競技用ベインのスピードと修正力の比較

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写真は現在競技用として最も普及している4つの羽です。左から1.75インチ(45mm)のゴム羽、2.5インチのガスプロ・ターゲット、2インチのガスプロ・スピン、スピンウィングです。
先日、屋外のテストの時に、これらの完成矢でシューティングマシンによる実射テストを行い、性能の比較を行いました。
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結果報告の前に、まず理想的な羽とは何かについて書きます。羽の役割は矢を安定させ、ミスによるブレに対する修力を矢に与えることです。そのために、良い羽とは矢速の速い羽根ではないことには十分に注意してください。リムの性能比較において、矢速が速い方が優れているのはそれがエネルギーの変換効率が高いことを示しているからです。矢において、羽は矢速からエネルギーを得ることで矢を安定させ、修正力を与えます。そのために、矢速が”遅い”方(減速率が高い)がミスに対する修正力が高いことになります。
今回、このテストを行うきっかけになったのは、ガスプロの修正力のテストをしたかったためです。下の結果報告に詳細がありますが、ガスプロの最大の特徴は背が低いことです。スピンウィングと比べ、24%も背が低く設計されています。このために、横風に対して強いのが最大の特徴です。では、なぜみんな背を低く設計しないのかと言えば、背が低いと矢速を修正力に変換することが困難となり、修正力が不足してしまうためです。
ガスプロは背を低く設計しながらも十分な修正力があることが最大の売りでした。実射テストなどではテスト済みですが、今回初めて矢速計で実測しました。
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その結果の報告です。サイズは羽のサイズです。高さは羽単体の高さではなく、貼って完成矢にしたときの高さを写真の方向で測定したものです。値が低いほど風に対する抵抗力が高く、風の影響を受けにくいです。初速は弓から1m時点での矢速です。終速手前1m時点での矢速です。注意していただきたいのは、矢の弾道は重力の影響を受けるため、同一の条件下でも50mを射った時の18m地点の通過速度と、18mを射った時の18m地点の終速はお粉ります。減速率は初速と終速の差です。
修正力ですが、今回は条件を整えるために同じシャフトに違う羽を貼ってテストしました。そのために、すべての矢は重さが違います。最大で1.6%も違っています。減速率から、矢の重さによる誤差を理論値を使っては除去したものが、修正力となります。
今日は時間がないので…そろそろ帰ります。続きは明日書きます。


CXがトルコでも大躍進の模様 その2

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ATAやNimesなら一日の話なのですが、時期的にビジネスミーティングがないので、メールでCX側少しずつ議論しています。メーカーの担当者の会うのは来年の1月になりそうです。今回のワールドカップトルコでは大勝利(メーカー担当いわく、Nano-Proは風の強く、今回は風の強い試合だったから)のコンパウンドに、リカーブはフランジィーリがNano-Xtremeを使用しました(リカーブ個人17位)。
ちなみに関係ないところでは、FIVICSのハンドルとリムが世界大会初のメダルを獲得しました。いろいろと、勢力が変わっていっています。
昨日のCX担当者とのメールで、いよいよ最終的なスペックが決まって、最終スペックのシャフトのサンプルを何セットか送ってくれることになりました。
1セットに限り、もし、このブログを読んでいるお客様で、リカーブで国内の全国大会で優勝経験がある方で、このシャフトに興味がある方がいればメールください。
さて、4月のブログでこのシャフトは逆バレルシャフトと書きましたが、少し訂正させていただきます。
訂正部分ですが、構造として、逆バレル設計になっているのは間違いないのですが、実際にシャフトが内側にカーブしているわけではありません。
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CX(カーボンエキスプレス)が持っている技術の中でも、ここまで世界大会で実績を残すコア技術になっているのはアメリカで特許を持っている(特許番号US7608002)、一本のシャフトに2つのスパインを乗せる技術です(Dual Spine Weight Forward technology)
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ハンティング用としては、すでに実用されていて、獲物に当たる部分を重く硬く(弓のエネルギーを伝える部分)、ノック側を軽く柔らかく(矢飛びを良くし振動を吸収する層)しています。継ぎ合わせの矢(Footed Arrow)と同じ発想を、オールカーボン矢で実現しています。今回のNano-Xtremeはその技術を使用した初めてのリカーブ用シャフトで、多層からなるカーボン繊維の層の入れ方を変えてシャフトを作ることで、ストレートシャフトでありながら、バレルシャフト同様に中央に硬く重い部分を、両側に柔らかく軽い部分を持たせています。ただし、少しノック側3~4インチがテーパーになっています。
という構造だそうです。
やはりストレートでない形にシャフトを作ると精度のコントロールが大変なようで、CXでは特許技術を使い、精度を出しやすいストレート形状のまま、X10と同様の性質を持たせています。ここが高精度の最大のポイントのようです。

バレルシャフトのイーストンのシャフトはカテゴリーわけをしたりして乗り越えていますが、ただ、今月の雑誌アーチェリーにテクミチョフさんがX10シャフトを作る大変さを書いていますが、読んで…どうも言い訳くさいのは、X10が登場して20年近くたちますが、当初(1996年)から精度の問題でシャフトを7種類にわけて販売していましたが、20年経っても、7種類のままです。特にカーボン繊維は技術の進歩が早い分野ですので、20年もたてば、精度を向上させて、少なくとも、5カテゴリーくらいの中に納まるようにできそうなものですが…どうなんでしようか。
ちなみに、同じイーストンのバレルシャフトで最新の設計(2012年)のA/C プロ・フィールドは、それなりの数売りましたが、今のところ、カテゴリー2(C2)と3(C3)しか見たことがないので、かなり製造時の精度が高いようです(経験上の話です…このシャフトのC7を見たことがある人がいればコメントください…訂正します)。
そう考えると、わざわざ雑誌で作るのが難しいんだよ~的なこと書かなくても、X10も本気で最新のカーボン素材で作れば、C1~C7までばらけないような気がします。


ランチテック 樹脂ブレード

 入荷以降、おかげさまで好調な売れ行きを見せています、ランチテックブレード。
樹脂製のこのブレードは、従来のスチール製ブレードに比べ格段に長持ちするとの評判で注目を集めています。

樹脂製のため、エッジが立っていないので、ドローイング時にアローシャフトとブレードとの接触によって「カッカッカッ・・・」と小バウンドしたり、カチャついたりしない特性があります。
また熱や寒さ水気などに対し強い性質を持っているため、「耐久性が高い」という特徴につながります。つまり、天候を選ばない、と言う事です。

その点、スチール製ブレードだと雨などで濡れたあと放置していると一発で錆びつきが起こり、折れやすくなったりして頻繁に交換を要していました。
樹脂製ですとその心配は殆どありません。
さらに金属疲労が無いので、より安定した性能を発揮してくれます。

あちぇ屋CP通販ホームページに貼られているメーカー動画では、スチールブレードとの振動吸収の様子を比較しています。
樹脂製の方が収まりが明らかに早いですね。
つまり、スチールブレードで起きる収まりの悪い振動は、矢の通過時に悪影響を与えかねないという理論に対し、樹脂ブレードは影響が出にくい、と開発者は考えたようです。

サイズ展開は、1つ穴「TT1」タイプと2穴「TT2」タイプ。
トロフィーテイカーで使用されるベストランチャブレードと同じネジ穴規格で用意がされています。(TT1⇔SS1、TT2⇔SS2)
他にスポットホッグ製レストやスペシャリティー製レストにも使用が可能となっています。
そして、厚み(硬さ)についてですが、厚みは全て0.5mmとなっています。

それぞれの実測値(手書きですが)は以下の写真をご覧ください。
まずは「TT1」

次が「TT2」

べストランチャーブレードでは、「ワイド」と「ナロー」のみで、X10シャフトやナノプロシャフトに特化した、Xナローサイズは、「バルダー」と言う形でしか、トロフィテイカーレストでは対応していませんでした。(しかもバルダーは専用レストが必要です)
*参考:トロフィーテイカーSS2プロ・バルダー
この専用レストを必要とせずとも、TT2(SS2)規格でエクストラナローのサイズがラインナップされました。

そしてベストランチャーで展開されているような0.008、0.010、0.012と言うラインナップはありません。
ナローとXナローについては完成矢1本当たりの重さ約430グレインぐらいまでをワンサイズでまかなう、という判断だそうです。
ワイドは、「23サイズ(23/64インチ)、ファットボーイサイズでお使いください」としています。また、このワイドを使用する際は、レストの接触部からアローのオーバーハングが5インチ以内でポイントグレインは200グレイン以内にしてください、と説明しています。

ちなみにメーカーホームページには「数種類の厚みのブレードを試作テストしたが、それぞれに優位差が認められなかった」と言う声明を発表をしています。
結果、厚みは1種類(0.5mm)のみと言う事になったみたいです。
また色については赤のみですが、これについては「他の色を使って作ると満足の行く性能を発揮しなかった」との事でした。(「赤はコーポレートカラーだしね」とも言っています)

取り付けに関して注意があります。
それは取り付けネジを締めすぎない事です。
ネジ穴が最悪の場合割れます。あるいは欠けます。
そこだけ注意して取り付けてください。

ランチテックブレードは店舗およびあちぇ屋CPで発売中です。


木とカーボンで木の矢を作ってみた

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夏休みの工作レベルですが、ちょっと経験に木の矢を作ってみた。
まずはシャフト。現在では競技用に木の矢が使われることはないのですが、競技用には2種類の矢を継ぎ合せた矢が使われています。先端部に硬い木を使い、矢全体の重さとFOCを稼ぐために、先端以外には柔らかい軽い木を使います。素材がウッドだと安そうに思われますが、競技用の継ぎ合せの矢(footed arrow)はすべて手で作られるため、1ダースで2万円以上、ACE並みの値段になります。現在メーカーとして作っているところはほぼないと思います。
今回は一般的な1種類の木でできている一般用の矢にしました。素材のシダーウッド(杉)です。耐久性がある素材です。一本の木から複数の硬さのシャフトが取れます。それをスパインテスターでチェックしてスパインごとに分類します。直径は7.9mm(5/16)でイーストンだと600番相当の硬さです。
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600番の木をはじめて触りましたが、カッターナイフで簡単に加工できました。本当はよくないのですが、アルミカーボン用の通常のブレードで切ってみました(実際はギザギザタイプのブレードを使うべきです)。チューブ用の普通のアローカッターでは中心まで切るができず…結局カッターで切り目を付けて手で折りました。
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カットした後は、カッターでシャフトテーパーさせて…電動鉛筆削りでもいけそうな気がしますが…その上にかぶせるタイプのポイントを接着します。
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まだ、外ではうってませんが、社内でテストした感じでは普通に試合で使えそうです。ただ、的に刺さっても、シャフトの振動が収まらないです。当たっても、1~2秒程度はお尻を振っている感じで刺さります。
しかし、問題点はやはりすべて手作りなので、安く作ることが難しいということです。そこで、近年は多くのシャフトメーカーが低価格の木っぽいシャフトを販売しています。今回、それも作ってみましたが…報告するまでもないほど、普通の矢と同じです。。。。
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今回はイーストンの子会社・ビーマンのセンターショットという矢を仕入れてみました。
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木目調ですが、中身はオールカーボンシャフトです。
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ここにインサイトを入れて、さらにスクリューポイントを装着します…まぁ、ACEなんかと作り方は同じです。違いは木目のペイントを焦がさない様に注意が必要なことくらいでしょうか。
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うってみた感じ…予想通り、性能は一般的なカーボン矢です。よく知っている感じの矢です。
弓具の評価で高性能のハイテクのものばかり触っていたせいか、逆に素材や弓具の性能を”極限まで引き出さない”セッティングに興味が出てきました。
19世紀の文献にも当てるだけがアーチェリーでないというような表現が出てきます。素材を楽しむ、矢飛びを楽しむアーチェリーもありかもしれないですね。
今回のテストで余った素材は近いうちに特価品としてアップするので、興味がある方は是非!


ヒックマン博士とホイット氏の手紙

明日、FIVICSのブラスタブが入荷します。歴史ばかり調べていないで仕事のきちんとしているのでご安心ください。1日3時間ほどまでに制限しています。

1978年にホイット氏はHOYTアーチェリーの経営権を販売しているので、現在のHOYTアーチェリーとは違うものの、そのホイット氏は20世紀を代表するアーチェリー業界のイノベータでした。
そのホイット氏はヒックマン博士の研究した理論をもとに弓の開発をしていたのですが、史料として、その裏付けとなる手紙を見つけました。
本日はこのネタです。
まずは手紙の中身です。書いたのはHOYTアーチェリーのホイット氏(48歳)で、あて先はヒックマン博士(70歳)です。書かれたのは1959年1月29日です。訳はできるだけ英文に忠実にしています。

あなたは我々がここで得た結果について興味を持つだろう。使用した42~45ポンドブラケットの弓は(28″のドローレングスで)、#1816イーストンシャフトで190から200fps、1オンスの矢では170~179fpsの速度を計測した。だがこれはまだ序の口だ。我々はシングルとコンパウンドの異なる種類のコアテーパー、さらには様々な仕様の弓を使って実験している。また、現在の実験結果を見る限り、リムの稼働域が19 1/2~20″がリムの効率性を最も高める長さだと指し示しているようだ…あなたのスパーククロノグラフは、私がいままで一番興味を持っていたことに対して多いに満足できる結果をもたらしてくれた。精確なデータを得るということは、本当にゾクゾクするものであり、また私たちにとってそれぞれの弓のデザインの利点を評価する上で計り知れないほど重要な判断材料となる。この時代にヒックマンスパーククロノグラフを手に入れることができたことを、言葉では言い表せないほど嬉しく思っている。今までに私がしてきた投資の中で、これは最高のものだ。

文通仲間ということは知っていましたが、文面を見る限り、想像以上に情報を共有していたようです。
この手紙の背景について書きます。ヒックマンはアーチェリーの研究に、ピアノ会社が鍵盤の打鍵スピードを計測するために購入したアバディーンクロノグラフ(Aberdeen Chronograph)を使用していた。今でいう矢速を測定する機械です。しかし、ポータブルで直流電源で稼働可能な矢速計がほしくなり、自分で作った。
海軍の主任研究員であるジョン P.クレーベンに宛てた手紙で(…なぜ海軍かは不明…アバディーンクロノグラフを開発したのは陸軍)、

私はこの国においてアーチェリー関連の書物を最も多く所有している。だが不運にも、これらの資料は矢の弾道についてあまり多くの情報を提供してはくれない。1928年に私が計測をおこなうまで、誰もストップウォッチ以外の計測器以外で矢の速度を測ろうともしなかったのだ。そこで私はクロノグラフを使って、重さの異なる矢とデザインの異なる弓のそれぞれの組み合わせがもたらす矢の速度と加速度を計測することにしたのである。

と書いていて、自分で開発した矢速計(スパーククロノグラフ)で多くのデータを採取して、多くの記事を書いた。また、戦時中はこれを改良して、リボンフレームカメラ(ハイスピードカメラ)を開発し、クロノグラフでロケットの飛行中の速度を計測し、撮影する仕事をしていた。

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写真がその矢速計。
その後、ホイット氏はこのアーチェリーのために作られた世界初の矢速計を、1958年にヒックマン博士自身から300ドルで買い取り、自社での実験に利用し、そして、この手紙につながるのです。

ヒックマンに関するもう一つの話。現在では一般的にリムに使用されているグラスファイバーですが、これがアーチェリーで使われるきっかりになったのは…日本です!!(と韓国)
というのは話の盛りすぎですが、関連はあります。
リムは本来、木で作られていましたが、この木に違う木をはり合わせて、反発力を高めようとする弓が19世紀登場します。(トルコ弓などでははるか以前から採用されています、あくまでもアーチェリーの世界の話)
違う素材をコアにはり合わせて反発力を向上させる作業をバッキングと言いますが、1930年代にヒックマン博士は、その素材に繊維を使うことを提案します。その素材とは「シルク」でした。今風でいうと、シルクファイバーリムです。
しかし、第二次世界大戦によって、シルクの輸出国だった日本から素材が手に入らなくなり、また、米軍もパラシュートを作るために、シルクを買い占めていたので、だんだんとシルクが入手できなくなります。そこでヒックマンはバッキングに新しく開発されたフォルティザン(Fortisan)繊維を使うことを提案します。これは商標で、現在ではポリノジックレーヨンと呼ばれている繊維だそうです。
アーチェリー業界は、シルクファイバーリムから、レイヨンファイバーリムに進化します。この繊維はシルクの2~3倍の強さがあり、ヒックマン博士は1946年3月のAmerican Bowman-Reviewに、レイヨンファイバーのリムへの利用に関する記事を書きます。
が、歴史は繰り返すといいますが、その後朝鮮戦争が勃発(1950年)し、高性能レイヨンは又もや軍によってパラシュート製造用に買い占められ手に入らなくなります。その後、レイヨンのかわりとして、当時登場したのがグラスファイバーです。
ヒックマン博士はテストしたものの、具体的に記事にする前に、フレッド・ベアが1951年にグラスファイバーのリムへの応用に成功します。しかし、当時ではすでに知られている構造だったので、アメリカでは特許には出来ませんでした(1953年にカナダで特許の取得に成功)。
こうして、日本がきっかりでシルク繊維がレーヨン繊維となり、韓国がきっかりで、レーヨン繊維がグラスファイバー繊維となり、今に続くのです。


Carbon Express Nano X-Tremeの詳細

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この1週間は既存品の在庫確保で結構大変でした…。あまりブログを更新できず申し訳ございません。新商品も余りありませんでした。
来週には、コンパウンド向けの長いサイズのHMC22スタビライザーと、FIVCSのセーカータブのブラスが入荷します。。
写真は少し前のワールドカップ上海でのフランジィーリ。Facebookでつながっているのですが、このときはまだNano X-Tremeは受け取っておらず、Nano Proで戦っています。2週間前にX-Tremeを入手して現在テストしているそうです。
商品の出荷は7月を予定しているそうですが、海外のテストシューターへの配布はもう始まっています。
販売店向けとしては、詳細の価格とデータシートが配布されました。
価格は高いです。今回のシャフト最大の利点は耐久性で、メーカー営業の説明ですは、通常に使用している限り3年は同じ性能が維持されそうです。その分価格はX10よりも高くなります。少し販売するのが難しい商品となりそうです。…テストするにしても評価結果が出るのに3年かかるようでは困りますので、何かいい方法を考えないといけないかなと思います。
また、イーストンの矢は1ダース中1~2本は”はずれ”のシャフトが入っていますが、Nano X-Tremeでは、出荷時に厳密なテストを行うことで、その”はずれ”がないそうです(弊社でテストしたわけではありません…メーカーの営業がそう言っています)。
Nano proの上位モデルとして開発されたNano X-tremeですが、
Nano X-Treme 650番 6.2gpi 外径0.187インチ
Nano X-Treme 550番 7.1gpi 外径0.194インチ
Nano Pro 650番 6.4gpi 外径0.186インチ
Nano Pro 550番 7.1gpi 外径0.193インチ
X10 650番 6.8gpi 外径0.187インチ(最も細い部分)
X10 550番 7.5gpi 外径0.187インチ(最も細い部分)
X10はたる型シャフトで、ノック側はみな0.187インチで、中央部のふくらみ等でスパインを調整しています。それに対して、X-Tremeはストレートシャフトですので、スパインごとに太さが違います。
データだけから判断すると、600番境に、X-Tremeのほうが細く、かつ、軽いシャフトになります。
900番 5.19gpi(12%軽い)
800番 ///
750番 5.85gpi(9%軽い)
700番 6.0gpi(12%軽い)
これはお客様にとっては完全新しい選択肢となります。X10は「細く・重い」シャフトとです。ACEは「太く・軽い」シャフトですが、ここにNano X-Tremeという「細く・軽い」という新しい選択肢ができます。重さがあるということで、弓の効率性を向上させ、矢の失速を防ぐことができますが、低ポンドでは逆に失速してしまう危険性があります。
そのために、イーストンでは新作のX10の900/1000番はACEよりも軽く作っています(X10の発売当時830番までしかラインナップはありませんでした)。Nano X-Tremeはそれよりも細く・軽いシャフトですので、低ポンドのアーチェリーにはかなり優れた選択肢になると思われます。
では、逆に高ポンドではどうかというと、X10とほぼ同じ重さですので(厳密には1~2%軽い)、単純にシャフトの性能勝負になりそうです。
カーボンエクスプレスはイーストン以外で唯一世界中で結果を残しているメーカーで、地元アメリカ以外では、カナダ・イタリア・オーストラリアでも、国内大会で優勝しています。世界選手権とオリンピックでも、コンパウンドでも、リカーブでも金メダルを獲得しています。
イーストンに唯一対抗できるメーカーなのは間違いないですが、いろいろあって、まだ本気で販売したことはないです。現在、メーカー営業と売り方の相談をしているところです。
進展があり次第また報告させていただきます。


新しいアプローチとしての竹コアリム

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傑作とかというわけではありません。あくまでも、良いリムを作るための一つの新しいブローチです。本日、竹をコアとしたリムが入荷しました。
カーボンは使われていません。竹(バンブー)とグラスファイバーだけで作られているリムです。
竹という素材は、今でも和弓の世界では一般的です。和弓は竹と竹を焼いて作った天然のカーボン(グラファイト構造)であるヒゴを使って作られます。ちなみに、竹の勉強をする中で、和弓の弓師の方が書いた面白い本を見つけたので、取り扱いすることにしました。探してみてください。
話を戻しますが、昔の日本では洋弓の世界でも竹の弓が使われていたようですが、雑誌アーチェリーの昔の記事を読むと、いい印象を持っている方は少ないようで、引きにくいという意見を持つ方が多いです。
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Mechanical properties of bambooより引用
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自分は昔の竹弓は引いたことがないですが、今はアメリカのロングボウの世界では竹の弓は活躍し、優秀な素材として上位モデルに使用されています。なんといっても、その特性は軽いこと。木と違って中が空洞になっているためです(リムの写真の切れ端からファイバーが見えるかと思います)。アメリカでは、フライト競技で(矢が飛ぶ距離を競う)一般的に使われています。マーチン社のバイパーという竹コアの弓は7万円以上もする弓です。
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(弓具の見方と扱い方 浦上栄著 P.81より)
昔の洋弓での竹弓がどういう構造か、資料を見つけることができませんでしたが、アメリカでの活躍から考えて、引き味が悪いのは、素材の問題ではなく、設計の問題だったのではないかと思います。上の図は和弓のFx曲線を測定したものですが、ほぼ直線で、アーチェリーの世界でよいとされているふくらみのあるものとは大きく違うことが分かるかと思います。
本来竹を弓に使うという文化はアメリカにはありませんでしたが、おそらく、日本、もしくはアジアから輸入された練習用の弓から伝わって、一般的になったのかもしれません。その技術をリカーブ用のリムに利用し、開発されたのが竹コアを使用したこのリムです。
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価格も、グラスファイバーしか使っていないことからも、決してこのリムは上位モデルとして作られたわけではありませんが、自然の中空素材をコアに使用することで、”良い”リムを作るための一つの新しいアプローチとしては、大変興味深いモデルなのではないかと思っています。
一番の特徴はやはり引きが大変柔らかい事です。非常に柔らかくスムーズです。ただし、写真の通りリムはかなりの厚みがあり、M34ポンドで、INNO EX POWERのM44ポンドよりも厚いです。重さはカーボン550より少し軽い程度で、M34で200グラムになっています。カーボンも使われていませんので、けっしてスピードが出るリムではありませんが、その引き心地は大変良いです。
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(左がバンブーファイバー、右がINNO EX POWER)
リムの設計はクラシックです。高速でシャープなINNO EX POWERに比べて、かなり緩やかなデザインです(なのでスピードは出ません)。
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チップは小さく作られています。

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COREアーチェリーは中国のメーカーで、いくつかの種類のリム・ハンドルを製造しています。記憶によれば、このブランドで営業を開始して、3年くらいです。
現在世界中で竹コアを使ってリカーブ競技用のリムを作っているのはこの会社と、アメリカのSKYアーチェリーだけです。SKYアーチェリーだけです(たぶん)。SKYのモデルは販売するとしたら6万円を超えるものですので、手軽に試していただけるものではありません。
そのために今回このモデルを仕入れました。好評であれば、SKYの竹をコアに使用した上位モデルの取り扱いも検討する予定です。また、低価格のリムですが、取り扱いしたことのない素材ですので、長期保証が付きます。60年代の竹の弓を引いたことはあっても、現在の技術で加工された竹の弓を引いたことがある人は少ないと思います。本当にスムーズなリムです。高速リムではないことを理解の上で、試していただければと思います。この新しいメーカーさんにも期待しています。


HOYTの創業者 Earl Hoyt Jr. インタビュー

以前に、WIN&WINの社長のパクさんのインタビューをブログに掲載したことがあります。2年近くたちますが、今に続くことがいろいろと書かれていると思います。
ネット上には正しい情報もあれば、正しくない情報がありますが、HOYTの創業者に関して言うと、検索するといくつか記事がありますが、どれも彼が書いた文書やインタビューを読んだ自分の印象とは全く違います。HOYTの創業者の考えに関しては、本人の著書やインタビューなど、資料が豊富にありますので、今回は4冊の本から、抜き出し、一つの記事にまとめてました。


下記はHOYTの創設者のホイット氏(Earl Hoyt Jr.)のいくつかのインタビューをつなぎ合わせて、編集したものです。ベースになった記事は、下記の4冊の本で読むことができます。
・Archery (1972) 著者 Earl Hoyt, Don Ward
・Traditional Bowyers Encyclopedia (2007) 著者 Dan Bertalan
・Vintage Bows – 1 (2011) 著者 Rick Rappe
・Legends of the longbow (1992) 著者 多数

赤字は実際のインタビューを翻訳したもの。黒字は自分の補足です。補足も論点はずれていないと思いますが、実際のホイット氏の発言は赤字だけですのでご注意ください。



Eddie Lakeから変身

1930年代のミズーリ州セントルイス…エディ・レイク(Eddie Lake)というギターリストが毎晩地元のダンスホールを盛り上げていた。彼のバンドはラジオでも有名になったが、1938年に彼のバンドは解散することになる。このエディ・レイクこそがのちのアーチェリー界に、ホイットとして記憶される偉大なイノベータである。

* Eddie Lake はホイットがラジオ局からギターリストとして響きがよくないと指摘されて使用していた芸名。

弓との出会いとアーチェリービジネス
ホイットが弓と出会った時、弓には2種類しかなかった。リカーブか、コンパウンドかではなく、「誰かが作った弓」か「自分で作った弓」かだ。ホイットのアーチェリーとの出会いは、アローポイントに始まる。学校が友人から滑らかなアローポイントを貰い、その美しい流線型のデザインに夢中になった。1925年、14歳の時にボーイスカウトのマニュアルを読んで、ヒッコリーの弓を自作した。しかし、ヒッコリーはねじれに弱く、2つ作った弓をどれもすぐにねじれてしまった。

そこで、ボーイスカウトではなく、アーチェリーの専門誌を購入して、専門の知識を仕入れることにした。「Ye Sylvan Archer」という雑誌は当時唯一のアーチェリー雑誌だった。それを購読し、そこに広告が出ていたHunting with the Bow and Arrow(1923)という購入し、そこから専門知識を学びとり、オレゴンからイチイの一枚板を購入して、初めての実用的な弓を作り始める。

*これは所謂セルフボウというもので、一枚板からできている。そのほかにバックドボウやコンポジットボウなどがある。

1931年、大恐慌の中、ホイットは父親と副業で矢づくりの仕事を始める。30代の時、景気が回復したのを受け、セントルイスのワシントン大学に通い、エンジニアリングを学ぶ。昼は大学と父親の会社の手伝い、夜はギターリストという生活を送る。

*アメリカでは社会人学生は珍しくない。

40代初頭がホイットの人生の転機だった。大学を卒業したホイットはカーティス・ライト航空のエンジニア部門(のちのマクドネル航空)に職を得ていた。しかし、父親の会社が戦争の影響で倒産したことにより、父親は矢づくりが副業から本業となる。自分も週60時間の本業をこなした後に、父親の矢づくりを手伝うようになる。
しかし、1946年に矢作り職人として多くの顧客を持っていた父親が病に倒れ、ホイットはアーチェリービジネスから手を引くか、エンジニアとしての職を辞すかの選択をすることを迫られ、彼の決断がアーチェリーの歴史を変えることとなる。

「アーチェリービジネスに舵を切ったことは、最初のうちは間違った決断だと思っていたんだ。マクドネル航空での良い仕事を離れてから最初の3、4年、アーチェリーの仕事の出来はひどかった。でも4年目から風向きが変わったんだ。それからは右肩上がりさ。その傾向はずっと続いていた。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.183)

ホイットは1946~1978年までアーチェリー業界のトップを走り続けた。1978年、ホイットは会社の経営権をCML Groupに売却し、5年後の1983年に経営権はイーストンに、さらに売却された。その間、ホイットは社長から退いたものの、副社長と研究部門の責任者、コンサルタントとして、かつて、オーナーだった会社に籍を置いた。
ホイッとはアーチェリー業界団体(AMO 現ATA)の理事としても、活躍し、現在のアーチェリーの道具に関する基準(AMOスタンダード)の95%以上に関与している。

ハンターとして
ホイットはハンターでもあったが、あまり、情熱的とは言えなかった。

「あるときフレッド・ベアーと話したけど、彼は僕に言ったんだ。彼のハンティングに対する情熱は、対象が何であれ、大きな獲物を仕留めることだってね。僕は逆にそんな欲望は持ったこともなかったね。…中略…いまでは獲物を仕留めることはまったく重要ではなくなってしまった。一番大切なのはハンティングのその場にいるということなんだ。…中略…単純に僕は大自然の中で獲物を追い回すことそのものを楽しんでいるんだよ。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.185-186)

*フレッド・ベアーは当時のトップメーカーBear Archeryのオーナーで、伝説的なハンター。

ロングボウの思い出
今でこそ、リカーブボウメーカーとして知られるホイットだが、彼はロングボウを作ることから始めた。ロングボウを作るとき、特にひいきしていたのは、オーセージだった。

「僕はオーセージをちょっとひいきして使っていた。すごく丈夫な木だからね。ハンティングボウには特にそうだったよ。イチイの方がより引き味が優しいシューティングボウになり、ターゲットシューティングには最適だった。でも僕がオーセージを好んで使っていたのは、それがミズーリ原産であり、丈夫で良いハンティングボウを作るのに向いていたからさ。
あとは手に入れやすかったということもある。でも、外に出てオーセージを見つけてそれを切り倒し、そこから弓を作るという単純な話でもない。山を1マイルほど下っていっても、弓を作るのに十分な均一性とまっすぐさを持っている木を見つけることは簡単ではない。何故ならオーセージは大抵曲がりくねって育ち、一枚板から作ることはほぼ不可能だ。普通は木をフィッシュテールして接ぎ合わせる。そうすれば同じ丸太から接ぎ木を取ることができるから、同じ性質を持ったウッドを両方のリムに使うことができる。」

(Traditional Bowyers Encyclopedia P.186)

現在の弓からは異様に見えるが、当時はレストがなく、シューターのこぶしに矢を載せてシューティングしていた。そのために、羽のトリミングをしっかりしないと、射ったときに、羽の筋が拳の肉をえぐって飛んでいく、しかし、アローレストとしての機能を果たしてきた、傷だらけの拳は、むしろ、ホイットには誇らしいものだったようだ。

ホイットの執務室のオーセージのロングボウの横には、古いスタティクリカーブボウがある。

*リカーブの深さにより、セミリカーブ・スタティックリカーブ・フルワーキングリカーブの3種類に分類される。

「僕はカムやスタティックリカーブから、シューティングが滑らかでより効率的なリカーブに移っていった。歴史的に見るとこの進化は比較的最近できたものだ。最初のリカーブは30年代後半に登場した。そのタイプのリカーブを最初に作ったのはビル・フォルバース(Bill Folberth)だった。彼は情熱的なアーチャーであり、イノベータであり、初めてリカーブを導入した人物だった。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.188)

*Folberth Bowのオーナーで、弓のラミネートやリカーブに関する特許を持つ(US2423765)。

執務室にはほかにもいくつもの思い出深い弓がある。1947年、ホイットは初めてリムのダイナミックリムバランスを得ることに成功した。つまりは、上下のリムの長さを初めて同じにした弓を作った。昔の弓のグリップはただの棒のようなものだったが、1948年にはピストルグリップを弓に搭載した。1951年には安定性を向上させたデフレックスボウと、パフォーマンス重視のリフレックスボウの製造を開始。60代の時には、ハンドルに安定性を持たせるために、ハンドルの重さを増やすこと仕組みを開発。ウッドハンドルに穴をあけて、その中に鉛を入れるというものだ。

「あるとき僕は弓にウェイトを入れるという発想がミスだということに気がついたんだ。より伸ばした状態のウェイトがあればもっと良くなると考えた。スタビライジングの原理を説明するために僕が挙げた例は、箒を柄の端で持って、その移動への抵抗の感覚を掴むということだった。そうするととても速く動かすことはできない。でも柄の真ん中で持つと、さっきと比べて驚くほど動きへの抵抗はなくなる。これが単純な物理の法則を用いたスタビライザーの原理の説明だ。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.188)

1961年、ホイットはこの原理を利用したスタビライザーが搭載された弓を持って、アルカンザスのホットスプリングスでおこなわれたナショナルフィールドアーチェリーアソシエーションチャンピオンシップに行った。会場では「ドアノブ」と馬鹿にされたものの、この弓を使用したロン・スタントンが、新しい弓で新記録を樹立し、その仕組みは一気に有名となった。

グラスからフォームへの挑戦
1970年代前半、エキゾチック・ハードウッドの値段が高騰し、低価格の金属ハンドルが人気となった。ホイットは、エキゾチック・ハードウッドから、メイプルに変更するものの、結局は1973年にすべてのラインナップが金属ハンドルになる。

リムでは、まずグラスファイバーを研究した。グラスファイバーをリムに使用することに関して、ホイットは決してトップランナーではなかったが、熱心に研究した。特に注目したのはグラスの色。もっとも性能が悪いのはグレーのグラスファイバー。グレーの顔料が接着材に影響し、接着が不完全になってしまう。白もダメだった。白のグラスファイバーを作るのには大量の顔料が必要で不純物が増えてしまう。日光の影響を抑えるためには、リムは黒にしないという大原則があったが、黒のグラスファイバーは一番性能がとてもよかった。もちろん、透明のファイバーもよいが、黒とは大差がない。

ホイットの次の挑戦はフォーム素材だ。

「初めてファイバーグラスを使い始めたとき、ウッドコアボウと呼ばれているもののコアがイチイだろうとオーセージだろうとなんら代わりはないと思った。だってそれ自体がより性能の高いモジュラー素材に挟まれてしまっているからね。この素材、ファイバーグラスは非常に素晴らしい素材で、矢を推進させるエネルギーに長けていた。そのために、ウッドコア基礎(glue base)とスペーサーにすぎなくなってしまった。コアの重さ以外は、もはや弓のダイナミックな物理特性に影響を与えることはない。

コア材にブレークスルーができた。それは比重がメイプルよりも軽いプラスチックで、直径60マイクロンほどの微少中空体からできている。この素材は非常に高い耐久性能がある。必要な物理的特性をすべて持ち合わせ、湿度の影響を全く受けず、熱や寒さにも強い。僕たちの新たな特許技術のシンタックスフォームコアはすべての面でよくなっている。これが長年に渡る「コアウッド」のスタンドダードとなる可能性は高いと思っている。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.189)

*シンタクチックフォームのこと。微細中空ガラス球入りエポキシ樹脂。

しかし、フォームコアの製造はとても困難だった。まずは、フォームの内側には気泡が含まれているが、この大きさを均一にすることができなかった。試作品はすいすいチーズのように気泡は大きさがバラバラで、とても均一ではなかった。また、完成したフォームの加工も困難だった。マイクロスフェア構造という特性のために、ブロックからラミネートするために切り出すとき、グラスファイバーの何倍もの負荷が機械にかかり、刃がすぐにボロボロになってしまうのだ。いくつかの困難を乗り越えたホイットのシンタクチックフォームコアリムは、いくつもの世界記録を塗り替えることになる。

スピードよりも安定性
リムの性能には多くの面がある。ホイットが最も重視していたのはリムの安定性だ。スピードよりも、リムが安定して正確に、ミスに対する許容性が大きい事を重視して設計していた。安定性・スピードのほかにも、スムーズさや、効率性、振動の少なさなども必要だが、すべてを一つのリムに盛り込んだ究極のリムはまだ存在していない。すべてのメーカーは、優先順位をつけて、妥協しながらリムを設計している。

「メーカーによってそれぞれが異なる特定の能力に力を入れているのが分かる。多くは精確性を犠牲にして、スピードに傾倒している。しかし、高いパフォーマンスから発生するストレスによって、弓の寿命は縮んでしまう。どの能力に力をいれるか、重要度はそれぞれ異なる。僕の場合、最も優れた弓とはこれらすべての要素のバランスが良く取れている弓で、かつ安定性に重きを置いているものだ。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.191)

コンパウンドとクロスボウ
矢作り職人としてアーチェリー業界でのキャリアをスタートさせ、ロングボウの製造からリカーブボウの製造に移行したのち、ホイットはコンパウンドボウの製造をスタートする。アーチェリーのマーケットは大きく変化し、アメリカ最大のマーケットであるハンティングボウはロングボウ/リカーブボウからコンパウンドボウにかわっていく。1970年代にその変化についていけなかったアーチェリーメーカーの多くは破たんした。シェークスペアのアーチェリー部門やウィング・アーチェリー(世界初のテイクダウンボウを開発したメーカー)などだ。

「僕は昔コンパウンドに対して偏見のようなものがあった。昔の古い会社はみんなそうだった。ベアやピアソン、他の先人たちもみんなコンパウンドに背を向けていた。彼らはみな、それを弓とは思わなかったんだ。僕らは偏見にまみれ、視野が狭かった。」

「僕にとってクロスボウは、(ロングボウと)歴史的には対等でも、ロングボウほどのロマンスが感じられない。この主張は議論する余地があることは分かっている。でも僕は、クロスボウが人気のあるものになるとは考えていない。その鍛錬には、手で握って、手で引いて、手でリリースする弓ほどの挑戦が必要ないように思える。当然、クロスボウに情熱を注いでいる熱狂的な人たちがいて、彼らが自分のやっているスポーツを促進しようとしていることも理解できる。それは僕にとっては関係のないことだけど、彼らの成功を祈っているよ。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.198)

ホイットはコンパウンドボウを開発し、販売する決断をする。一方で、クロスボウとは距離をとり続けた。今でも、ホイット社はクロスボウの製造はしていない。
ホイットのインタヒューを読むと、やはり、現在のアーチェリーメーカーの開発者とは明らかに違う。最高の競技用リカーブボウを開発していたものの、用語の使い方(self bow – backing – working recurve)や考えは、ロングボウの開発者そのものだ。

ホイット社を78年に売却した後も在籍していたが、のちに、ロングボウ職人のJim Belcherとともにロングボウ中心のアーチェリーメーカー(Sky Archery … ホイットの死後マシューズに売却)を立ち上げたことからも、やはりロングボウを作りたい気持ちは強くあったのではないかと思う。


明日から仕事に戻ります。

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3日間山篭りした結果…先ほど「アーチェリーの理論と実践(1887)」の翻訳が終わりました。ホームページにはすべてアップしました。この本は50年ほど前に著作権が切れていて、欧米では現在でもいろいろな出版社から出版されている名著です。日本語訳を印刷する予定はありませんが、PDFでも配布予定です…家のパソコンにはPDFにするソフトがないので、会社に戻り次第やります。
プロショップとして六年目。自分を振り返って、アーチェリーの歴史を復習するためのやりましたが、多くの新発見もあり、非常に勉強になりました。
まず、著者のフォード氏はしっかりと記録が残っている19世紀以降でもっとも偉大なアーチャーの一人で、その記録(現在のタブルFITAラウンドに相当する記録)は70年間破られませんでした。彼の道具に関する意見は、1930年代にアメリカのヒックマン博士によって、覆されてしまいましたが、彼の射形はそのまま現代のアーチェリーのベースになっていて、170年近くたった今でも、違う所を探すほうが難しいです。
詳しく・詳細に知りたい方は本を読んでいただくとして、あまり知られていないアーチェリーの歴史ネタをいくついくつかピックアップしてみます。
・王様アーチェリーに負けて、めっちゃ金取られる
次の要約は1531年、当時41歳で点数も最も優れていた時期の彼(ヘンリー8世)の私用の金庫の帳簿の内容である。矢1本につき1ギニーを賭けていたが、晩年のダドリー卿が60ヤードの距離で放った素晴らしいショットの数々は、まさしく分が悪い勝負だったに違いない。
「3月20日 トットヒルにて王がジョージ・コトンに7本差で負ける、6シリング8ペンス対45シリング8ペンス。」
「3月29日 トットヒルにて王がジョージ・ギフォードに負ける、12シリング6ペンス。」
「5月13日 4月最後のラウンドでジョージ・コトンが王に勝つ。3ポンド。」
「6月3日 ジョージ・コトンが王に賭けで勝つ。7ポンド2シリング。」
そして6月の最後の日にも「グリーンウィッチパークでコトン家の3人に王が負ける。20ポンド。その内の勝者には6シリングと8ペンス与える。」

・アーチェリー普及しすぎて衰退

アーチェリー大好きな王様は国民全員アーチェリーせよという法律を作り、アーチェリーは普及したが、スポーツ的な精神が廃れ、ギャンブルとして行われるようになり、スポーツアーチェリーは逆に衰退…。
ヘンリー8世が作った議会法(Acts of Parliament of England)とは
An Act concerning shooting in Long Bows. (3 Hen.8 C3 1511)
-すべての40歳以下の男性は弓と矢を持ち、シューティングをするように
・アーチャーみな坊主
きれいなルージング(リリース)を実行するためには、自分の頭の部位をすべてきれいにしておく必要がある。そして同じ理由から、ローマ皇帝レオも戦争に行くすべてのアーチャーの頭とヒゲを剃り、髪の毛がエイミングの邪魔をせず、またヒゲがストリングの邪魔をしないようにしていたのである。
・何のために…アクティブ・リリース
もう一つのリリースであるアクティブ・リリースと呼ばれるものは、デッド・リリースの進化形とも言えるものである。リリースの瞬間に指が全く動かないデッド・リリースとは異なり、一度は指が開くがストリングが離れた後、その前のポジション、つまりまっすぐ伸びる代わりに元の丸まったポジションに戻るのである。
…どんな利点があるのか、今となっては不明。
・サイトとピープサイトの原型に関する記述
(サイト)
常にリリースの手をコートの襟のボタンに当てていた晩年の聡明なるジェームズ・スペッディン氏は、「エイミングするポイント」を明確にするために弓に「サイト」を取り付けていた。これはまるで銃の銃口につける明るい鉄のビーズであった。小さな鉄のロッドの先端にこのビーズを取り付け(実際は明るいヘッドを持ったピンだった)、弓のバック面に追加した溝にこれを差す(上下させることもできる)ことで、彼の自然な(あるいはそうであるべき)「エイミングするポイント」が下であっても、それをターゲットの中心に合わせることを可能とした。ただしこの装置では、弓の僅かな曲面でもエイミングに支障が出てしまっていた。
(ピープサイト)
アメリカ生まれの装置で、ピープサイトという小さなアパーチャー(口径)の付いた小さな装置があった。これはボウストリング上で上下に動かすことができ、正しく設定すれば、エイミングする目によって丁度その真ん中にターゲットの中心を見ることができた。この装置は非常に弱い弓以外では役立たずだというように言われており、例え小さな震えでもエイミングに影響し、狙うことができなくなってしまう。
・砲丸投げのように…
さて、シャフトが飛んでいったあとでも、かつての悪しき習慣がアーチャーに根付かせてしまった間違いはたくさんある。特にシャフトの後を追って叫んだり、こんなにも誠実な競技であるのにも関わらず不誠実な言葉を吐いたりすることもそうだ。
– Toxophilus (1545)の引用


アンカーの発明者 ホレース・フォード

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アンカーの発明者 ホレース・フォードによって書かれた「アーチェリーの理論と実践」の翻訳を少しずつアップしていきます。5月中には全部アップできるはずです。現在第2章の編集中です。
ホレース・フォードという選手は19世紀最強の選手で、その記録は70年間破られませんでした。周りのアーチャーが700点台をうっていた中で、なんと、1251点という点数をマークし、10年間イギリスのチャンピンとして君臨します。
その革新的なところは何と言っても、アンカーを発明したことです。それまで、アーチェリーの世界にアンカーはありませんでした。イメージとしては、和弓のようなうち方をしていました。アンカーの発明に関して、アーチェリーの歴史家のロングマンは次のように書いています。


フォード氏の成功の大きな要因の一つは、長年信じ続けられてきた「アーチャーは耳まで引いてくる必要がある」という慣習の欠点を認識したことにあると考えられます。実際耳まで引いてくると、矢の一部分が目から的の真ん中までを結ぶ直線の外側に来ることは明らかです。結果として、もし矢の先端が金の先を狙っているとしても、リリース時にターゲットの左側に向かって放たれることになるので、耳まで引いてくるアーチャーがターゲットにちゃんと当てるためには、ターゲットの左側を狙う必要が出てくるはずです。そこでフォード氏は、矢はエイミングしている目の下に来て、矢線全体が目とターゲットを結んだ垂直面の直線上に来るようにしなければならないという理論を提唱しました。
…中略

戦闘を目標とした場合、最も重視される点は長く、重い矢を引くことです。1ヤード(91センチ)ほどの矢を使うとしたら、アーチャーの腕がものすごく長くない限り、目を通り越して引くことは必然になってきます。それによって、命中の精度は下がりますが、戦闘では的中の精度よりも威力が重視されていたので、フォード氏は、エイミングの精度が求められる現在のスポーツとしてのアーチェリーにおいて、そのような古い慣習はもはや必要ないと判断したのでしょう。


今から150年前に書かれた本ですが、学ぶことは多いと思います。皆さんのアーチェリー生活の参考になれば幸いです。今のところ完成しているのは、まえがきと第一章までです。
アーチェリーの理論と実践 / ホレース・フォード 著
http://archerreports.org/?p=91