【閲覧注意】ハンドルとリムの相性とはなにか?

先日、web記事化したタイミングでチューニングマニュアルを見直してみました。そもそもは、本サイトの企画の一つとして書いたものなので、このサイトと合わせての参照を前提にしていたので、単独のサイトとして読むために、ハンドルとリムの「相性」とはなにか、という記事を追加しようと思います。内容的には何度も過去の記事で触れていますが、過去記事が2,000記事を超えているので…読んだこともない人がいるのかなと。最初に書いたのは10年以上前ですね。

【大切な注意点】リム・ハンドル単体の性能・品質とリムをハンドルにセットしたときの性能は全く違うのものですが、単体で製造上の基準を満たしている場合、それを組み合わせたときに本来の性能を引き出すことができなくても、相性の問題として扱われ、基本的に保証対象にはならないです。ご注意ください。

1. リムボルトとリムの相性(すべての弓)

長くアーチェリーをやっている方なら記憶に残っているかと思いますが、長らくエリソン選手をはじめアメリカのナショナルチームはホイット社の最新モデルに採用されたリムボルトを使用しませんでした。

その理由にはいくつかありますが、過去の記事で分析を行ってきました。そして、その問題の多くは現在解決されているので再度触れることはありませんが、残っている唯一の問題は、リムボルトとリムの接合精度の問題です。

Precision Tiller Bolts | A Passion for Precision

アメリカのナショナルチーム代表のカミンスキー(Jake Kaminsky)選手はこの問題について40分以上の動画をユーチューブに投稿しています。問題はリムのU字部分(リムボルトと接する部分)とリムボルトの太さで、この部分に遊びが全くなければ、リムに過剰なストレスがかかり、ねじれや破損の原因となり得ますので、基本的に遊びは存在します。一方で、この部分の遊びが大きければ、グルーピングに致命的な悪影響を与えます。テストは簡単です。上の写真のようにリムボルトだけにリムを差し込んで、ねじれ方向にリムを動かしてみれば、この遊びがあるかどうかがわかります。それがどれだけかはノギスが必要です。

この部分はたとえブレースしていようが、発射時に最もストレスがかかる接合部分で、精度が悪ければ、発射するたびに弓の状態が変化してしまいます。カミンスキー選手のテストによれば、この部分の遊びにおける”0.2mm”がある状態で、上下リムをともに意図的に左側へ最大限ずらして6射、次に右側へ最大限ずらして6射した実験では、70m先で4点の差が生じます(左右差は9時8点から3時8点でした)。

この問題には、トップ選手はリムボルトを交換することで対応します。その他のやり方にはリム側にコーティングを施して、遊びを減らすやり方があります(ベアボウであればこれで十分)。

2. リムの厚み(異メーカーの場合のみ)

20年前くらいでしょうか。特定のメーカーとリムの組み合わせで、リムボルトが破損するというトラブルが多発したことがありました。原因としては、リムのサイズがハンドル側メーカーの純正品と違っていたので、本来の設計とは部分にストレスがかかったこととされています。

この10年ほどはリムの厚みの相性問題で破損が発生するということは聞かないので、破損に関しては心配する必要はないと思います。問題はリムの厚みによって、ハンドル側で本来設計された角度でリムが装着されないことです。ただし、この問題はチューニングで解決でき、メーカー純正のリムよりも取り付けるリムが薄い場合は、よりリムボルトを締め込むことで。リムが純粋のリムが厚みがある場合は、リムボルトを緩めることで設計された角度にすることができるので、1の接合部分の遊びほど致命的な相性問題ではありません。

3. リムボルトの適正位置(異メーカーの場合のみ)

上記の問題が示すように、リムボルトの適正位置はハンドル側にされた設計です。一方で、ポンドはリム側に表示されています。そのために、異なるメーカーのハンドルとリムを組み合わせた場合には、表示ポンドがリムに刻印されたいますが、実際の(ポンドを定める)差し込み角度はハンドル側の設計によって決まり、ここに相性の問題が発生します。

整理するとポンドはリムボルトの位置(締め込み数)、支点の位置(リムの厚み&特殊機構)の2つによって決まります。写真は仏UUKHAハンドルのリムボルトの位置ですが、ラインの位置(Medium)を標準として、Mini~Maxiの間で、+-5%ほどの範囲内でポンド調整できます。これはUUKHA社のリムの場合にはリムに書かれた表示ポンドをベースとした+-5%になりますが、他社のリム場合にはMediumの位置での実質ポンドから+-5%を意味しています。他のハンドルメーカーもほぼ同じです、また、リムを締め込む方にしか調整できないメーカーも存在します。メーカーのマニュアルをご確認ください。

一方で、ホイット(HOYT)社はリムボルトの位置だけではなく、支点の位置も変更できる”LIMB ROCKER ADJUSTMENT SYSTEM”が上位モデルに存在します。リムロッカーの位置を調整することで、実質ハンドル長を調整でき、これによってもポンドが変化するので、特に異なるメーカーのリムを装着したときのリムボルトの適正位置の理論値を算出することはいよいよ困難で、チューニングの中で見つけていくしか無いのが現状かと思います。

リムボルトの位置、リム厚み、上記のような特殊な調整機構と、あなたのドローレングスによって、リムのリカーブの立ち上がりが定まります。リムには適切な角度が存在し、そこで最大限の効率性を発揮します。

一方で、写真の右はWAが最も偉大なアーチャーの3位に選んだPark Sung-hyun選手のフルドローです。写真で見ただけでもわかるように、リカーブが機能するほどドローイングできておらず、リムの性能を引き出せていません。写真左が正しい状態です。

それでも彼女はオリンピックで3つの金メダルと1つの銀メダルを獲得しています。彼女が自分にとって適正ではない長すぎる弓を選択した理由は、弦の角度がもっとも感覚よく鼻につくサイズを重視したためです。マニュアルで何度か言及していますが、弓の性能を最大限引き出すことは大切なことですが、グルーピングはもっと大切です。リムの効率性を最も引き出すことがチューニングの目的ではありません。最終的な目的は最適なグルーピングを引き出すことです。

The following two tabs change content below.
アバター画像

山口 諒

熱海フィールド代表、サイト管理人。日本スポーツ人類学会員、弓の歴史を研究中。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、ベアボウ競技歴5年。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は準優勝。

アーチャーレポート | アーチェリー総合情報サイトをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です