ホイット2020、グランプリタイプでベアボウ競技に対応を。

近年アーチェリー業界でベアボウについて多く聞かれるようになり、対応できないようではだめだと、自分も1年前にベアボウ競技に挑戦し始めましたが、2020年、想定よりもかなり早く(笑)最大手のホイット(HOYT)がベアボウ競技に対応するアイテムを発表しました。ただ、個人的には、もう少しブラッシュアップしてほしい感じがします。

追加それた機能はベアボウのサイドプレート。これはGilloなどのハンドルで採用されているのですが、機能としては、重量を付加しつつ、ブッシングを生かしておくことが求められますが、この丸みでは、径が大きいウェイトと干渉しないか心配です。アメリカで普及している31mmならいけるのかな?YOSTウェイトなどは難しいでしょう。届いたら試してみますが、もう少しスペースがあったほうが良いかと思います。

アルミバージョンのフルセットで425g、ステンレススチールのフルセットで907gです。

もう一つは、近年ベアボウで人気のCDアーチェリーのハンドルデザインのように、リムポケットに重量を付加できる機能です。ベアボウではスタビライザーは使用できないので、ピボットから離れた場所にウェイトを置くことで振動の減衰を狙います。1つ43gで、上下に最大4つ約200gの重量を追加できます。リカーブでも使用できますが、リカーブならウェイトの追加よりもモジュラータイプのタンパーを上下に付けたほうが効果が大きいと思われます。


また、ベアボウのアーチャーの多くは、視界の邪魔になるので、クリッカープレートを使用しませんが、このハンドルでは、クリッカープレートがプランジャーの位置を決定するので、その選択肢ができません。

まぁ、新しいハンドルでベアボウに対応するオプション出してみたといったレベルですが、アメリカには多くのすぐれたベアボウアーチャーがいるので、その方たちからのフィードバックを得て、何年かのうちには競技的なベアボウオプションを完成していくものと考えます。少なくともホイットがベアボウに対応することをアナウンスしてくれたことは喜ばしい限りです。今後が楽しみです。

続く(次回はハンドル入荷後に)


成長するベアボウ競技。

(USAアーチェリーより)

ベアボウ競技を始めてから、ベアボウのコミュニティにかかわることが多くなりましたが、アメリカやヨーロッパではベアボウ競技が大きく成長しているようです。競技人口も大きく増加しているとのこと。

それに伴い、例えば、アメリカでは2014年ごろからベアボウカテゴリーがナショナルターゲット(全日本ターゲット選手権に相当)に追加され、122cm的の50mwラウンドで競技されています。そして、先日ASA(3Dアーチェリーの競技団体)が、2019年より、ベアボウカテゴリーを競技に追加すると発表しています。

今年から始まるインドアワールドシリーズでも試験的にベアボウカテゴリーが追加されています(ファイナルには進出できません)。

日本でも盛り上げていきたいです(まず俺が上達しないと…)!


ベアボウ用のサイトチャートを作る。

チューニングが固まってきたので、そろそろサイトチャートを作ることにしました。チューニングが変わるごとに作り直す必要があるので、これで当分はチューニングを変えられません。。

さて、コンパウンドと違いサイトがないベアボウはクリック単位でサイトを調整できるわけでもないので、あまり精密なものを作っても使えません。あくまでも、タブの目盛りをどのように見るかのガイドとなるものを作ることが重要です。

まずは、距離ごとにどの目盛りで射つのか、5メートルごとに的を移動させて、確認していきます。

そうして確認して各距離ごとのデータをエクセルのような表計算ソフトに入れてグラフを作ります。点は入力データ、直線は次のデータまでを繋ぐ線、つまり5mと10mのデータから導く、7.5mの時のサイト。点線は全体のデータを使って計算した近似直線です。つまり、全部のデータを平均した時、7.5mの時に取るべきサイトということになります。


このどちらのほうがより、実用的なのはフィールドコースに出て確かめたいと思います。1番差が大きいのは17mあたりでしょうか。また、コンパウンドと違って貼るサイトもないので、印刷して、ノートなどに貼ることになりそうです。


ベアボウ用の弓を組み上げる。社会人に優しいベアボウ。

昨日、弓を組だてて完成させ、射場で練習してきました。概ね、50メートルでターゲット80cm的で黒以内でしたので、フィールドコースに出られるくらいのレベルにはなっていると思います。
写真はアバロンが出しているベアボウ用のケースですが、デカいクイーバーを選択しない限り、一式全部これにコンパクトに入ります。持ち運びが楽なのは助かります(笑)

実際、私はコンパウンドから転向していますが、現実的に考えて、やってみたいと考えている方はリカーブの方のほうが多いと思いますので、リカーブから転向する視点で下記記事を書きたいと思います。また、書かれている知識は現時点での自分の理解です。正しいとは限りません。成長していく流れ含め、共有することに意味があると思いますので、そのまま書きます。また、本当の初心者がベアボウを始めるためのガイドではありません、ある程度のアーチェリー経験者を想定しています。

さて、ベアボウの弓についてですが、楽しむだけであれば、タブだけ買って、距離ごとの目盛り(引く位置)を射場で記録すれば、すぐにでも楽しむことは可能です。しかし、ここでは目標は全日本選手権大会ですので、競技用、勝つための弓を組んでいくこととします。

*Erik Jonsson(スウェーデン代表選手), john demmer(アメリカ代表選手), vittorio frangilli(ベアボウハンドルデザイナー)さんからの情報をもとに構成しています

ハンドル

まず、ハンドルですが、正直なんでも大丈夫です。世界のトップでもWNSのフォージドなどで大会に出ています。ただ、ハンドルにはスタビライザーなどをつけることができないので、ハンドルにウェイトをつけることが必要です。今回はそのウェイトオプションが豊富でベアボウのために設計されているGilloのG1ハンドルを選択しました。

ベアボウのための設計というのはセンターが写真の通り、反対側に1mmオフセットされていることです。リカーブでもセンターブッシングはスタビライザーを取り付けるためのブッシングとして考えられますが、ベアボウでは、ウェイトをつけるためのブッシングです。ここをオフセットすることで、ハンドルのウィンドウ側によった重心を真ん中に持ってくることができ、かつ、左右の重心ずらすことで振動吸収性を高めることを目指しています。また、価格も高くはありません。エントリーモデルのG2フォージドと同じくらい、塗装の仕上げは高め、オプションをつけたG1でWINEXと同じくらいです(今後販売予定)。ベアボウはお金がかからないのです!

リム

リムですが、基本何でも大丈夫です。選択のポイントは引きたいポンドと矢のバランスです。リカーブの方はびっくりすると思いますが、ベアボウでは高いポンドは基本的に使いません(使えません)。2016年の世界大会で優勝したエリック選手は36ポンド、今年の世界フィールドに選ばれたアメリカ代表のジョン選手は38-39ポンドです。

なぜ、高いポンドを使用できないのか。それは多くの選手が使用しているストリングウォーキングという射法にあり、高いポンドを使えば使うほど、アンカーと矢の距離が離れてしまいます。その距離は短いほどチューニングしやすく、また矢飛びもよいのです。ですから、多くの選手はこの距離がほぼない状態で50m(再長距離)を射ちたいと考えます。この距離を決めるのはリムの性能(高いほど離れる)、リムのポンド(高いほど離れる)、矢の重さ(重いほど近づく)の3つです。

つまり、リムは体力との相談というより、この3点とギャップ(矢と50mの時の引く位置)のバランスで各選手が決めます。私の場合、アバロンの600/90grの36ポンドで、1.5cm程度のキャップでした。

全日本選手権に出た時、リカーブでは44-46ポンド、コンパウンドでは59ポンドでしたが、ベアボウでは36-38ポンドで程度で行けると思います。3種目の中でベアボウが一番体力的には楽で、練習量のとれない社会人にはかなり適しているのではないでしょうか。

また、ストリングウォーキング(以下全部この射法前提)では、引くのは弦の真ん中ではなく、弦の下の方です。そのため、下リムが早くブレースに戻ってしまいます。基本両方のリムが同時に戻るのが望ましいので、逆ティラー(上リムを強くする)をつけたり、リカーブのためのリムで最初からティラーがあるリムの場合は、上下を逆に装着したりします。私は現在+6mmに設定しています。ブレースとノッキングポイントはリカーブ設定のままです。

レスト

よくチューニングされていれば金属レストで十分ですが、ベアボウの射法ではシャフトに上下のストレスが発生します。特にチューニング途中ではかなりのストレスがかかる場合があります。自分はゼロからのチューニングですので、上下のストレスがかかっても、破損の可能性が低い頑丈なバーを持つレストを選択しました。

タブ

タブですが、目盛りがついているものを使用します。みんな36ポンド程度を使うからでしょうか。ぴったり1目盛りで5mでした。こればかりは、新規に買うしかないのではないかと思います。

ストリング

これは射ってはじめてわかりました。太いものが良いとされているのですが、自分は弦の感覚を感じたいのでリカーブと同じSノックがはまる弦(8190)を選択しましたが失敗しました。太い弦が良い理由はチューニング・シューティングではなく、射つとき、引く場所を目盛りで決め、その位置に手を置いてタブをそこに移動させるのですが、弦が細いと滑る…。太い弦(Lノックサイズ)をお勧めします!!

プランジャー


3分15秒ほどからで、一番左の選手に注目してみてください。私は採用するか決めていませんが、ベアボウではプランジャーを試合中に調整するのです!!

というのも一定に引いた(ピボットから親指までの位置)場合、矢は短距離になればなるほど引かれなくなります(リアルドローレングスと呼ぶ)。そのため、短距離ほど、矢は硬くなり、左に飛びます。それに対処する方法はいくつかあるのですが、道具側で対処するには、試合中、距離が変わるごとにプランシャーを調整するという方法がとられます。自分がどうするかは決めていませんが、アバロンの調整可能なものを選択しました。

リカーブから移行する際にはリアルドローレングスの関係で、硬く振る舞います。自分は新しく作りました。また、ポイントをサイトとして使うことになるので、ポイントはタングステンポイントのような丸いものではなく、トップハットのような尖がっているものが適しています。

チューニング

結果だけアップしておきます。チューニングとは基本理論はありますが、そう簡単に終わるものではないので、全日本レベルまでもっていくには1-2か月かかります。

ベアボウチューニングの基本は妥協です。距離によって矢にかかるテンションの方向もリアルドローレングスも違うので、同じセッティングでと飛びを全距離でよくすることは不可能です。左右は試合中にもプランジャーのテンションを変更することで調整できますが、上下は妥協となります。一番よく知られた方法では5mから10mは捨てる(インドア同様短距離は矢飛びとグルーピングの相関は低い)、15m-50mの間の中間、例えば30mで矢飛びがきれいになるようにする方法です。

動画のように、短距離では矢はプランジャー上を通り、長距離では下を通ります。30mで真ん中を通る予定です。ということで、ここまでやって、射場に行きました。

以上、ベアボウ道具選択についてでした。

これからはチューニングと射形を固めていきます。


参考 世界チャンピオン(2016世界フィールド) エリック・ジョンソン(Erik Jonsson)選手の道具

ハンドル: Win&Win wiawiz nanomax
リム: WiaWiz ONE Foam M-36 limbs
矢: Easton ACE-520 / 100gr Tophat SL points / BJORN DragonFlight vanes #225 / Beiter nocks

自分の現在の道具

ハンドル: Gillo G1 ディスクウェイト6枚 + アルミベアボウカバー(270g)
リム: SF エリート+ M36
矢: Avalon Tec one 600 / 90gr Tophat ポイント / XS Wing / Avalonピンノック


ベアボウ編を開始します。

これまで、より広範囲のプロショップとしてのノウハウを獲得すべく、コンパウンドに挑戦(全日本2位)しフィールドに挑戦し(私ではないが一緒に練習していた坂本が)全日本優勝で世界代表になったので、新しい分野として、私がベアボウに挑戦することにしました。


これまで通り、振り返る形式ではなく、どのように成長していったか分かっていただけるよう、現在進行形で記事を書いていきます。ほぼ知識のない分野ですが、頑張ります。どのような結果となるでしょうか?!


ベアボウ向けのとにかくいろんな所にウェイトが装着できるGray AIX 25が発表されました。

スタビライザーなどを製作していたGray Archeryが、ハンドルの開発に乗り出し、新しいベアボウ向けのハンドルGray AIXハンドルを発表しました。写真の通り、とにかくいろんな場所にウェイトを装着することが可能です(ウェイトはハンドルには付属しません)。ハンドル自体は1150g程度の軽量ハンドルです。

もう一つユニークな特徴はホイットのいわゆるテックブリッジ部分が取り外し(そもそも別売り)であるという点です。コンパウンドでは、ボウテックがファナティック(Fanatic)シリーズで取り外し可能なブリッジを採用していますが、リカーブハンドルでは珍しいと思います。

6月後半の出荷予定ですが、弊社で取り扱いするかはまだ決めていません。


ベアボウ、2016年よりルールに明記されたプレートメモリタブが入荷しました。

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ベアボウの弓具ルールの歴史にはそれほど詳しくないのですが、以前のルールでは明記されていませんでしたが(縫い目はよい)、2016年よりルールに明記されたのは、タブの縫い目よりも高精度である(と思われる)直接プレートに付けられたメモリが使用できるとの明文化です。

弊社の取引先では、ブラックマンバこのタイプの製造を始めていましたので、仕入れてみました。需要があればベアボウ系を拡大していきます。

ブラックマンバ T2 ベアボウ


トラディショナルアーチェリー 完成しました!!

表紙2013年の上旬に手をつけ始めて、やっと完成しました。2013年に、19世紀に書かれたクラシックなアーチェリーガイドブックを翻訳し、これから、アメリカのアーチェリー連盟の技術ガイドブックの編集作業に入りますが、その間をつなぐ一冊として翻訳しました。

トラディショナルアーチェリーとは、クラシックなデザインと現在の技術を融合させたアウトドアスポーツで、競技アーチェリーとの違いで言えば、クリッカーやサイトがないベアボウのような弓で、自分の家の庭で空き缶を射ったり、近所の山に出かけてローヴィングと呼ばれる、散歩しながら目に入ったもの射ったり(松ぼっくりとか切り株とか)するものです。歩きながら行うので、弓はシンプルで、長い距離の移動を苦にならないように軽いものが使用されます。

ずっと東京で暮らしていた時には、こんなスポーツどこでやるんだと、日本では絶対に無理だと思っていましたが、一時期、静岡県の山に住んだとき、その山にはうちを合わせても4世帯しか住んでいませんでした。道路はうちの玄関まではぎりぎり舗装されてましたが…。

東京では絶対に無理ですが、日本全体で考えれば、ローヴィングや、庭でアーチェリーできる環境はたくさんあるのではないかと思ったのが、きっかけでした。都会から少し離れれば、安全にトラディショナルアーチェリーができる環境はたくさんあります。東京にいる自分の視野が狭かっただけでと思います。

この本では、

1. トラディショナルの謎…5
2. 始まり…15
3. トラディショナルアーチェリーの父たち…27
4. 伝統の弓…39
5. 弓の形状…53
6. ドローウェイト…67
7. 弓のテストと選択…77
8. カスタムボウ…89
9. 弓のセットアップとチューニング…101
10. アーチャーコントロール…117
11. 直観という技術…129
12. 木の矢…139
13. ブロードヘッド…149
14. 素晴らしいフェザー…157
15. 自分の矢を作る…167
16. ボウストリング…179
17. 静かに!…189
18. ストール、タブ、グローブ、アームガード…199
19. ゲームと練習…209
20. 子供のためのトラディショナルボウ…219
21. 弓矢のメンテナンス…231
22. 保管と移動…241
23. 弓の安全…249

Q&A…257
用語集…260
翻訳について…272

と、歴史から弓の選び方、矢の作り方、射ち方、楽しみ方まで、弓の作り方(これだけで4冊くらい本が書けます)以外の情報は全部そろっています。日本では馴染みがまだまだないトラディショナルアーチェリーを紹介するのにはぴったりに一冊だと思います。

こういったレジャーとしてのトラディショナルボウの取り扱いの準備も開始しております。もうしばらくお待ちください。

本は6月中の販売開始予定です。あまり…売れるジャンルの本ではないですが、一つのきっかけになればと思っています。

トラディショナルアーチェリー サム・ファダラ著
サンプルはこちら


ハーモニックダンパー搭載の新しいハンドルVanquish(ヴァンキッシュ)

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1月に紹介したスカイアーチェリーのハンドルに続いて、また、新しいハーモニックダンパーを搭載したハンドルが登場しました。現状で取扱い予定はなく、紹介のみとさせていただきます。

メーカーは2000年前半に創業されたドイツのStolid Bull Bowsというメーカーさんで、主にベアボウにフォーカスした設計をしてきたメーカーです。

よく知られているてハンドルは、通常単体だけでなく、スタビライザーを装着した状態をあらかじめ想定して設計されています。ただ、ベアボウ競技ではスタビライザーは使用できないので、ベアボウに合わせたハンドルは、上の動画のように何も装着していない状態でも、弓がきちんと飛び出します。HPXハンドルなどで同じように射つと、アッパー側が頭の方に回転し、まっすぐは飛び出しません。

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ベアボウの世界では知られているメーカーでしたが、そのメーカーが満を持して発表したハンドルがVanquish(ヴァンキッシュ)ハンドルです。Vanquishは打ち負かすという意味です。26インチで1,800gとかなり重いハンドルになっています。

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そして、このハンドルでもっともユニークな点は、ハンドルとレストとプランジャーホールが独立しているというところです。高い剛性を実現するために、ハンドルに大きな穴をあけずに、ねじによってレストとプランジャーホールがある独立したプレートをハンドルに取り付ける構造になっています。そして、このプレートには種類があり、これによって細かいグルーピングのチューニングができます。
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以前、、同じような発想のプランジャーホールの高さを調整できるハンドルがありましたが、固定が甘く、プランジャーホールの位置がずれてしまうトラブルが多く発生して、結局他機種に広まることはありませんでした。ただ、プレートを取り換えるこのタイプの設計であれば、一度調整した位置がずれてしまい心配はまずないでしょう。

価格は、以前に紹介したスマートライザーに負けないほどの130,000円ほどです。直接メーカーから購入することができます。

Stolid Bull Bows
http://www.stolid-bull.com/


Nimes 2013 / 世界インドア ステージ2 を見て


Nimes2013の会場で行われていたメーカー展示会に商談に、隣の体育館では、ワールドカップ・インドア2013 ステージ2が行われていました。
3時間くらいしか観戦する余裕はなかったのですが、道具屋という視点からの感想を少し。上のビデオがダイジェスト編になります。
まず、個人的に面白かったのは、ヨーロッパ(の北の方)では大人気でも、日本ではほとんどのプロショップで販売されていないスウィングVバーを使用している選手がリカーブの男子部門で優勝したことです。おめでとうございます。これを機会に検討されてはいかがでしょうか★
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写真は試合に勝った後にみんなのリクエストに応じて、弓を引くリカーブ男子優勝のROHRBERG選手。たまたま見つけて写真撮りました。
さて、リカーブの方では、特に目立った動きはありませんでした。価格でもわかるとおり、フォーミュラはRX/HPX/ION-Xの間では、特にどれが上位機種といった差はないので、ION-Xを使用している選手は特に多くありません。RX/HPXを使用していた選手の多くはそのままでした。
WIN&WINでは、韓国選手が新しいINNO MAXハンドルを使用して試合に出場しましたが、そのくらいです。確か、この時期は韓国選手はナショナルチームの最終選考をしている時期で、毎年ワールドカップのインドアには韓国のトップ選手は出場しません。アジア圏の選手(日本含め)も多くは出ていないので、リカーブではHOYTが目立ちましたが、そんな理由なので特に評価できる結果ではありません。
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それに比べ、HOYT…というよりもプロコンプ・エリートの圧勝だったのがコンパウンドでした。最後まで残っていた選手のほとんどはHOYTのプロコンプ・エリートを使用していて、ION-Xが新しく出ても、既存のユーザーはGMXやRXから乗り換えない選手が多かったリカーブに比べ、多くのHOYTユーザーがプロコンプ・エリートに早速乗り換えていました。
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今回のワールドカップでは3位にとどまったジェシー選手ですが、HOYTのブースでプロコンプ・エリートの設計について意見交換したところ、面白い話が聞けました。
プロコンプ・エリートはこれまでにないほどユーザー中心に、ユーザーの好みを取り入れた弓だということです。この弓は、弓単体の性能をテストして開発されたのではなく、近年のターゲット競技においてのスタビライザーセッティングでシューティングした状態を想定して開発したものだそうです。
流行りのセッティング(2つ上の写真のように、センターを長く・おもりを先端に多く、サイドは片側で重量を持たせて、重心は若干低めに)で使うのであれば、プロコンプ・エリートは圧倒的に優れているとのことでした。というよりも、そのスタビライザーセッティングで使うために開発されたようなものです。
逆に、自分のスタイルがあって、写真のようなセッティングにしていないなら、プロコンプ・エリートの特性を生かすことができないので、アルファ・エリートなどの既存のモデルの方がいいのではということでした。
当然・スタビライザーとのセットで使用するのが今の常識ですので、スタビライザーを使用した状態を想定して弓を開発するのはどのメーカーもしていることで、ベアボウで弓具テストするメーカーはありません。しかし、そのセッティングの具体的な中身までも想定して弓を開発するのというのは、かなり新しいやり方で、理に適っているものの挑戦的な設計方法です。
リカーブに例えれば「長めのエクステンダーに水平80度のVバーに上にアッパーを一つ付けて、センターにウェイト3つ、サイドにはダンパー1つずつというセッティングで一番性能を発揮すハンドル開発しました」ということで、ここまで想定して設計したモデルは初めて聞きましたし、逆にこのセッティングにしていないアーチャーの購買意欲を失わせる結果になるので、かなりの挑戦です。ただ、今回、ほとんどのトップアーチャーがこの最新モデルに移行したことを考えると、エンジニアの狙いは当たりだったと思います。
他メーカーの状態を考えると、2013年はプロコンプ・エリートの独走になる可能性が高いです。
マシューズの人もいたので、話ししましたが、「Apex7の優れた設計は色あせていない・今でも十分に通用する」とのことでした。その意見には全く同意しますが、この10年でスタビライザーのセッティングから使用する素材、または、カーボンブレードやSFエリートのように今までにない形状のスタビライザーまで登場しているので、進化したアクセサリーに合わせた再設計はあってもいいのではないかと思います。
弓単体ではなく、全体で高性能の弓を作りこんでいくという話をつなげて、もう一つ目立ったのが、CX(Carbon Express)の矢でした。今回、最終的に残った8選手のうち、2選手もがCXの矢(X-Buster)を使用していました。世界戦では、特に決勝に残るレベルの選手はイーストンを使っているのが一般的でしたが、その法則が、少しずつですが崩れつつあるように感じます。
引き金はイーストン自身かもしれません。内輪の話になりますが、イーストンは1年前にHOYTと流通システムを統合しました。もともとから、HOYTはイーストンの傘下のメーカーでしたが、より結びつきを強化しています。それに対抗してか、他のメーカーも特定の矢のメーカーとの結びつきを強化していて、その関係性の中で、(日本では)無名だったシャフトメーカーが急激に製造技術を向上させています。
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PSEはCX(Nano pro)との関係を強化し、マシューズはビクトリー・アーチェリー(VAP)との関係を強化、WIN&WINはカーボン・テック(McKinney II)との関係を強化しています。SFはスイスの・SKYARTから供給を受けていますし、今回会場では、カーボン・インパクトというメーカーがいました(フランスと関係が強いメーカーですが、具体的な話は聞く時間がありませんでした…すみません)。
Carbon Impact
http://www.carbonimpact.com/catalog.pdf

当店では、Nano ProとVAPはテストしましたが、自分の判断で、まだ本格的にイーストン以外のシャフトを販売することはしていませんが、大手アーチェリー製造メーカーとシャフトメーカーが関係を強化して、技術を高めあえば、近いうちにはこれらの4つのメーカーのどれかから、イーストンよりも高品質で、低価格のシャフトが登場する可能性はあると思います。実績でいうと、CX(世界選手権で2つメダル、今回のオリンピックで1つのメダル)が先頭ランナーでしょうか。
HOYTとイーストンの倉庫の統合はイーストンのアーチェリー部門のロジスティックの合理化がメインの目標だったと思いますが、その動きが意外なところに影響を与えている気がしました。
まぁ、そんなこと考えないで、素直な気持ちで見ても、面白い試合なので、ワールドカップのステージ2の動画楽しんでください。2月の7~10日はワールドカップ ステージ3が行われるラスベガスに行って来ます。いくつか新商品が発表される予定です。お楽しみに。