この記事は2021年10月21日に書かれたものです。最新の情報とは異なる可能性があります。ご注意ください。

久しぶりの業界昔話5 – 昔じゃない話

5回目の最終回です。これまでは昔の話ですが、現在進行・将来の話となりますので、ほぼ私見です。また、その予想に対しての会社としての対応も書いておきます。

ここまでの記事で書いたように、弊社は00年代のアーチェリーショップというローカルだったビジネスが、グロービルなビジネスになってしまったタイミングで参入しました。近年、ダイナシティのような国産メーカー再誕生や、前回の記事のように韓国メーカーを中心に、メーカーが日本語でのビジネスに対応することで、もしかしたら、アーチェリーショップというビジネスが再度ローカルビジネスに戻るのかもしれません。

ビジネスがローカルとなるということは、プロショップを始めることがより簡単になるので、多様なプロショップがこれからも登場するかもしれません。新しいプロショップがどんなことを仕掛けてくるのか楽しみです。

→ 弊社としてはローカライズされるとしても、利潤ベースとなるはずなので、お金になる競技リカーブ・学生向けアーチェリーだけと予想しています。10年代以降力を入れてきた、コンパウンド・ベアボウ/フィールドカテゴリーでは、そのような変化はなく、今後も影響はない分野を深堀りしていきます。

一方で心配しているのは、国内での韓国メーカー代理店のビジネスのやり方です。前回の記事を10月8日に書いて、会社も練習場の休みの今日に最終章を書こうと思っていたのですが、それに合わせたかのように(偶然だとは思いますが)、昨日まで、某メーカーの総日本代理店が「総代理店の真骨頂」と銘打ったセールを行いました。

価格自体は弊社や渋谷アーチェリーとそこまで変わらないものでしたが、まさに恐れていたというか、起きてほしくない事態が起きてしまったと感じています。特に「総代理店の真骨頂」という言葉は象徴的です。

私たちは代理店として業界でそれなりに評価されていて、近年新規メーカーとの契約で拒否されたことはほぼない(*)のですが、それは代理店として商品を適切な価格で販売しているからでしょう。説明として、代理店となったスカイロンのパラゴンシャフトを例にします。

*YOSTとは結べませんでした。

弊社が最初にパラゴンをリカーブ用として紹介し売り出しましたが、このときにつけた金額が13800円(2018年9月)です。もちろん商品が優れていることが一番大事ですが、商品の評判が良ければ、他のプロショップも当然この商品に目をつけ販売したいと思うでしょう。そのときに、私達が13800円で販売実績を積み上げている以上、同じような価格で販売して十分な利益を得ることができるかが、判断の基準です。

その後、渋谷アーチェリーなどがパラゴンの販売を開始します。ビジネスになると判断したのでしょう。競合するので、歓迎というわけには行きませんが、販売するプロショップが増えることはメーカーの成長につながるので、悪いことだとは思いません。また、競合が増えても、価格競争はせず、今も13800円です。

代理店として、メーカーと共に成長するためには、適切な価格で販売し、その商品の価値を維持することが求められていると考えています。近年、為替が100円~120円まで大きく動いていますが、弊社ではほぼすべての商品の販売価格を変えていません。セールも在庫の入れ替え以外ではしていません。これは長年のポリシーです。

代理店の真骨頂として、商品を安売りすることは出来ますが、それは禁じ手でした(と思っていました)。それを総代理店が、かつ、販売が継続している現行モデルで行ったことは驚きです。お客様にとってはより安く商品が手に入ることにつながるので、一時的にはいいことだと思いますが、長期的には販売するプロショップ、特に在庫リスクを抱えて販売するプロショップの減少につながることは間違いないと思います。

→ 弊社としては、このメーカーの価格が安売りされると前から予測していたので、近年少しずつ取り扱い商品数の削減、在庫数の削減を続けてきましたので影響は少ないです。今後も当分は取扱商品数・在庫数を増やさず、状況を見守ります。このようなメーカーが増えないことを祈るばかりです。

コロナの収束も見えてきたような気がしますが、2022年度からは普通にアーチェリーができる環境に戻るなら、アーチェリービジネスも2年間の我慢を終えて再スタートします。以上の書いたように、アーチェリー業界に身を置くものとして楽しみにしているところもあれば、心配しているところもあります。2030年ごろにまたこの10年間を振り返る記事を書きたいと思います。

終。


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Ryo

(株)JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、2021年よりターゲットベアボウに転向。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。次はベアボウでの出場を目指す。

4 thoughts on “久しぶりの業界昔話5 – 昔じゃない話

  1. 「久しぶりの業界昔話」シリーズ完結、お疲れ様でした。
    最後に某社のおかげでいい感じのオチが付いたのではないでしょうか。
    「総代理店の真骨頂」と言いながら、JPさんよりも高いのには笑ってしまいました。
    渋谷アーチェリーもそうですが、今年はやたらとセールが多い気がします。
    以前、「この業界は高校大学の新入生で支えられている。」と聞いたことがあります。
    ただ、ここ2年はコロナ禍でリモート授業になって学校に通っていない人が多いのではないかと思います。
    そうなると必然的に部活や体育会に入る学生が少なくなり、業界全体の売り上げが落ちた結果、今はどこも利益を削ってでも在庫を捌いて売り上げを立てたい状況なのかもしれません。
    JPさんはセールでなくても常に安いとても有難い存在なので、これからも負けずに頑張っていただきたいです。

  2. はい、12月ごろに2022年の新商品発表するメーカーなので、まさかこの時期にセールするとは思いませんでした。いい感じのオチを頂いて申し訳ない気持ちも少し。ただ、実際に少し前から取扱商品数・在庫数を実際に減らしてはいたので、予想はしていました。

    >渋谷アーチェリーもそうですが、今年はやたらとセールが多い気がします。
    >以前、「この業界は高校大学の新入生で支えられている。」と聞いたことがあります。
    >業界全体の売り上げが落ちた結果、今はどこも利益を削ってでも在庫を捌いて売り上げを立てたい状況なのかもしれません。

    コメント欄ですので、ここだけの話をすると、渋谷アーチェリーは経営として迷っている思います。渋谷アーチェリーの力は”ある意味”業界では絶大です。私は渋谷にいたわけですが、売上の構成比では、競合しているようで実はそんなに競合していません。弊社の得意分野は「学生新入生ビジネス」とは真逆にあります。リカーブ・コンパウンド・ベアボウすべての分野で、ベテランのアーチャー・社会人がお客様に多いです。

    対して、最近、参入してきている多くのプロショップは「学生新入生ビジネス」をターゲットしていて、真っ向から渋谷の稼ぎ頭と競合しています。サマーシュートなどまさにそうでしょう。しかし、その立ち上げメンバーの人脈的に、渋谷が潰しに行くことにもリスクがあります。

    私にも、弊社にも潰されないための人脈はあり、知られているところだと、30年以上ヨーロッパでヤマハの代理店を経営していた一族や、コンパウンドの重鎮のラリーワイズさん、イタリアのフランジイーリファミリーなど、まだ当分業界にいます(笑)

    対して、新規参入組の人脈は現役のトップ選手ばかり、学校卒業後に引退していくと予想されます。そのために彼らの人脈が”老朽化”して行くまで我慢して、そこから潰しに動くのかなと予想しています。今後、そのあたりが見ものだと思っています。雨でもテントも与えられない1的(ベアボウはたいてい1-2的)からこっそり・こっそり見守ります。

  3. この書き込みは物凄いハレーションを生みましたね。
    各社がツイッターで火消しに走っているのはちょっと滑稽でした。
    ほとぼりも冷めたので私の考えを書きたいと思います。

    > コメント欄ですので、ここだけの話をすると、渋谷アーチェリーは経営として迷っている思います。

    同意です。
    渋谷としてはリカーブはもう安泰だと思ってコンパウンドに注力していたところに予期せぬライバルが現れたので、「どうしたものか?」と思案しているのは確かでしょう。
    今の渋谷の問題点は、リカーブ専従のスタッフがいないことで、そのため「的確なアドバイスが得られない。」というの声をよく耳にします。
    商品開発もあまり積極的ではなく、定番だったカルノVバーも新興のD社のポルカVバーにその地位を奪われてしまいました。
    渋谷の全体の売り上げから見れば影響は微々たるものかもしれませんが、「ロッドもD社で揃えようかな?」という人たちが出てくる前に対抗策を打つのかどうか気になるところです。

    > そのために彼らの人脈が”老朽化”して行くまで我慢して、そこから潰しに動くのかなと予想しています。

    あくまで個人的な感想です。

    C社の代表はトップアーチャーとはいえ元大学の職員だったにもかかわらず、会社立ち上げと同時に他のショップからFIVICSなどの総代理店の肩書を譲り受け、シューティングレンジ付きの大きな店舗を構えています。
    このことから、政治的にも資金的にもかなり強力な人物がバックにいる可能性があります。
    また、取り扱い商品も代理店契約をしてるものだけなので渋谷とは共存共栄となるでしょう。

    D社はキャンピングカーの製造販売の社長の息子が立ち上げた一部門で、車の展示会があるとプロショップは休業することからスタッフはアーチェリー専従ではなく本業と兼務のようです。
    おそらく父親からは「赤字にするなよ!」くらいは言われているかもしれませんが、本業が上手く回っている限りには何があっても平気なのかもしれません。
    とは言っても何もしないで潰されるのを待つことはないでしょう。
    彼らの躍進のカギとなるのは海外市場にどれだけ食い込めるかではないかと思っていて、実際、韓国のオ・ジンヘク選手がポルカVバーを使い始めたりしているので、渋谷の影響力が及ばないところで勝負するのではないかな?と想像しています。

    色々と書きましたが、アーチャー視線で言えば選択肢が増えるのは良いことなので渋谷も含めてどこも負けないで頑張ってもらいたいものです。

    それでは、よいお年を!

  4. >この書き込みは物凄いハレーションを生みましたね。
    >各社がツイッターで火消しに走っているのはちょっと滑稽でした。

    大晦日、一人ぼっちなので真面目に返信してみます。自分もツイッターはやっていますが、プライベートのアカウントなので、そんな事になっていると走りませんでした。
    今さっき、確認したところ、渋谷アーチェリーがダイナスティアーチェリー最高をつぶやき、ダイナスティアーチェリーがリツイートしているのは確認できました。

    さて、渋谷アーチェリーは金儲けのためにアーチェリーをしている会社です。これは批判しているわけではなく、渋谷アーチェリーさんこそが正しい株式会社と名乗っていい数少ない会社です。株式会社の定義として、going concernというものがあります。これを行っている数少ないアーチェリーショップが渋谷アーチェリーです。

    弊社で言えば、私は働いていますが、所有者(株主)も私です。ダイナシティさんもC社さんも同じような構造だと思います。なので、私が60歳とかになっても会社がまだあればですが、アーチェリーのプロでもない子供に継がせる気はまったくなく、廃業するか、欲しい人がいれば譲ろうと思っています。対して、渋谷アーチェリーは働いている現場に出ているスタッフたちとは別に所有している安井家がおり、アーチェリーの現場とは関係なく、今後も株主として世襲していくと思っています。


    なんでこの話を書いたかと言えば、ツイッターの書き込みは渋谷アーチェリーのスタッフ、労働者側の100%の本音だと思います。リツィートしているダイナシティさんも本音でしょう。ただ、そのメッセージが渋谷アーチェリーの筆頭株主のメッセージだとは思いません。「渋谷アーチェリーは経営として迷っている」と書いたとは当然、従業員が迷っているという意味ではなく、経営側(株主・役員)の話です。勘違いさせてしまった所があれば、申し訳なく思います。現場みんな仲良しです。

    もう、その方アーチェリー界にいないので書いても良いと思いますが、「渋谷アーチェリーはネット販売はやらないよ」とずっといっていた人がいましたが、その○年後(退職時期を特定されないためですご理解ください)くらいに渋谷アーチェリーはネットショップをオープンします。そのときに、ちょっと嫌味を込めて私が「言ってること違うジャーン」と言いましたが、「うちらサラリーマンだから、経営が決めたことには逆らえないジャーン」といった返事でした。まぁ、そういうことでしょう。

    >渋谷としてはリカーブはもう安泰だと思ってコンパウンドに注力していたところに予期せぬライバルが現れたので、「どうしたものか?」と思案しているのは確かでしょう。

    先の話を引き継げば、黎明期は三菱商事のような本当の株式会社が、アーチェリーに関わっていましたが、近年のアーチェリーショップの多くはオーナー企業です。オーナーがアーチェリーに詳しく、弊害もあるとは思いますが、代わりに意思決定・判断が早いのがメリットでしょう。渋谷アーチェリーはそうなってはいないのですが、そこを変えること(現場のスタッフが経営に参画)はないと思います。そこを変えずにどのように速い意思決定をできるようにするのかが迷いポイントでしょうか。

    >今の渋谷の問題点は、リカーブ専従のスタッフがいないことで、そのため「的確なアドバイスが得られない。」というの声をよく耳にします。
    >商品開発もあまり積極的ではなく、定番だったカルノVバーも新興のD社のポルカVバーにその地位を奪われてしまいました。
    >渋谷の全体の売り上げから見れば影響は微々たるものかもしれませんが、「ロッドもD社で揃えようかな?」という人たちが出てくる前に対抗策を打つのかどうか気になるところです。

    大学からの売上が多くので、リカーブ社会人アーチャーを知識で満足させるよりも、大学生と仲良くできるか、大学と問題を起こさないかがより求められるポジションになってきています。対策は打たないのではないでしょうか(批判しているわけではなく、だからこその弊社として情報量・知識量でポジションを築けているのかと思います)。

    > そのために彼らの人脈が”老朽化”して行くまで我慢して、そこから潰しに動くのかなと予想しています。

    ここも加筆させてください。要はいま渋谷アーチェリーの経営がなにか判断しても、現場はみんな仲良いので、現場が混乱し、疲弊します。ただ、5年も経てば、渋谷アーチェリーの現場のスタッフも、ダイナスティさんとの繋がりも希薄していくので、いろいろとやりやすくなるということです。

    >C社の代表はトップアーチャーとはいえ元大学の職員だったにもかかわらず、会社立ち上げと同時に他のショップからFIVICSなどの総代理店の肩書を譲り受け、シューティングレンジ付きの大きな店舗を構えています。このことから、政治的にも資金的にもかなり強力な人物がバックにいる可能性があります。
    >また、取り扱い商品も代理店契約をしてるものだけなので渋谷とは共存共栄となるでしょう。

    資金的には当初は非常に潤沢な状態で始まっていますが、家賃が年で500万近いと聞いているので、速く売上を億に乗せないと、出資者の資金の流出のスピードもハンパないです。代理店のあり方として批判的な記事を書いたので、あまり語らないでおきます。

    >おそらく父親からは「赤字にするなよ!」くらいは言われているかもしれませんが、本業が上手く回っている限りには何があっても平気なのかもしれません。
    >とは言っても何もしないで潰されるのを待つことはないでしょう。
    >彼らの躍進のカギとなるのは海外市場にどれだけ食い込めるかではないかと思っていて、実際、韓国のオ・ジンヘク選手がポルカVバーを使い始めたりしているので、渋谷の影響力が及ばないところで勝負するのではないかな?と想像しています。

    2020年代らしい会社だなと思って、自分も応援しています。オーナー企業の場合はオーナーの情熱が尽きたら間違いなく終わりなので、野心をもって頑張って欲しいです。といっても、自分にできることもないので、見守っているだけですが(^_^;)

    >それでは、よいお年を!

    来年もよろしくおねがいします。

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