先日、行ったスタビライザーセッティングと飛び出しについてのまとめが終わりましたので、記事にします。
まず、セッティングのパターンとしては5パターンで調査しました。
A : 一般的なセッティング(水平Vバー+エクステンダー+アッパー サイドウェイト1つ)
B : 軽いセッティング (Aからアッパーとすべてのウェイトを取り外したもの)
C : 重心をグリップに置くセッティング=重心が通常よりも後方にあるセッティング(Aのセッティングからアッパーを外し、再度にそれぞれウェイトを4つずつ装着)
D : アッパーのないセッティング(Aからアッパーを取りはずす)
E : ダウン角Vバー(AのセッティングでVバーをダウン30度に設定)
の5パターンです。そのほかにアッパーのウェイトを重くする、Vバーの引き角度を変える、についても行いましたが、誤差以上の違いがみられず、有用なデータにはなりませんでした。
まずは、後半のデータを時間軸をずらして、重ね合わせてみました。Y軸(縦軸)は飛び出した距離を示しています。単位はミリメートルです。すべてのセッティングにおいて、ほぼ同じグラフになることが確認できるかと思います。つまり、一般的に飛び出しと呼ばれている現象(感覚・フィーリング)は、飛び出すスピードや飛び出し距離の違いによるものではないということです。
飛び出しと呼ばれていますが、飛び出しが良いとされるセッティングでは勢いよく飛び出し、飛び出しが悪いセッティングでは、弓がほとんど飛び出さないわけではないのです。すべてのセッティングにおいて、いったん飛び出してしまえば、同じようにな弧を描くことが確認できます。
では、何の違いが飛び出しという感覚を生み出しているのか。上のグラフは矢が発射されてから、弓が押し手から5mm離れるまでのグラフです。各セッティングで大きく違いが出ているのが確認できるかと思います。
横軸(X軸)は時間です。単位は0.001秒(ms)です。縦軸(Y軸)は弓の移動距離です。単位はミリメートルです。
リリース後、いったん弓はアーチャー側(バック方向)に移動します。そこから押し出されて、弓は飛び出します。各セッティングによる最も大きな差は、ハンドルが手に残る時間です。データを分析する限り、アーチャーが飛び出しと呼ぶ感覚の違いの80%以上は、発射後、弓が手元に残っている時間によってもたらされることが分かります。
上のグラフの丸で囲んだところ。この動きは、弓が飛び出した後、リムの往復運動(バタつき)によって、ハンドルが静止するポイントです。このポイントまでの時間を計測すると、AとCでは同じ14ms、アッパーだけ取り外したDで16ms(15%増)、Vバーをダウン角にしたEで18ms(28%増)、バランスをとるためにスタビライザーのロッドのみでウェイトを一切装着していないBで21ms(50%増)になります。
スタビライザーのセッティングを変更した時に感じる弓の飛び出しとは、弓が実際にどれだけ飛び出すのかではなく、発射後に弓がどの程度の時間手元に残るのかによって決まるものであると言えます。
そして、その時間は重心の横方向の移動(重心がグリップにあるのか、Vバーの部分にあるのか)よりも、縦方向の移動(サイト側にも重さ=アッパーロッドがあるのか、下にしか重さがないのか)による影響を受けます。
個人的に知りたかった部分はまさにこの点で、この結果には満足しています。Vバーのダウン角にしたときには、両方の現象が生じます。重心は横方向にも移動し、縦方向にも移動します。
Vバー下げることによる飛び出し感の減少は、そのどちらに起因するものであるのか、そして、それはどの程度のものであるのかについて、切り分ける事が困難でしたが、今回の結果をもって、切り分けることができましたので、今後より正しく飛び出し感についてのアドバイスできるかと思います。
一応動画作ってみました。ただし、これはあくまでもこんな感じの違いですよというもので、厳密な同期などは行っていないです。今回の調査のデモンストレーションとしてご覧ください。
今回、インドアセッティングなどには触れていません。調べていません。理由としては、そもそも、それらの競技において飛び出しが必要であるのかが明確ではないためです。
*Y軸の距離(長さ)はエクステンダーが694.18ピクセルで長さが14.1cmであることから逆算したものです。多少の誤差があると考えられます。
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山口 諒
熱海フィールド代表、サイト管理人。日本スポーツ人類学会員、弓の歴史を研究中。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、ベアボウ競技歴5年。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は準優勝。
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SECRET: 0
PASS: c543b84aa0508c004992afb649837456
弓が飛び出さない=サイトを止め易い
ということかが実証されたと思いますが、最近流行(?)のカウンターウェイトも
現象としては、サイドバーのダウン角付きに似た状態になるのかなと
考えていましたが、それで宜しいでしょうか。
(カウンター・ブッシングのあるハンドルを持っていないので・・・)
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>最近流行(?)のカウンターウェイトも現象としては、サイドバーのダウン角付きに似た状態になるのかなと
ダウン角のVバーは重心の縦方向(垂直)の移動と横方向(水平)の移動の両方が伴いますが、カウンターウェイトは重心の横方向のみの移動で、縦方向の重さの配分には大きな影響は与えません。ですので、ダウン角のVバーに比べると、飛び出しへの影響ははるかに少なく、カウンターウェイトがない状態がAとすると、カウンターウェイトを付けた状態はCに相当するかと思います。
ただ、カウンターウェイトを装着するにあたり、全体での重さを変えないよう、アッパーなどを取り外していると話は少し変わるかと思います。
> 弓が飛び出さない=サイトを止め易い
> ということかが実証されたと思いますが、最近流行(?)のカウンターウェイトも
> 現象としては、サイドバーのダウン角付きに似た状態になるのかなと
> 考えていましたが、それで宜しいでしょうか。
> (カウンター・ブッシングのあるハンドルを持っていないので・・・)
SECRET: 0
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ご返信有り難うございます。
済みません。カウンターの定義が曖昧でした。
INNO-MAXのようにグリップの真後ろにブッシングのあるモデルと
GMXのように下リムに近い場所にあるモデルがありました。
また下リムボルト裏にウェイトを取り付けている選手も
後者のタイプですね。
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> GMXのように下リムに近い場所にあるモデルがありました。
このタイプのものはカウンターとはまた少し違うかなと思います。
カウンターウェイトも重心をアーチャー側(フェイス側)に移動させるためのものという定義です。
カウンターとは「対抗する」などという意味で、一般的にはセンターのウェイトに「対抗する」ウェイトをそう呼んでいます。
同じカウンターウェイトでも、GMXのような位置にあると、どちらかというアッパーウェイトに対する「対抗」といえる設計で、一般的な意味で使われている(センターウェイトに対する)カウンターウェイトとは違うと思います。
挑戦的な設計だと思いますが、GMXが発表されてこれまでの使われ方を見ると、この位置にウェイトを置くセッティングで成功したものはあまりないのではないでしょうか。
> ご返信有り難うございます。
> 済みません。カウンターの定義が曖昧でした。
>
> INNO-MAXのようにグリップの真後ろにブッシングのあるモデルと
> GMXのように下リムに近い場所にあるモデルがありました。
>
> また下リムボルト裏にウェイトを取り付けている選手も
> 後者のタイプですね。