ウィン&ウィンの2015年モデルのカーボンハンドル WIAWIS NANO MAXはウィンにとっての原点回帰

WIAWIS_MAX_INNO比較新しく発表されたWIAWIS NANO MAXを見て驚いた人は多いと思います。写真の左がINNO MAX、右がWIAWIS NANO MAXです。まぁ、どう見ても同じですね。完成品を見ていませんが、写真で比較する限り、INNO MAXはほぼ100%同じ形をしています。遠目で見分けることはまず不可能です。

では、WIAWIS NANO MAXとINNO MAXは何が違うかというと、ハンドルのバランスが変更されていて、従来の重心よりも30%前方にハンドルの重心を置いています。

先日、他の最新設計のハンドルではなく、再度5年前に登場したホイットのGMXハンドルで世界記録を更新した時のコメントですでに書きましたが、カーボンハンドルの優位性とは何だったのかというものが問われています。ウィンが初めてカーボンハンドルを発表した時には、ホイットをはじめ他社も追随すると思われました。しかし、その後サミックからもカーボンハンドルが出るという連絡があったものの、結局発売されず、ホイットもMKもカーボンハンドルは製造していません。

GMXのレビューは2008年11月、ちょうど6年前に書きましたが、GMXのコンセプトはホイットにとっての原点回帰というタイトルにしました。今回のこのWIAWIS Nano MAXハンドルはどうかというと、こちらもウィン&ウィンのカーボンハンドルの設計の原点に回帰したモデルになったといえます。

TFSシステム
この広告を覚えていますか。これは、ウィンが2009-2010年にプッシュしていたTFSシステムというもので、写真のように、発射時のハンドルのねじれ(矢のクリアランスを邪魔する方向の動き)を最小限にするという目的のものでした。
TFSシステム_Apecsハンドル
その仕組みは…まあ単純なもので、発射のハンドルの動きは支点であるグリップを中心に発生しますが、ハンドルを的方向に長くして、重心をグリップから離すことによって、ハンドルがより”固定される”状態を作り出すというものでした。それを搭載したハンドルTF Apecsは悪くないものでしたが、特にトラブルもなく、不具合も少なかったのに…個人的な印象としてはその奇抜的なデザイン、または確か14万円ほどもした定価が原因であまり支持されず、商業的には失敗したモデルとなりました。それ以降、ウィンは同様のデザインのハンドルを設計しなくなります。

front_weight
モールド形成
今回のWIAWISハンドルでは、デザインはINNO MAXと同様なものにしながらも、削り出していくアルミハンドルとは違って、カーボンハンドルの特徴であるモールド形成(写真下)という手法だからこそできるやり方で、ハンドルのバック側(的側)にウェイトを挿入することで、見た目はINNO MAXと同じでもハンドルの重心を30%前方に置くことを実現しています。ウェイトをハンドルに埋め込むことでTFSシステムと同様のものを実現しているのです。

ハンドルの中でも重心や重さにに偏りが生じれば、当然、振動・負荷はハンドル全体ではなく、特定の部分に集中しやすくなります。その対策として、新しいWIAWISハンドルでは、カーボンハンドルに使用されているカーボン繊維のアップグレードを行っており、リムなどには既に使用されているナノカーボンをハンドルにも使用することで、これまでのウィンのハンドルと比較して30〜40%強化されたカーボンを新しいハンドルでは使用しています。
ウィンの資料によると、シューティング中の振動を30%削減することに成功しているそうです。
最初にこの、INNO MAXと同じ形というある意味では非常に奇抜なデザインのハンドルを見たときは戸惑いましたが、その設計に対する思想としては、ある意味では”ウィン”のカーボンハンドルに対する考え方、重心を前方にして動きを抑制する・またバックの振動をより重点的にとる(NXエキスパートなどでの設計)を取り入れた、ウィンなりの原点回帰があるように感じられます。

NX_ハンドル_バックイメージ参考資料:NXエキスパートハンドル(2008)

このハンドルは今後のアーチェリー業界でのカーボンハンドルの成功を予想するための、一つの試金石になるように思います。