5日に発表されたマシューズの新しいターゲットボウ。非常に期待していたのですが、ノーカムシステムが提供する”カム”としての性能には、その性能はおそらく宣伝通りの素晴らしさだろうが、それが最上位のターゲットモデルに搭載され、かつ、44%も値上がり(ドルベース、円安とは無関係)したのは理解できませんでした。
が、この2日間でいろいろな議論をして、やっと、この弓の素晴らしさを理解できました。前回のApex7は今でも十分な性能を持っていますが、登場から8年たっています。これから8年も戦える技術を全部搭載すると、このような見たこともない、そして、高い値段のターゲットボウになってしまうのであれば理解できます。
実は、同じノーカムシリーズでも、ハンティングモデルは1,099ドルと他社ともほぼ同じ程度に設定されています。ターゲットモデルだけずば抜けて高いのです。なので、TRG7が高い理由はカムではありません。それはハンドルとリムにあるのです。ノーカムだけを経験したいのであれば、HTRを購入することをお勧めします。
この弓の名前。ノーカム(No Cam)からはカムが最大の売りのように思ってしまいますが、この弓の設計で最先端だと言えるのはむしろ、カムを搭載しないことをよって可能になったハンドルとリムのデザインです。
比較のために4つのモデルを選択しました。前モデルのApex7、ホイットの最新モデルのボディウムXでApex7にスペックの近い37バージョン、2015年モデルのパラレルリムのカーボンスパイダーZT30、そして、TRG7です。
100%正確ではありませんが、アクセル間の距離をヒントにして、ハンドルとリムの長さを推定しました。リムは概算値ですが、各モデルの比率が大事なので、問題はないと思います。
数値を見ていただければ一目瞭然ですが、ハンドルの長さは圧倒的で、アクセル間とハンドルの長さはほぼ同じです。そして、リムの長さは圧倒的で8.3インチしかありません。簡単に言えば、ものすごくリムが短く、ハンドルがすごく長いのです。
ハンドルは矢を発射するだけではなく握るスタビライザーとしてもとらえられます。長いほうが弓は安定します。38インチハンドルは現在の市場の中では最も長いハンドルではないでしょうか。そして、リムが短くわずかしかたわまないのですが、それで必要ポンドが出るということは、他社と比べて非常に剛性のある硬いリムを使用していることになります。また、剛性が同じだとしてもリムが短いということは相対的に安定性を向上させることになります。
そして、発射時の振動は主に(ハンドルと比べて柔らかい)リムから発生するので、そのリムが短いことは振動の発生を抑えます。
そして、もう一つの違いはハンドルの構造で、TRGでは近年エリートをはじめ、今年はホイットも採用したゲージデザインを採用しました。
ハンティングモデルとターゲットモデルとの7万円の違いはゲージデザインのロングハンドルと高剛性のショートリムの2つにあるのです。カムではありません。自分は初見では勘違いしました。2015年には、どのメーカーも新しい機能を追加してきましたが、世界初のロングハンドル、ショートパラレルリムで、前作のApex7と同じ321fpsを達成。前作と同じ矢速、または、新しいカムになったのは同じ矢速という部分にとらわれると、この進化を理解することが難しくなってしまいます。
Apex7は自分も使っていますが、言われてみると、確かに矢速に不満を持ったことはありません。進化するのであれば、それは安定性、弓全体での剛性・振動の少なさ、カムの引きのスムーズさという方向には、既存のマシューズユーザーの望む部分であると思います。引きのスムーズさという点ではある程度自明だと思いますが、カムは偏芯しているのに対して、ノーカムシステムでは丸いホイールを引くわけですから、どっちがスムーズかは感覚でも理解していただけると思います。
あとは入荷(12月中旬)してから評価したいと思いますが、この弓の最大の売りは今までにないハンドル/リムレシオにあるということをこの記事で理解していただけたら幸いです。楽しみです。
山口 諒
最新記事 by 山口 諒 (全て見る)
- イーストン2025年、新商品はタングステンポイントです - 2024年12月3日
- Colt-Sahara National Open 1962 - 2024年12月2日
- 前方脱着ブリッジシステム BOSEN Ranger - 2024年12月1日
重すぎる・・・(汗)
スタビライザーのセッティングの見直しが必要ですね…。