近代の弾弓 中世~20世紀

Accession Number: 79.2.441 MET
弦に弾弓用の革製アタッチメントがあり、右のテーブルの上に弾(玉)がある

弾弓について、近代の使用などの情報を追加するものです。弾弓自体に関しては、前回の記事をご確認ください。

弾(石)と鏃は出てきても、弓もスリングも多く出土しない

前回、弾弓についての記事を書きましたが、調べていくにつれて、弾弓の研究が少ないこと、その理由として、2000年前の弓、弦やスリングがセットで出土することはまずなく、弾(石・陶)や鏃は出土することが多いこと、そして、考古学者は往々にして、鏃は弓の存在の証であり、弾はスリングの存在と結びつけたがり、その他の可能性を考慮しません。そこで現代まで続く弾弓の記録をまとめてみることにしました。

G 3997 © Réunion des musées nationaux – Grand Palais, 2023

これはトップの写真と同じ場面を描いた中国の皿(美術館提供の画像の解像が低い…)ですが、中国の戦国時代(紀元前5世紀〜紀元前3世紀頃)に成立したとされる春秋左氏伝の一場面です。

霊光は不徳であった。物見櫓の上から石を弾いて、下を通る者が慌てて避けるのに興じたりした。

常石茂 著『新・春秋左氏伝物語』,河出書房新社,1958.P.170

まぁ、とんでもない王様なわけですが、不名誉なことに「石を弾く」という表現はこれが最古で、当時の道具を考慮すると、弓で弾いていたと考えられています。その1000年後に唐か、唐の物を模した正倉院の弾弓が日本に伝わっていますし、その後、14世紀に書かれた大元聖政国朝典章(政治書)では弾弓規制に触れており、

都城の小民、弾弓を作り及び執る者は、杖打ち77回、その家の財の半を没す。

梅原郁,(訳註)中国近世刑法志(下),創文社

と、都市住民には弾弓の所持を禁止することが書かれており、この時代でも平民に用いられていたことがわかります。実は20世紀に入り、中国で弾弓の一大ブームが起こるのですが、それは後半に。

この本は16世紀のはじめにドイツで書かれた技術書ですが、ここには弾弓が描かれています。5世紀までの状況についての資料は全くありませんが、多くの学者はヨーロッパでは弾(玉)を飛ばす手段としては、弓ではなく、スリングであったと考えています。この状況が変わっていくのは権力者の領地に対する所有の概念の変化で、国は領地は王の所有物であり、そこに生息する動物もまた王の所有物であり、庶民に対する狩猟規制が導入され始めます。

Pietro Longhi 弾弓による鴨狩 18世紀 ヴェネチア

庶民は当然のような反発して密猟をはじめますが、大型の狩猟具は見つかる可能性が高いので選択されないようになり、小型の罠など密猟に適した狩猟具が選ばれるようになっていきます1

一方で、(日本の戦国時代の)戦後に武士の間で火縄銃が実用品から贅沢品に変化してように、ヨーロッパ貴族の間でも狩猟用具は豪華なものに変化していきます。クロスボウも弾弓(弾弩弓*)として再デザインされ、貴族にふさわしい装飾が施されるようになります。

*弾弩弓って…「弾」「弩」「弓」3つとも単体で弓という意味あるよ…

Pellet Crossbow 1550-1600年 イタリアか南ドイツ Accession Number: 29.158.651 MET
Pellet Crossbow 16世紀後半か17世紀 フランス Accession Number: 14.25.1584 MET
下に(左から順に)クロスボウ、銃、弓、弾弓が置かれている2

用途としては、鴨やうさぎのような鳥・小動物に用いられたようです。現代でもスリングの一種として、弾弓タイプのクロスボウは規制されていないので、どこかで使用されているかもしれません。このタイプのクロスボウは日本でも規制対象ではない可能性が高いです。

https://www.mandarinmansion.com/item/chinese-pellet-crossbowより

では、中国はどうだったかというは写真は20世紀前半の近代中国弾弓(写真はオークションサイトより)ですが、戦後一大ブームになります。

北京市のガイドブックで推奨の雀の駆除方法3

戦後、中国の毛沢東が四害駆除運動として雀の駆除を指示し、そのガイドブックの中で、弩、及び、弾弓が推奨されたことから、中国におけるこれらの需要が一気に高まります。中国の研究者Stephen Selbyが当時を知る弓職人にインタビューした記事では、職人は匿名を条件に雀の駆除運動によって一気に需要が高まり、しかし、その3年後に雀が実は昆虫も食べていたことが毛沢東にも理解され、生態系が著しく変化したことで、1000万以上が餓死する事態になり、もはや、雀を駆除するどころではなく、ソ連から25万羽輸入する事態になったことで、当然弓に対する特需はなくなり、現在に至るとのことです4

wiki「打麻雀运动」より 標語は「みんな雀を殺しにおいで」

このインタビューがされた1999年には北京に7つの弓職人店があったようですが、現在ではどうなっているのでしょうか? 戦前に中国で弾弓を購入した研究者の方も何人かいるそうなので、探せばどっかにあるのかな。続く。

  1. Almond Richard, Medieval Hunting, 2003 ↩︎
  2. Baillie-Grohman, William A. (William Adolph), Sport in art; an iconography of sport during four hundred years from the beginning of the fifteenth of the end of the eighteenth centuries.1913 ↩︎
  3. 除害灭病爱国卫生运动手册 (中央爱国卫生运动委员会办公室), 1959,北京 ↩︎
  4. https://www.atarn.org/chinese/juyuan/juyuan.htm ↩︎

NFAAありがとうすぎる!!

ぜんぜん違う調べ物をしていたのですが、いつの間にか、NFAAが雑誌アーチェリー(Archery)のバックナンバーを1927年から全部公開してくれていました!! 論文や本はそう頻繁に出版されないので、定期的に、短い間隔で出版される雑誌は非常に重要な情報源です。本当にありがとうございます。

こちらはメモしていたいつか探そうとしていた記事。60年代の弓の作り方です(U.S.Archery)。勉強させていただきます。

National Field Archery Association 

謎がたくさん | パリオリンピック 2024

女子に続き、男子団体も韓国が金メダルです。おめでとうございます!

中継を見ていたらこんなものが表示されましたが…リリースポイント…これなんでしょうか?? シューティングラインの的側なので、位置的にはリリース時のグリップか矢のポイント先の位置を測定しているものかと思いますが、これを見てどんな分析ができるのかちょっとわからないです。

あと、この仕事は何でしょうか? 放送では杖のようなものを一回ついて退場です。なんだろう…。

【追記】この儀式はブリガディアと呼ばれるようです。オリンピック公式ページに記事がアップされていました。

なぜ競技開始前に木の棒で床を3回打つのか?

ということで、男子団体は韓国が圧倒過ぎて、4-4からのシュートオフ、シュートオフも同点、からのX差で勝利したトルコvsフランス戦をおすすめします。NHKの中継では2:02のあたりです。

アーチェリー 準々決勝

シュートオフの女子団体 | パリオリンピック 2024

【追記】最初に記事を書いたときには動画を見つけることが出来ませんでしたが、読者から連絡があり、NHKに動画がありました。

日曜日の午後に行われた女子団体、チケット完売とは聞いていましたが、満席です! 決勝戦は大接戦で、大いに盛り上がったようです。

韓国チームが2セット先取し、そこから中国が2セット取り返して、最終的にシュートオフに持ち込んでの決着で、この2本のどちらかがラインにタッチしていないと韓国の負けという試合でした。あの韓国チームが途中、全員外して51点(8-9-8-9-8-9)なんて射っているなど、ものすごいプレシャーでの試合だったと思います。

柔道では誤審があったようですが、技量の低い審判を叩いても仕方ないわけで、国際審判という高い技量が求められる仕事に対して十分な給与が支払われていない以上、優秀な人材は集まらないのです。4年に一回、誤審があったら叩くのではなく、いかにして、技量の高い審判を育成していくのか、グローバル化がますます進む世界で、同様の仕事を民間ですれば、2-3倍も給料がもらえる状況で、いかに人材流出を防ぐかの議論をしていただくのが建設的ではないかと思った次第です。

記事・コメントに「いいね」ボタンを追加しました

当然私もいつまでも生きるわけではないので、必要な箇所を複写したりして、手元にある必要がない国会図書館(理論上日本で出版されたすべての本がある施設)も所蔵していない資料は定期的に寄付しようと思い、先日、納本してきました。大事にされてください。

*事前に所蔵されているかは必ず調査してください

記事を書くにあたって参考にさせていただくために「いいね」ボタンを追加しました。ご協力いただければ幸いです(個別の投稿とコメントに表示されます)。

シンプルな新システム | パリオリンピック 2024 アーチェリー競技

このオリンピックから新しい表示システム…と言ってもめちゃ原始的ですが(笑)

確認した限りでは、「競技中のトップ」「世界記録保持者」「世界チャンピオン」「現世界ランキング1位」の4つの表示がされているようです。理論上、4つの表示すべてを背後に背負って競技することも可能ですので、今後の完璧なトップの象徴になるかもしれませんね。

コストもほぼ掛からないし、シンプルでわかりやすいので、今後日本で導入しても面白いのではないでしょうか?

WAが配信しているオリンピックのニュースでは韓国オリンピックチームの男子全員と女子代表の一部で3Dプリンタ製の個人に最適化されたカスタムグリップを使用しているという記事が道具屋としては興味深かったです。

Olympics: Getting the edge with 3D printed grips

競技場の評判もよいですし、そのとおり、ランキングラウンドでも世界記録も更新されたので、いい試合が期待できそうです。今日は開会式、明日は会場が他競技によって使用されるので、28日からトーナメント開始です。

パリオリンピック 2024 アーチェリー競技 中継予定

WAのホームページを見ると、7月19日から選手たちは現地入りしているようですが、昨日から競技が始まりました。今回は、アーチェリー競技に関する中継放送は基本的にTVerという、動画放送サイトが担当するようです。

テレビ放送は28日の団体男子1回戦がNHKで放送されるだけのようです。

TVer | アーチェリー競技

決勝ラウンドはすべて中継され、時間帯も夜なので、観戦しやすいではないかと思います。

オープンスタンスがもう主流ではない??

世界最古の檠(ゆだめ)

http://news.jznews.com.cn/system/2023/03/17/030035603.shtml

前の記事で中国の檠(ゆだめ)について触れたので、中国で最近発掘されたおそらく世界最古の弓のジグについて少し。他にも檠は発掘されていると思いますが、ただの棒なので、弓が隣でセットで発掘されない限り、檠として考古学者によって分類されるのは絶望的だと思います。

*ネット記事で構成しています。詳細は秦俑坑出土弓弩“檠”新探という論文にあると考えていますが、一般人が利用できる国内の図書館になく、読めてはいません。東大にはあるらしいが…

東京大学東洋文化研究所

東京大学にお邪魔して、該当の論文を複写させていただきました。ありがとうございます。

この時代(2200年前)の弓以外のアクセサリーが発掘、または、正しく解釈されることは本当に珍しいのですが、兵馬俑1号坑の前回の発掘では、銅の棒が出土しています1。復元後の写真の弦の内側に見えるもので、長さは50cm・直径0.3cmの銅の棒で、保管時(クロスボウは基本ブレースしたままで保管する)の弦の伸び・リムの変形を抑え、発射時のリムへの負担を抑えるという役割をするものです。

そして、今回の第三次発掘(20092)では、写真のように完璧な位置で檠(檠木)3が発掘され、トップ写真のようにリムの形状の整えるものであるとして発表されました。長さ40cm、直径3cmで穴が3つ空いている木片です。弓から2mでも離れていたら正しく解釈される可能性は絶望的ではないかと思います。

Artist Archeryより

よく考えれば、金属が非常に高価であった時代に現代のようなジグでクランプを大量に使用して固定することなど出来ないので、木と糸による固定でリムを形成していたのでしょう。檠で形成するとは書かれていても、具体的にどのようなやり方で、というのは記録等残っていませんでした。古代の弓づくりを理解するための貴重な資料だと思います。

青阳弓箭より

その後、清(300年前)の時代には「弓挪子」というものが使用されるようになります4が、このジグの構造は単純ですが、これを使用するためには材料のサイズを確実に一定にする必要があるので、材料の供給・加工技術が高度化してから清よりはもう少し前なのかと思います。

  1. 秦始皇兵马俑博物馆 [编],秦始皇陵铜车马修复报告,1998 ↩︎
  2. 李洛旻,《荀子》「接人則用抴」解詁及其禮學意涵,《中國文化研究所學報》第68期,2019, ↩︎
  3. 秦俑坑出土弓弩“檠”新探 ↩︎
  4. https://www.bilibili.com/video/BV1cJ4m1A7ex/ ↩︎

アーチェリー指導とスポーツ科学

交流するために何名かの弓・弓術・弓道の研究家の方とツイッター(X)で繋がっていて、定期的に確認しているのですが、朝起きたら、こんな投稿がピックアップされて私のところに表示されてきました。

弓道界隈の人口を考えると投稿から半日で1.4万表示は結構盛り上がっているのではないでしょうか。この記事の中身ですが、ポイントとしては、

指導者としての技術レベルが低い人が多いというわけではありません。技術そのものがないのです。江戸時代ならまだしも、解剖学、運動学、数学・物理学が存在しない

医師から見て弓道の指導は終わっている 抜粋

書いている方はアーチェリーと弓道を両方経験している方のようですが、正直そこまで言わなくてもと思う反面、指導される側がもう「江戸時代じゃないんだから」と、現在科学をベースとした指導を希望する気持ちも理解は出来ます。

何年か前に母校のバイオメカニクスの教授の方に連絡して、アーチェリーをバイオメカニクスの視点から研究したいと相談しましたが、「それは難しすぎて現実的ではない」と言われました。そこから、分野の論文を読み漁っているのですが、今では教授の方の言葉はよく理解できます。科学はまだアーチェリーを語るレベルに来ていないのです。おそらく弓道も同様でしょう。

人体は驚くほど複雑な事を簡単にこなします。現在、ある程度わかっているのは単純な筋肉・腱・骨と栄養補給くらいかなと思います。アーチェリーで言えば、適切な栄養補給と、いかにしてポンドアップして、400-500本練習できるからだを作るか、46ポンドの弓が無理なく引けるようになるか程度で、どうしたら上達するかはほぼわかりません。

アーチェリーは複雑な動作です。角度・速度・リリースポイントの解析が必要である点では、「投げる」運動と重複する点が多く、野球・バスケットボールはアーチェリーと比べ物にならないほどの大きな市場で、大量の指導者が存在していますが、それらの人員・資金があっても、正確に投げるために何が重要かわかっただけの段階にすぎません。

現在、プロプリオセプション(proprioception = 固有感覚)が投げる動作の(リリースポイントの)正確性に関わる大切な要因であるとされています。

プロプリオセプション(固有受容感覚)は、スポーツ科学において重要な役割を果たす身体感覚システムです。筋肉、腱、関節からの情報を統合し、身体の位置や動きを無意識的に把握する能力を指します。これにより、アスリートは正確な動作制御や姿勢維持が可能となります。特に高速で複雑な動きを要するスポーツでは、プロプリオセプションが適切なタイミングと力加減を可能にし、パフォーマンス向上に寄与します。

AI(CLAUDE 3.5 SONNET)による要約

簡単に言えば、足元を見なくても、足の小指をタンスにぶつけないで歩ける能力ですが、これが加齢とともに低下すること、病気・事故によって低下した時にある程度回復させるためのリハビリ方法の研究が進んでいる程度で、アスリートとして、いかにこれを向上させるか、科学的な方法は発表もされていもいません。

野球・バスケットボールの投げるは難しすぎます。腕で投げるだけではなく、身体自体の重心移動を伴い、下半身も動作に関与します。科学というのは積み上げですので、まずは(変数の少ない)簡単な動作を研究しようとなります。研究が進んでいる分野の一つにダーツがあります。同じ投げる動作であっても、(厳密には無視できないかもしれませんが)下半身を使わず、ほぼ肘から先だけを使い、片手だけで投げ、体の重心移動はなく、風の影響がない屋内で行い、最も重要なポイントは、実験をするための熟練者が存在します。単純化した投げ動作をみんなにやらせて実験しても比較対象群が存在しません。一方、ダーツにはプロ選手が存在していて、素人とプロの比較が容易です(*)。

*当初私は偉い運動学の先生がなぜこぞってダーツ?? と思ってました、無知は怖い。

80年代に投げるスピードと正確性にはトレードオフの関係がある(speed-accuracy-trade-off)ことがわかってきます1。この説明としては、正しくリリースするためのポイントがあると定義したとき、投げるスピードが速いということは、そのポイントを手が通過する時間も速い2ので、正しくダースをリリースするための許容時間(Time in Success Zone: TSZ)が短くなるというものでした。

ダーツ研究をたくさん紹介しても仕方ないので、最近の研究としては、この発展として、プロ選手でも、そのタイミングをピタッと合わせる戦略を取りに行く作戦(B)と、タイミングのばらつきを手の動きによって補正することで、的中のための許容時間を倍に伸ばす作戦(A)の2つが存在しているというものです3

おそらく、この作戦の違いの後者は、経験則で知られているように、タイミングを逃しすなどのミスをした時に、最後まで矢の動きに影響を与えることのできる押し手の動きによって、それをリカバリーしようとする動きに関連付けることができると思いますが、ダーツという変数が5つ程度しかない運動に対して、アーチェリーは変数が10以上は存在するので、解明が進むのはまだまだ先だと考えます。

アーチェリーの動作の前に存在していたとされる投石・投槍(全身動作としての投げ)、その動きの単純化のダース投げの研究がやっと解明された時くらいです。もっと科学的な指導、科学的な裏付けという、被指導側のニーズはよく理解は出来ますが、もうしばらくお待ち下さい。

  1. Gross, J.B. and Gill, D.L. (1982) Competition and instructional set effects on the speed and accuracy of a throwing task. Res. Quart., 53(2): 125-132. ↩︎
  2. 桜井伸二,高槻先歩, 投げる科学,大修館書店,1992 ↩︎
  3. 那須 大毅, 松尾 知之, 投げの正確性に関わる上肢キネマティクス:ダーツ熟練者にみられる異なる方略間の比較, 体育学研究, ↩︎

狩猟に使われたローコスト・クロスボウ

Annual report of the Board of Regents of the Smithsonian Institution 1936.P439

クロスボウについては特に専門ではありませんが、原始的な狩猟用に使われているクロスボウに関する情報が少なかったので、まとめて記事にしました。クロスボウの起源は(地域としての)中国のあたりで、紀元前7世紀頃とされていますが、記録に残っている物、出土しているものはほとんどが武器・副葬品として製作されたもので、贅沢に高価に金属が使用されています。

ナイジェリア、ベナンの戦士によって使用されていた物(裏返し)
The Trustees of the British Museum. Asset number 1613686494
The Origin Of West African Crossbows

では、庶民が狩猟に使用していた「低価格」なクロスボウはどんなものだったかというと、原材料は木と糸…ほぼセルフボウですね。引いた弦を上の溝に入れて固定し、発射時にはピンで下から弦を押し上げて発射するという至ってシンプルな構造になっています。狩猟具は武器や副葬品と違い、作りはシンプルで、金属も使われていないために、古いものが出土することはほぼないのですが、現在でも西アフリカやアジア、20世紀前半のノルウェー(捕鯨のためなので多分もう使ってない)とネイティブアメリカンによって使用されています。

見ての通り、ストロークが短いので、強い矢を発射することは出来ず、西アフリカでは4-5m(15フィート)の距離で小型動物か毒矢との組み合わせで使用されました1。伝播としてはアジア島しょ部へは直接中国から、またはベトナムを通してと考えられており、東アフリカにはクロスボウ文化がことから、ヨーロッパからは陸伝いではなく、船によって14-15世紀にクロスボウが、航路的にヨーロッパに近い西アフリカに伝わったと考えられています2

また、ベナン地域には独自の伝説が存在し、

ベナンの伝承では、普通の弓を発明したオバ・エウアレの治世に生きたベナンの神格化された英雄の一人、イシのアケ・オブ・イロビ(Ake of Ilobi)がクロスボウの考案者でもあるとされている。

https://www.britishmuseum.org/collection/object/E_Af1940-22-2

とされていますが、専門家の間ではアフリカ土着の発明品ではないとする学者が多数派のようです3

山陰中央新報より

もちろん、日本でもクロスボウ(弩)は使用され、近年出土していますが、いずれも、金属製のトリガーで使用するタイプのもので、庶民が使うような低価格クロスボウはまだ発見されていません。上の記事、専門家がクロウボウを復元してその性能実験を行っていますが、もう違法な研究になってしまったのでしょうか。これから日本における弩の研究はどうするんですかね。残念です。

  1. Paul Belloni Du Chaillu, Explorations & Adventures in Equatorial Africa ↩︎
  2. Henry Balfour,The Origin Of West African Crossbows,1911 ↩︎
  3. Newsletter of the African-American Archaeology Network,Number 16, Spring-Summer 1996 ↩︎