この記事は2014年11月19日に書かれたものです。最新の情報とは異なる可能性があります。ご注意ください。

Mathews No-CAM HTR

マシューズの2015年Newモデル、No-Camシリーズ。
その先陣を切って「HTR」が届きました。
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なんといってもノーカムの「引き味」が一番の興味でした。
それはいったいどんなものなのか。

まず弓の様子を見て見ましょう。
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上のリムポケット近くには「ハーモニックスタビライザー“ライト”」が装着されています。
そして下のリムポケット近くには「ハーモニックスタビライザー」が装着されています。(ライトに比べ約55グラム重いです)
さらに付属品として「ハーモニックダンパー」も2個付いてきますのでお好みの組み合わせで取り付けてください。
*ただし、「TRG」には「ハーモニックスタビライザー“ライト”」だけとなっていて「ハーモニックダンパー」は付属しません。「HTR」だけの付属ですのであしからず。

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ケーブルガイドはローラータイプが装着されます。

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グリップはマシューズのハンティングモデルでは一般的なウッドグリップではなく「フォーカスグリップ」が標準装着されています。*素材はハードラバーです。
グリップの中央縦に入るラインの部分がとがっていて、弓を押す手のひらの箇所が明確になっている設計のグリップです。

カラーは「ブラック/アンセム」
マシューズのコーポレートカラーである黒と黄色を用いたカラーリングです。
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他にはクロスカーボン模様の「タクティカル」、ガンメタルシルバーの新色「ストーンタクティカル」
そしてカモフラージュ柄となっています。

さて、ノーカムシリーズ共通の特徴である“カム”部分(厳密にはホイールとよぶべきでしょうか)
ベースはカム軸が中心を通る設計。
そのベースホイールの片面に偏心プーリー、もう一方に引き尺モジュールが付きます。
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偏心プーリーはリムを“しならせる”役目を持ちます。つまりエネルギーを蓄えるわけです。(上の写真奥側です)
そしてモジュールは引き尺とレットオフを制御します。
このシリーズ(HTR、TRG)はベースホイールの交換なしでモジュール交換のみで引き尺を変更できます。

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写真はHTR用のモジュールです。「HTR.G.85.A(B)」と刻まれています。HTR用で「G」と言う引き尺で*、レットオフ85%を意味します。(AとBは上用下用を指します。)

*「G」とは27インチを意味します。「A」なら30インチ、「E」は28インチ、「L」なら24.5インチとなります。

HTRは24インチから30インチまで。レットオフは65%、75%、85%が用意されています。購入時にはレットオフを指定してください。
もちろん購入後は別売りのモジュールでレットオフや引き尺を変更できます。
モジュールは0.5インチ刻みで用意されます。
用意されるポンドは50lb、60lb、70lb、です。

TRGも同じ理屈で構成されています。(TRG7、8、9により引き尺範囲が異なります)
コチラのレットオフは65%と75%の2択です。初回お求め時にご指定下さい。
用意されるポンドは40lb、50lb、60lb、70lb、80lbです。

 

HTR
このノーカムシステムはフルドローからのノックトラベルの延長上にバーガーホールが通ります。
引き出されたストリング(ノッキングポイント)から真っ直ぐに矢が押し出される設計になっています。正確性と精密さを追求した設計となっています。

HTR、TRG共通して言えるのが、ハンドル(ライザー)レングスがとても長い配分となっています。そのためリムは「パスト・パラレル」と言う配置になり、このHTRは32インチと言うアクセル間の割に大柄な印象を受けます。
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HTRのライザーレングスは約29インチもあります。  

さて、試引きをしてみます。

「はぁ!?」

引き始め(ストロークの約1/3過ぎまで)がとても優しいのです。
ピーク50ポンドの弓で40ポンド程度で推移します。
最近の一般的なCPのカムは引き始め0センチからいきなり最高潮の負荷を感じるかと思いますが、そのつもりで引くと、ノーカムシステムの引き始めがとても柔らかく感じるので「はぁ?」となったのです。

で!

真ん中過ぎたあたりから急激に負荷が増します。
これはなかなかの“峠”です。
乗り越えるのに一泡吹くかもしれません。(←感じ方には個人差があります)

そしてバレーに落ちます。
保持はレットオフ85%ですから当然ラクですね。でもバレーの幅が狭いのであまり85%らしさは感じられない印象です。
(ただ実測しますと、ピーク51ポンドに対しホールドは9ポンドだったので実際のレットオフは約83%でした)

では引き戻します。

「おおぉ!ラクだ!」

当然バレー位置から引き戻すわけですが、一般的なCPの引き戻しは突然「グイッ!!」と持って行かれる感じで、恐る恐る引き戻したりするかと思いますが、
ノーカムの場合は戻し始めのピーク以降はなだらかに落ちて(戻されて)いくので、体感的にラクに感じるのです。

ハッキリ言ってこのカムに矢を押し出すパワーを感じたかどうかと言えば、あまりありません。
ありません、と言えば残念な意味で捉えられるかもしれませんが、逆に言えばそこまで必要が無いのかもしれません。
反面、求められるべき精密性、精確性、再現性というターゲット競技における必要不可欠な要素は十二分に備えていると思います。

HTRはハンティングモデルとして銘打たれていますが、それはこのハンドルのデザインが汎用的なハンティングモデル定番のプラットフォームにしか過ぎず、フォーカスグリップを採用したりノーカムカムシステムを搭載することで精密射撃に対応し、また言い換えると販売価格が“高価になってしまった”TRGの廉価版として気軽にその精確性を感じて欲しいという狙いがあるのかもしれませんね。
そんな印象を受けました。

もう一つのノーカムシステム搭載、ターゲット競技に特化したハンドルデザイン「TRG」の入荷が楽しみになってきました。


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Yamada

山田ヒロ - JPアーチェリープロショップ店長。主にコンパウンドを担当。元日本記録(コンパウンド70mW)保持者。 連絡先 cp_jp@archery-shop.jp
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3 thoughts on “Mathews No-CAM HTR

  1. HTR(TRG)は、シンナムやボウマスターのポータブルボウプレスは使えるでしょうか?

  2. >HTR(TRG)は、シンナムやボウマスターのポータブルボウプレスは使えるでしょうか?

    大久保店の山田より下記の通りの回答がありました。

    >>

    いずれも使えますが、プレスする場合は最低限のプレスにとどめて作業をしないと大変危険です。

    HTR、TRG等マシューズのリムの外側には独特のパーツが付いているケースが多いです。(コンクエストやAPEXには無い場合もあります)
    このくぼみを利用したフックをすることになります。

    ・シンナムの場合
    ブラケットの先端がわずかにカーブしているのでボウマスターのモノよりは若干安心して使えます。
    ただ、ブラケット幅が少し狭いのでカムの幅に干渉する恐れがあるので注意が必要です。

    ・ボウマスターの場合
    先端が「L字」なのでフックさせる時はしっかり確認しながらプレス作業を行わないと外れる恐れがあります。
    また、幅が「スタンダード」では狭いので、この場合は「ワイド」を選択します。

    幅を順番に並べると、、、
    ボウマスター(スタンダード)<シンナム<ボウマスター(ワイド)
    となります。

    ボウマスターにせよ、シンナムにせよ、最近のリムは「スープラMAX」や「フェノム(SD)」もそうですが、パストパラレルリムデザインが増えてきているので
    ボウマスターの「L字」はだんだん時代にそぐわなくなってきている印象があります。

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