イム選手がMKとW&Wからホイットに転向

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少し前のニュースですが、ちょうど動画もアップされたので。以前はMKX10ハンドルに、WIN&WINのリムとサイトという韓国づくしの弓でしたが、ステージ2からはホイットのフォーミュラーRXハンドル+F7ウッドコアリム+アクセル(アメリカのサイトメーカー)のアチーブサイトとアメリカづくしになりました。残っているのはW&WのHMC22とセーカーブラスタブくらいでしょうか。

ホイットがF7リムの注文が多すぎ製造が追いつかないといっていましたが、製造側だけではなく、選手側でも変化が起きているようですね。WIN&WINの地元で韓国代表チームで、3選手中2選手がホイットを使用しています。うん…。
変えた理由は直接は聞いていませんが、毎年この時期は選手の道具は変わります。10月に世界選手権がありますので、ワールドカップと言えど、そこに向けての調整試合です。10月の世界ターゲット選手権の本番にどのようなセッティングで出てくるのか楽しみです。
7月もそろそろ終わりです。もう少し先ですが、2014年のラインナップが気になる時期です。例年ですと、10月1日のPSEの発表を皮切りに、10月の中旬にHOYTの発表、11月にマシューズ、12月の初めにWIN&WINです。今年のベルリンオープンというインドアの試合が12月13~15日に行われるそうです。毎年、この試合でWIN&WINの新商品が初展示になるので、そのころに詳細が判明するのではないでしょうか。
ただし、2011年に同様ホイットの正式発表前にテクミチョフさんがポロリしたように、今年も世界選手権がHOYTの正式発表の直前にあり、この大会で、新商品に早速実績を持たせるのがマーケティング上ベストに違いありません。今年もポロリがあるかもと期待しています★
また、毎年書いていることですが、アメリカのメーカーが基本的に発表後の発送に対して、WIN&WINは発表後に代理店・販売店の感触を確かめてからの製造なので、HOYTの新商品が発表後1週間程度で入荷するのに対して、WIN&WINの新商品は発表後3~4か月後の入荷が一般的です。


HOYT F7リムの XSサイズについての現状

コメントがありましたので、HOYT F7リムの XSサイズについての現状に報告させていただきます。
まず、結論から書きますと、6月末時点でF7リムのXSサイズは生産されていません。また、生産の見通しも全くないです。予約での取り寄せは受けつけますが、納品時期に関しては全くの未定です。
F7リムですが、もともとはホイットからはお客様には知らせないといわれていた商品です。フォーミュラシリーズのハンドルは25インチ以上しかないので64インチの弓を組むことができません。その状況がフォーミュラのセールスに対して悪い影響を与えていることは世界中で報告があり、ホイットは2012年の8月にXSサイズのリムを製造することを決めています。
しかし、XSサイズを製造するためには、生産ラインを一度停止し、ジグをセッティングしなおすことが必要でやると決めてすぐに出来る事ではありません。そのため、ホイットからは生産の見通しがたってからお客様に案内するようにと2012年10月に言われました。しかし、日本では某代理店大きく宣伝したために、お客様の間でも知っている人は知っている存在かと思います。生産の見通しの立っていない商品をなぜ発表するのか…なぜそんなことをしたのかは正直理解できないです。このフライングは商業的な理由というよりは、社内のコミュニケーションの問題でしょう。
当初、ホイットからはジグのセッティングを変更するのはリムの注文が少ない2013年の1月、そこから製造するので2月~3月の納品になるという案内がありました。
しかし、2月になっても、F7リムの代理店からの注文(バックオーダー)を生産しきることができない状況になってしまい、そこから現在でもF7の納品が遅れる状況が続いています。
6月末の案内が最新のものですが、「既存サイズの生産も遅れているので、XSサイズを新規に製造するためにラインを止められる状況にない」ということでした。
8月にホイットは2014年のラインナップを決定するので、F7リムのXSについては、その時点まで進展はないと思います。最短でも納品は11月になりますが、正しい納期は全く案内できる状況にないです。
そのために、このブログではこの商品についてあまり触れてきませんでした。一度生産をすれば、ある程度は作りためるので、生産開始のニュースが入ってから注文しても、初期製造分が入手できない状況にはならないと思います。ちなみに、弊社ではXS-36~XS40までの発注をしています。
新しい情報が入り次第再度お知らせさせていただきます。


イーストンシャフトのシリーズ番号について

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最近質問が増えているのでプロショップとして、イーストンのシリーズ番号についての正式な回答をさせていただきます。

テクミチョフさんが最新号の雑誌アーチェリーの記事で初めてシリーズ番号についての公式のコメントをしましたが、この番号については業界では公然の秘密といった扱いで、お客様に幅広くその意味を伝えていなかったと思います。

以前に、某代理店の方が自身のブログでホイットに対して「とある情報を金曜日まで発表しないように代理店に依頼したくせに、メーカー自身が月曜日に発表するなんて無責任だ」…みたいなことを書いていたことがありましたが、今回の件は自分からしたら同じような思いで、自分たちであまり公言しないように言っていた話を、自分たちで公開するって…という気持ちです。

まず、シリーズ番号とは何か。写真はACEシャフトですが、C番号(カテゴリーナンバー)と別に、1206という数字の後に「H」「J」「G」などのアルファベットが書かれています。これがシリーズ番号(シリーズナンバー)と呼ばれるものです。

C番号についてはガイドブックや、グーグルでも検索すれば、その意味や扱いについて書かれたページが見つかると思います。対して、シリーズ番号については調べても、日本語だけではなく英語で調べても、言及しているページ、ガイドブックはほぼないです。

では、なぜプロショップがこの番号についての情報を伝えてこなかったかというと、この番号はいざというときの番号で、普段は意味がないものだからです。

まず、この番号の意味ですが、この番号は製品仕様書とひもづいています。つまり、JシリーズとHシリーズは違う素材から作られています。仕様書(非公開)はAから始まり、Jであれば、ACEの10番目の仕様書によって製造されたACEであることを示しています。

そうすると気になるのは、「J(10番目の仕様書で製造されたACE)」「H(8番目の仕様書で製造されたACE)」では、性能が違うのか、どっちが性能がいいのか、ということだと思いますが、これに関して、イーストンの公式見解は「全く同じ性能」だそうです。

しかし、本当に全く同じであれば、わざわざ違う番号を付けて管理する必要はないです。では、何を管理しているのかというと、品質を管理するための番号です。

現在、良く見かけるのは「G」「H」「J」などですが、運用としては、例えば、2012年に「K」を投入し、2012年の1年間を通して、4つの仕様のACEを製造し、最もクレームが多かったのが1シリーズを翌年から廃番にするといったことが行われてきました。現在、(ACEの場合)「A」「B」「C」「D」を見つけることはめったにないはずです。Dを在庫に見たのは…5年以上は前だったと思います。

結局、シリーズ番号とは、イーストンも、イーストンに素材を供給している素材メーカーも、理論上では同一の性能・同一の品質と言いながら、売るという実務の中で、実際性能に差がないのかを検証するための番号です。

また、お客様側でこの番号との付き合い方ですが、特に気にされるものではないと思いますが、心配であれば、購入するときには同じ番号のものを購入された方が良いかもしれません。ただし、C番号とは違い更新されるものです。初期のAシリーズはもう生産されていないので、手に入りません。購入するときには、自分が使っているシリーズ番号か、そのシリーズ番号よりも後ろのアルファベットのものを購入されれば問題ないです。

これまであまり積極的にこの番号の意味を伝えてこなかったのも、事後的(問題が起きてからの)な処理にしか使われない番号だったためです。今回、なぜイーストンが広くシリーズ番号の意味を知らせる方向に舵を切ったのか、あまり理解できませんが…次に担当者にあった時にでも聞いてみます。


プロユースのフォーム分析ソフトの紹介です。

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↑クリックすると拡大されます。
プロショップやトップチームで使っているプロユースのソフトの紹介です。無料のソフト(フリーソフト)で有志が開発していますので、時間があれば、日本語パッチの開発に参加しようと思っていましたが、どうも時間が取れそうにないので、英語版の紹介となります。いつか…時間が取れた時には日本語化のプロジェクトをやりますが…。
同様の機能があるものとしては、ダートフィッシュなどがありますが、このソフトが無料なのに対して、ダートフィッシュは有料でかなり高価です。ただし、ダートフィッシュは完全日本語化されているので、日本語じゃなければ触れないという方にはいいかもしれません。
*0.8.20という開発者版を使用しています。このバージョンで説明を書きます。PCに詳しくない方は、0.8.15の動作安定版の使用がいいかもしれません。
さて、バイターの開発用の射場の写真は見たことがあるでしょうか。記憶が正しければ、20年ほど前に今の撮影・解析システムが導入されたはずですが、何千万円単位での投資が必要だったと聞いています。
当時はすべての機能をハードウェアで実現させる必要があったので、すべてがカスタム品で、そのために大きな投資をしないと、フォームの分析ができませんでした。20年後の今、CPU等の性能が向上し。今では多くの機能をソフトウェアで実現できるようになっています。
それに伴い、ホイットやバイターなど数千万円の投資ができるメーカーだけではなく、数十万円の投資で分析装置を導入できるようになり、トップチーム・トップクラブ・プロショップの多くが動画分析ソフトを導入しています。
完璧なシステムを構築するには、今でも数十万円の投資は必要ですが、高いのは照明や高性能のカメラで、簡易なシステムであれば、市販されているような安いカメラでも、十分に役立つシステムになります。
ちなみに今回使用しているのはSONY NEX-C3という3万円しないカメラです。生産が終了しているので現在は3万円をちょっと超えているようです。
さて、分析に使える動画を撮るという話になると、記事を書き終えられそうにないので、今回はすでに撮った動画をいかに活用するかという話に絞ります。
紹介するのは、(フリーウェアとして)アーチェリー業界で最も有名なKinoveaという動画・フォーム分析ソフトです。ちなみに有料のもので最も有名なものは先ほども書いたダートフィッシュです。
Kinovea
http://www.kinovea.org/

ダウンロードすると、10以上の言語から自分が使うものを選択できます。残念ながら、日本語がありません。英語を選ぶのが一番無難だと思います。今回は英語のものを紹介します。
必要な環境は下記の通り。かなり低いですが、HD画質の動画をソースにするのであれば、メモリは2GBは欲しいです。
– Microsoft Windows (XP, Vista, 7) + .NET platform 2.0 or above.
– CPU : 1GHz.
– Memory : 256 MB
– Screen resolution: 1024×600 pixels.
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インストールし、起動させると、こんな画面になります。「File」で動画を開き、いじってみてください。難しくはないので、わかればこんなことができますよということを説明いたします。
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1.1%単位で再生スピード調整
2.動画切り取り
3.マルチビュー(トップの写真の様に2つの角度からの動画を同期して再生可能)
4.動画に文字を書き込めます。
5.動画にフリーラインで手書きできます。
6.動画に線を引くことができます。
7.角度の測定ができます。
8.グリットを設定できます。
9.拡大できます。
10.(右クリックで開くメニュー)軌道追跡できます。
11.作成した動画の保存

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それぞれを実行した結果は上記の通りです。いろいろと使えると思います。
さて、実はうちで一番使用している機能は10番の軌道追跡なのですが、この機能だけは市販のホームユースのカメラではうまく使えないことが多いです。理由はシャッタースピードです。動画はいくつもの写真をつなげたものから構成されていますが、シャッタースピードを速くすることで、動画に含まれるそれぞれの写真がブレずに、きれい写りますになります。シャッタースピードが遅いと残像が残ります。ただし、スピードが早いと副作用としてより光の量が必要になってきます。同じ光量なら画面が暗くなるということです。
ですので、管理された環境とある程度のノウハウがないと精密な軌道追跡ができませんが、3万円のカメラ(動画はシャッタースピード固定)での限界にチャレンジしました。

↑全画面再生でないとマウスカーソルの動きは確認し辛いかもしれません。
今回、撮影自体、カメラをきっちり固定して行っていないので、赤の軌道が示す動きの分だけシューターの坂本がブレているわけではありませんが、カメラをきっちりと固定すれば、意義のあるデータにとして、記録に残せると思います。
Kinoveaは無料のソフトですので、とりあえず興味を持っていただけたら幸いです。撮りためた動画を活用するきっかれになればと思います。


ヒックマン博士とホイット氏の手紙

明日、FIVICSのブラスタブが入荷します。歴史ばかり調べていないで仕事のきちんとしているのでご安心ください。1日3時間ほどまでに制限しています。

1978年にホイット氏はHOYTアーチェリーの経営権を販売しているので、現在のHOYTアーチェリーとは違うものの、そのホイット氏は20世紀を代表するアーチェリー業界のイノベータでした。
そのホイット氏はヒックマン博士の研究した理論をもとに弓の開発をしていたのですが、史料として、その裏付けとなる手紙を見つけました。
本日はこのネタです。
まずは手紙の中身です。書いたのはHOYTアーチェリーのホイット氏(48歳)で、あて先はヒックマン博士(70歳)です。書かれたのは1959年1月29日です。訳はできるだけ英文に忠実にしています。

あなたは我々がここで得た結果について興味を持つだろう。使用した42~45ポンドブラケットの弓は(28″のドローレングスで)、#1816イーストンシャフトで190から200fps、1オンスの矢では170~179fpsの速度を計測した。だがこれはまだ序の口だ。我々はシングルとコンパウンドの異なる種類のコアテーパー、さらには様々な仕様の弓を使って実験している。また、現在の実験結果を見る限り、リムの稼働域が19 1/2~20″がリムの効率性を最も高める長さだと指し示しているようだ…あなたのスパーククロノグラフは、私がいままで一番興味を持っていたことに対して多いに満足できる結果をもたらしてくれた。精確なデータを得るということは、本当にゾクゾクするものであり、また私たちにとってそれぞれの弓のデザインの利点を評価する上で計り知れないほど重要な判断材料となる。この時代にヒックマンスパーククロノグラフを手に入れることができたことを、言葉では言い表せないほど嬉しく思っている。今までに私がしてきた投資の中で、これは最高のものだ。

文通仲間ということは知っていましたが、文面を見る限り、想像以上に情報を共有していたようです。
この手紙の背景について書きます。ヒックマンはアーチェリーの研究に、ピアノ会社が鍵盤の打鍵スピードを計測するために購入したアバディーンクロノグラフ(Aberdeen Chronograph)を使用していた。今でいう矢速を測定する機械です。しかし、ポータブルで直流電源で稼働可能な矢速計がほしくなり、自分で作った。
海軍の主任研究員であるジョン P.クレーベンに宛てた手紙で(…なぜ海軍かは不明…アバディーンクロノグラフを開発したのは陸軍)、

私はこの国においてアーチェリー関連の書物を最も多く所有している。だが不運にも、これらの資料は矢の弾道についてあまり多くの情報を提供してはくれない。1928年に私が計測をおこなうまで、誰もストップウォッチ以外の計測器以外で矢の速度を測ろうともしなかったのだ。そこで私はクロノグラフを使って、重さの異なる矢とデザインの異なる弓のそれぞれの組み合わせがもたらす矢の速度と加速度を計測することにしたのである。

と書いていて、自分で開発した矢速計(スパーククロノグラフ)で多くのデータを採取して、多くの記事を書いた。また、戦時中はこれを改良して、リボンフレームカメラ(ハイスピードカメラ)を開発し、クロノグラフでロケットの飛行中の速度を計測し、撮影する仕事をしていた。

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写真がその矢速計。
その後、ホイット氏はこのアーチェリーのために作られた世界初の矢速計を、1958年にヒックマン博士自身から300ドルで買い取り、自社での実験に利用し、そして、この手紙につながるのです。

ヒックマンに関するもう一つの話。現在では一般的にリムに使用されているグラスファイバーですが、これがアーチェリーで使われるきっかりになったのは…日本です!!(と韓国)
というのは話の盛りすぎですが、関連はあります。
リムは本来、木で作られていましたが、この木に違う木をはり合わせて、反発力を高めようとする弓が19世紀登場します。(トルコ弓などでははるか以前から採用されています、あくまでもアーチェリーの世界の話)
違う素材をコアにはり合わせて反発力を向上させる作業をバッキングと言いますが、1930年代にヒックマン博士は、その素材に繊維を使うことを提案します。その素材とは「シルク」でした。今風でいうと、シルクファイバーリムです。
しかし、第二次世界大戦によって、シルクの輸出国だった日本から素材が手に入らなくなり、また、米軍もパラシュートを作るために、シルクを買い占めていたので、だんだんとシルクが入手できなくなります。そこでヒックマンはバッキングに新しく開発されたフォルティザン(Fortisan)繊維を使うことを提案します。これは商標で、現在ではポリノジックレーヨンと呼ばれている繊維だそうです。
アーチェリー業界は、シルクファイバーリムから、レイヨンファイバーリムに進化します。この繊維はシルクの2~3倍の強さがあり、ヒックマン博士は1946年3月のAmerican Bowman-Reviewに、レイヨンファイバーのリムへの利用に関する記事を書きます。
が、歴史は繰り返すといいますが、その後朝鮮戦争が勃発(1950年)し、高性能レイヨンは又もや軍によってパラシュート製造用に買い占められ手に入らなくなります。その後、レイヨンのかわりとして、当時登場したのがグラスファイバーです。
ヒックマン博士はテストしたものの、具体的に記事にする前に、フレッド・ベアが1951年にグラスファイバーのリムへの応用に成功します。しかし、当時ではすでに知られている構造だったので、アメリカでは特許には出来ませんでした(1953年にカナダで特許の取得に成功)。
こうして、日本がきっかりでシルク繊維がレーヨン繊維となり、韓国がきっかりで、レーヨン繊維がグラスファイバー繊維となり、今に続くのです。


古いこと

古い記事をアップデートします。

今思うと面白い題名をつけたなと思いますが、けっして予測していたわけではありません。
10月に「【予告】新しい事 その1」という記事を書きました。その反応として、期待してくださる方もいれば、書いてあることは正しいとしても、自分が愛用している商品の批判は見たくないというコメントもあり、その結果、別のサイトを移行し、おりたたみました。うっかり目に触れることはありません。「Continue reading →」というボタンを押してはじめて、続きが表示されます。
そして、今思うのは…古いことです。
アーチェリー用品の正しい評価について、そのシステムを構築してきましたが、最終的に行き着いたのは「古いこと」でした。

レビュー 日本製の低価格カーボンサイト T-9 AR
http://jparchery.blog62.fc2.com/blog-entry-1041.html

長くブログを書いているといろいろな反応が返ってきます。誤字脱字はともかく、今でも覚えているのは、ミザールハンドルを間違って「アルミ製」と書いてしまったことなどで、お叱りを受けて直ちに訂正しました。
逆に、正しいことを書いていてお叱りを受けたのが上記の記事(細かいことはコメント欄をご確認ください)です。2013年ではもう少し理解が進んだかもしれませんが、プライベートブランドというものは、販売者と製作者が違います。読者の方で、販売店が自分で作っていると勘違いされている方がおり、レビューの中で作り手に対して経験不足と評したことが、販売店に対して経験不足と言ったの様に受け取られ、お叱りを受けました。
正しい情報もあれば、間違っている情報もありますが、一番危険なのは、正しいと思い込んでいる間違った情報ではないかと思います。今回、コメントを頂いたのでお客様の勘違いを正すことができましたが、コメントを頂かなければ、すっど勘違いで私が批判される事態が続いたのかと思うと…恐ろしいです
弓具の評価を公開していくうえで、まずは、そういった誤った認識(この記事の場合はプライベートブランドは販売店が作っているというもの)を正していかないと、記事で提供する情報が正しくとも、間違った形で受け取られ、単純に自分が間違ったことを書いてしまったなら自己責任ですが、受け取り手の勘違いによって思わぬトラブルや批判が生まれるのではないかと考えるようになりました。これが今年の1月くらいの事です。
しかし、そんな心配をしていても…逆に考えるとアメリカやヨーロッパでは、自分がやろうとしているような弓具の評価・レビューというのは当然の様にアーチェリー雑誌に掲載され、広く読まれています。欧米人にできて、日本人にできないはずはないでしょう。
では、その違いはどこにあるのかと考えたのが、2月。
そして、「古いこと」…つまり、歴史があるのかないのか、、正確には歴史が語られているのかどうか、そこに違いがあるのではないかと思うようになりました。
欧米のアーチェリー用品のレビュワーと言っても、だれもゼロから道具の評価テストを立ち上げたわけではなく、そこには、1920年代から積み重ねられた知識と常識があり、レビューをする人間はその文法・文脈にのっとり、発言しているからこそ、誤解されずに、正しい情報が流通するのではないかというのが自分の現在の仮説です。
それに対して、前の記事で書きましたが、日本のアーチェリーのメディアの多くの商業主義に上に成り立っているものです。それらは歴史の様に積み重なるものではなく、流れていくもので、歴史や過去はむしろ邪魔です。
有名な話ですが、これはボジョレーの毎年の”自己”評価です。
1995年「ここ数年で一番出来が良い」[1]
1996年「10年に1度の逸品」[1]
1997年「1976年以来の品質」[1]
1998年「10年に1度の当たり年」[1]
1999年「品質は昨年より良い」[1]
2000年「出来は上々で申し分の無い仕上がり」[1]
2001年「ここ10年で最高」[1]
2002年「過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄え」「1995年以来の出来」[1]
2003年「100年に1度の出来」「近年にない良い出来」[1]
2004年「香りが強く中々の出来栄え」[1]
2005年「ここ数年で最高」[1]
2006年「昨年同様良い出来栄え」[1]
*以上、ウィキペディアからの引用
さあ、どれが一番いい出来だかわかりますか?
メーカーにとって、過去の話(歴史)を蒸し返されては、商売上いろいろと困ることが想像できると思います。
ただ、これはボジョレーに対する批判ではないです。本当にお酒好きで毎年ボジョレーを飲む人は、むしろネタとして「評価文」を肴にして飲むので、批判するようなものではないと思いますが、まれに、評価を本気にしてしまう人がいたとしたらかわいそうだなとも思います。
アーチェリーで検索すると、入手できる資料(本)は2007年が一番古いのです。アーチェリーのことを学ぼうとしても、この6年間に生み出されたことしか知る事ができません。ちなみに、アメリカでは古くは16世紀の資料から、フランスは15世紀の資料から入手できます。さらに、亡くなったアーチャーの多くが、著作権を放棄し、それらの本を無料で公開することで、死してもアーチェリー界に貢献するのです。素晴らしいと思います。
例えば、アーチェリー歴史学の第一人者であり、WA(FITA)やUSA Archeryの歴史を書いたRobert J. Rhode(2000年没)さんのページなどがあります。
HistoryBooks by Robert J. Rhode
http://www.texasarchery.org/Documents/NAAHist/History.html

誰もが自分は過去の上に立っていたと知っているからこそ、自分も踏み台になりたいと願うのでしょう。
日本で2007年にアーチェリーを語った人にしても、ゼロから何かを生み出している人は少ないのではないかと思います。過去の知識・知恵の上に立って発言しているケースがほとんどでしょうか。しかし、それを読む人はその過去を知るすべがありません…英語の資料が豊富にあるので、ないというよりも、簡単には知ることができないといった方が正確でしょうか。
さらには、歴史がまとまった形、整理された形で存在しないことをいいことに、勝手に書き換えられたりしています。例えば、私たちも行っているハイスピードでの弓具の研究は、日本のY社が初めてだとい某記事には書かれていますが、アメリカでは1930年代から行われており、これは私がこっそりと手に入れた情報ではなく有名な話です。なぜなら、その研究からスタートしたのが、まさに現在の弓具の形を作ったヒックマン博士だからです
また、同時期には和弓の世界でも、旧海軍兵学校の協力のもと、120fpsで弓具の動きを撮影し、弓具の研究が行われていました(*)。どちらも80年以上前の話です。
*「紅葉重ね 浦上栄 著」でその写真を見ることができます。
このような例は本当にたくさんあります。現在のアーチェリーは19世紀の後半から、脈々と続いてきたもので、多くの研究によって進歩してきたものです。アーチェリーの記事を書くほどの偉大な人達ですから、常識的な知識を知らないとは思えません。ほとんどのケースで知っていて、わかるはずがないと思って、歪曲して伝えているのでしょう。
これは、考え過ぎだといわれるかもしれませんが、感性の科学には突っ込みが入り訂正記事が出ました。これはステークホルダーがたくさんいるからです。しかし、Y社が世界初だというハイスピードカメラの話は、間違っていたとしても、わざわざ突っ込みを入れる関係者はいないのでしょう。
前者と違って、誰もその誤った情報によって、損をしない場合もあります。記事の前半で商業主義と書いたのはそういう意味です。アーチェリーの道具や歴史について圧倒的に、情報を握っているのはプロショップの人間ですが、誤った情報を見つけても、それによって損をしない限り放っておくのが、美徳の様な雰囲気があります。
日本で弓具のレビューが困難なのは、そんな流れがあるのだと思います。レビューで難しいのはネガティブ(批判・否定)な部分です。弓具を知らない人は批判が的外れであることが多く、業界に中にいて知っている人は、生活がかかっているので、悪く書くのは怖いものです。欧米人にそれができるのは、その場で取得したデータや理論だけではなく、歴史的な文脈の中で肯定・否定をしていくからだと思います。
5月にホレース・フォードの本を翻訳したのをはじめ、ホイット氏のインタビューの編集(*)など、弓具のレビュー以前に取り組むべきことがあるように感じます。
*彼は生涯にわたって弓具の進歩を願い、フォームコアをはじめてとして、数多くのイノベーションを起こしましたが、一部の人間によって、なぜか弓具に関して保守的な人間であるというイメージが作り上げられています。しかし、英語で書かれたどの文書を読んでも、彼は前衛的な人間です。
現代のアーチェリーが19世紀から続いていくものであり、弓具は20世紀初頭にはじまる一連のイノベーションが現在まで続いているのです。大天才でない限りで、その流れの中でしか、道具を評価することができないと思いますし、実際自分は凡人なので、自分が書くとしてもその流れの中でしかすることができません。
HMC+とHMC22の記事を書きましたが、現在でも限られたトピックの中であれば、書くことはできます。しかし、ハンドルやリムの様な大きな枠組みの中で道具のテスト・評価をするためには、まず、そのフレームワークを読む方に提供することから始めるべきと判断しました。
欧米人がそのフレームワークを持っていて、日本にはない(と自分は感じる)のは、今に続く歴史を15世紀からたどって知ることができるかどうかの差に集約され、そして、正しいアーチェリーの歴史を語ることで、日本でもそのようなものが、時間はかかっても成熟していくのではないかと思っている今日この頃です。


HMC 22 のエクステンダーだけについてのレビュー

HMC22のレビューですが、2回に分けます。まずは、前半です。届いたロッドをテストしましたが…HMC+が十分にいいロッドで困りました。
現在、テスト用の弓は「INNO MAX + INNO EX POWER 42ポンド+ HMC PLUSのセンター・サイド + CX2 Vバー + ブラックマックス(終売品)エクステンダー」というものですが、このセッティングで十分に振動吸収がなされており、HMC22の良さを理解することが困難です…。
ということで、これまでメーカーの人との話を振り返れば、HMC 22の一番の目的はコンパウンドでも使用できる高い剛性を持つロッド、ライバルはこれまでのイーストンやFIVICSではなく、ドインカーのプラチナムシリーズやB-stingerを想定した設定になっています。
と考えれば、42ポンドの弓では振動吸収能力の違いを感じ取るのが困難かもしれません(ロッドの重さが違うので、シューティング感が違うことは容易にわかります)。
低いポンドでは、HMC+がおすすめなのは明白ですが、低いポンドだけではなく、30ポンド台後半まではHMC+の方がよいと思います。(セットとしての)HMC22が選択肢に入ってくるのは、明らかに40ポンド以上です。
その話はもう少し煮詰めて、コンパウンドでもテストしてから、今度書きます。
ここからはエクステンダーの話です。セットとして…つまり、センター・サイド・エクステンダーでHMC22の良さが分かるのは40ポンド以上ですが、エクステンダーだけであれば、一般的なポンドでもお勧めできます。

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以前、WIN&WINが販売していたエキスパートというハンドルです。構造的にはとても興味深いハンドルでした。今年、HOYTが同じようなコンセプトのハンドルを作っているので、時代を先取りしすぎていたといっていいかもしれません。
*カーボンとアルミの接合部が剥離するというトラブルも抱えていました。
昔のアメリカの資料を読むと、”愛機”という概念があり、それを使って、ターゲット、フィールド、ベア、ハンティング…すべてのことを1本の弓でこなしていました。
そのため、良いハンドルに求められていたのはオールマイティな性能でした。一昔前までのハンドルはスタビライザーなしでもうてるように設計され、あらゆるセッティングで一定の性能が出るようになっています。
しかし、現在では、というよりも、本当に近年ですが、より特化された設計が増えています。ベア用のハンドル(スピギャなど)、ハンティング用のハンドル(WINのRCX-17やHOYTのバッファロー)など、設計を特化することで性能を高めたハンドルが増えています。
2013年にホイットが出したプロコンプエリートはとてもスタビライザーなしでうてるようなモデルではありません。このハンドルは重いセンターと合わせて使用する前提で開発されています。しかし、そもそもユーザーがセンタースタビライザーなしで、このターゲット競技用として販売されている弓を射つことがあるのかと考えれば、そのようなことはまずないと思われるので、スタビライザーなしでもうてる配慮を”しない”事で、ハンドルの性能を引き上げています。実際、今行われているワールドカップでのこの弓のシェアはかなりのものになっています。
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エキスパートハンドル。ほとんどのアーチャーはエクステンダーを使用していますので、エクステンダーを込みで、エクステンダーありきで、ハンドル(弓)というものを考えた時、このデザインはその一つの答えとしてありだと思います。ちなみに、設計としては大変挑戦的ですが、個人的には保守的な設計が好きなので、テスト以外で使用はしませんでした。
記憶が正しければ、この出っ張っている部分は3~3.5インチのエクステンダーに相当します。逆テック構造で、上下からエクステンダー部分をサポートし、振動吸収と左右方向のブレを減少させ、飛び出しがよくなります。まぁ、写真通り、かなり前重心になるのでその面でも飛び出しは抜群でした。
奇抜なデザインだったためか、2年ちょっとで販売が終了してしまいましたが、記憶に残るハンドルの一つです。
このハンドルの設計に限らず、ハンドルからエクステンダーまでは1つの固体(以前な書いたソリッドなフィーリングで)として使用したいというお客様の要望は常にあります。たくさんのアーチェリー用品に出会える立場だからか、終売品にもかかわらず、当店のスタッフでX10スタビライザー(旧モデル)とブラックマックスを使用している人間が一人ずついます…。。
今でも問い合わせが来ることもあります。どちらも、5~6年前には生産が終了しているモデルであるにもかかわらずです。
これらのモデルに続く商品として、HMC22のエクステンダーは期待できるのではないかと思っています。全部HMC22でそろえるのは高ポンドでないと、メリットを実感しづらくても、エクステンダーだけHMC22にすることで、ソリッドなフィーリングを得ることは可能です。
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左はHMC+、右がHMC22です。カタログ値では7%の違いですが、ブッシングを比べるとかなり太いです。
重さですが、
・HMC + 5インチ 68g
・HMC 22 5インチ 86g
*ブラックマックス 5.5インチ 70g
でした。公式にHMC+と比べて、どの程度多くカーボンを使用しているかは公表されていませんが(形から計算すると17%増です)、カーボンの使用量はかなり増えていると思われます。また、重さはロッドのカーボン使用量の増加に伴うものです。
これは、生産が終了した(まだ在庫はあります)HMCとの比較でもわかります。
・5インチエクステンダー(ブッシング + 5インチロッド + ブッシング)
-HMC 100g
-HMC 22 86g
・28インチセンター(ブッシング + 28インチロッド + ブッシング)
-HMC 160g
-HMC 22 177g
ロッドよりもブッシングの重さが大きいエクステンダーではHMCの方が重いですが、ロッドの方がブッシングよりも重くなるセンターではHMC22の方が重いです。発売当時は革新的なスタビライザーだったHMCも、今では、ブッシングばかりが重いロッドになってしまっています…技術の進化恐るべし…。。。
HMC 22をエクステンダーに使うことで、(たぶん2005年あたりから)主流になりつつあるソリッドな感覚を体験することができ、かつ、重さもHMC+比で15gほど、HMCからの乗り換えであれば、逆に軽くなります。
ポンドが低いお客様でトータルでスタビライザーの剛性高くしすぎると、逆に振動が増してしまうことがあります。クラブ等に所属されているのであれば、高性能の剛性の高いスタビライザーを16~20ポンドのウッド・樹脂ハンドルにつけて射って見る事で、どういった現象か知ることができます。ただ、エクステンダーだけ剛性を高くすれば、振動は相対的な柔らかいセンターロッド・サイドロッドに逃げていきますので、さらにその先により柔らかいタンパーがあれば、振動が逆に増えてしまう状態になる可能性はかなり低いです。軽いポンドのお客様には、まず、エクステンダーのみで試してみることをお勧めします。
…本日はここまで、明日、コンパウンドなどでもテストし、センター・サイドについての後半部分書きたいと思います。


Bear Archery Empire(エンパイア)

アクセル間32インチ、ワンカム、そして24インチから31.5インチと言う幅広いドローレングス調整幅を持つ、ベアー社の2013年Newフラッグシップモデル。
メーカー紹介動画はコチラ(英語です)

「EMPIRE(エンパイア)」

新たにこれから取り扱い始めるかどうか試験的に手配を行った、このBaer 2013年のフラッグシップモデル「エンパイア」ですが、「意外と」と言えばチョッとアレですが、多くの皆さまからお問合わせやご質問を沢山頂きまして、再び仕入れを行いました。

今回入荷した色はシャドウ(ブラック)。

50ポンドモデルです。
ただ、ホイットみたいに50ポンド表記の場合はは40ポンドから50ポンドで調整可能・・・、と言うものとは違い、このベアの場合は、約43~52ポンド、と言う風に強さが出ます。
*リムボルトの回転範囲は4回転までです。

特長はなんといっても、引き尺調整が可能なシングルカム(ワンカム)と言う事。
さらにその幅が、24.0インチから31インチ。
メーカーのうたい文句は、「市場に出回る弓(カム)の中で最も速く、最も滑らかな引き心地の新設計のS13カムはあなたに満足いく結果をもたらせてくれるでしょう」とのこと。

ワンカムらしくない、わりとしっかりとしたウォールでリリーサーコントロールの感覚がつかみやすい印象を受けました。
引き尺調整は、モジュールの位置移動&ドローストップピン位置変更方式。

モジュール(グレーのパーツ)をベースカムの刻みマークに数字を合わせます。
写真では引き尺設定「29インチ」を指しています。


ドローストップピンも同じ数字に合わせます。写真は29インチの位置。
30インチから先は“上の段”に行きます。

引き尺変更はボウプレス不要。
7/64インチの六角レンチ1本で簡単に引き尺変更が出来ます。

このカム、直径が大きいんです。

約16センチもあります。
HoytのRKTカム(2番カム)で約10センチですからかなり大きな印象を受けます。

ちなみに、上側に付く、アイドラ―ホイールですが、こちらも大きいです。

約12センチあります。
HoytのRKTカム(2番カム)より…(略

ケーブルガイドは、「4x4ローラーガード」。

4個のローラーにそれぞれ2個づつ、合計8個のボールベアリングが搭載されて、ケーブルをストレスなく滑らかに運んでくれます。

バックストップにはベアアーチェリー独特のデザイン「オフセットストリングサプレッサー」が搭載されます。

けっこう先端はぐにょぐにょしていて柔らかいです。
もちろんブレースハイトに合わせて長さも調整可能です。

シェル周りですが、こちらは必要最低限の強度、と言った印象。

グリップは、モールド素材のカバーが付いていて、付けたままでも、外してもどちらでも使えるデザインになっています。

*写真はメーカーHPより。

カムタイミングの調整など、神経質にならなくても良い、シングル(ワン)カムならではの手軽さ。
軸間32インチと言う、身軽さ。
引き尺調整が、0.5インチ刻みで24インチから31インチと言う幅広い対応性。
ピープの回転やクリープを防ぐプレストレッチを既に施してあるHP弦を用いたストリング類。
リムポケットとリムブーツには“アソビ”の無い精密なハンドルとリムのジョイント。*このジョイントは余計な振動を極力抑えてくれます。
7インチのブレースハイトは他のハンティングモデルに比べ、安定感で上回ります。

ハンティングボウとして世界的には超有名なメーカーですが、日本国内に置いてはイマイチの認知度は正直否めません。
純粋なターゲットモデルが存在しないのが原因かもしれませんが、それでもいい弓は沢山作っています。
この機会にぜひ注目してみてください。


雑誌アーチェリー…1995年という節目…メーカーさんごめんない。

2010年の1月から、3年かけて、雑誌アーチェリーのバックナンバーをすべて読み返しています。本日、1997年まで読み、2001年からはリアルタイムで読んでいるので、もう少しです。
本日は図書館で5時間かけて、1989年から1997年まで読みました。以前にこんな記事を書いた時に、コメント欄に1995年を節目に、雑誌アーチェリーが変わったというコメントありました。
いつから雑誌アーチェリーは沈黙したのか(70号~91号)
http://jparchery.blog62.fc2.com/blog-entry-498.html

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現在の雑誌アーチェリーは試合の写真集とアーチェリーショップで商売している人間が書いた記事ばかりですが、昔の雑誌アーチェリーはなかなか、キレのある雑誌で、ものを言う雑誌でした。
上の写真は91年の7月号です。当時の学連を知らないので記事の内容についてはコメントできませんが、特定の大学に対する意見申し立てで、今の雑誌アーチェリーでは絶対載せないような内容です。
雑誌アーチェリーが口を閉ざすきっかけとなった記事はどうなものだったのか、いろいろと予想を立てて、本日、初めて読みました。

>1995年の3・5月号ですね。
>僕もこの記事を見て、スタビライザーをイーストンに変えて正解だったと思っています。
>スキーに関しても、いろいろなメーカーの板やブーツを、でもスキーヤーなどが評価しているのをみると、
>アーチェリーメーカーの商品をアーチャーが評価するのは何も問題ないと思います。
>ただ、世界が小さいせいか、どうしてもお互いが気になって正しいことが書けるかどうか…
>ただ、技術的にしっかりしている人間が評価をするのであれば、とても面白い特集ができるだろうし、
>別冊として出しても売れそうではあると思います。
上のようなコメントをいただいていましたので、道具を評価したら、悪い評価がついたメーカーから、クレームがついたのか(つまり、メーカーがクレーマーだった)のかと思っていましたが、読んでみると全く違っていました。

流れを整理します。
(1995年3月号) 
感性の科学という弓具研究の記事がスタート。執筆者不明(監修は弓具科学研究班…誰?)。趣旨は弓具の進化は、行き着くところに行きついた、今後はもうスペックではない、感性が求められる時代だから、感性について語るというものすごい野心的なもの。
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しかし、記事の中身は…間違っていないけど、完全にずれている。記事の中身は「スタビライザーの理想形とは」について書いているのに、最後にいきなり、上の図が掲載されている。でたらめな記事なので、比較された商品名は省きますが、イーストン、エンゼル、ヤマハ、K、Kプロ、シブヤ、ハスコという7社9モデルでした。
本当に載っているのはこの図だけ…何ポンドでテストしたのか、だれがテストしたのか、長さはそろえたのか、重さを、それとも、みんなトップウェイト1つだと、ウェイトの数をそろえたのか…何一つ根拠が乗っていません。さらに次号で訂正のデータが出るのですが、重さ157gでテストしたイーストンのロッドの軽さが二重丸で、105gでテストしたエンゼルのロッドの重さを丸、150gのヤマハのロッドは三角印…いったい何を基準に評価したのか、軽さ…重さという意味以外にどういう評価基準があるのかわかりませんが…謎すぎます。
これは完全にクレームをつけたメーカーの問題ではなく、記事を書いた人間の問題です。
このグラフ以外の記事は「理想のスタビライザー」についてです。例えば、その結論が「振動吸収」だったとすると、次のステップは、何を持って振動とするかです。以前に書いた比較記事では、センサーはグリップに付けました。結論は振動が30%減ったというものですが、つまり、グリップ(=体に伝わる振動)と定義して計測しています。発射音の一つの発生源はリムポケットです。おそらくですが、ここにセンサーをつければ、振動は30%減っているか疑問です。
振動吸収を比較するのであれば、まずは何を持って振動とするかを定義しなければなりません。その次は、どのように測定したかを記録します。第三者機関に依頼した場合は、必要ないかもしれませんが、自分でやるなら、他人が追試できるようにする責任があります。
そうしてようやく、点数付して、上のような表を作るものです。
しかし、この記事では、スタビライザーの理想形をたかった後は、用語の定義(何を持って振動吸収とするか)と試験のやり方(どのようにすれば記事が正しいと確認できるか)を全部すっ飛ばして、自分の結果だけを載せています。
(1995年5月号)
冒頭、謝罪から始まります。
「前回、掲載した「各社カーボンセンターロッド比較表」にいくつかの誤りがあった。硬さ、軽さ、振動吸収、経済性の4項目に分け、それぞれに「◎」「○」「△」の3段階評価をしたが、その評価基準があいまいで、中には事実と完全に異なる評価もいくつかあった。」
(雑誌アーチェリー 1995年5月号)
その後謝罪だけではなく、けじめとして、長野県工業試験場にテストを依頼…しかし、ここがまた素人でダメなのだが…高価な機械を使ってスタビライザーのテストをします。また、日本バイメタルさんは辞退したので、テストしないとのこと(商品提供を受けているから?)。
長野県の試験場の風間さん(アーチェリーの素人)はかなり努力したと思うが…なんの実験をしているのかわからない。ハイスピードカメラで商品のテストをするとき大事なのは、どこに絵に収めるか、どのシャッタースピードで収録するか、どこにピントを合わせるかである。プロのカメラマンはカメラについては、プロでもアーチェリーを知らなければ、正しいテストができない。レンズ合わせのテストで撮ってもらうとき…たいていのカメラマンはなぜか、弓を射つ僕にピントを合わせる…弓具テストなので…レストに合わせてください…。。。
さて、長野県工業試験場のテストが意味をなさないのは、振動モードごとにテストをするという不思議な設定をしたいるためです。
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(小野測器さんのホームページより引用)
振動モードというのは、スタビライザーがどのように振動するかということです。見ればわかるように一次モードのように振動するようなスタビライザーは何の役にも立たないでしょう。自由端(ウェイトがついている側)が上下に振られ、そのカウンターとなる振動がないので、その揺れはそのままハンドルに戻ります。
5月号の試験では、なぜかそれぞれのモードでの振動吸収能力を測定しています。
この測定に何の意味があるのか全くの不明です。なぜなら、(少なくとも自分の知識の範囲内で)アーチャーが振動モードをコントロールことは不可能です。
「このスタビ2次で振動してるけど、チューニングして、3次に変えて、うってみよう」
といったチューニングができるとは思いません。


以前ハイスピードカメラでFUSEのカーボンブレードの24インチ~33インチまでを撮影しましたが、すべて2次モードで振動していました。長さを変えることでコントロールできるかもという自分の淡い期待は見事に打ち砕かれました。。。
つまり、大事なのは「そのスタビライザーがどのように振動するか」(=何次モードで振動するか)であり、振動モードはある程度固有なものなのに、1次モードではA社が、2次モードではB社が、3次モードではC社が優勝とやっても…で、だれが総合優勝になるのでしょうか。。。。
風間さん、本当にご苦労様でした。
(1995年7月号)
2号続けてピントはずれの弓具評価記事(しかも、辞退したい会社は辞退できるシステムはちょっと違う気がします)で、3回目…そして、これが大きな野望を持った「感性の科学」の最終後になるのですが、構成は弓具科学研究班から、本誌編集部にかわります。
そして、記事の中身はホイットのテクミチョフさんの資料を参考にしているというもの。さすがにこの記事は何の問題もなく、いい記事ですが、今度は具体的な商品名には一度も触れられることなく、全体を通して、理想的なスタビライザーの一般論で終わります。
考えてみると、独自で資料を集めないで、メーカー・プロショップが書いた記事を使うのはこのあたりからが始まりかもしれません。それより前はアメリカ、韓国、フランス、スウェーデンなどのトップアーチャー・コーチが書いた記事が中心ですが、だんだんとトップメーカー、大手プロショップの人間が各記事がほとんどになっていきます…実業団の減少で、ショップで働いていないトップアーチャーの減少という問題もかかわっているのは思いますが。
ということで、1997年まで読み進めました。95年のこの事件以降、キレている記事はほとんどなくなります。道具についての記事は、それぞれの良い点とスペックの紹介だけになり、ハンドルやリムについての語るのは、メーカーの人間だけになっていきます。
1998~2001年はまだ読んでいません。それと、サラリーマンとして海外赴任していた2004~2005年の雑誌アーチェリーも読んでいませんが、70年代から通して読んできて、やはり、95年のこの事が”何も語らない”きっかけになったのかと思います。
(追記)
…昔に雑誌アーチェリーさんに記事を投稿したら、レベルが低い(誰でも知ってる)といわれ、却下されましたが…まぁ、いいです。


HOYTの創業者 Earl Hoyt Jr. インタビュー

以前に、WIN&WINの社長のパクさんのインタビューをブログに掲載したことがあります。2年近くたちますが、今に続くことがいろいろと書かれていると思います。
ネット上には正しい情報もあれば、正しくない情報がありますが、HOYTの創業者に関して言うと、検索するといくつか記事がありますが、どれも彼が書いた文書やインタビューを読んだ自分の印象とは全く違います。HOYTの創業者の考えに関しては、本人の著書やインタビューなど、資料が豊富にありますので、今回は4冊の本から、抜き出し、一つの記事にまとめてました。


下記はHOYTの創設者のホイット氏(Earl Hoyt Jr.)のいくつかのインタビューをつなぎ合わせて、編集したものです。ベースになった記事は、下記の4冊の本で読むことができます。
・Archery (1972) 著者 Earl Hoyt, Don Ward
・Traditional Bowyers Encyclopedia (2007) 著者 Dan Bertalan
・Vintage Bows – 1 (2011) 著者 Rick Rappe
・Legends of the longbow (1992) 著者 多数

赤字は実際のインタビューを翻訳したもの。黒字は自分の補足です。補足も論点はずれていないと思いますが、実際のホイット氏の発言は赤字だけですのでご注意ください。



Eddie Lakeから変身

1930年代のミズーリ州セントルイス…エディ・レイク(Eddie Lake)というギターリストが毎晩地元のダンスホールを盛り上げていた。彼のバンドはラジオでも有名になったが、1938年に彼のバンドは解散することになる。このエディ・レイクこそがのちのアーチェリー界に、ホイットとして記憶される偉大なイノベータである。

* Eddie Lake はホイットがラジオ局からギターリストとして響きがよくないと指摘されて使用していた芸名。

弓との出会いとアーチェリービジネス
ホイットが弓と出会った時、弓には2種類しかなかった。リカーブか、コンパウンドかではなく、「誰かが作った弓」か「自分で作った弓」かだ。ホイットのアーチェリーとの出会いは、アローポイントに始まる。学校が友人から滑らかなアローポイントを貰い、その美しい流線型のデザインに夢中になった。1925年、14歳の時にボーイスカウトのマニュアルを読んで、ヒッコリーの弓を自作した。しかし、ヒッコリーはねじれに弱く、2つ作った弓をどれもすぐにねじれてしまった。

そこで、ボーイスカウトではなく、アーチェリーの専門誌を購入して、専門の知識を仕入れることにした。「Ye Sylvan Archer」という雑誌は当時唯一のアーチェリー雑誌だった。それを購読し、そこに広告が出ていたHunting with the Bow and Arrow(1923)という購入し、そこから専門知識を学びとり、オレゴンからイチイの一枚板を購入して、初めての実用的な弓を作り始める。

*これは所謂セルフボウというもので、一枚板からできている。そのほかにバックドボウやコンポジットボウなどがある。

1931年、大恐慌の中、ホイットは父親と副業で矢づくりの仕事を始める。30代の時、景気が回復したのを受け、セントルイスのワシントン大学に通い、エンジニアリングを学ぶ。昼は大学と父親の会社の手伝い、夜はギターリストという生活を送る。

*アメリカでは社会人学生は珍しくない。

40代初頭がホイットの人生の転機だった。大学を卒業したホイットはカーティス・ライト航空のエンジニア部門(のちのマクドネル航空)に職を得ていた。しかし、父親の会社が戦争の影響で倒産したことにより、父親は矢づくりが副業から本業となる。自分も週60時間の本業をこなした後に、父親の矢づくりを手伝うようになる。
しかし、1946年に矢作り職人として多くの顧客を持っていた父親が病に倒れ、ホイットはアーチェリービジネスから手を引くか、エンジニアとしての職を辞すかの選択をすることを迫られ、彼の決断がアーチェリーの歴史を変えることとなる。

「アーチェリービジネスに舵を切ったことは、最初のうちは間違った決断だと思っていたんだ。マクドネル航空での良い仕事を離れてから最初の3、4年、アーチェリーの仕事の出来はひどかった。でも4年目から風向きが変わったんだ。それからは右肩上がりさ。その傾向はずっと続いていた。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.183)

ホイットは1946~1978年までアーチェリー業界のトップを走り続けた。1978年、ホイットは会社の経営権をCML Groupに売却し、5年後の1983年に経営権はイーストンに、さらに売却された。その間、ホイットは社長から退いたものの、副社長と研究部門の責任者、コンサルタントとして、かつて、オーナーだった会社に籍を置いた。
ホイッとはアーチェリー業界団体(AMO 現ATA)の理事としても、活躍し、現在のアーチェリーの道具に関する基準(AMOスタンダード)の95%以上に関与している。

ハンターとして
ホイットはハンターでもあったが、あまり、情熱的とは言えなかった。

「あるときフレッド・ベアーと話したけど、彼は僕に言ったんだ。彼のハンティングに対する情熱は、対象が何であれ、大きな獲物を仕留めることだってね。僕は逆にそんな欲望は持ったこともなかったね。…中略…いまでは獲物を仕留めることはまったく重要ではなくなってしまった。一番大切なのはハンティングのその場にいるということなんだ。…中略…単純に僕は大自然の中で獲物を追い回すことそのものを楽しんでいるんだよ。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.185-186)

*フレッド・ベアーは当時のトップメーカーBear Archeryのオーナーで、伝説的なハンター。

ロングボウの思い出
今でこそ、リカーブボウメーカーとして知られるホイットだが、彼はロングボウを作ることから始めた。ロングボウを作るとき、特にひいきしていたのは、オーセージだった。

「僕はオーセージをちょっとひいきして使っていた。すごく丈夫な木だからね。ハンティングボウには特にそうだったよ。イチイの方がより引き味が優しいシューティングボウになり、ターゲットシューティングには最適だった。でも僕がオーセージを好んで使っていたのは、それがミズーリ原産であり、丈夫で良いハンティングボウを作るのに向いていたからさ。
あとは手に入れやすかったということもある。でも、外に出てオーセージを見つけてそれを切り倒し、そこから弓を作るという単純な話でもない。山を1マイルほど下っていっても、弓を作るのに十分な均一性とまっすぐさを持っている木を見つけることは簡単ではない。何故ならオーセージは大抵曲がりくねって育ち、一枚板から作ることはほぼ不可能だ。普通は木をフィッシュテールして接ぎ合わせる。そうすれば同じ丸太から接ぎ木を取ることができるから、同じ性質を持ったウッドを両方のリムに使うことができる。」

(Traditional Bowyers Encyclopedia P.186)

現在の弓からは異様に見えるが、当時はレストがなく、シューターのこぶしに矢を載せてシューティングしていた。そのために、羽のトリミングをしっかりしないと、射ったときに、羽の筋が拳の肉をえぐって飛んでいく、しかし、アローレストとしての機能を果たしてきた、傷だらけの拳は、むしろ、ホイットには誇らしいものだったようだ。

ホイットの執務室のオーセージのロングボウの横には、古いスタティクリカーブボウがある。

*リカーブの深さにより、セミリカーブ・スタティックリカーブ・フルワーキングリカーブの3種類に分類される。

「僕はカムやスタティックリカーブから、シューティングが滑らかでより効率的なリカーブに移っていった。歴史的に見るとこの進化は比較的最近できたものだ。最初のリカーブは30年代後半に登場した。そのタイプのリカーブを最初に作ったのはビル・フォルバース(Bill Folberth)だった。彼は情熱的なアーチャーであり、イノベータであり、初めてリカーブを導入した人物だった。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.188)

*Folberth Bowのオーナーで、弓のラミネートやリカーブに関する特許を持つ(US2423765)。

執務室にはほかにもいくつもの思い出深い弓がある。1947年、ホイットは初めてリムのダイナミックリムバランスを得ることに成功した。つまりは、上下のリムの長さを初めて同じにした弓を作った。昔の弓のグリップはただの棒のようなものだったが、1948年にはピストルグリップを弓に搭載した。1951年には安定性を向上させたデフレックスボウと、パフォーマンス重視のリフレックスボウの製造を開始。60代の時には、ハンドルに安定性を持たせるために、ハンドルの重さを増やすこと仕組みを開発。ウッドハンドルに穴をあけて、その中に鉛を入れるというものだ。

「あるとき僕は弓にウェイトを入れるという発想がミスだということに気がついたんだ。より伸ばした状態のウェイトがあればもっと良くなると考えた。スタビライジングの原理を説明するために僕が挙げた例は、箒を柄の端で持って、その移動への抵抗の感覚を掴むということだった。そうするととても速く動かすことはできない。でも柄の真ん中で持つと、さっきと比べて驚くほど動きへの抵抗はなくなる。これが単純な物理の法則を用いたスタビライザーの原理の説明だ。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.188)

1961年、ホイットはこの原理を利用したスタビライザーが搭載された弓を持って、アルカンザスのホットスプリングスでおこなわれたナショナルフィールドアーチェリーアソシエーションチャンピオンシップに行った。会場では「ドアノブ」と馬鹿にされたものの、この弓を使用したロン・スタントンが、新しい弓で新記録を樹立し、その仕組みは一気に有名となった。

グラスからフォームへの挑戦
1970年代前半、エキゾチック・ハードウッドの値段が高騰し、低価格の金属ハンドルが人気となった。ホイットは、エキゾチック・ハードウッドから、メイプルに変更するものの、結局は1973年にすべてのラインナップが金属ハンドルになる。

リムでは、まずグラスファイバーを研究した。グラスファイバーをリムに使用することに関して、ホイットは決してトップランナーではなかったが、熱心に研究した。特に注目したのはグラスの色。もっとも性能が悪いのはグレーのグラスファイバー。グレーの顔料が接着材に影響し、接着が不完全になってしまう。白もダメだった。白のグラスファイバーを作るのには大量の顔料が必要で不純物が増えてしまう。日光の影響を抑えるためには、リムは黒にしないという大原則があったが、黒のグラスファイバーは一番性能がとてもよかった。もちろん、透明のファイバーもよいが、黒とは大差がない。

ホイットの次の挑戦はフォーム素材だ。

「初めてファイバーグラスを使い始めたとき、ウッドコアボウと呼ばれているもののコアがイチイだろうとオーセージだろうとなんら代わりはないと思った。だってそれ自体がより性能の高いモジュラー素材に挟まれてしまっているからね。この素材、ファイバーグラスは非常に素晴らしい素材で、矢を推進させるエネルギーに長けていた。そのために、ウッドコア基礎(glue base)とスペーサーにすぎなくなってしまった。コアの重さ以外は、もはや弓のダイナミックな物理特性に影響を与えることはない。

コア材にブレークスルーができた。それは比重がメイプルよりも軽いプラスチックで、直径60マイクロンほどの微少中空体からできている。この素材は非常に高い耐久性能がある。必要な物理的特性をすべて持ち合わせ、湿度の影響を全く受けず、熱や寒さにも強い。僕たちの新たな特許技術のシンタックスフォームコアはすべての面でよくなっている。これが長年に渡る「コアウッド」のスタンドダードとなる可能性は高いと思っている。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.189)

*シンタクチックフォームのこと。微細中空ガラス球入りエポキシ樹脂。

しかし、フォームコアの製造はとても困難だった。まずは、フォームの内側には気泡が含まれているが、この大きさを均一にすることができなかった。試作品はすいすいチーズのように気泡は大きさがバラバラで、とても均一ではなかった。また、完成したフォームの加工も困難だった。マイクロスフェア構造という特性のために、ブロックからラミネートするために切り出すとき、グラスファイバーの何倍もの負荷が機械にかかり、刃がすぐにボロボロになってしまうのだ。いくつかの困難を乗り越えたホイットのシンタクチックフォームコアリムは、いくつもの世界記録を塗り替えることになる。

スピードよりも安定性
リムの性能には多くの面がある。ホイットが最も重視していたのはリムの安定性だ。スピードよりも、リムが安定して正確に、ミスに対する許容性が大きい事を重視して設計していた。安定性・スピードのほかにも、スムーズさや、効率性、振動の少なさなども必要だが、すべてを一つのリムに盛り込んだ究極のリムはまだ存在していない。すべてのメーカーは、優先順位をつけて、妥協しながらリムを設計している。

「メーカーによってそれぞれが異なる特定の能力に力を入れているのが分かる。多くは精確性を犠牲にして、スピードに傾倒している。しかし、高いパフォーマンスから発生するストレスによって、弓の寿命は縮んでしまう。どの能力に力をいれるか、重要度はそれぞれ異なる。僕の場合、最も優れた弓とはこれらすべての要素のバランスが良く取れている弓で、かつ安定性に重きを置いているものだ。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.191)

コンパウンドとクロスボウ
矢作り職人としてアーチェリー業界でのキャリアをスタートさせ、ロングボウの製造からリカーブボウの製造に移行したのち、ホイットはコンパウンドボウの製造をスタートする。アーチェリーのマーケットは大きく変化し、アメリカ最大のマーケットであるハンティングボウはロングボウ/リカーブボウからコンパウンドボウにかわっていく。1970年代にその変化についていけなかったアーチェリーメーカーの多くは破たんした。シェークスペアのアーチェリー部門やウィング・アーチェリー(世界初のテイクダウンボウを開発したメーカー)などだ。

「僕は昔コンパウンドに対して偏見のようなものがあった。昔の古い会社はみんなそうだった。ベアやピアソン、他の先人たちもみんなコンパウンドに背を向けていた。彼らはみな、それを弓とは思わなかったんだ。僕らは偏見にまみれ、視野が狭かった。」

「僕にとってクロスボウは、(ロングボウと)歴史的には対等でも、ロングボウほどのロマンスが感じられない。この主張は議論する余地があることは分かっている。でも僕は、クロスボウが人気のあるものになるとは考えていない。その鍛錬には、手で握って、手で引いて、手でリリースする弓ほどの挑戦が必要ないように思える。当然、クロスボウに情熱を注いでいる熱狂的な人たちがいて、彼らが自分のやっているスポーツを促進しようとしていることも理解できる。それは僕にとっては関係のないことだけど、彼らの成功を祈っているよ。」
(Traditional Bowyers Encyclopedia P.198)

ホイットはコンパウンドボウを開発し、販売する決断をする。一方で、クロスボウとは距離をとり続けた。今でも、ホイット社はクロスボウの製造はしていない。
ホイットのインタヒューを読むと、やはり、現在のアーチェリーメーカーの開発者とは明らかに違う。最高の競技用リカーブボウを開発していたものの、用語の使い方(self bow – backing – working recurve)や考えは、ロングボウの開発者そのものだ。

ホイット社を78年に売却した後も在籍していたが、のちに、ロングボウ職人のJim Belcherとともにロングボウ中心のアーチェリーメーカー(Sky Archery … ホイットの死後マシューズに売却)を立ち上げたことからも、やはりロングボウを作りたい気持ちは強くあったのではないかと思う。