この記事は2016年10月17日に書かれたものです。最新の情報とは異なる可能性があります。ご注意ください。

初めの弓を購入する方へのアドバイス(リカーブ向け)

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この半年間、自分は試合に出場・練習はお休みして、料理ばっかり作っています。先日は珍しい形のチーズ(カチョカバロ)を焼いてました…しかし、これはアーチェリーのための練習ですので頑張ります。料理とアーチェリーがどうつながるのかは後日記事にします。まだ、いい書き出しが思いつかなくて。

今日は初めて弓を購入する方で予算が決められない方向けの記事です。弊社では幅広い価格の弓を扱っていますので、見積もりを依頼されるときにいつも予算を確認しているのですが、逆にいくら必要なのですかと逆質問されることが多く、今回の記事では、初めて弓を買うときにどう予算を決めるべきかについて書きます。

*一式の場合、3万円~30万円くらいまでの幅があります。

6月に書いた記事をお客さま目線で書き直したものです。

低価格帯商品をいかにして日本で売ればよいか

アーチェリーは趣味・余暇であり、弓は嗜好品の一つだと思っていますので、予算がある方は自由に購入をしていただければよいと思います。最初から最高級の弓を買って塗装の美しさを楽しむのも、ベテランの方がエントリー向けの弓を使って当たらなさを楽しむのも、楽しむことが大事ですので、人が口を出すものではないと考えています。


要約
・弓はバランス重視
・ハンドルとリムの値段から決める
・人によって変わるのはケース

さて、予算が決まらず、「程よい」セットをそろえたい場合、アーチェリーにおいては一点豪華主義というものはあまり一般的ではなく、その効果も確認されてはいません。バランスよくそろえることをお勧めします。高い弓と安い矢、安い矢と高い弓など、ほかのパーツの予算を削ってても、一つのパーツにお金をかけるべきという意見はあまり一般的ではなく、弓は全体で働くので、競技向けの弓はバランスを重視で選択されるのが一般的です。

そのバランスの中心はハンドルです。まずはハンドルの予算を決めましょう。ハンドルは安いもので1万円、高いもので10万円弱です。しかし、値段が変わることでの変わるものと変わらないものがあります。例えば、チューニング性(簡単にチューニングできるか)はどの価格帯でも大きくは変わりません(*)。

*以前にチューニングすることは大変困難なミザールという弓がありまして…苦労したのはいい思い出です。。。この弓、センター調整機構が外からはアクセスできず、リムを外さないとインジケータすら見ることができないという恐ろしい仕様でした。

初心者としてのハンドルの評価(*)を大きく分けると、性能、品質、メンテナンス性、仕上げ、塗装、補修の6個かと思います。このうち、予算をあげていっても大きく変わらないのは、品質とメンテナンス性、3万円(実売)を超えると大きく変わらないのは性能、予算を上げれば上げるほど変わるのが仕上げと塗装と補修です。

*経験者であれば、この部分は変わり、グリップの形が自分に合うか、重さ、剛性、重心などと異なりますが、初めての弓を買う方にそれを提示して選択していただくことは困難だと思います。

まず、品質とメンテナンス性。これは高いほど良いということはありません。特に品質に関してはそうです。よく誤解されている方がいるのは品質の部分で、高いハンドルのほうが耐久性が高いと勘違いされていますが、これまでの10年近いプロショップ勤務での経験でいうと、むしろ低価格モデルのほうが故障が少なく耐久性が高いです。上位モデルではコストがかかった最新の技術が採用されているのに対して、下位モデルでは何年、何十年前の実績あるローコストの技術が採用されるからです。

100km当たりの故障率と価格が軽自動車とF1では反比例するのと一緒です。最新技術を使用したF1仕様の車のほうがはるかに価格は高いですが、故障は実績ある車台を採用する軽自動車のほうが少ないです。

次に、性能ですが、これは一般論とすることが難しいものの、10年ほど前にナショナルチームの選手の方が実売2万円後半のサミックのアスリートハンドルでシングル(WA1440)で1330点近くを射ち、近年の世界大会(ターゲット)でのメダル実績があるハンドルの中で最も安いハンドルがウィンのWINEXで、4万円台であるので、3万円台前後から上では性能は大きく変わらないというのが個人的な意見です。もちろん、上位モデルではハンドルの重量が簡単に調整できるなどの付加機能があり、これを性能の一つとしてとらえれば別です。

最後に仕上げ、塗装、補修(部品)ですが、この部分は大きく差が出ます。塗装はハンドルの価格に応じた手法が採用されていて、低価格モデルの場合は質があまり良くない場合もあります。これも3万円台が目安で、これ以上高いモデルでは見栄え(発色等)が大きく変わることはないのですが、コーティングの違いにより、耐久性・傷のつきにくさが変わってきます。塗装に関しては製造時のミスを除き、メーカーの保証対象外ですので、気にされる方は上位モデルを検討してください。

仕上げに関しては、ここでは見えない・性能に影響しない部分への配慮です。低価格のものでも、もちろん見える部分は塗装はされていますが、リムポケットの内部(リムを装着すると見えない部分)や、グリップが装着される部分(グリップを取りはずした時に初めて見える部分)のバリ取りや塗装は、されていないか、適当なものが多いです。対して、高いものはこの部分もしっかりとしているものが多いです(すべてではありません)。ただ、性能には影響しないし、使用時には見えない部分なので、見えない部分も丁寧に作られたかどうかという…メーカーの気持ち、心意気の差といったところでしょうか。

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最後の補修については故障したときの対応の違いです。この部分は価格差というよりもメーカーの規模が反映します。グリップが故障したとき、ホイットやウィンであれば、10年程度前のモデルくらいまでであれば、入手はできます。逆に小さいメーカーでは、生産が終了したら、1年程度でもう交換用のパーツが手に入らなくなることもあります。

長く使用し保証が終わっても、補修パーツを手に入れてメンテナンスしていきたいという気持ちがあれば、ホイット、ウィン(KAP/SF)の2大メーカーのものを選択することをお勧めします。

初心者の方で、予算が決まらない方は以上の観点で選択することをお勧めします。

ハンドルが決まれば、次はリムの選択です。リムは単純に高ければ性能が高いと考えていただいてもかまいません(*)。それ以外で低価格帯のモデルと高価格帯のモデルの違いはほぼありません。

*上達し、自分の好み、相性が良いスペックがわかってくれば別です。

ただ、ハンドルと違い、リムはサイズとポンドで同じリムでも多くの種類があり、最初のリムが自分のぴったりでずっと使っていくというケースは稀です。2-3年のうちに買い替えるケースが多いので、最初のリムは低価格でも全く問題ないと思います。また、リムを買い替える場合、同時に矢も買い替える(リムのポンドが変わると矢のスパインも合わなくなる)ので、結構な出費となります。基本的にリムは初心者の方にとっては消耗品です(**)。最初のリムは矢とセットで考えて、2年以内にまるっと買い替えても痛くない程度の金額で考えていただくのが良いかと思います。

**上達し、自身の引き尺・体力(ポンド)が決まってくれば、3-5年は使用できるようになります。リムが消耗品なのはリムの寿命が来るからではなく、自分に合わなくなってくるからです。

一式購入時にケースの購入する場合は事前にご自身でどうするか決めておいてください。基本的には4種類の選択があります。自分で用意するのが一番安くつきます。アーチェリー用でも他のスポーツ用でもメーカー原価はほぼ変わりませんが、大量に販売されるメジャースポーツ用のケースはコンテナ輸送で送料が非常の抑えられているので、アーチェリーショップでは到底対抗できない価格となっています。こればかりは企業努力ではどうしようもないので…安くしたい方は自分で用意することをお勧めしています。

次に、プロショップで販売されるソフトケース。ソフトケースは非常に軽く、電車移動などで段差が多い移動手段で射場に通われる方に最適です。価格は1万円前後です。

最後はハードケース。電車移動時の段差が弱点ですが、保護能力が高く、収納量も多いです。ジャージくらいまでであれば、どのケースでも基本的には入りますが、シューズやスコープも全部収納したい方は大型のものを選択してください。2万円前後です。

ケース類に関しては店舗側からのお勧めというよりも、お客さまがどのような環境での使用を予定しているかによって最適なものが決まるので、お客様の希望をお伝えください。

ハンドルとリムの合計額が決まれば、その金額をプロショップに伝え、残ったアクセサリー類にハンドル・リムに見合う程度のもので見積もりをとれば、初めての見積もりは完成です。あとは、財布の具合と相談しながら詳細を詰めていけばよいでしょう。1万円安くしたいなどの希望があれば、ショップの方にそのまま言えば全体のバランスから考えて調整してくれると思います。

以上、参考になれば幸いです。

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山口 諒

熱海フィールド代表、サイト管理人。日本スポーツ人類学会員、弓の歴史を研究中。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、ベアボウ競技歴5年。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は準優勝。
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