【プロディジー問題】エリソン選手の弓の改造がさらに進む

NIMES15_B16_4349以前に記事にしたプロディジーの安定性の問題ですが、先週末のワールドカップインドア・ステージ3ニームに出場し、予選一位、決勝トーナメントで三位になったエリソン選手の弓で改造がますます進んでいるようです。また、ステージ2で直接話を伺った(リムシステムの改造についてはスポンサーであるホイットとの兼ね合いもあるだろうと思い直接は聞きませんでした)ハンドルのウエイト調節パテはそのまま使用してています。

写真の通り、リムボルトは可動ではないソリッドタイプなのですが、まさかの上リムと下リムで異なる固定方式を採用しています。上ではオリジナルよりも大きい幅のワッシャーをはさんでハンドルに固定し、下ではねじだけでハンドルに固定しています。

ハンドルの上下で異なる固定方式を用いるという話は聞いたことがありません。面白い発想です。今後の改造に期待です。


【続報】プロディジーシステムの安定化について

RIO15_B15_4171(WAより)
先日の「アメリカチーム、プロディジーシリーズの選手はリムポケットから可動パーツを排除の方向へ」について、リオの現地にいる友人が直接アメリカチームに聞いてくれました。

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トップ選手はそもそも品質の高いリムを提供されているために、リムのねじれを調整するようなシステムは必要としていません。エリソン選手のリムですが、ハンドルに直接ねじで止めているそうです。また、前回の記事ではプロディジーの安定化のために動くパーツを排除する方向にと書きましたが、もう一つ、樹脂パーツもできるだけ使わないようにする(この黒のボルトには樹脂は使用されていません)ことで、プロディジーを安定化させているようです。

RIO15_B15_3820(おまけ)
ホイットのXTRカムをクイーバーベルトのバックルにw


アメリカチーム、プロディジーシリーズの選手はリムポケットから可動パーツを排除の方向へ。

RIO15_B15_9149(WAより)
2015年から発表されたホイットのプロディジーシリーズ。その特徴は以前にレビューした通り、2点でハンドルと接触し、それぞれの点の高さを調整することでねじれたリムでもセンターが出るようになりました。

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その対価はリムとハンドルが線(面)で接する状態から、2点だけで接するようになったことですが、多くの場合で問題はありませんが、リムのノイズが増えたという意見が存在します。ティラー、チューニングが安定しないという意見もあります。

それについてディスカッションしていたところ、アメリカのナショナルチームでリムポケットから可動パーツをなくすセッティングが流行っているという話になりました。写真はエリソン選手のセッティングを拡大したものですが、デタントピンを排してねじで固定しており(内部構造は調査中ですが…見る限りは手製)、リムボルトもプロシリーズの可動式リムボルトから以前のタイプの動かないリムボルトに戻し、リムポケットから動くパーツを徹底的に排除してセッティングになっています。

ちなみにこれは現在行われているリオ2016のオリンピックテストイベントでの写真。少し前に行われた世界選手権ではデタントピンの固定だけで、リムボルトはプロシリーズのままでした。

RIO15_B15_6598カミンスキー選手はリムボルトのみを固定式のものに交換。

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クリミチェック(Klimitchek)選手はデタントピンの部分のみを交換。

交換デタントピン
今回のテストイベントにはアメリカから3人しか出場していませんが、もう一人のナショナルチームの選手で世界選手権に出場したギャレット選手はデタントピンだけの交換です。

足元のアメリカのナショナルチームの選手がこれだけ標準パーツをいじっているわけですから、ホイット社としても2016年のモデルから何か対策をしてくるのではないかと思われます。

例えば、今年のワールドカップファイナルリカーブ男子では、現状スタンダードなプロディジーシステムを使用する選手がいないという残念な結果です。

1.Kim Woojin HOYT GMX
2.Lee Seungyun W&W INNO AXT
3.Brady Ellison HOYT Prodigy RX 改造ハンドル(リムボルト・デタントピン両方換装)
4.Jean-Charles Valladont HOYT HPX
5.Xing Yu HOYT HPX
6.Collin Klimitchek HOYT Prodigy 改造ハンドル(デタントピン換装)
7.Miguel Alvarino Garcia W&W Wiawis

8.ホスト国(メキシコ)枠 未定

すべてリムをいじるシステムを搭載していない、あるいはその機能を殺したハンドルです。

旧型の可動式でないタイプのリムボルトは代理店が少し在庫あるようなので、試してみたい方向けに少し入荷する予定です。

プロディジーシステムについては、再度書く予定です。

そろそろ、アクセス数(2007年より)300万を超えると思っていたら、いつの間にか302万を超えてました。ありがとうごさいます。今後とも良い記事が書けるよう努力します。


ホイットの新モデルプロディジーRXが入荷しました。

DSC_1105(↑写真左がプロディジー、右がプロディジーRX)
ホイットが世界選手権前に急きょ追加した新モデルのプロディジーRXが入荷しました。プロディジーとほぼ同じで、ハンドルのカーブ(Geometry)だけが変更されています。具体的にはグリップ(プランジャーホール)の位置とサイトの位置です。センターブッシングの高さは変更されていません。

DSC_1113手前がプロディジーRX(以降RX)で奥がプロディジー。RXのグリップ(プランジャーホール)の位置はプロディジーの的側のホールよりもさらに前に出ています。これが創業者ホイット氏の設計したハンドルカーブでGMXと同等のものです。

DSC_1109wセンターブッシングの位置、リムポケット等には変更ありませんでしたが、もう一点変更されたのはサイトマウントの位置です。グリップの位置以上の大きく変更され、奥のプロディジーではホールの延長線上よりもフェイス側に設けられているのに対して、RXではその延長線上よりも的側に設けられており、約3cmほどの違いになります。ですので、プロディジーからRXに変更した時にはサイトピンが目から離れます。移行した時にサイトが変わったとしても、それは矢速が変わったからとは限らないことにご注意ください。

グリップが前に出る(リムポケットの位置が体側に近づく)ことによってハンドルの重心は体側に近づくものと思いますが、サイトマウントが的側に移動しているので、使用しているサイトと重さ・エクステンションバーを出している長さによっては、重心がほぼ変わらない可能性もあるかもしれません。

本日より販売開始します。エリソン選手はすでにプロディジーからRXに移行し、一般アーチャー向けの出荷も先週の水曜日に始まっています。まだ、実績がないので明確におすすめとは言えませんが、クラシックな実績あるデザインを採用した今後期待のモデルハンドルの一つだと思います。


ジェーク選手のプロディジーハンドルのレビュー

20141215191430ジェーク選手がプロディジーハンドルの新しい機能のレビューを公開しました。ジェシー選手同様基本的なチューニングについての話で、より高度なチューニングについては、彼らが製作するアプリを参照してください

以下、要約です。ただし、赤字の部分は自分の意見です。ジェークの意見ではありません。

20141215_191530まずは、プランジャーの高さを調整するシステム。1/8インチ(約3mm)差で3つのポジションで調整できます。ミドルはフォーミュラRXなどのスタンダードなホイットハンドルで採用されている位置。ハイはフォーミュラHPX/フォーミュラION-Xなどのリフレックスハンドルで採用されている位置。ローはスタンダードよりも1/8インチ低い位置の3つです。好みで試してみてください。

20141215191622プロディジーハンドルのチューニング機構を分解したところ。かなり多くのパーツから構成されています。工場出荷でリムをねじる機構の部分には2つずつワッシャーが入っていますが、ジェークはすべてのワッシャーを外して使用するようです。外したものはなくさないように。

20141215191724センターショットの調整では、まずはいつも通りのセンター調整を行ってから、リムをねじる調整という順番でやります。ジェークのセンター調整のやり方は日本でも一般的な方法と同じです。センターの真ん中、上リムの中央、下リムの中央に弦を通します。上の写真では下リムがセンターの位置になく調整が必要です。

2014121192129前後しますが、動画の最後でスタビライザーがまっすぐであることを確認してくださいという注意が入っています。センターがまがっていたら正しく調整できません。もう一つの可能性としてセンターブッシングがまがっている可能がありますが、ジェークは数百のハンドルをチューニングしてきて、ブッシングがまがっていたの1つだけだったので、あんまり神経質になることもないでしょう。

20141215192110リムがねじれているかの確認はハンドルの上部を持って弦を引いて、弦溝にまっすぐ入るかで確認。

IMG_20141215_203943(↑参考資料。リムがハンドルの接する部分のクリアコート)

プロディジーのリムをねじる機構ですが、あくまでもリムはストレートであるべきです。ただ、リムを塗装するとき、全面に均等にクリアコートが吹き付けられない場合があり、リムはまっすぐだけれども、クリアコートの厚みがリムの左右で異なるときに、そのクリアコートの厚みの差によってリムがまっすぐハンドルに装着されない場合があり、この機構はその修正を行うためには最適のものである。
(9:30あたりで説明しています)

コメント欄
動画で説明していても、動画を見ていない人から動画にコメント(メーカーはストレートなリム作れよな的な)が入って、再度ジェークがコメント欄で説明しています。

ジェークの説明はもっともですが、このシステムが発表されたときには「プロディジーは捻じれたリムでもセンターが出る機構を搭載」という記事を書きました。これは自分がジェークとは違う意見を持っているということではありません。ワッシャー1枚は0.005インチ(0.127mm)です。もし、このシステムにワッシャーが1枚しかないのであれば、クリアコートの厚みの問題を解消するためのものに疑いようはありませんが、このシステムには4枚ものワッシャーが装着されています。その計は0.5mmで、断言できますが、クリアコートの塗装時の厚みの違いの解消に0.5mmもリムをねじる必要は絶対にありません。

勘違いされやすいところなので、勘違いされないように最初の記事の時にも書きましたが、自分は別にこのシステムに批判的なわけではありません。このシステムによってねじれたリムでも使用できるようになります。これを悪用する人間(ねじれたリムを売る)が現れるかか問題であり、このシステムは有用なものです。使う側の倫理の問題です。ジェークのように性善説に立って考えればこの機構は素晴らしいものです。

20141215192207以上、ジェークのブロディジーのレビューでした。