ビデオカメラによるセルフコーチングのやり方。

自分がアーチェリーを始めた頃は、テープ式のビデオカメラで撮影して、それを見るのが精一杯でした。当時もビデオを分析して、その結果を選手にフィードバックするシステムはありましたが、プロ選手・チームでないと導入できない価格でした。現在でもプロ用のシステムは100万円位するそうです。

ただ、手間は少しかかりますが、無料のソフトを組み合わせることで、ほぼ同じような解析をすることは現在では可能です。特にコーチ・指導者がいないアーチャーにとっては、必要な作業だと思います。

自分のシューティングフォームを動画で撮ったことある方は多いと思いますが、それを見るだけでは、どれだけわかることがあるでしょうか?それを分析して、練習に生かしましょう。目的もなく2時間練習しても体力だけは付きますが、目的を持った1時間の練習のほうが価値があります。そして、その目的はコーチがいない人にとっては自分で見つける必要があります。

まずは自分の射型の動画を撮ります。スタンスが変わると意味がないので、1回分(1矢取り分)です。今回は9射撮りました。また、スマホカメラなら設定できないかもしれないですが、シャッタースピードは今回1/5000で設定しています。

シャッターは上から下に降りていくので、1/5000でも弦はきれいに撮れませんが、左右はきれいに捉えることが可能です。その分暗くなります。弦の位置から推測するに、写真上部は矢が飛び出したあと、中央部は矢が15インチ程度飛び出し所、下部は矢がもう飛んでいったあとだと思われます。

その動画をkinoveaにインポートして、コマ送り(60コマ/秒で撮影)で確認し、発射する瞬間の写真をイメージの保存機能で出力します。9射しているの9枚写真を得ることができます。

ここからは自分の設定が必要で、9枚の写真を写真の分割ソフト(無料でたくさんあります)で、分割してください。上は6×6で36分割しています。5枚目に発射する瞬間のポイントの引き込み量、6枚目に引手の高さ、8枚目にアンカーの位置が写っています。ここの作業(どう分割するか)は写真の解像度と画角次第なので、いろいろと試してみてください。また、どの写真を選ぶかは流石に自分で決めるしかありません。今、自分は上下にバラけがちなので、アンカーと引き込み量の安定さと、肘の高さのどれかが悪さしているのではないかと考えて、それを調べるためにこの3枚を選んでいます。左右にグーピングがバラけるなら、前からではなく、下のように後ろから撮ったほうが良いです。

そして、今度は画像結合ソフト(こちらも無料であります)を使って、5/6/8枚目の写真を結合してください。

9射のそれぞれのアンカー位置です。個人的に確認した限りでは、大きな違いはなく、上下のグルーピングの問題はアンカーではないようです。

引き込みに関しては見るだけではなく、Kinoveaで違いを測定しました。その結果、引き込みの違いは4.5mmであることがわかりました。横から見れば4.5mmは大きな違いですが、矢を上から見ているので、この違いをドローチェックで解決するのは無理だと思います。この部分は今後の課題として、感覚を磨いていくしかないでしょう。

結論として、引き手のひじの高さに問題があるようです。一番低い3番と高い9番では大きく違います。また、安定もしているように見えません。ただのバラバラです。この差をなくすことで、より高い点数が出ると思われますので、来週からはここを目標としてトレーニングしていきます。

上下にまったくグルーピングしないので、今回の分析を行いました。このフィードバックを持って、肘の高さを揃えていくのは練習しかありません。それが練習です。疑われるべきところは今回、引き込み・アンカー・肘の高さの3点でした。そこの特定に練習時間を無駄使わなくてもいいのではないでしょうか。

問題点の特定まではビデオカメラがやってくれる時代です。そこは時短してみてはいかがでしょうか。


違いのわからない…コードバン。

タブを改造するためにコードバン屋さんに行ってきたのですが、Nタブ→WIN360→セーカー2→ブラックマンバ→YOSTとタブを使ってきて、一度もコードバンに違和感を感じたことがない違いのわからない人間です。バックスキンは手に触れるので、どんな人間でも違いはわかると思いますが、コードバン面は弦に触れていて…弦がコードバンの表面を滑っていく時間は0.02秒。厚みと耐久性(交換が必要となるまでの期間)以外は、一体何が違うのか、ハテナです。ということで、違う3種類ゲットして試してみるつもりですが、多分違いわからないだろーな。。

店舗で購入しましたが、裏面の加工も物によって大きく違うのに、通販サイトだと、表面の写真しかないところがほとんどなのですが、裏は気にすんなってこと? どなたか詳しい方がいましたら教えて下さい。


パラリンピックがそろそろ始まります。。

メールでこんなの届きましたけど…取材協力した選手に挨拶したり(チケット)、試合を見たかったのですが(テレビ放送)、両方ないのですか?

せめてネットライブ中継くらいはあった欲しいです。


歴史なんて調べて何しているのか?

(アーチェリー教本 2000)

歴史を勉強して、古い資料を調べ上げて何をしているのか。よく聞かれます。最新の情報でも仕事はできるのですが、やはり正しい理解に、歴史は欠かせないと感じています。チューニングに興味を持った方なら、上の写真を見たことはあるかもしれません。グルーピング・ピボットポイント・弓のセンターの3点の関連性を示した資料ですが、これを読んでどう思いますか?

これは全ア連のアーチェリー教本(2000年版)に掲載されているものですが、初心者だと、これを正しいと信じてしまうかもしれません。しかし、実はこのデータは全く価値がないものなのです。

なぜでしょうか。アーチェリー教本では全て明らかにされませんが、実はこのデータは70年代前半のものです。つまり、50年前のデータなのです。まず、間違いなく、カーボンシャフトでのデータではありません。また、実験をしたことのある人であれば、誰もが思うであろう疑問があります。6cm/5cm/4cmで実験して4cmが一番グルーピングしたら、誰もが、じゃ3cmと思うでしょう。しかし、それのデータはありません。そのことから推測するに、ウッドボウでのデータではないかと考えられます。NCハンドルであれば何でも可能ですが、ウッドハンドルでは強度的に限界があります。また、表中の表現から、プランジャーを使用していない(普及し始めたのは75年)と考えられます。

つまり、ウッドボウ/グラスリム/アルミシャフト/ダクロン弦/プランジャーなしという条件下でとられたデータなのです(赤字は確定、黒字は山口の推測)。そんなデータが今の時代に価値を持つでしょうか? 2000年でもNCハンドル/カーボンリム/カーボンシャフト/FF弦/プランジャーは存在していました。

ちなみに、このデータを提供したヤマハ自身、80年代にはピボットポイントにできる限り近いほうが良いという実験結果を自ら否定しています。つまり、70年代から5年程度の間しか価値がないデータなのです。こういった判断を歴史を学ぶことでできるようにしているわけです。

しかし、それでもアーチェリーはわからないことだらけで面白いです。写真のとおり、50mでも回転力のぜんぜん違う40m(1-9/16″)のノーマルスピンと64mm(2-1/2″)のガスプロのベインが同じところに刺さるのです。まじでなんで…。


国内ベアボウのルールの混乱…解釈の問題?

ベアボウで使用が許可されているタブの例(WAより)

ルールを守れ(当然ですが)と言いながら、ルールが知りたかったら、お金を払ってくださいという全ア連のやり方はあまり感心しないので、最新の競技規則持ってません。アーチェリーのルールはWAで無料で公開されています。ただ、全部英語で読むのはしんどいので、運用では、競技規則2016-2017年版の競技規則をベースに、気になるところはWAの英語を読んでいました。

ルールなのでそう頻繁に変わられても困りますが、近年ベアボウターゲットが導入された時に変更されたルールは2つだと理解していますが、国内でどう運用されているのか全くわかりません(所属している協会から問い合わせはします)。

第一に昨日の記事のセンターサービングの長さの規制。何名かの方から連絡いただきました。ありがとうございます。全貌が見えてきたのですが、これが更に混沌としています。

整理すると、

2018年-2020年 競技規則新旧対比表
競技規則改訂に伴う伝達講習会 2020

写真上は東京都アーチェリー協会で配布、下は杉並区アーチェリー協会さんから。競技規則では規制されていませんが、伝達講習会では規制されています。この2つの文書の間に時間差があればいいのですが、両方も昨年9月の講習会での資料です。つまり、同日に配布されたものです。新しい規則を説明する講習会で、規則にないルールを追加したのでしょうか? 謎は深まるばかりです。

そして、さらに新しい問題も。

WAでは削除された規則が最新の伝達講習会に逆に宣伝(審判にチェックするように)されています。忘れ去られているならともかく、削除されたものを逆に強調しているのが謎です。

このルールでは自分のタブが違反になりかねません(マークのサイズは一定ではない)、心配です。WAの2020年のルールでは、

- マークの長さは2種類まで許されます( No more than two lengths of line are permitted.)

– マーク間は均等である必要はありません(does not require uniform spacing between lines/marks.)

– 縫い目の場合は同間隔なら2種類まで違う長さを使うことができます(There may be up to two lengths of stitch with no regulation on spacing.)

- しかし、色は同じでなければならない(Stitching must be a single uniform color)

がベアボウタブのルールとなっているはずですが…特に最初のルール(一定でないマークは2種までよい)は2017年には変更されています。それを受けてのYostタブですからね。

そして、この伝達講習会資料は東京のものであり、29日には神奈川県の弓具検査を受けるのですが、見解は統一されているのでしょうか? 神奈川県さんはベアボウのアーチャー多いので、正しい解釈伝わっているとは思うのですが、ルールが解釈次第で違ってくるというのはちょっと・・ね。

これらはいずれもWA公式競技規則 Version published: 1 January 2021 を元にしています。


ベアボウのサービングの長さは?

(追記)フィールドに関しては撤廃されたとのことでした。訂正します。

ベアボウのルールに「弦のサービングの端は、フルドローのとき、競技者の視野内に入ってはならない。」というものがあります。29日の横浜の試合がベアボウターゲットのデビュー戦になりました。全日本選考点(550点)を目指してがんばります。

そこで、明日、試合に向けて、弓を”合法化”していくのですが、サービングの長さをどうしたら良いのかに迷っています。

上記のルールの下限は決まっていて、サービングの端が鼻より上に来てはいけないとされています。しかし、上限に関しての規定が見つからない…どこまで伸ばしたら許してくれるのだろうか。。そして、世界最高峰の弓具検査を通った世界フィールド出場者の弓を参考にしようとしたら、これでいいのか(奥の方多分見えてるよーな)?

ますます混乱なので、とりあえず、短い方で巻きますけど。。ご存知方いたら教えて下さい。


1955年 New Guide to Better Archery

1955年に執筆されたアーチェリーガイドブックの1962年版が届きました。これから読み込んでいこうと思っています。

特にアメリカで書かれたものですが、今まで翻訳した本でもハンティングの部分の翻訳を省いたりしましたが、せいぜいブロードヘッドチューニング程度の内容でしたが、こちらの本ではハンティング後の解体の仕方まで解説してくれています。今でもあるのかわかりませんが、当時ハンティングでは40ポンドの逆ポンド規制(40ポンド以上を使うこと)が存在していたそうです。

今ではまず見ないレンジファインダーという装置。自分の射場で的近くの木の根元を狙っているなら、そこにマークを付け、試合会場の同じ距離の的で、自分のエイミングポイントになにか目印がないかを探すのに使います。アイスバーの棒で自作するらしいです。


コンパウンド編はPSEになりそうです。

リカーブチューニングはホイットの話が中心となってしまいました。というのも、他のメーカーは歴史が短く、リカーブを真剣に作り続けていたのが、ホイットだけだったからです。ホイットよりも古いメーカー、例えば、ベアなどは途中からコンパウンドほメインとしていて、話が繋がりません。日本メーカーは21世紀にまで残っていません。

さて、コンパウンドはどうか。67年から製造が始まりますが、発明者のアレンはあまり作る方には積極的ではなく、当初は特許権を売って開発費を回収しようとしていたようです。ちなみに発明者のホレス・ウィルバー・アレン氏は73年に会社に特許を譲渡し、79年に交通事故でなくなってしまいます。その後、譲渡された会社は特許をめぐる法廷闘争に発展しますが、その話は置いておきましょう。ちなみに、その法廷に提出された資料によって、特許使用料は弓の販売価格の5%~5.5%だったそうです。思ったより安いかな?

70年代初めに、コンパウンド黎明期に作っていたのは、Allen / Wing / Groves / Martin / Olympus / Carol / PSE / Jennings の8社でしたが、現在でも続いている会社はPSEとMartinしかなく、その中でも、PSEとは弊社のコンパウンド部門立ち上げ時(2011年)からのお付き合いですので、コンパウンドのチューニングに関しては、PSEにお世話になりたいと思います。


アンリミテッド(Unlimited)な弓、コンパウンドボウ。

4年かかってリカーブチューニングマニュアルが完成したので、次はコンパウンドに着手します。同じペースなら2025年頃に完成するのでよろしくおねがいします(^_^;)

さて、いわゆる弓の定義を変えたのがコンパウンドです。61年頃にアレン氏のアイデアが元になっているのですが、実際に登場したのは、67年です。これがアーチェリー業界に衝撃と混乱をもたらします。

アーチェリーのルール作りをしているWA(FITA)では、和弓も世界大会に出場したことがあるのですが、リカーブ部門の用具の定義は1967年時点で、

第703条(用具) (a)石弓を除き、いかなる形の弓を使用するも差し支えない。

100万人のアーチェリー 坂井 一雄

となってします。クロスボウ以外なら何でも使用できたわけです。リカーブが最も性能が高いという認識のもと、別にリカーブしていなくても、リカーブ部門には出場できます。現在でも、リカーブ部門の弓具に弓がリカーブしていなければいけないというルールはないのです

しかし、コンパウンドの登場によって、リカーブよりも優れた弓が登場してしまいました。この混乱によって、弓とはなにか、みたいな哲学的な議論が開始されます。最初にコンパウンドボウが登場したアメリカで権威のある辞書(Merriam Webster)によれば、

a weapon that is used to propel an arrow and that is made of a strip of flexible material (such as wood) with a cord connecting the two ends and holding the strip bent.

意訳すると、柔らかい素材でできていて、曲がり、両端をコード(弦)によって繋がれているというのが定義です。しかし、コンパウンドも両端で弦によってつながっているので、コンパウンドも弓です。それをどう扱うかが問題となり、71年に弓の定義に「ストリングノック」を追加します。つまり、ただ単に両端に弦によって繋がれているだけではだめで、ストリングノック(リムチップ)に弦がかかっていなければいけないというルールです。これによって、コンパウンドを一度は、弓ではないという理由でアーチェリー界から排除しました。

しかし、その後のコンパウンドの人気に押されて、アメリカでは弓ではないと追放したコンパウンドをどう復帰させるのかが問題となります。そこで考え出されたのが、コンパウンドを弓とするが、「Bow Unlimited(制限のない弓)」と新しく定義づけることでした。

アメリカのクラス分けに「制限付き(Limited )」と「制限なし(Unlimited)」がありますが、何を制限していたかといえば、リムチップを制限していたのです。現在はもう少し細分化しています。

ちなみに、他にも多くの分類があるので「Bow Limited」=リカーブというわけではないです。また、この問題にリアルタイムに巻き込まれなかったWA、はただリカーブとコンパウンドと分類していますが、ルールにはしっかりと、ストリングノックという一文がくわえられることになりました。


やっぱり弓は射ってこそいいもの!

約30年前の弓なので射てるか心配でしたが、なんの問題もなく、非常にいい感じで射てました。下リムがフルドロー時に少し音がするので、再チューニングが必要です。あと、マウンティングホール(プランジャーホール)が一つしかないので、ベアボウレストを確実に固定できない&プランジャーの出し入れする時にレストがずれてしまいます。はじめて、ホールが2つあることのありがたみを感じたかもしれません。

普通のベアボウの練習があるので、この弓は一旦インドアシーズンまでお休みです。