなショックがあるのでしょうか…。ちょっと自分にはわかりません。今でも、和弓にはセンター調整機能はありませんが、やはり使っていくうちに癖が出てきますので、弓師の松永さんという方は著書の中で、新しい弓は300本も使ったら、一度調節(火入れ)してもらった方がいいと書いています。もちろん、弓師に弓を戻せば、1か月程度は練習できないでしょう(弓師が近所にいる人はあまりいないかと思います)。そのような世界から抜け出し、リカーブボウは自分でチューニングができ、センター調整機能のおかげで、すぐに問題を修正できます。進歩以外の何物でもないと思います。
    某建具のメーカーは問題があるたびに、こっちで技術があるから自分で直すといっても、パーツ売りはしないで、技術者派遣でしかパーツを販売しません。ドアノブの交換(レンチとドライバーでできる)に技術者派遣料を5000円とられました。商品をユーザーにいじらせないで、すべてメーカーがコントロールしようとする方が前時代的なのではないかと思います。
    >最近の製品は、矢速と製品の耐久性(保証期間さえ持てば折れる前に使い捨て)をないがしろにした
    >ものばかりのような気がします。
    これは日本に競技志向のアーチェリーしか伝わっていないためです。競技においては、その年、その場で結果を出すことが求められます。道具をいたわっている場合ではありません。道具が10年つかえたとしても、その年に結果を出さなければ、道具を使う機会すらなくなってしまう世界です。
    全く伸びない弦や軽い矢は弓の道具を消耗品にしてしまいます。それでも、結果を出して、弓は壊れたら交換すればいいという考えが競技の世界です。
    競技志向ばかりの日本にはあまりいませんが、弓をいたわって使うのであれば、リムに負担の少ないFlemishという作り方のダクロン弦に重みのある矢を使うだけで全く違ってきます。現在販売されている弓をそのようにして使えば、1万円台のものでも、何十年も使えると思います。
    弓の耐久性の低下は、弓の問題ではなく、弓の寿命を低下させても、点数を重視する競技志向にあります。道具を大事にして、その性能の80%で使っていれば、弓の寿命は飛躍的に伸びます。クラシックスタイルのアーチャーはそのようにしています。
    しかし、現代の競技においては、100%の性能を絞り出そうとし、その結果弓の寿命低下させているのです。ただ、どちらが正しいのかお客様の考え…好みですので、競技志向が悪いという意図はこの返信には全くありません。
    > 所詮、上記の動画のでもわかるのですが矢が飛んで行った後の事象です。
    矢がレストをクリアした後でも、大事なことはたくさんあります。例えば、フォロースルーという動作があります。また、19世紀のアーチャーの記録を読んでも、アーチェリーの楽しさは(矢がレストをクリアした後)矢がまっすぐ的に向かって飛んでいく軌道を眺めることにあると書かれています。自分も好きです。
    弓がまっすぐ前に飛ばだし、振動が減衰していく中で、矢がまっすぐ的に向かって飛んでいく瞬間は本当に美しいと思います。その時、弓が手の中でバタバタしていたら、その楽しさが半減するというのは、わかっていただけるのではないかと思います。アーチェリーの楽しさの半分は、矢がレストをクリアした後にあると思います。その時の弓の振る舞いは大事なものであり、ダンパーやスタビライザーによって、この感覚をコントロールする努力は決して無駄な作業とは思いません。
    > 95年ごろ社会人になって弓をいったん置いたものですが、今のようにインターネットも高速カメラもなかった時代でした。
    > 久しぶりに弓を再開してみれば愛用していたメーカは撤退し、ゴミ(表現は悪いですが)のような弓を作っていた会社が今やトップメーカーです。カタログを年代によって見てみるとよく似た、どこかで見たような製品のリメイク(パクリか)ほとんどです。
    > 社会人になって最後に買った10万するリムにセンター調整ついたのにはいささかショックでしたが、最近の製品は、矢速と製品の耐久性(保証期間さえ持てば折れる前に使い捨て)をないがしろにしたものばかりのような気がします。
    > この間、試合で見かけた弓にはいささかびっくりしました。
    > H社の最新ハンドルとリムにリムセーバー、すべてのロッドの先にダンバー、さらにリムの上下の穴にダンパーとアッパーロッド、さらにVバーの先のセンターの根元にダンバー。振動吸収というより、振動増幅装置・・・見た瞬間、え!!。
    > 所詮、上記の動画のでもわかるのですが矢が飛んで行った後の事象です。
    > 弓の根本的な性能とはなんだろうか。不思議な時代ですね。

  3. はじめまして、ブログ拝読させて頂きました。雑誌アーチェリーのバックナンバーが読みたいのですが、どこの図書館で読まれたのか教えてください!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。