“専門家”にだまされないために 栄養・栄養学について考える 2

栄養学についての記事の続きです。先日、根拠のないコピペ記事ばかりを書いていたDeNAのサイトが問題となり、謝罪会見にが行われました。アーチェリーについて書かれたサイトでもでたらめ情報を発信しているところがありますが、いろいろと検討した結果、否定する記事を書いて拡散させるよりは、放置するのがベストだと判断しています。

DeNA、「3時間謝罪」でも解明しない詳細経緯 ‐ キュレーション事業の現場責任者は欠席
http://toyokeizai.net/articles/-/148657

“弱者”のための栄養・栄養学について考える

さて、DeNAではでたらめな記事が問題となりました。当然ですが、嘘を書いてはいけません。しかし、ミスリードを誘う、読んだ人に誤解をさせる情報はグレーゾーンとなっています。この部分が栄養学においては、かなり大変なことになっています。アーチェリーをしない人はいますし、ネットを見ない人もいると思いますが、食事を取らないという人はまずいないでしょう。食に関する市場は莫大なものであり、その莫大な利益を目的として、グレー情報が多く出回っているのが現状です。

栄養について計算するうえで”根拠”となっているが食品成分表というものです。このデータ自体は文部科学省が無料でPDFとして公表していますが、よく使うのであれば、1000円程度で売っている製本されたものが便利だと思います。ここのデータが栄養の”根拠”となっていて、ここを疑い出したらきりがないので、これは正しいものとして使っていきます。

日本食品標準成分表2015年版(七訂)について
http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365295.htm

この記事は管理栄養士という立派な国家資格を持った専門家が監修した”ひじき”を称えた記事です。いわく、

「食物繊維が豊富」
「鉄分が豊富」
「カルシウムが牛乳の10倍以上」

だそうです。

(食品成分データベースより)
では、実際はどうなのか見てみましょう。これは食品成分表の「ひじき」の項目です。比較のために牛乳を追加しました。数値を見てみればわかると思いますが、食品栄養士の方は確かに”根拠”に基づいてこの記事を書いています。文部科学省のお墨付きです。しかし、それは”乾燥ひじき”の情報なのです。

ひじきを食べたことがある人は多い思いますが、乾燥ひじきを食べる人は…いますか?

シイタケなどと同じように乾燥したものは、水に戻してゆでて食べるのが一般的だと思っています。では、一般的な茹でられたひじきはどうでしょうか。鉄分は58.2mgから2.7mgと約95%まで減り、カルシウムは1/10に。牛乳とほぼ同じ値に…とはいっても牛乳をコップ一杯(約200ml)飲む人は多くても、ひじきを200g食う人は少ないでょう。食物繊維も51.8mgから3.7mgと約93%減です。

*豚レバー(生)の鉄分は13mg いわのり(素干し)の食物繊維は41.7mg(乾燥した状態の数値ですが、ひじきと違いのりは乾燥した状態で食べる人はいるでしょう)

別にこの管理栄養士の方だけ攻撃したいわけではありません。ひじきには鉄分が豊富というグレーな情報を広めているサイトは無数にあります。そして、このように栄養に関する情報では、専門家は間違ったことは書きませんが、データをうまく操作して、読者に誤解をさせるようにしているのです。

おまけに上記のサイトではこんなことまで書かれています(これが書かれていることが今回私がこの記事が悪質と判断した理由です)。

乾燥ひじきを水で戻した後に下茹でをすると半分以上も無機ヒ素の量が減ることがわかっています。50kgの人が仮にひじきの煮物を食べた場合、週に3回以上ひじきを食べ続けなければ摂取量の基準値を超えることはないので、それほど深刻になる必要はありません。

ひじきとヒ素との関連について書かれた部分ですが、栄養素の値は乾燥状態のものを意図的に使用しながら、実際の運用(調理)では茹でられることを前提に安全だと言っているのです。また、記事中にも乾燥した状態での値であることは明示されておらず、間違っているとは言わないものの、これは果たして正しい情報なのでしょうか。

これが栄養学の現状なのです。これは管理栄養士という資格を持つ人が、栄養学が正しく扱われる現場(*)だけではなく、フリーで国家資格を権威にお金をもらってグレーな情報を生産してい人がおり、そして、責任を取る必要がない状態であるのが原因でしょう。

*病院食など本当に正しく栄養価を計算しないと大変なことになり”責任を負って”栄養学を運用している方々

当然このサイトには、

-閲覧や情報収集は利用者ご自身の責任において行っていただくものとし、当社はいかなる責任も負いません。

という文書が添えられています。なぜ、責任を負わずに情報提供するのでしょうか(*)。

続く。

*その不便性は分かります。お客様から、改造・非推奨のセッティングについて可能かという問い合わせがあったりしますが、個人的には問題ないと思っていても、問題になった時に責任を取れないので、無理ですと答えなければいけないときがあります。しかし、それで良いと個人的には思っています。


参考

体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか」畑中 三応子 著