最近のアーチェリー業界では脳波を使用したトレーニングが流行っています。国内ではまだノウハウがあるところは少ないようですが、それらのノウハウをパッケージした「Hit the Gold」などが市販されています。
前にも書きましたが、測定自体には大した意味はないです。振動(加速度)、ハイスピードカメラによるスーパースロー、3Dモーションキャプチャーなど、弊社でもいろいろな測定をしてきましたが、重要なのは測定することではなく(*)、その測定値をどう解釈いるかです。加速度と動画分析のノウハウはそれなりに蓄積できていますが、3Dモーションキャプションの解釈は困難過ぎて…。
*当然ですが、正しく測定することはすべての第一歩です。
さて、新しい流行にのって、弊社でも脳波測定のノウハウと、その解釈・分析についての実験を開始することにしました。まずは自分を実験体としてやります。ただ、現在最も新しい分野の一つなので、早くに結果を出すのは困難と感じています。
スポーツの分野では一般的に使用されているMindwave Mobileという脳波計です。これ付けて、今後射場に出没すると思いますが、怪しい人間ではないので、怖がらないでください(練習時に脳波計をつけてのシューティングは何の規則にも抵触しないと思いますが意見があればコメントをください)。
さて、脳波トレーニングの根拠、基礎研究とされている論文がいくつか存在します。まずテスト予定は2つです。
(HEART RATE VALUES AND LEVELS OF ATTENTION AND RELAXATION
IN EXPERT ARCHERS DURING SHOOTINGのTable 4. Mean values and standard deviation for each arrow score in compound shooters with noted significant differences between arrow scores.を翻訳)
横軸の8は8点を射った時、10は10点の時という意味です。この研究によれば、コンパウンドアーチャーがより高い点数を得た時、心拍は高い状態にあり、脳波レベルは、集中(attention value)レベル・リラックスレベル(meditation value)ともに低いレベルにあるとのことです。
*より詳細に知りたい方は全文を読んでください。当然ですが、示唆されていることはこれだけではありません。
HEART RATE VALUES AND LEVELS OF ATTENTION AND RELAXATION IN EXPERT ARCHERS DURING SHOOTING
もう一つは、アメリカのリー・キーシクコーチのサポートによって、US Olympic Training Centerで行われたテストです。
グラフ中のAが集中レベル、Mがリラックスレベルです。この論文ではアーチャーを4タイプに分別しており、実績と照らし合わせて、タイプ1のシューティング中に集中レベルとリラックスレベルがともに上昇するパターンが最もよい(エリート)とされています。次いでタイプ2の集中はするが、リラックスができないタイプ、タイプ3のリラックスはするが集中できないタイプはメンタルトレーニングが必要とされています。タイプ4はグラブに情報がないものの、論文中ではただの初心者とされ、特に問題があるわけではない練習が足りないだけという意味です。
*より詳細は全文を
Evaluation of Attention and Relaxation Levels of Archers in Shooting Process using Brain Wave Signal Analysis Algorithms
自分の脳波を測定するのは初めてなので、自分がどのタイプか含め、今後分析してみたいと思います。脳波計は1万円ちょっと(+スマホが必要)なので、興味ある方は試してみてはいかがでしょうか。ただ、現状国内にはあまり情報がないので、情報は英語で入手する必要があります。