ブローネルのRHINO(ライノー)はやっぱり硬かった。

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ブローネルの2013年の新作RHINO(ライノー)弦をテストしてみました。硬く伸びない弦の愛用者、そういった弦をご希望のお客様に紹介できるのかなと思い発注してみました。
開発の経緯は以前の記事に書きましたが、150ポンド~160ポンドが一般的なクロスボウ向けの原糸です。
火曜日に16本弦を手作りし、一晩弓にはった状態で伸ばしました。ハイトの変化は1/16でした。まぁ、この部分は原糸が伸びたのではなく、手作りした分がストレッチしたものと思われます。
完成した弦(164-16)の重さは重さは94gr(グレイン)でした。ちなみに、Spectraの黒ワックス(163-18)が101.4gr、8190 ユニバーサル (163-18)が 87.8gr ですので、その中間にあたる重さです。
ワックスはほぼついていません。若干感じられるワックスもペタッとする感じではなく、さらさらしたワックスになっています。16本弦と細めのセンターサービングか14本弦で、イーストンのSサイズノックにフィットします。
うった感じはやはり硬いです。さすがという感じがします。8190弦との比較でも硬いので、現在市場に出ているものの中で、最強という事前情報はほぼ正しかったと思います。柔らかさが全くなく、厚めのタブがほしいくらいの感覚ですので、すべてのお客様にお勧めできるような弦ではないと思います。
入荷した分で余った材料で何本か作れますので、硬い弦に興味がある方向けに在庫にあげました。数量限定というよりは、期間限定にしようと思います。まだ、10本くらい作る量はあるそうです。
注文はライノー弦を注文した頂いたのち、こちらのスタッフがお客様にサイズの確認をさせていただきます。色は黒だけとなりますが、サイズはご自由に指定してください。14本弦からお作りました。お勧めは14本か16本です。
ライノーの原糸がほしい方は取り寄せとなります。連絡いただければ、手配させていただきます。納期は色次第ですが、価格は4800円です。


現代アーチェリーの歴史…その一

(ちょっとしたメモ書きです)
先日、アーチェリー雑誌に弓具に関する技術的な文書を投稿したところ「その程度の研究・知識がある人間は日本に山ほどいるんですよ」と諭されました。自分がこの記事に書いていることは、常識レベルにちょっと毛が生えた程度のようです。
まだまだ、勉強が足りないことは理解していますが、それでも、ブログを読んでくれている方に、次の日の射場でネタになるような話が書ければと思います。また、ネット上に上がっているアーチェリーの情報が少しでも豊富になっていくことを願っています。
弓具に対する考え方のことで、ちょっと迷った部分があり、アーチェリーの歴史をもう一度おさらいしています。歴史といっても、弓が出現した時代の話などではなく、現代の弓具の始まりについての歴史です。英語では多くの文献があり、ネットで読めるものも多いのですが、日本語で正しく記載されているものは見つけることができませんでした。
まだ手に入っていない本が何冊かあり(アマゾンで新品が13万円の値段ついていたりして)入手しようと頑張っているのですが、これまでの理解を一度まとめてみたメモです。


進歩の始まり

まず、スポーツとしてのモダンアーチェリーはイギリスではじまりました。その様子は、当時イギリス国内で無敵の成績を誇った、Horace A. Ford(*)の著書「Archery, its theory and practice」(1859年 著者死後133年のため著作権切れ)などで知ることができます。
*11度のイギリスチャンピオン。1857年に記録したタプル・ヨークラウンド – 100ヤード(91m)で12エンド、80ヤード(73m)で8エンド、そして60ヤード(54m)で4エンド – の1271点というスコア70年間破られていません。
その後、アーチェリーはアメリカにわたります。アメリカでベストセラーになった最初のアーチェリー本は「The Witchery of Archery」(1878年 著者死後112年のため著作権切れ)というもので、こちらはターゲットではなく、ハンティングについて主に書かれた本でした。その後、著者は初代USA ARCHERYの会長に就任。これによって、アメリカではターゲットよりも、ハンティングアーチェリーのほうが大きく発展していきます。
ここまで書くと、アーチェリーの弓具はハンティングがメインのアメリカではなく、イギリスで発展するように思われますが、イギリスの弓具の職人はデザインや仕組みを研究することより、それらを与えられたものとして考え、素材の選別する能力や木材の乾燥技術を高度化させることに専念したため、イギリスでは新しい今日のような弓は生まれませんでした。
アメリカで現在の弓が生まれた最大の貢献者は、ヒックマン(Hickman)博士です。そのほかに共同研究をしていたクロップステグ(Klopsteg – サイトの発明者 – US1961517)などがおります。
彼らは最初は個別に研究し、当時のアメリカで唯一のアーチェリー雑誌(Ye Sylvan Archer)に互いに投稿し、高めあっていきました。
ヒックマン博士は当時かなりの変人扱いを受け、馬鹿なマスコミに叩かれていたゴダード博士(*)とともにロケット研究をしていた人物で、その中で得た砲内弾道学(発射してから砲身内での弾頭の振る舞い)と、砲外弾道学(砲身から出た後の弾頭の振る舞い)の知識をアーチェリーに応用して、アーチェリーの研究を進めました。
*ニューヨーク・タイムズ紙は、物質が存在しない真空中ではロケットが飛行できないことを「誰でも知っている」とし、ゴダードが「高校で習う知識を持っていないようだ」と酷評した。(ウィキペディアより引用)…怖い時代だったんですね。。
ここから、アーチェリー弓具の進歩が一気に進みます。


ハンドルとリム
20世紀初旬のアーチェリーで使用されていたロングボウと、現代の弓との大きな違いは、ハンドルのデザインとリムのデザインです。
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リムは現在のような長方形の断面ではなく、楕円のような形の断面でした。楕円形の棒を弓として、そこグリップを張り付けることでロングボウを製作していました。弓全体がリムの役割り果たしているため、リムはとても重く、逆に弓全体は軽く、シューティング後には弓全体が振動し、押し手に大きな反動があり、とても不安定な構造の弓です。さらに、物理的にも不安定な構造をしているために(後述)、弓を破損を防ぐ意味合いでも、弓を短く作ることができず、さらに、矢とびをきれいにするためには、下リムが上リムよりも2インチほど短く作られています(和弓と同じ)。
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(写真上は1850年代のロングボウでスミソニアン協会の年次レポートより、下の写真はBear Archeryの現行モデルパトリオット)
ロングボウが作られてから、30年代のアメリカで進化するまでの間に、ハンドルは少しずつ変化しています。グリップの部分はますます重く・長く・硬くなり、初期のグリップ(3~4インチ)から、今日のハンドルと呼ばれる部分(20インチ程度)に少しずつ変化していきます。これは。職人が弓の発射時の反動を減少させるための工夫でしたが、これによって、弓(bow)における握る部分(グリップ)にすぎなかったものが、ハンドル(handle)と呼ばれるようになり、さらにリム(limb)と呼ばれる部分が明確に定義できるようになります。
そして、1930年代に、ヒックマン博士がリムを進化させます。ロングボウのリムの分析・解析をした結果、物理学的に見てロングボウのデザインはあまりにも、非効率的だということが判明します。下にその理由を書きますが、難しい話なので、とにかく、丸いリムは非効率だと理解していただければ、飛ばしていただいてもよいです。
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写真(スミソニアン協会年次レポートより引用)はロングボウのリムの断面です。Bellyと呼ばれる側は、現在ではフェイスと呼ばれる側です。CDのラインはリムのデザイン時に、ニュートラル・レイヤーと呼ばれるものです。
リムがフルドローまで引かれるとき、リムのバック側は引っ張られ(引張)、フェイス側は圧縮される。そのとき、リムの中に引っ張られも、圧縮もされない中立軸(ニュートラルレイヤー)が存在します。ずれこむ力(わかりやすく言えば接着の剥がれやすさ)が最大になるポイントでもあります。
単層のウッドで弓を作ることは当時でもあまりなかったことですが、もし、リムがラミネート(多層)ではなく、単層だった場合、ウッドでは、リムのニュートラルレイヤーはリムの真ん中ではなく、かなりバック寄りになります。これは、ウッドが引っ張られる力と圧縮される力に対して、同じように反応しないためです。詳しくは、もうお手上げなのですが、ウィキペディアによれば、ウッドの圧縮強さは引張強さの1/3程度だとのことです。
単層であれば、これで話は終わるのですが、多層のウッドを張り合わせてリムを作るとき、使用されるウッドの物理的な特性をすべて生かすことは難しいということになります。また、当時の技術では断面が円の場合に、どのように素材を配置すれば、フルに性能を生かすことができるかシミュレーションすることも困難でした。
そこで、博士は現代では一般的な長方形の断面でリム(ニュートラルレイヤーの計算はかなり楽)を作り、そのリムを先端に行くにつれてテーパーさせる(薄くする・幅を細くする)ことで、ラミネートリムの効率性を大幅に高めることができるという設計を考案しました。
当時の計測では(アーチェリー用の矢速計を発明したのもヒックマン博士)、伝統的なロングボウの効率性が40%程度だったのに対して、新しいデザインのリムは75%の効率性を達成したとあります。これは驚くべき数字で、そこから半世紀たった今でも、効率性はその時点から10~15%程しか改善されていません。
ヒックマン博士と共同研究者たちは、この研究成果を「Archery the Technical Side(1947年)」として出版します。ちなみに、彼らはあくまでも物理学の研究者であって、その後メーカーの立ち上げなどは行っていません。


メーカーでの採用
さっそく、1947年にHOYTの設立者であるEarl Hoyt Jr.さんが、この理論を参考に、ダイナミック・リムバランスという名の、(今では当たり前の)上下のリムの長さが同じ弓を開発します。1951年に断面が長方形でテーパーしている異なるカーブを持ったリムを40ペア製造し、その中でもっと効率性がよかったリムが、(Earl Hoytさんによれば…そして、僕もそう思いますが)、今日もっともコピーされている形のリムとなっています。
同じ、1951年にベアアーチェリーが単一指向性ファイバーグラス繊維とウッドのラミネートリムの製造に成功し、現在でも使用されるグラスリムが市場に登場し、今に至るまで、ラミネートされる素材は時代に応じて変化しているものの、その基本構造は変化していません。
この後、1956年に丸いグリップに代わるピストルグリップ(現在のクリップ)が登場し、1961年にスタビライザーが登場したくらいで、もちろん、素材はウッドからアルミ、マグネシウム、カーボンなどといろいろと変わっていきますが、現在のハンドル・リムの概念、リムのデザインとその理論は驚くべきことに、1930~1950年の20年の間に一気に登場したものです。
次の大躍進が待遠しいです。コンポジットだとは思うのですが…基本設計はまだ大きく変わっていません。
参考文献
-Traditional Bowyer’s Encyclopedia: The Bowhunting and Bowmaking World of the Nation’s Top Crafters of Longbows and Recurves 2011 Edition
-Annual Report Smithsonian Institution 1962(スミソニアン協会年次レポート)
-Archery, its theory and practice 2nd Edition 1859


次世代サイト AXCEL(アクセル) アチーブ(Achieve)サイト

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次世代のリカーブサイト、アメリカのアクセル社製のアチーブサイトが入荷しました。入荷自体は2週間前にしていたのですが、価格の問題で、ずっとメーカーと話し合いしていました。
はじめに書きますが、このサイトはかなり高いです。高くなってしまった一番の理由は、高度な加工をしているためです。最軽量の競技用サイトを開発するため、設計を頑張ってしまって、組立てと加工がかなり複雑になってしまったようで、原材料費は他のサイトと大きく変わらないのですが、パーツの加工時間(加工するための機械を占有するので原価高騰の原因になります)と組立てにかかる時間が長いのが、高騰の理由のようです。
このサイトはロック(後述)があるRXLと、ロックのないRXの2種類があります。メーカーの地元のランカスター・アーチェリー(アメリカの大手アーチェリーショップ)では、RXが36,000円(359.99USD)、RXLが37,000円(369.99USD)となっています。日本で販売する場合には消費税と日本までの国際送料がかかるので、4万円を超えます。
この価格の問題についてメーカーとずっと話し合って来ました。高性能のサイトですので、多くのお客様に選んでいただきたいのですが、アルティマサイトが23,000円程度なので、40,000円もしてしまうのでは、あまりにコストパフォーマンスが悪くなります。
今回、メーカーから特別にオファーを頂き、1年間限定でかなり安い価格で提供させていただきます。それでも、他社のサイトと比べると安いとは言えませんが、精いっぱいの努力です。RXサイトが33,800円、RXLが34,800円となります。期間限定価格が延長されるかは、2014年までの販売量で決まります。好評であれば、延長していただけるそうです。よろしくお願いします。
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では、商品の話に入ります。現在、競技用のリカーブサイトで最もシェアがあるのは、アメリカ大陸(アメリカ・カナダ・メキシコなど)とオーストラリアではアクセルのAX4500サイト、アジアとヨーロッパでは渋谷のアルティマサイトかなと思います。HOYTを使うアーチャーがアクセル、WIN&WINやSAMICKを使う人が渋谷のサイトを使うことが多いです。もちろん、この2つのサイトには性能差がありますが、それよりも、この傾向が強いのは流通の問題(代理店としてどこのメーカーに強いか)が大きく関係しているかと思います。
アチーブサイトの開発のコンセプトは、今のお客様を満足させつつ、新しいヨーロッパ・アジア市場を開拓するということです。そのためにサイトをとにかく軽くしながらも、重くでき(ウェイトを追加)、力を入れずに操作できるし、レンチひとつで、これまでのアメリカ製サイトのようにしっかりとしたテンションにもすることができます。
特徴をまとめると、
素晴らしい点
・重さはとにかく軽く、調整可能(エリソン選手は軽すぎるのかウェイトを足して使っているそうです)
・組立ては正確に可能(エクステンダーバーとエレベーションバーの接合が3点式)
・調整するときのテンションは自分の好みにセットできる
・サイトボックスを完全にロックできる(RXLのみ)
悪い点
・値段が高い
お客様によって変わる点(アルティマとの比較)
・振動吸収をもとめるお客様はアルティマサイトの方がお勧め
 (カーボンバーを使用・サイトは重いほど振動吸収が良い)
・軽いサイト、弓のバランス、ソリッド感を求めるお客様はアチーブサイトの方がお勧め
 (全体にアルミを使用・軽い・サイトボックスを強く固定、またはロックできる)
という感じかと思います。ソリッド感については、あまり聞きなれない言葉だと思うので、改めて記事を書く予定です(3時間書きましたが、わかりづらい記事なのでボツにしました…書き直し中です)。
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出来上がった重さですが、比較として、カーボンエクステンダーを採用する渋谷のアルティマサイト(RC520カーボン)と比べて、8.5%軽くなっています。数字では17g…ウェイト3/4個程度です。上の写真を見た印象では、どう見てもアルティマの方が軽そうですが、実際は逆です。


全体で 8.5% (219g vs 202g)
サイト本体 6% (174g vs 164g)
マウント・ノブ 18% (45g vs 38g)


アルミを採用しながら、この重さを達成したのはかなり素晴らしいことだと思います。高性能の競技用サイトの中ではこのアチーブサイトが最軽量のサイトです。
*パーツにアルミ合金やカーボン樹脂出来なく、たっぷりとプラスチック樹脂を使った韓国・中国製の1万円以下の低価格サイトではもっと軽いものがあります。
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このサイトは持ってみると驚くほど軽いです。しかし、ちょっと残念なことに、ずっとアクセルのサイトを愛用しているエリソン選手(写真はベガスシュート)には、このサイトは軽すぎるようで、サイトに重りを付けています(エレベーションバーの上下)…。。。
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組立てですが、エクステンダーバーとエレベーションバーの取り付けが、より正確に、よりしっかりと、三点(写真のボッチと2本のステンレスネジ)で固定する方式になっています。また、ボッチはガイドにもなっており、このぽっちを穴に入れれば、自動的にステンレスネジのネジ穴に合わせることができます。他のサイトにはない機能その一です。
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上の写真はサイトブロックを上から(写真上)と下から(写真下)から撮ったものです。上の銀のボタンはサイトボックスを大きく調整するときに使用するものですが、下の銀のアジャスターはサイトボックスとエレベーションバーとのテンションを調整するためのものです。RXLサイトでは、ワンタッチで調整できますが、RXサイトでは、アジャスタースイッチがついておらず、左側のレンチでのみ調整可能です。
アルティマサイト同様に微調整はサイト上部のノブを回ることで行うのですが、この時のテンションが強いほど、エレベーションバーとサイトボックスはしっかりと接合しており、サイトの振動が減少します。しかし、このテンションが強すぎると、調整するときにかなりの力を要します。
女性のお客様からは、アメリカ製のサイトではノブが硬いという意見は以前からありました。しかし、トップアーチェリーの多くは硬い方を好みます(まぁ、40ポンド後半の弓を楽々引く人にはそれは硬くないのだと思いますが…)。ということで、このサイトでは、この部分のテンションをお客様の好みで調整できるようになりました。
振動を減らしたい方はテンションを強く、軽く調整しやすいようにしたい方はテンションを弱めに設定してください。他のサイトにはない機能その二です。
さらに、上位モデルのRXLサイトでは、ロット機能がついています。このロックをかけることで、サイトボックスはがっちりとエレベーションバーに押し付けられ、この部分で生じる振動を最小にします。ただ、ロックをかけたまま調整しようとすると、サイトボックスが故障するので、動かす時は必ずロックを外してください。他のサイトにはない機能その三です。
ロックをかけるかどうか。世界選手権の予選を見ればわかるように、予選や練習場ではトップアーチェリーの多くはサイトの調整を行いながら射っていますが、ワールドカップや世界選手権の決勝ラウンドでサイトを調整するアーチャーはあまり見られないと思います。
12~20本程度で勝敗が出る試合でスので、サイトをいじっていたら、試合が終わってしまいます。それなら、サイトボックスを動かさないのであれば、サイトボックスをしっかりとエレベーションバーにロックし、振動を最小限にすることでサイトとハンドルの一体感をより強くします。
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後は、サイトチャート・ステッカー・パッチがおまけでついてきます。こんな感じです。一つ、このサイトのキーワードになっているソリッド感に関しては、別途記事にします。また、今回はテスト入荷で5台しか入荷していません。次回は5月にまとまった量が入ってくる予定です。

追記、コメントの返信です。サイトピンはコンパウンドのスコープ同様、ナットで固定する形になります。


1876年のアーチェリーカタログ

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新しい道具の話ばかりなので、古い道具の話もたまには…というか、資料を整理していたら出てきました。
こちらは1876年の制作されたアーチェリーカタログです。
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この時代のテイクダウン式の弓は、現在の3ピース式ではなく、2ピースのものが一般的でした。当時の資料を読むと、まだリムとハンドルの区別ははっきりとなかったのが原因のようで、ハンドルとリムを分解するというよりは、弓を分解するのが目的だったため、このような作りになったのでしょうか。
最上位モデルは鉄刀木(Pheasant wood)という木材を使用したもので、現在のウッドコアに使用されているメイプルよりも、3~4倍の値段はします。そんな最上位モデルが1本9ドル。未使用品で保管していたら、結構いい値段のアンティークになっているかもしれないですね。


スペイン・フレックス モンテラ(闘牛士帽)ダンパー入荷しました。

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本日入荷しました。1月に会社訪問したスペインのFLEX社のモンテラ・ダンパーです。モンテラとはスペインの闘牛士が被る帽子の名前で、その形に似ていることから名づけられました。
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大きな特徴はチューニングをしながら取り付けができることで、チューニング用(シリコンカップタイプ)と取り付け用(両面テープタイプ)の2種類があります。取り付け用は8色全部入荷していますが、チューニング用は在庫の関係上、黒と赤の2種類しか発注はしていません。ご理解ください。
左がシリコンカップタイプで、右が両面テープタイプです。ダンパー本体に違いはありませんが、足の部分の違いにより、取り付けすると、シリコンカップはつぶれるので、3mm程度高さが違くなります。両面テープの方が高さがあります。ご注意ください。
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両面テープタイプは取り付けるだけなので、チューニング用のシリコンカップタイプを使って説明していきます。入荷しているのは黒と赤の2種類のみ。このタイプのものは、基本的にはチューニングだけに使用してください。ダンパー中央のロゴの部分を強く押し込んで、シリコンカップを真空にすることでハンドルやリムに取り付けするのですが、取り付け強度のテストはしていますが、長時間の使用に耐える取付方法ではないので、シリコンカップタイプを常時使用するのはお勧めしません。
ダンパーの使い方としては、まず、チューニング用のシリコンカップタイプをいろいろな取り付けできそうな場所に取り付けて、この効果を確認し、最も効果がある場所を見つけ、そして、その場所に両面テープタイプのダンパーを張り付けて使用します。
一般論として、効果がある場所というのはいくつかありますが、実際にはそれぞれの弓で異なりますので、自分の実際の弓でチューニングをしながら、最も効果的な場所にピンポイントで使用できるダンパーというのは、かなり画期的だと思います。

ただ、一点残念というか、仕方ないことは、このダンパーはいろいろな場所で機能するように、適度なサイズになっています。広い方が31mm、狭い方が21mmで、重さは5gです。リムセーバーと同じ場所で使用するのであれば、より大きさがあり、重さも持っているSVL社のリムセーバーの方が効果を発揮します。同じ程度の効果をこうダンパーから得るには、少なくとも同じ程度の重さにする必要があるので、3個取り付けることが必要です。
小さな5gのダンパーですので、1個だけ購入されて弓に取り付けても、実感できるだけの違いを得ることは難しいかもしれません。実感したい場合には、少なくとも2つは取り付けることをお勧めします。
では、シリコンカップでどこまで取り付けできるのか。早速、取り付け強度についてテストしてみました。テスト環境ですが、W&WのINNO MAXハンドルに、INNO EX ROWERリムのM44ポンド、リムセーバーなどはなしで、矢は矢や重さのあるX10です。
まず、結論から書くと、バック側のリムチップ以外は問題ありませんでした(フェイス側のその位置は弦に触れるのでそもそも取り付けできません)。バック側リムチップ付近以外は、シリコンカップで十分にダンパーを固定できます。より厳しい環境(より高いポンド、長いリム、軽い矢)では、外れてしまう場合もあるかもしれませんが、ほぼ下記の写真の場所、それに準ずるような場所は大丈夫だと思います。
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ちょうどうまく写真が撮れましたが、チップ側にダンパーを装着すると、ダンパーはシューティング時にこれだけ移動します(残像で確認できるかと思います)。確認した限りでは、この場所が限界でした。これ以上、ダンパーをリムチップ側に移動させると、発射時の衝撃でダンパーが飛んでしまい、チューニングになりません。
次に、問題なく取り付けられ効果を確認できた場所です。
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1.リムのハンドル寄り部分 – リムのしならない部分であれば完璧に取り付けできます
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2.ハンドルのリムポケット裏側 – 取り付け面が確保できれば問題なく取り付けできます。
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3.リムのチップよりフェイス側 – バック側と違いフェイス側は弦溝近くでも取り付けできます。
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4.サイトバー – 取り付け面が確保できれば取り付けできます。
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5.ハンドルの中 – INNO MAXだけかもしれませんが取り付きました。

直線的なデザインのINNO MAXでは取り付けできそうな場所はたくさん発見できます。より曲線的なデザインのハンドルでは、取り付け場所が減るかもしれませんが、それでも、いろいろと試せる場所はあるかと思います。この新しいダンパーを思いつく場所に取り付けて試していただけたらと思います。


道具に関してのまとまってない話…


お客様からの質問に答えていて、思ったことがあるので少し。最後まで書いて思ったのですが…全然まとまっていない記事になってしまった。でも、削除するのはもったいないほど書いてしまったので、暇があれば読んでみてください。
上の動画は韓国のパク選手(Park Sung-Hyun)です。トップ選手の方やナショナルチームのコーチの方と話している中で、今世紀で一番すごい選手としてよく名前が挙がる方です。
実績としては、シングル1405点(更新される前の記録は1388点)と70mwと70mと50mの世界記録、2度のオリンピック出場で金メダル3に銀メダルが1つ、世界選手権は4度出場し、毎回個人か団体で金メダルを取り、とれなかったときは銀か銅メダルというすごい選手です。
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そんなすごい選手ですが、こちらの写真を見てみてください。奥の選手がパク選手です。
何か違和感を感じませんか。


そうです。弓が長いのです。パク選手の身長は170cmですが、弓は彼女の身長とほぼ同じです。66インチの弓は長さにすると、158~160cmほどですので、こんなに長いはずがありません。写真から見ると168~169cmほどの長さがあるかと思いますが、これは70インチの弓です。
では、170cmのパク選手は矢尺が特別に長かったから、70インチを使っていたのかというと、2枚目の写真。
フルドローに入った時のリムチップを拡大したものですが、リムチップは立ち上がってすらいません。今お持ちの弓を引いてみてください。”常識”で弓を選んでいれば、必ずリムチップは垂直よりもノック側に傾くはずです。このスナップの効果によって、はじめてリカーブが活きて来るので、必ずリムはそう設計されています。
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この写真の状態が正解です。
しかし、パク選手が使っているリムチップの状態から矢を発射しても、リムの性能を生かすことは全くできません。パク選手の引き尺はちょっと覚えていませんが…すみません…このリムチップの位置から推測するに、後3インチほどひかないといけない位置にあるので、27インチ前後だと思います。
では、なぜパク選手が70インチを選んだのか、しかも、それをオリンピックという大舞台で使用したのか、その結果は個人・団体での2つの金メダル。
本人から直接話を聞いたわけではないので、まわりのコーチたちの推測ですが、矢速、リムの性能よりも、弦が鼻につくことにこだわった結果だといわれています。これだけの選手ですから、要望すれば、メーカーはいくらでも特注の道具を作りますが、弦を鼻につけるためには、弓を長くする以外に方法は存在しません。その結果、一般論では考えられない、リムの一番性能が発揮されるリカーブ部分を使わないで、オリンピックに出ることになったのです。
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写真を見ると、確かにしっかりとアンカーした状態でも、ぎりぎり鼻についているくらいなので、68インチだとだめだったのでしょう。
パク選手の選択が正しかったことは、その実績が証明していますが、これは今の時代だからできる選択です。十分に弓具の性能が向上し、リムの性能を生かさなくても、十分な性能を確保できるようになったからこそです。グラスリム・ダクロン弦・アルミ矢で70mを射っていた時代で、鼻につけるためだけに、ここまでリムの性能を犠牲にしていたら、同じ実績を残すのは到底無理だったと思います。

みんな鼻につけるの大事だから、そこで弓のサイズを選んでねという話ではありません。上達するために大事なことは、常に考えるということです。そして、常識に縛られないこと。常識の多くは生まれた時代には正しかったことですが、道具に関していえば、道具は常に進化していますので、1~2年もあれば、変わっていきます。
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まえがきが長くなりましたが、伝えたかったことは、リムの柔らかさは「リムの柔らかさ」にすぎないということです。リムの柔らかさが語るのは引き味だけの問題です。
例えば、リムの柔らかさをリリースのミスを拾いやすい、拾いにくいといった話を関連付ける説は、UDカーボンをはじめとする新しい素材が出てから、あまり意味を持たなくなっています。ミスを拾うかというのはリムチップやリムの硬さのうち、写真でいうと、左右にストレスを与えた時の反応と関係します(もちろん、それだけじゃないですが)。しかし、引き味というのは、写真でいうとリムの前後にストレスを与えた時の反応と関係します。
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アーチェリーのリムにカーボンが使われ始めた時には、リムの反応は全方向に対して同様だったから、そのような説ができたのかなと個人的には思っていますが、現在のリムには方向性があるカーボンが使われています。簡単にいえば、ある方向のストレスにだけ反応する素材です。例えば、U/Dカーボンは単一方向性カーボンという意味で、漢字の通り、並べられた繊維の方向にしか力を発揮しません。
*実際のUDカーボンの写真はこちらに
https://archerreports.org/?page_id=33

そのために、以前と違いリムの硬さは引く方向とねじれる方向とでは、全く別にテスト・測定する必要があります。単一方向や三軸カーボンが使われ始めたことで、リムの引きの柔らかさは、引きの柔らかさ以外の意味を持たなくなってきまいます。引きが柔らかいことは、他の部分の柔らかいことを意味しません。

言いたかったのはそれだけです。長くなりました。
こちらの知識とお客様の知識が食い違ったりすることもあるので、お客様からの質問に対しては、まずお客様の考えている事、実現したいこと、求めていることをしっかりと確認してから、返信するようにしています。やり取りが長くなったりしてしまいますが、ご理解ください。
追記、USA ARCHERYの翻訳が終了しましたので、今日から編集作業に入ります。3月中に終わるといいなぁ~。


新しいテーパーロッド CX-350 HMカーボン

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入荷しテスト終了しましたので本日から取り扱いします。現在、市販されているスタビライザーはほとんどがストレートロッドを使用していますが、以前には、テーパーロッドが流行った時期がありました。ロッドの太さ(直径)が一定ではなく、先端に行くほど細くなっているスタビライザーです。
*正確には「直径」だけではなくHMC Plusのような先端に行くほど「厚み」が薄くなるものもテーパーロッドに入るようです。
テーパーロッドの中でも、極端なもの、例えば根元が20mmで先端は10mmしかないようなスタビライザーは、現在の軽いリム・軽い矢・軽く伸びない弦でセッティングされた弓では、まったくといっていいほど振動を吸収してくれません。部室などに転がっている場合には、試していただくと、弓具の進化が体感できるかと思います。あくまでも重いリム・重さ矢・重く伸びる弦でセッティングされた弓が活躍していた時代の設計です。
そのために、現在ではほとんどのメーカーはテーパーロッドを作ることを止めてしまいましたが、2000年頃に発表されたテーパーロッドのトリプルスタビライザーを、最新の素材(ハイモジュラスカーボン)で再設計し、かつ、テーパーをかなり抑え(30%程度)、根元を太くすることで、テーパーロッドを最先端の弓でも使用できるようにしたのが、このスタビライザーです。
ハイモジュラス(高弾性)というのは一般的にいうと強い(変形し難い)素材なのですが、それをたわみやすい(変形しやすい)テーパーロッドに採用したのは正解かどうかはともかく、面白い選択だと思います。
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43ポンドのINNO CXTハンドルにX10シャフトでテストしましたが、全く問題がありませんでした。ただ、価格は4,800円で、価格からもわかるとおり、けっして、最上位のモデルではありません。
今回、あちぇ屋でこのスタビライザーの取り扱いを開始したのは、テーパーロッドの独特なシューティング感(太く剛性が高い根元までは接続されたハンドルとの一体感があり、柔らかい先端部は別のロッドかの様に振動します)が好きなお客様のためです。トップアーチャーの選択を見てもわかるように(初心者でもトップでもCXTの43ポンドをうった時に発生する吸収すべき振動は大きくは変わりません)、現在の弓との調和を考えると、やはり一般的に優れているのはストレートロッドだと思います。
ただし、セッティングによってはテーパーロッドの感覚の方がいい場合も確実にあるのです。
ですので、このロッドはエントリー向けにお勧めするものでもなく、競技用としてお勧めするわけではなく、取り扱いの意図としては、シューティング時の感覚を変えて気分転換したり、新しい可能性に挑戦したいときにお勧めする一本になると思います。

ちなみに、僕はテーパーロッド(FB S3 30インチ)を使用しています。


新規代理店契約 Bee Stinger アーチェリー

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本題の前に小ネタを二つ。今月の雑誌アーチェリーにWIN&WINの新しいHMC22スタビライザーについて、5色のカラーが存在すると書かれていますが、確認したところ、12月に発表されたカタログ通り、カーボンブラックの1色しかないです。ゴールドなどのカラーが出る予定はありません。
次に、SCOTT(スコット)アーチェリーから「侍」という名のリリーサーが出るようです…確認しましたが、どこら辺が侍なのかはわかりませんでした…でも、せっかくその名を付けていただいたのですから、日本のプロショップとしては、少量発注しないといけないような気に。販売価格5,000円前後のエントリー向けのリリーサーです。3月~4月の入荷予定です。
さて、これから書く記事は今年の初めには考えていたことで、それに向けて準備をして、今週の月曜日にはすべての用意が整ったのですが…昨日の夜に驚きの発表があり、書く内容の価値が半減し、ちょっとショックですが、読んでいただけたら幸いです。
以前にこんな記事を書きましたが、今年のドインカーの新作はさらに剛性を高めているとはいうものの、販売するとしたら、センター一本で3万円を超えてしまう価格です(Doinker Elite Estremo Platinum Hi-Mod 30インチの場合)。定価をつけて、そこから25%引きで販売する大手の慣習から考えると、国内での定価は4万円になります。センター一本の価格です。
そのドインカーの2013年の発表を年始に聞いたときには、びっくりしました。ロッドのスペックは業界をリードする会社ですが、ひたすらに高価な材料から高価なスタビライザーを製造する近年のドインカーの方針には少し失望しました。
例えば、WIN&WINはカーボンハンドルにフィットするようにHMC Plusを開発し、売れ行きは好調ですし、HOYTはプロコンプエリートという弓を特定のスタビライザーセッティングを想定して開発し、発売以来、すごい勢いで実績を上げています。
近年の、商品単体のスペックではなく、その商品をシステム全体(弓全体)に組み込んだ時の性能を見ながら開発していく方向性の方が正しいと思いますが、ドインカーの方向性はちょっとずれていると考えています。
おまけに今年ドインカーではAボムというダンパーがカタログに加わりましたが、ほぼ以前のAボム(2007年ごろにカタログ落ちした商品)を復刻しただけのものです。まぁ、それでも十分にいいダンパーだったので、こちらは販売を考えていますが(4月ごろに入荷予定)、この間、5年以上の時間があったのですから、進化した商品を提示して欲しかったです。
NIMESでもドインカーの人と少し話ししましたが、ドインカーの商品単体でのスペック強化と、それによるラインナップ全体の価格のインフレには、もうついていけないと思い、これから書くのですが、アメリカで現在急成長しているB-Stinger(Bスティンガー)と1月に代理店契約をして、今週の初めに初めての荷物が届いたのですが、なんと、昨日のドインカー社のフェイスブックで驚きの発表がありました。
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Doinker’s NEW sister company line of products Precision Balance, to be launched next month. It will be a completely separate line of Target and Hunting stabilizers. It will have a Non-Doinker dampener on it, and include two 1oz weights on a nice looking glossy finished carbon rod with machined Aluminum and anodized flat black ends, at a retail for about $140.00 on a 33″. The Hunting products will be similar in configuration… just shorter and Dipped in full camo.
All the rest of the details to follow next month 😉


簡単に意訳すると「2013年の3月に小売価格で1万円前半の新しい商品ラインを発表します。」ということです…早く言ってくれよ…と。。。
この想定外の展開にどう対応するかは、詳細の発表を待って、今後考えます…どういった商品を出してくるのか、140ドルの新しいラインナップと、330ドルの現行の上位ラインとをどう共存させるのか見守りたいと思います。まだ、コメントできる段階にはないのでしょう。
さて、戦略が迷走し(*)ている様に感じるドインカーですが、リカーブではFIVICSやWIN&WINにシェアを奪われていますが、コンパウンドの世界でのシェアを急激な勢いで奪っているのが、1月に代理店契約をしたB-Stinger社(とFUSE)です。
*昨日の低価格の新ラインナップの発表でドインカーはより良い方向に向かうと思いますが、ここからの部分はそのニュースを知る前に書いたものです。


本当に世の中便利になったもので…上の動画は2007年の世界選手権のコンパウンド決勝です。団体を選んだので6人の選手が出てきますが、多くの選手がドインカーのスタビライザーやダンパーを使用しているのが確認できるかと思います。この頃がドインカーの最盛期でした。
下の動画は、最新の世界戦(ベガスシュート)の様子ですが、使用している選手が激減しているのがわかるかと思います。別に意図的に選んだわけではありません。リンクは張っていませんが、検索していただければ、2012年後半の世界戦の映像がいくつもあると思いますが、どの試合でも同じ傾向です。
B-Stingerという会社の特徴はドインカーと違い、ゴムダンパーを使用しないことです。ロッドの性能だけで振動を取り除きます。下にカタログのリンクを張っておきますが、カタログにもウェイトとロッドの間に装着するタイプのゴムダンパーはのっていません(ウェイトの先端につけるタイプのエンハンサーはラインナップにあります)。あくまでも、ロッド単体で振動を吸収するという設計をしています。
B-Stinger(Bスティンガー)アーチェリー カタログ 2013
https://archery.co.jp/catalog_CP/BeeStinger2013.pdf

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写真はカタログに掲載されている主な使用選手ですが、見ての通り、ほぼコンパウンドです。ロッド単体だけで振動吸収する設計はもしかしたらリカーブには向いていないのかもしれませんが、コンパウンドの世界では多くのトップ選手がドインカーからB-Stingerに変えました。
振動をしっかりと吸収するために、剛性の高いロッドを使用していますが、それでも価格はある程度に抑えられています(それでも2万円を少し切るくらいなので安いとは言いませんが…)。B-Stingerの関連会社はGold Tipという大口径シャフトでは有名なカーボンシャフトメーカーです。カーボンシャフトメーカーと一緒に原材料の仕入れを行うために、高性能のカーボンを安く仕入れることができ、それによりスタビライザーの価格を抑えています…というわけで、カーボンスタビライザーは他社の同クラスのものに比べて安いのですが、金属製品(Vバーやウェイト)は特に安くなく、競合他社と同じか逆に少し高いくらいになっています…。。。
Gold Tip
http://www.goldtip.com/

ドインカーがここ近年失っていたもの、新しい設計方針(ダンパーなしのロッド)、ラインナップのこまめな更新、価格を抑えた高剛性ロッド…これらを、今一番アメリカで持っているのがB-Stingerです。
*↑ただし、昨日突然発表された新しいラインナップはまさにこの3つを満たしています…1月から準備してきたのに…
と、まぁ、B-Stingerの商品の宣伝というよりは、メーカーの宣伝です。B-Stingerのスタビライザーはコンパウンドの通販を始めた時から販売していましたが、知る人ぞ知るメーカーで、弊社としても、あくまでも代理店の在庫を仕入れて販売するだけでしたが、今後はドインカーにかわるトップメーカーとして成長するのではないかという期待も込めて、今年から直接取引する代理店として新しく契約をしました。
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今週、第一便が入荷したばかりですが、いろいろとテストをして、よりいい形でメーカーとともに成長していけたらと思っています。現在はまだコンパウンドの方にしかお勧めしていませんが、リカーブの方も新しいモデルを開発するようですので、リカーブ・アーチャーの方もこの黄色の蜂がトレードマークのB-Stinger(ビー・スティンガー)、覚えていただけたら幸いです。


Bowtech エクスペリエンス

以前の記事で紹介しました、Bowtechの2013年モデル「エクスぺリエンス」
今日、即納モデルとして右ハンドル・60ポンド、色はブラックオプスが入荷しました。

まずは基本的なデータのおさらいです
≪データ≫
-アクセル間        32インチ
-重量             4.2lb(1,900g)
-レットオフ         80%
-ドローレングス   26.5~31インチ
-ブレースハイト   7インチ
-IBOスピード      335fps
-ドローウエイト   50/60/70
-色     ブラックオプス、モッシーオーク・インフィニティ

構成は、センターピボットハンドルデザインに、オーバードライブバイナリーカム&FLXガード搭載、そして新しくデザインされた新型のダンパーが装着されます。
グリップの形状は昨年発売された「インサニティーCPX」と同じく丸みを帯びた接地面のハンドルとなっています。

・ハンドルのフェイス面に搭載されている「リボルバーダンパー」。
 
周りのウエイトがグニュグニュ動きます。

クラッチストリングストップ(バックストップ)の付け根にも付いています。

・新形状のバックストップ「クラッチストリングストップ」。
 
戻ってくるストリングを“クラッチ”するんですね。ゴムがヘタって来た時の為に取り替えが出来るようになっています。

・色が赤くなった「Dura-FLXストリングダンパー」

昨年発表のインサニティーCPXと同じ「オーバードライブバイナリーカム」を搭載していますが、ブレースハイトが7インチと高くなったためにカタログ数値から見ればIBOスピードが落ちた形にはなっていますが(335fps)、実用スピードとしては全く問題の無いレベルです。
挙動がおとなしく、静かになった仕上がりになっています。
データ上、アクセル間が32インチとなっていますが「オーバードライブバイナリーカム」の直径がとても大きい為に、他の32インチアクセル間のモデルと比べると、持った感じ、とても大きな印象を受けます。

より攻撃的でじゃじゃ馬的な要素を持つインサニティーCPXに対し、静粛性に長け、許容性の広さが持ち味の弓になった「エクスペリエンス」。
とはいえ、デザイン設計はゴリゴリのハンティングですから、どちらかと言うと短距離ターゲットやフィールドでの用途に適してると言えるでしょうね。
反対にロングでの安定性には一抹の不安が残ります。

使用目的を明確に持ってお使いいただく、2台目・3台目の弓として最適ではないでしょうか。

Bowtechエクスペリエンスは店舗およびあちぇ屋CPにて販売中です。
*即納モデルはコチラ


ベガスシュートから戻りました。

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ベガスシュートから戻り、たまっていた仕事をこなして、やっと少し落ち着いてきました。この1か月で15回も飛行機に乗り、さすがにちょっと体がきついです。。。頑張ります。
先日の記事の後、町から車で3時間ほどのところにあるマヤの遺跡(チチェンイッツア)に行ってきました。2012年で世界終了みたいなことを言ってる人いましたが、無事2013年を迎えられてよかったです。メキシコのカンクンは26度なので半袖です。
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さて、ワールドカップ・ステージ3と同時開催となったベガスシュートですが、当然、開催場所はラスベガス…正直、ラスベガスは苦手です。それで、これまで一度もベガスシュートに行ったことがなかったのですが、まぁ、仕事ですから、一度は行ってみることにしました。でも、まぁ…やっぱりこの町は苦手です。こういう試合のいいところは、トップアーチャーを間近に見ることができて、交流できることですが、ベガスは…タバコ吸いながら酒飲んで、みっともないような姿勢でスロットやっている女性アーチャーの姿を見たりすると、間近というか、逆に残念な気持ちになります。
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会場はNimes同様に2つに分かれていて、誰でも参加できる試合の会場(写真上)と世界戦が行われているメインの試合会場(写真下)があります。目的のメーカーのブースは世界戦が行われている会場の横のスペースにあり、出店しているメーカーの数はATAに比べるとわずかです。会場の広さもATAの1/20くらいだと思います。
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ベガスシュートにしか出店していないメーカーもありますが、基本的に1月のATAがプロショップ向けの展示会で、ベガスシュートは一般のアーチャー向けの展示会になります。HOYTは一番いい場所に陣取ってアパレルを頑張って売ってました。
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新商品はほとんどNimesで見てきましたので、新しいものはほとんどありませんでしたが、上は初めてお会いしたFIRST STRINGさん。急成長している完成弦メーカーです。
世界で最も評価の高い完成弦メーカーはウィナーズ・チョイスですが、ずっとここと契約していたコンパウンドの世界で現在一番勢いのあるレオ・ワイルド選手が、2012年にこのメーカーに乗り換えました。2013年に入っても結果を出し続けてるので、良い弦なのでしょう。取り扱うかは決めていませんが、継続的に話していこうと思っているメーカーの一つです。今後に期待です。
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こちらの会社はアーチェリーのセミナーなどをメインとしているところで、最近はいろいろと面白いアーチェリー用品を作るようになっています。こちらも、取引はしていませんが、定期的にチェックしているメーカーさんです。すごい軽いのが売りのスタビライザーや、ユニークな形のVバーなどが展示されていましたが、生産量が少ないためか、値段はかなり高めです。今後に期待しています。
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MKコリアのMKX10ハンドルの新色のペイントの白です。写真にはありませんが、1月に発表された新色のライムは発注していますが、この白はどうするか未定です。見た感じ、ちょっと心配なレベルの仕上がりです。HOYTでいうと、カスタムペイント(GMXなどに使われています)レベルではなく、パウダーコート(EXCELに使われています)レベルのペイントです。ただ、白は需要はある色なので、改善要求を出して、しばらく様子を見たら、取り扱いしようと思っています。
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こちらは最近ちょっと元気がなかったSKYアーチェリー。ホイットを引退したホイットさんが、トラディショナルボウのベテランJim Belcherさんと立ち上げた会社です。
老舗のアーチェリーメーカーにありがちな、世代交代などの問題だったと思いますが、取引がないメーカーにはあまり裏事情は聞けないので…詳しくは知りません。
SKYアーチェリー
http://www.skyarchery.com/

ともかく、いろいろとあってあまり積極的な営業はしていなかったのですが、新しいスタッフを迎えて、もう一回頑張るようです。写真はTR7というハンドルです。
ハンドルの方がなかなか良い出来でした。ただ、リムは…2000~2004年あたりのモデルからどの程度進歩しているのか疑問です。引いただけで実際にうってはいないので断言はできませんが、リムも新しいものを開発してくれれば魅力的なリカーブメーカーになるのではないかと思います。
製造の技術力には業界の中でも定評があります。リムでは一般的なフォームコアやウッドコア以外にも、バンブー(竹)コアのリムなどを作っています。製造には定評がありますが、ホイットさんが90年代に設計したリムのデザインをずっと使っていて、新しい素材や技術は試しても、リムのカーブ(リム全体の曲線)はずっと新しくしていません。もう20年近くになるので…そろそろ、新しいカーブに挑戦してもいいころ合いではないかと思うのですが。
SKYも取り扱いはしていませんが、定期的にチェックしています。最近元気な会社の一つで、あとは、元気に頑張った結果を今後出せるかどうかです。後、取引先のJagerアーチェリーの社長が仲良くしているメーカーで、SKYアーチェリーにグリップを供給しています。
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ここまで、取引していないメーカーの話でしたが、取引先ではSIMSが新しいリムセーバーを発表しました。
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振動の測定をすると、よく見るような振動のグラフを得ることができますが、さらにあるアルゴリズムを使用して、FFT解析をすると、どの周波数の振動が一番多いのかを知ることができます。ゆったりした大きな振動が多い弓なのか、細かい振動が多い弓なのか、いろいろなパターンがあります。
この分析から振動の大きい周波数に合わせて、その振動を吸収するために開発されたのが、ブロードバンド・リムセーバーです。
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なんかちょっとすごそうな商品ですが、開発と製造のチューニングにはすごいテクノロジーが使用されていますが、完成された構造は簡単に言えば、柔らかいゴムダンパーと硬いNAVCOM素材(手触りはシリコンの様な素材です)を組み合わせたハイブリット構造のリムセーバーになっています。2つ以上の素材を使用しているリムセーバーは初めてではないかと思います。
リンクが着色されていて、このリングだけの交換も可能です。この2つの素材をうまく組み合わせたことで、ピークの振動をうまく吸収できるそうです。2月後半か3月初めに入荷する予定です。
と、新商品はこのくらいでした。あまり見ごたえがある会場ではなく、また、メーカーも一般アーチャーを想定してブースを出しているので、プロショップ向けの価格表なども用意されていません。ちょっと残念な感じでした。

試合の方はあまりじっくりと観戦する余裕がありませんでしたが、もう、ArcheryTVにアップされているようなので、どうぞ。