アバロンのチューニング、結局誤訳でした。

ついに原文見つけました。ホイット社はアバロンハンドルからリムアライメントをハンドルに搭載します。その説明を探していて、雑誌アーチェリーの99年5月号の「ホイット アバロンプラスのチューニング」という記事を見つけましたが、その日本語がとてつもなく難しいもので、読めそうになかったので英語の原文を探したいたらありました。

ホイットは、不完全な誤差範囲を埋めるため、正確なチューニングに頼るのではなく、アジャスタブル・ポケットシステムを生産ベースに載せようとした。そこで、彼は誤差に正確性を求めようとしたのである。

雑誌アーチェリーの99年5月号の「ホイット アバロンプラスのチューニング」

コメント欄でも意見をいただきましたが、正解は

Bringing an adjustable pocket system into manufacturing would give the appearance that Hoyt was making up for imperfect tolerances, not improved and more accurate tuning methods. So Hoyt focused its attention back to exacting its tolerances.

という原文ですが、グーグル翻訳するだけで、

調整可能なポケットシステムを製造に持ち込むと、不完全な公差を補っているように見え、改善されたより正確な調整方法ではありません. そのため、Hoyt は公差の厳守に注意を向けました。

AIの方の日本語も完璧とは言えませんが、意味が通じます。というか、雑誌アーチェリーの記事は難解なのではなく、完璧な誤訳であると考えることができると思います。生産ベースに載せようとしたのではなく、載せなかったのだ。さらにグーグルの自動翻訳に手を入れて意訳するとしたら、

アジャスタブルリムポケットを導入することで、お客様からはホイットがいいものを作るのではなく、不完全なチューニングに頼ろうとしているように見える。だから、そう思われないために製造時の精度を高める事にフォーカスした。

となるでしょう。原文(Tuning your Hoyt Avalon Plus By Denise Parker)が手に入ったので、デニスパーカーさんの英語でも記事をもとに読み解いていきたいと思います。


個人的なヴィンテージボウへの取り組み。

【お願い】ヤマハとホイットを書きましたがニシザワに関する知識がなく、手を付けられない状態にいます。ヤマハのページを読んでいただければ、必要な情報はわかっていただけると思いますが、執筆していただけるニシザワの愛好家の方がいましたらお願いします。

最近仕事していて思うのは、海外では、古い弓に対しての有志の取り組みがすごいということです。日本のメーカーであるにも関わらず、ヤマハの情報の多くは海外に保存管理されています(死蔵されている情報は日本が多いと思いますが)。

メーカーは発売して5-10年、ヤマハやニシザワに至ってはアーチェリーから撤退していますが、それらを有志の愛好家が引き継いで、情報発信をして、できるだけのサポート・情報交換をしているサイトが多くあります。

先日、コメントで頂いて確認したのが、ヤフオクで買った弓がヤマハのEX規格とαEX規格で、接合できないというものでした。それはネタにもなるし、ユーチューブはそうやって盛り上がる場所なのだと思いますが、しかし、そのような弓が、動画撮影後、再出品されずに、倉庫行きとなってしまったら、非常に残念なことだと思います。なんなら自分が引き取ります。

私はものが好きではない(今どきで言えば断捨離?)ので、コレクターの気持ちがわからないからなのか、弓は使われてこそ、美しい物だと思っています。自分が全日本で使用した弓も、使う予定がなくなれば譲渡しています。自分のために良い働きをしてくれた素敵な弓だからこそ、誰かに使っていただきたいです。

ということで、現状集まった情報をまとめたサイトを作りました。現状、ヴィンテージボウが流通シているのはオークションサイトだけだと思いますが、そこで弓を買うときのガイドになり、自分がほしい弓を正しく手に入れる参考になればと思います。

また、入手したあとに正しく使える情報も掲載していきます。ただ、近所の射場でもオークションサイトで弓を手に入れた未経験者が問題を起こしたそうなので、アーチェリー未経験者が読んで理解できるレベルにはしません。ある程度アーチェリーの知識がある前提で書きます。

ちなみにベアボウでコンパウンドグリップは有効なのか気になったので、個人的にRadian(*)を試してみようと思っています。

*ホイットがリムアライメントを搭載しなかった最後のモデル。ただ、製造中にハンドルのねじれが多く発生した。当時のホイット関係者によると、Radianは「非常に安定している」そうで、入手したハンドルがねじれていれば直しようはない(それ以上ねじれもしない)し、ねじれていなければその後ねじれることもないそうです。どっちがあたるかな?

また、情報提供してただける方がいましたら連絡ください。


【1980-1990年代】そうして、スパインは大事になった。

1970年代にセンターショット調整が大事とされ、70年代後半にはほぼすべての選手がプランジャーを使用するようになったのに対して、スパインに対する意識は非常に低く、ペーパーチューニングなどは、あまり知られていなかった。

その理由はなんと言っても、アルミシャフトとダクロンの組み合わせによる、まったりとしたクリアランスだったために、矢飛びはスパインよりも射形に大きく影響を受け、スパインを正しく合わせても、射形が悪いと、矢が正しく飛ばなかったための思われる。

トップの写真は当時のサイトのセッティングですが、このライン(距離ごとのサイト)が直線状にないことは、スパインが正しくなく、矢がカーブして飛んでいることを示している。トップ選手でもそのように曲げてサイトを取り付けていました(*)。

*全日本強化合宿における調査では、郷里が伸びるにつれてサイトが出る(スパインが硬い)選手が多かった。

現在はこのラインが真っ直ぐでないと、すぐにスパインがあっていないという指摘を受けますが、当時はそれで良いとされていたか、もしくは、

サイトを斜めに取り付けることより射形を直すことが先決問題と言えよう。

73年12月号 雑誌アーチェリー

とその原因をスパインの修正・プランジャーの調整ではなく、射形の改善に求められていた。

スパインの正しさを重視しない理由がアルミシャフトにある以上、その終わりは当然カーボンシャフトの登場によってです。カーボンシャフトと弦の進化により、シャフトはあっという間に飛び出します。更にカーボンシャフトは軽いので、クリアランス時のちょっとした接触でも、正しく飛びません。

そのため、1980年後半にカーボンシャフトの登場で、一気にスパインを正しくチューニングすることの大切さが注目されるようになります。

当時のトップ選手の「カーボンシャフトは正しく射たなくても勝手に飛んでいってしまう」という表現がその時代感を表しているように思う。

参考文献

1973年 弓について 榎本 新

1975年 誰でも容易に。確実にできるチューニング法 竹内 貞夫

1975年 クッション・プランジャーとその用法 Archery World

1973年 トップアーチャーへのいざない 高柳 憲昭

1987年 特集 ニューカーボンアローついに登場。キミは、これを新兵器になしうるか。


まぁ、まっすぐなら同じですけど。

以前記事(下記)で「ロッドスタビライザーの登場によって、リムとハンドルの3面を水平にするリムアライメントの調整が必要になります。」と書きました。それは当然のことです。

しかし、一時期、空白の時期が存在します。リムアライメントをしなければ、スタビは変な方向を向き、グルーピングしません。その時のアーチャーの方はどう対応したのでしょうか。それが気になっていましたが…。

1960年代頃はスタビライザーが非常に高額で買えなかったので、器用な友人に作ってもらった。けど、それを取り付けるとき、自分の弓のブッシングをあけるのにどうしてもまっすぐドリルが入らなくて、スタビライザーを取り付けたら、まっすぐ前を向かないの。だから、まっすぐ前に向くようにスタビライザー曲げたよ。

雑誌アーチェリー 関 政敏さんの記事より

間違ってはいないですが、解決策がダイナミックすぎました(笑) ちなみにアルミのスタビライザーは曲がりますが、現在一般的なカーボン入りのものは曲がらない(折れてしまう)ので真似はしないでください。センタースタビライザーでもX23くらいの強度しかなかった時代の話です。


TFCを知っていますか?今はただのダンパーです。

1970年 HOYT カタログ

TFCという装置をご存じでしょうか。先程、記事にしたアジャスタブル・レスト・プレートはさすがに使ったことがないのですが、これは使ったことがあります。ダンパーの代わりとして使ったことがありますが、感覚が好きではなく、2日くらいしか縁がなかった記憶があります。

1970年代から1980年代には、Vバーの根本につけて振動吸収用に使っていました。もちろん、そのようにダンパーとしても使えますが、本来の用途ではありません。このTFCという装置から次のチューニングが始まったようにも思います(*)。

*TFCを知らない時代の人が書いているのか、英語で検索すれば、当然正しい情報が出ますが、日本語で「TFC アーチェリー」で調べると、全く正しい情報がヒットしません。ダンパーと勘違いしている記事があるほどです。TFCはダンパーではない。そのために読者の方もTFCとは何かを知らないと想定して説明させていただきます。TFCを知っている方は読み飛ばしてください。チューニングマニュアルでスタビセッティングにつながるパートです。

TFCは英語ですと、「Torque Flight Compensator」となります。「トルク/フライト(矢飛び)/補正器」という意味です。トルクと矢飛びを補正するわけですが、これがどういう意味かが難しいところです。

(以下、チューニングマニュアルでは、もう少し詳細に説明します。トルクとはなにか、なぜスタビはトルクをとるのかはここでは飛ばします)

トルクが最もグルーピングに影響を与える問題児なわけですが、この問題は、スタビライザーを使用することで解決できます。スタビライザーを使用して発射時に弓を「固定」することでトルクをなくすことができます。

しかし、TFCが発明された当時は弓を固定してはいけませんでした。それは、プランジャーがなかったからです。

ホイット氏はTFCのメリットとして、

I have found through extensive experimentation that when the mass moment of inertia is increased by this means beyond a critical value, some interference with the clear passage of an arrow may occur.

特許文書より

意訳すると、「トルクを取り除くために弓をスタビライザーで発射の瞬間固定すると、クリアランスに問題が生じる」ということです。

(後で誰にちゃんとイラストにさせますので…)

私のイラスト(涙)ですが、新が現在です。矢がプランジャーにあたっていて、矢が通過するときには、矢はプランジャーチップを押し込みますが、バネの力でパラドックスを吸収して、そして、同じテンションで反発することで、矢のクリアランスは弓が固定されていても確保されます。

しかし、旧と書かれた、プランジャー以前では、発射後、矢がパラドックスによって、同様にレスト(弓のウィンドウ)を押し込んできたときに、弓が右に動くことでクリアランスを確保していたのです。つまり、プランジャーができるまで、弓が動くことで矢のクリアランスを確保していて、弓を固定していては、クリアランスに問題が生じることとなります。

そこでホイット氏が考案したのが、 「トルク/フライト(矢飛び)/補正器」 =TFCです。この装置の役割は、まさに広告(写真トップ)にあるように「interference free arrow passenge results, even for plastic vanes.」(意訳:ハンドルに当たるとクリアランスに影響する硬いベインでもきれいに飛びます)です。

この装置(TFC)は中にはバネ・または、ゴムが内蔵されていて、発射時の強いテンションがかかったときだけ、弓を固定せずに、弓はクリアランスのために動き、矢が飛び出したあとの、残った弱い振動はゴムとバランスさせることで、弓を安定させて、取り除きます。しかし、そのテンションには、当然個人差があるので、センターショットの調節の次には、このテンションの調節をするという作業が生まれたわけです。

ただ、その後、プランジャーが誕生すると、矢をクリアさせる仕事はプランジャーに移行し、TFCはそま副業的な作用として、ただのダンパーとして扱われるようになっていくわけです。


【1960-1970年代】センターショットの追求

ホイット特許 1963

古い時代になると、解釈が難しい事が多々発生します。例えば、この特許を日本メーカーも使っていた(ホイット氏が特許権を主張しなかった)のですが、ネットがない時代、知って使っていたのか、この特許を知らなかったのかは、想像するしかありません(*)。

*途中から主張するためにホイットは特許番号を発表したので、どこかの時点では知っていたと思います。

また、ネットがない時代には1984年に日本選手団がルール改正(プランジャー/ストリングウォーキング解禁)を知らずに、世界フィールドに出場して惨敗するという事件が起こっています…恐ろしいです。。

さて、この記事ではチューニングの歴史について触れます。

1960年代までに(今の意味での)チューニングという概念は、ほぼなかったと理解していいと思います。1971年の世界選手権でも、3位の選手は自作の弓(セルフメイド)で出場しています。ウッドの弓というのは、そもそも職人が、木から作っていくので、特注するとしてもそれほど大変なことではありません。また、多少の技術があれば、選手自身で、完成品を再度削っててティラー出しすることも可能です。

チューニングという概念は、職人が1本1本作るウッドボウから、金属製に移行する過程で必要性が生じてきます。弓は製造された段階で、完成されており、それをユーザーが再加工することは困難とあり、調整できることが求められます。

トップ写真はおそらく現代的な意味での最初のチューニング機構、アジャスタブル・レスト・プレートです。

ところでレストはどこに貼りますか?

いまこんなことで悩む人はいないと思います。プランジャーを使って射つなら、プランジャーホールに貼るしかありません。しかし、プランジャーがまだ使用されていなかった時代(1971年解禁)、レストはどこにでも貼ることができました。

ウィンドウの中であれば、どこにでも貼ることができましたが、今のプランジャーの出し入れで調整していた軸では調整できません。今のスーパーレストのように接着ベースの厚みを変更するくらいしかなかったのですが、ホイットはこの部分調整可能にしました。

Fig4 36番のツマミを回していくと、12番のプレートを出し入れできます。このプレート上にレストを貼れば、レストの位置を変更できます。Fig2 36番の のツマミを回していくと、12番のプレート上の10番のレストを出し入れできます。

これによって、センターショット調整というチューニングが生まれます。1960年代後半から1975年あたりまでのチューニングです。

1971年にプランジャーの使用がFITAで解禁されますが、感覚に頼るところが多かった時代の選手はなかなか保守的で、私ならすぐ飛びついた気もしますが、4年後の75年の世界選手権でも、使用選手は70%程度だったようです。

プランジャーが解禁されたことで、アジャスタブル・レスト・プレート(テーブル)は廃止され、プランジャーホールが標準装備になります。プランジャーに抵抗があった選手は上記のような、プランジャーホールに取り付けできる、レストプレートを使用していました。ただ、70年代後半にはほぼすべての競技的アーチャーがプランジャーを使用するようになります。

同時にセンターショットの調整もレストのチューニングではなく、プランジャーを出し入れして行うチューニングとして変化していきます。

【歴史の流れ】

1960年代前半まで - 職人に依頼するか、自分で加工してセンターショットを出す

1960年代後半から1971年 - レストを動かすことでセンターショットを調整する

1971年から現在 - プランジャーの出し入れをすることでセンターショットを調整する


読めますか?日本語が難しい。

明日から店舗は夏季休暇をいただきます。ご不便をおかけしますが、ご理解ください。私も休みですが、アーチェリーの事はやってます。明日はまた図書館暮らしです。

翻訳したコンパウンドと違い、リカーブのチューニングマニュアルを自分で書くにあたり、チューニングとは何かを問われているような気がします。1960年代の例えば、ビギニングアーチェリー(ロイ・K.ニーメィヤー 著/小沼英治 訳)には、そもそもチューニングというテクニックは存在しません。

しかし、2000年代では、弓を自分に合わせてチューニングしていくのが一般的になります。どこで変わっていったのか、どう変わっていったのかをチューニングマニュアルのストーリーに組み込んでいこうとしているのですが、

日本語が難しすぎて、英語が読みたい状態です(T_T)

日本語はその柔軟さ故に今の立場があるかもしれませんが、その分連続性を持たないように思います。200年前の英語でも、まぁ、読めなくはないのですが、200年前の日本語(江戸後期)は専門知識がないと読むのは難しいように思います。

上の写真はホイットに所属していた、デニス・パーカーさんが書いたものを翻訳したもので雑誌アーチェリーに掲載されました。しかし、私の理解力では読み解けませんでした。

(文字起こし)「A.ホイットは、不完全な誤差範囲を埋めるため、正確なチューニングに頼るのではなく、アジャスタブル・ポケットシステムを生産ベースに載せようとした。B.そこで、彼は誤差に正確性を求めようとしたのである。」

A → リムアラメインとはチューニングではない?

B → 誤差に正確性。しかし、一定した誤差(シャフトのV1グレードのような)では文脈がわかりません。

すみません。パーカーさんが何が言いたいのか理解できる方はいますか?


【歴史】アメリカとターゲットアーチェリー

(チューニングマニュアルになる記事です)

イギリスでは貴族の嗜みとしてターゲットアーチェリーが誕生します。現在でもイギリスのアーチャーの多くがターゲットアーチェリーを楽しんでいます。一方で、アメリカでは全く違う形でアーチェリーが普及します。

南北戦争後、勝利した北軍は銃器所持者を増やすためNRA(全米ライフル協会)を設立します。対して、負けた南軍は銃器の所有を禁じられました。それまで銃器で行っていたハンティングもできなくなってしまいました。そこで、かつて使われていたアーチェリー再度注目されます。

かつては世界中で弓矢によって狩猟が行われていましたが、現在、弓矢でハンティングが行われている地域は多くありません。ハンターは一度銃を手にしたら戻る意味がなくなるからです。しかし、アメリカではそうではありませんでした。

1878年に元南軍であったモーリス・トンプソンによって書かれた「The Witchery of Archery」が大ヒットし、ハンティングを中心にアーチェリーが広まっていきます。ちなみにこの本は17章からなりますが、ほぼハンティングが話題で、ターゲットアーチェリーについて触れている章は1つだけです。著作権が切れているので、英語版はネットで、無料で読めます。

1879年にこの本の著者のハンターとして有名だったモーリス・トンプソンが初代の会長に就任して、NAA(USA Archeryの前身)が設立され、ターゲットアーチェリーの大会も行われる様になりましたが、もともとハンティングをするためにアーチェリーが普及した国ですので、現在でもアメリカではアーチェリー愛好家はハンターが圧倒的多数です。コンパウンドの時代に入る直前、リカーブ黄金期の1974年にベアアーチェリーは年間25万台製造した記録があり、そのうちターゲット用は10%程度と考えられます。

参考文献 Vintage Bows- II Rick Rappe著


それ、センターショットじゃないんです。

1996年のヤマハアーチェリーのマニュアル(英語版)

こちらの記事をより完全なものにするためにヤマハのセンター1996-98年の日本語のマニュアルを探しています。(協力ありがとうございました)

【追記】1988年初版/2000年改訂版のアーチェリー教本(全ア連)での伊豆田さん(ヤマハの技術者)の記事までは正しく用語を使っていたことを確認しました。

コンパウンドのチューニングマニュアル(翻訳)、ベアボウチューニングマニュアルを製作したので、最後のリカーブに取り掛かっているのですが、なかなか進みません…いろいろと理由はあるのですが、第一章が書けないのです。しかし、それでは何も進まないので、第一章以外の記事を一つずつ書いて、第一章より後ろを少しずつ書いて完成させることにしました。下記記事を読んでいただければわかると思いますが、簡潔なマニュアルではなく、全体を通して読んでいただける読み物にできればと思っています。

最初の記事はいわゆるセンターショット(センター調整)について。センターを調整することをセンターショットの調整と呼びますが、このセンターショットとは何を指しているのか、説明できる方はいますか?

実は、センター調整をセンターショットと呼ぶ国は日本だけです。この機能は海外ではリムアライメントと呼ばれています。日本のメーカーであるヤマハでも、海外の説明書ではリムアライメント(Limb alignment*)と表記しています。

*WIN&WINでは Limb / Riser Alignment と表記

これはFast Flightが本来ファストフライトであるべきなのに、ファーストフライトと呼ばれているレベルの話ではなく、この用語の誤使用によって、正しい情報が伝わらない、伝わりにくいという大きな問題を引き起こしています。この記事では、この後、一般的な意味のセンターショット調整(センター調整)はすべてリムアライメントと表記します。また、そもそも、リムアライメントを正しく理解している自信がない方は下記の記事を先にお読みください。

トラディショナルアーチェリーより

リムアライメントがセンターショットではないなら、センターショットとはなにか、これは文字通り、中央射、ハンドルの真ん中から矢を射つことを指しています。写真上のようなウィンドウを削っていないロングボウ、または日本の和弓にはそもそも、センターショットという概念がありません。どちらも矢をハンドルの右側か左側につけて射つので、中央射は物理的に不可能です。そのために弦が弓(ハンドル)の中央にある必要(センター調整)もありません。

Ragim 2020

下記の記事のように、戦前は和弓と洋弓はおおよそ同じ程度の的中率でした。しかし、1940年代に洋弓のリムのイノベーションがあり、さらに、1950年に写真のようなウィンドウがある弓と、円形ではない現代のピストルタイプの方向性のあるグリップが登場したことで、1960年代には和弓ではもう追いつけないほどの差を広げていきます。

洋弓のハンドルにウィンドウが搭載されたことで、矢をハンドルの真ん中から発射することができるようになりました。このことをセンターショットといいます(*)。そして、矢がセンター上にあるので、ここで初めて、弦もセンターに持ってくる必要が生じ、このときにセンター調整という概念が生まれました。

*サム・ファダラによる定義 : センターショットはハンドルのウィンドウが弓のセンターラインを超えてカットされている場合、矢がセンターラインの真上にあることを示す。ノッキングされた矢はハンドルの中心軸上にある。これによってアーチャーズパラドックスを軽減すると考えられている。

しかし、1950年代にはリムアライメントという概念とセンター調整機構という概念は存在していませんでした。前者はハンドルにはまだスタビライザーが取り付けられていなかったので、リム面さえ水平なら(センターショット)、ハンドル面が多少どちらかに傾いていても性能に影響はないと考えられていたためです。もちろん、極端に傾くと矢のクリアランスに影響があるので、多少に気にはしていたと思いますが記録に残っていません。

センター調整機能が存在していなかったのは、カーボン/エポキシリムが登場していなかったので、手で調整できたためです。今でも、ポラリスのようなウッドリムであれば、手でねじることができます(そのためにねじれ保証はついていません)。ドライヤーなどでリムのねじれているところを温めて、手で反対側にねじって、センターを調整します。

WA Archery TV WC 1973

1960年代になり、ロッドスタビライザーが登場します。このスタビライザーは的側に向かって長さを持ちます。そのロッドがまっすぐと的側に向かっていく伸びていますが、このときハンドルが傾いていると、ロッドも傾き、弓はまっすぐ飛び出しません。ロッドスタビライザーの登場によって、リムとハンドルの3面を水平にするリムアライメントの調整が必要になります。

そして、最後に登場するのが、センター調整機構です。1950年代のリムは手でねじることができましたが、これでは安定性がありません。70年代にねじれたリムで世界記録が出たという話を聞くことがありますが、それがまさに当時のメーカーに目指すところで、リムアライメントを多少犠牲にしても、ねじれないリムのほうがグルーピングするという結果を持って、ねじれないリムの開発に邁進していきます。その結果、リムを年々進化を遂げていきますが、ねじれ耐性を持ったリムは当然、以前のように手でねじって修正することはできません。

1980年代前半くらいまでは、いろいろな方法(当時のノウハウはほぼ伝わっていません)で調整を行っていたようですが、年々進化するリムに対して、いよいよ方法が尽きてきたときに、メーカーの判断が分かれます。いくつかのメーカーは生産したリムのうち、自社の検品に合格しなかったリムはすべて捨てるという判断をし(コストアップになる)、現存するホイット社などは、リムを調整することを諦め、ハンドル側に調整するための機構を導入することで、出荷できる公差を広げる戦略を取ります。

センター調整機能がなかった時代の1990年代、ヤマハの最も安いリム(*)が4万円以上もし、ハンドルと合わせると11万円を超えます。対して、センター調整機構に対応するリムは、現在、現在とは言わずとも、その10年後の2000年代後半にはグラスリムは1万円ほどで買えるようになっています。10年間で1/4程度になり、ハンドルとリムで2万円強でアーチェリーを始められるようになりました。

*イギリスのカタログによると 1990年 α-SX FRP リム 定価 169ポンド(当時のレートは257ポンド円) = 43433円

ホイット ユーザーマニュアル 2021 - センターショットの項目

以上の流れがそれぞれの用語の誕生の歴史です。ここまで読んでいただければ、センターショットとリムアライメントが明確に異なるものだということがわかると思います。もちろん、今でもセンターショットは用語として残っており、現在では、プランジャーの伸縮があったり、シャフトが樽型だったりするので、センターショットなのに、厳密にはセンターに設定しないセッティングをすることをセンターショットと呼びます。

日本ではなぜセンター調整・センターショットがリムアライメントと混合されるのかは、これから調べてみたいと思います。日本だけで通用する用語の多くはヤマハの影響を受けているので、ヤマハの説明書を手に入れることが課題だと思います。

さて、センターショットを理解していただいたところで、次はリムアライメントの調整です。Wikiによると「アライメントは、並べる、整列、比較などの意味。」とあります。リムアライメント調節で行っていることは、「センター」とは実質的には関係がなく、赤い線で囲んだ「リム面(上)」、「ハンドル面」、「リム面(下)」の3つの面を水平に並べるというチューニングなのです。

写真の状態はリムアライメントが正しくない状態ですが、これは弦がセンターを通っていないのではなく、「リム面(上)」と「リム面(下)」はアライメントが正しいが、「ハンドル面」が右にねじれてしまっている状態です。相対的なので、ハンドルを真っ直ぐにするとリムがねじれていると言えますが、弦を引いたときには、リムのアライメントのほうが優位なので、フルドローでは、やはり、センターが右に向いた状態になります。リムアライメントが正しいとき、弦はリムの中央、ハンドルの中央、センタースタビライザーの中央を通ります(*)。このことがセンターショットとの混同の理由とも考えられますが…ショット(射)の要素ないですからね、センターボウならわかりますが。

*スタビライザーがまっすぐの場合に限る。

Fast Flightがファーストフライトでもファストフライトでもどちらでも良いと思います。しかし、センターショットとリムアライメントでは、言葉から受けるイメージが大きく違います。この点がセンターショットの調節正しくできていない方が多い理由だと思います。真ん中(センター)に揃えるのではなく、面を水平に整えるという作業なのです。

以上のことが理解できている上で、世間に合わせて、センター調節(センターショット調整)と言う分には、なんの問題もないとは思うので、私はこれからも混同して使用させていただきます。


SFプロダクツ NEOハンドル、存在感あるデザインで!

SFプロダクツ NEOハンドル入荷しましたが、かなり大きい感じです。特に低価格のハンドルといえば、右のKAPのイメージで、フォージドやAXIOMも同じ系統でしたが、2万円以下の価格でこのサイズ感のハンドルは初めてです。

センター調整機構はWIN同様にブロック単体でリムを乗せるタイプになっており、リムをブレースしたままで調整しても、リムを痛めないように配慮されていて、チューニングがしやすくなっています。この価格でこのつくりは相当いいですね。

昨日、未来モンスターという若いアスリートを応援する番組を見ていたら、登場した選手がタイムトライアルという競技で、WIAWIS(WIN&WIN)の自転車に乗っていました。そっちの世界は全くかかわりがないので知りませんでしたが、トップに採用されているんですね。