栄養学は科学なのか? 栄養・栄養学について考える 3

食生活指針という文部省・厚生省・決定、農林水産省が策定しているガイドラインがあります。ウィキペディアによれば、これは「どのように食生活を組み立てればいいのかを示した指針である」とされています。では、そのトップにある項目は何でしょうか。

1.食事を楽しみましょう。

全くその通りだと私は思います。

さて、前回の記事では間違いについて書きましたので、今回は正しいことについて書きます。記事のタイトル「栄養学は科学なのだろうか」というのは、私の言葉ではありません。これは、佐々木敏さん(厚生労働省の食事摂取基準の策定などにかかわった医学博士)の著書に出てくる言葉です。皆さんはどう思われますか。

栄養学は科学なのかと問うた上で、彼は、

私たちの健康を守ってくれているのは、ヒトの研究の中でも、最新の数編の論文ではなくて、多くの研究者によって行われた、たくさんの研究によって築かれたおちついた情報です。

(佐々木敏の栄養データはこう読む! P.317)

と書いています。誤解を恐れずに言えば、栄養学の中身のほとんどは、正しいことではなく「仮説」なのです。ただ、仮説であってもそれは科学の一様態です(*)。

*科学とはなにかより詳しく知りたい方は「科学が作られているとき―人類学的考察  ブルーノ ラトゥール著」をお勧めします。「仮説」がいかに科学であるかについて書かれています。

ではなぜそのような状態であるのか、そのような状態でなければいけないのか。科学に興味がある方であれば、覚えている方も多いと思いますが、昨年の2月にアメリカのチームが「重力波」を検出したと発表しました。初めの直接的検出です。重力波とは何かを説明するのは難しいのですが、音波が音の波であるように、重力波はその重力の波です。実際に変換可です。

こんな音です。

重力波、世紀の発見をもたらした壮大な物語
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/021200053/

この重力波は1916年にあのアインシュタインによって、その存在が予言されたものです。そして、その仮説が実際に直接的な検出という形で実証され、存在すると確かめられるまで、100年もかかっているのです。

仮説が正しいとされるまで…仮説ではノーベル賞は受賞できないので、1944年の研究が1983年、約40年後にやっと認められて、ノーベル賞を受賞したバーバラ・マクリントック博士(DNAの研究者)は「ノーベル賞を取る条件の一つは長生きする事(受賞時81歳)」とまで言っています。ただし、彼女の場合は女性研究者ということもあり、実証されるまで時間がかかるということ以外の意味も含んでいると思われます。

しかし、栄養学の場合はそうもいきません。重力波の検出であれば、検出するまで焦らず研究すればよいだけなのですが、食事は日々人々が摂取しているもので、仮説が実証されるまで100年間も気長に待っているというわけには行きません。仮説であっても、それで現在、健康問題で苦しいでいる方の健康状態の改善に役立つ(*)ならば、さっさと使ってしまおうという状態なのが、栄養学の実態です。

*実際にはマイナスのリスクが少ないといった基準だと思います

もちろん、仮説の状態で見切り発車して悲劇も引き起こすこともあります。有名例では日本での脚気という病気があります。陸軍が脚気について誤った仮説を採用したことで、10,000人近い脚気死亡者を出したと言われています。

日本の脚気史(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E8%84%9A%E6%B0%97%E5%8F%B2#.E8.84.9A.E6.B0.97.E6.83.A8.E5.AE.B3

さて、アスリートが摂取すべき食事・栄養というものの根拠である栄養学について書いてきました。そろそろ、具体的な話に切り替えていきたいと思います。

突然ですが、みなさん、ビタミンCはどの程度の摂取が良いと思いますか?

ビタミンCは、1927年と90年も昔に発見された栄養素の一つですが、この利用については現在でも答えが出ていません。同じ人類ですが(笑)、推奨量は英国食品基準庁の40mgを最低に、WHO(世界保健機関)の45mg、アメリカ科学アカデミーでは90mg、日本では100mgとされています。また、日本では成人という枠で100mgの推奨だけがされていますが、アメリカの科学アカデミーでは喫煙者は35mg多く摂取することを推薦しています。また、これはウィキペディアからの情報にすぎませんが、1,000mg(イギリスの25倍!)を推奨する論文(*)もあるようです。

*Vitamin C: Is Supplementation Necessary for Optimal Health?

1,000mgは別として、英国食品基準庁の専門家とアメリカの科学アカデミーの専門家で考え方が違うものについて、正直これ以上私の知識では太刀打ちできません。多くの方がそうではないかと思います。ではどうすればよいのか。

結局、専門家同士でも結論が分かれるものは、どちらも根拠に乏しいからだと考えられます。どちらの説も決定的な”正しさ”を持たないために、しかし、だからと言って「議論が決着するまでビタミンCの推薦量の発表は待て」とするわけにもいかないので、それぞれの国の主流派が推薦量を決めているのでしょう。

それに対して、私たちができることは、もっともっと専門知識をつけていくことではないと思います。そもそも最終的な”答え”が存在していないのであれば、実践レベルでは、自分でリンクを考えながら、いろいろと試してみるしないというのが私の結論です。

続く(次回から具体的な話になる予定)。

参考

佐々木敏の栄養データはこう読む! 佐々木敏 著
栄養学の歴史 (KS医学・薬学専門書) ウォルター・グラットザー 著


“専門家”にだまされないために 栄養・栄養学について考える 2

栄養学についての記事の続きです。先日、根拠のないコピペ記事ばかりを書いていたDeNAのサイトが問題となり、謝罪会見にが行われました。アーチェリーについて書かれたサイトでもでたらめ情報を発信しているところがありますが、いろいろと検討した結果、否定する記事を書いて拡散させるよりは、放置するのがベストだと判断しています。

DeNA、「3時間謝罪」でも解明しない詳細経緯 ‐ キュレーション事業の現場責任者は欠席
http://toyokeizai.net/articles/-/148657

“弱者”のための栄養・栄養学について考える

さて、DeNAではでたらめな記事が問題となりました。当然ですが、嘘を書いてはいけません。しかし、ミスリードを誘う、読んだ人に誤解をさせる情報はグレーゾーンとなっています。この部分が栄養学においては、かなり大変なことになっています。アーチェリーをしない人はいますし、ネットを見ない人もいると思いますが、食事を取らないという人はまずいないでしょう。食に関する市場は莫大なものであり、その莫大な利益を目的として、グレー情報が多く出回っているのが現状です。

栄養について計算するうえで”根拠”となっているが食品成分表というものです。このデータ自体は文部科学省が無料でPDFとして公表していますが、よく使うのであれば、1000円程度で売っている製本されたものが便利だと思います。ここのデータが栄養の”根拠”となっていて、ここを疑い出したらきりがないので、これは正しいものとして使っていきます。

日本食品標準成分表2015年版(七訂)について
http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365295.htm

この記事は管理栄養士という立派な国家資格を持った専門家が監修した”ひじき”を称えた記事です。いわく、

「食物繊維が豊富」
「鉄分が豊富」
「カルシウムが牛乳の10倍以上」

だそうです。

(食品成分データベースより)
では、実際はどうなのか見てみましょう。これは食品成分表の「ひじき」の項目です。比較のために牛乳を追加しました。数値を見てみればわかると思いますが、食品栄養士の方は確かに”根拠”に基づいてこの記事を書いています。文部科学省のお墨付きです。しかし、それは”乾燥ひじき”の情報なのです。

ひじきを食べたことがある人は多い思いますが、乾燥ひじきを食べる人は…いますか?

シイタケなどと同じように乾燥したものは、水に戻してゆでて食べるのが一般的だと思っています。では、一般的な茹でられたひじきはどうでしょうか。鉄分は58.2mgから2.7mgと約95%まで減り、カルシウムは1/10に。牛乳とほぼ同じ値に…とはいっても牛乳をコップ一杯(約200ml)飲む人は多くても、ひじきを200g食う人は少ないでょう。食物繊維も51.8mgから3.7mgと約93%減です。

*豚レバー(生)の鉄分は13mg いわのり(素干し)の食物繊維は41.7mg(乾燥した状態の数値ですが、ひじきと違いのりは乾燥した状態で食べる人はいるでしょう)

別にこの管理栄養士の方だけ攻撃したいわけではありません。ひじきには鉄分が豊富というグレーな情報を広めているサイトは無数にあります。そして、このように栄養に関する情報では、専門家は間違ったことは書きませんが、データをうまく操作して、読者に誤解をさせるようにしているのです。

おまけに上記のサイトではこんなことまで書かれています(これが書かれていることが今回私がこの記事が悪質と判断した理由です)。

乾燥ひじきを水で戻した後に下茹でをすると半分以上も無機ヒ素の量が減ることがわかっています。50kgの人が仮にひじきの煮物を食べた場合、週に3回以上ひじきを食べ続けなければ摂取量の基準値を超えることはないので、それほど深刻になる必要はありません。

ひじきとヒ素との関連について書かれた部分ですが、栄養素の値は乾燥状態のものを意図的に使用しながら、実際の運用(調理)では茹でられることを前提に安全だと言っているのです。また、記事中にも乾燥した状態での値であることは明示されておらず、間違っているとは言わないものの、これは果たして正しい情報なのでしょうか。

これが栄養学の現状なのです。これは管理栄養士という資格を持つ人が、栄養学が正しく扱われる現場(*)だけではなく、フリーで国家資格を権威にお金をもらってグレーな情報を生産してい人がおり、そして、責任を取る必要がない状態であるのが原因でしょう。

*病院食など本当に正しく栄養価を計算しないと大変なことになり”責任を負って”栄養学を運用している方々

当然このサイトには、

-閲覧や情報収集は利用者ご自身の責任において行っていただくものとし、当社はいかなる責任も負いません。

という文書が添えられています。なぜ、責任を負わずに情報提供するのでしょうか(*)。

続く。

*その不便性は分かります。お客様から、改造・非推奨のセッティングについて可能かという問い合わせがあったりしますが、個人的には問題ないと思っていても、問題になった時に責任を取れないので、無理ですと答えなければいけないときがあります。しかし、それで良いと個人的には思っています。


参考

体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか」畑中 三応子 著 


“弱者”のための栄養・栄養学について考える

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アスリートであれば、コンディションと体づくりには十分な栄養が必要であることは知っていると思います。そして、正しい食事・栄養摂取の方法などについて、検索したり、本を買ったりといろいろな方法で勉強したことがある人も少なくないと思います。私も個人的に、何度も勉強してきました。

ただ、15年以上、納得するような考え方や、栄養学の本に出合うことができませんでした。そこで、試合があるとコンディショニングが必要なので、じっくりと取り組むために当分試合に出ないで、栄養学というものに向き合ってみようと決めたのがきっかけです。


下記、私の個人的な経験についてです。人それぞれ体質が違いますので、私の考えが違う方に当てはまるとは限りません。また、何でも食べられるという強者の方には参考になりません

私は個人的には魚介類が体質に食べられません。というと刺身が苦手なのと聞かれることがありますが、そのレベルではなく、卵焼きの出汁や、チンジャオロース(青椒肉絲)にたまに入れられているオイスターソースも苦手です。さすがに出汁は我慢すれば口に入れることは可能ですが、現在はコンディショニングの観点から風味を感じるものは口にしないようにしています。

そういった人間です。なので、日本の栄養学にそれとなく漂う「全部食べなれる人間になれるのがベスト」という感じにはずっと違和感を感じてきました。まぁ、負け犬の遠吠えであることは分かっていますが、学問というものは弱者にも寄り添うべきだというのが私の考えです。

栄養学・食事というものにじっくりと取り組もうと考えてから、かなりの本を読んだりしてきましたが、ついに自分が共感できる2冊の本にたどり着くことができました。ともに、”弱者”に寄り添う視点を持った本です。

1冊目は「精進料理と日本人」という本です。著者は鳥居本幸代さんという家政学修士の方で、比叡山西麓生まれの方です。。精進料理にはバランスよくなんでも食べるという考えはなく、信仰に則り、鳥獣魚介、および香り高い五葷(にんにく、ねぎ、にら、たまねぎ、らっきょう)を除いた野菜・豆類・穀物類を上手に、限られたものをバランスよく食べるという考え方によって調理される食事のことです。

2冊目は「ジョコビッチの生まれ変わる食事」という本です。著者はテニス選手のノバク・ジョコビッチ選手、世界トップクラスのテニスプレーヤーです。彼の食事に関する考えもバランスよく何でも食べるというものではなく、自分の体がよく消化できるものを中心に食事を組だてていくというものです。具体的には彼は小麦と乳製品をあまり消化(不耐性)できず、トマトもあまりよくないという血液検査の結果となったようです。

誤解のないように書きますが、体に良い(うまく消化できるか)かどうかは個人差があります。ジョコビッチ選手は乳糖不耐症だから乳製品を避けるのであって、人によって異なります。専門サイトによれば、北欧に起源をもつ人では2~5%しか見られない傾向です(*)。

*http://www.biv-decodeme.jp/health/conditions-covered/lactose-intolerance.html

まぁ、簡単な話にすれば、アルコールと同じで、同じ量を飲んでも、酔っぱらう人もいれば、酔っぱらわない人もいるということです。それは個人差であって、「○○は体にいい」と言い切る事に無理があるというのが私の考えで、それを信仰(精進料理)と不耐性を持つプロアスリートの本で同じ考えを見つけたという話です。

(ウィキペディアより)

誰かか何かを言ったからと言って、それをそのまま実践しても得るものは少ないと思います。そこに一般論的なものを探して自分に当てはめて実践していく必要があります。探してみると、驚くことにこの2冊の本には共通点がありました。食事(栄養摂取)に関して共通して下記のことをアドバイスしているのです。

精進料理 – 「五観の偈」より抜粋

・この食事がどうしてできたかを考え、食事が調うまでの多くの人々の働きに感謝をいたします
・食とは良薬なのであり、身体をやしない、正しい健康を得るために頂くのです
・今この食事を頂くのは、己の道を成し遂げるためです

ジョコビッチ選手(プロテニスプレーヤー) - 著書より

・食事は情報だ (P.115)
・ゆっくりと意識的に食べよう (P.118)
・肉体に明確な指示を出せ (P.133) *注釈 食べたものがどのように体に働きかけてほしいのかを意識しながら食事する

どうだろうか。感じ方はそれぞれですので、全く違うと感じる方もいるかもしれませんが、私は一つの共通するものを発見したように感じます。

“弱者”にとっての栄養学・コンディショニングのスタート時点は「自分が何を食べているのか知ること」ではないかということです。ジョコビッチ選手の食事法と中世の宗教家たちの食事法はこの点をスタートとしているのではないかと思います。

冬休みの間、このテーマでいくつかの記事を書きたいと思います。続きます。

*例えば、クッキーを食べて「食事が調うまでの多くの人々に感謝」とは「クッキー焼いてくれた相方にありがとう」ということではなく、その材料である小麦粉を作ってくれた農家さん、全卵を作ってくれた養鶏場の方、バターを作ってくれた酪農業者、サトウキビ(和三盆を使った場合)を栽培してくれた方とそれを製糖してくれた方、そして、すべての源である太陽と水と空気と大地に感謝することではいかという解釈です


リック・マッキニー選手の真直度についての意見はV5で3インチ(ぎりぎり10点)

先日、真直度とシャフト性能について記事を書きました。真直度とグルーピングについて、オリンピック・世界選手権で多くのメダルを獲得したリック・マッキニー選手が以前コラムで書いていたのを思い出しました。

紹介します。


In the late 1980’s AFC and I ran tests to determine how straight does the arrow need to be in order to carry a 3 inch group at 50 meters or 55 yards. We used a recurve, fingers with a speed of near 200 feet per second. We found that .010″ T.I.R. (Total Indicator Reading) was the maximum in order to keep a 3 inch group at this distance.

リック選手は、1980年代後半にAFC社(現在はアーチェリー関係の製造はしていないと思います)とシャフトの精度とグルーピングについてのテストを行っています。その結果、リカーブボウを用いて200fps(現在のリムであれば40ポンド前後のリムでX10を射った時がこのくらいの矢速)で矢を射ち出した場合、50mにおいて3インチ(おおよそ10点の大きさと同じ)のグルーピングを作るために必要な精度はTIR 0.01″としています。これより精度が悪いシャフトでは、どんなに良いシューティングをしても矢の精度が問題で点数を失います。

TIR は Total Indicator Reading という意味で簡単に言えば、+-表記の倍です。ですので、TIR 0.010″ = +- 0.005″ = V5グレードとなります。

現在はもう80年代後半ではないので、すべてこの通りではないとは思いますが、矢の精度の問題で50mで10点を外さないで済むのは、V5 = +-0.005″ まで、V3以上であれば競技用として最低条件は満たしている(*)というのが、業界での一つの共通認識であるのは、このあたりのテストから来ています。

*イーストンでいうとカーボンワン/ACCグレード

参照
Carbon Tech :: Arrow Spine, Weight and Straightness


【MYBO オリジン】コンパウンドボウができるまで

マイボウ(MYBO)がコンパウンドボウ・オリジンが完成するまでの動画を公開しました。リカーブもおおよそ同じような感じで作られています。

一点、7:50くらいからのコンパウンドソリッドリムの作り方はリカーブとは大きく違いまでので興味がある方はぜひ見てみてください。

メーカーによってはアルマイトを外注に出しているメーカーもありますが、マイボウでは自社ですべて行っているようです。

mybo_edge2mybo_edge1ちなみに、週末、マイボウは2017年モデルの新しいコンパウンドボウ・エッジ(Edge)を発表しました。詳細のスペックはまだ出ていませんが、プロシューターの方が全英選手権などでかなり活躍しているので、WAの試合で実績を残すようになるのも時間の問題かなと思います。

楽しみです。


高性能の弓であなたのシャフトは??

%e3%82%b9%e3%83%91%e3%82%a4%e3%83%b3_%e6%9f%94%e3%82%89%e3%81%8b%e3%81%8f現在2017年に向けてサイトの説明などの更新を行っています。最新の弓具はあなたの矢(スパイン)にどのような影響を与えるのか?

チャートが毎年更新されるとき、リカーブとコンパウンドでは逆のことが起きていることはご存知でしょうか。

リカーブの場合、高性能なリムほど効率性が向上します。リムの効率性というのはアーチャーがリムを引いた時に使った力のうち、どれだけが矢に伝わったかという率です。この値が高いほど、矢に多くのエネルギーが伝わり、矢速が速くなります。

%e3%83%81%e3%83%a3%e3%83%bc%e3%83%882005-2017これは2005年のチャートと2017年のチャートとの比較です。私が加工して28インチだけ表示してあります。T9カテゴリーが示すスパインは同じものです。リカーブ、2005年当時では、56-60ポンドだけの強さがないとT9カテゴリー(X10 なら450)が使えません。しかし、2017年では53-57ポンド、3ポンド低い実質ポンドでもそれだけのエネルギーがシャフトに伝わることがわかります。つまり、高性能な弓に買い替えた時には、矢を”硬くしない”とスパインが合わなくなります

では、コンパウンドではどうか。コンパウンドは効率性ではなく、矢速のレーティングが存在します。この場合、自分の弓を55-60ポンド(試合で使用できる上限)を基準にした時、2005年の弓では291fpsあれば、T9カテゴリーとなりますが、2017年の弓では、T9で55-60ポンドが適合する弓は301fpssとなります。より速い矢速の弓となっても、スパインを硬くする必要がありません。これはつまり、高性能な弓に買い替えた時には、矢を”柔らかくしない”とスパインが合わなくなります

(下記技術的メモ)

リカーブの場合チャート表に出ているのは見かけ上のポンド数(リムに蓄えられるエネルギー)ですので、これを一定とすると、性能の向上ともに効率性の向上することで、実際に矢に伝わるエネルギーは向上する。よってスパインが硬くなる。


コンパウンドの場合チャートに表記されているのは実際の矢に伝わるエネルギー。つもり、すでに効率性を考慮した値である(効率性によって3つの欄が選択される)。よって効率性の向上の影響を受けない。つもり、効率性という性能はそもそもチャートには関係ない。チャートから読み取れるのは、矢に伝わるエネルギーが3.4%(301/291)向上しても、同じスパインが使用できることを示す。

その理由としては多様な要素があるが、基本的にはシャフトの受ける的方向以外のストレスは性能の向上とともに低下する方向にあるので、パラドックスを発生させる力は低下している(リカーブでいえばコンパウンドボウはどんどんリリースがうまくなっている)。矢に伝わるエネルギーを3.4%向上しても、シャフトがパラドックス方向に受けるストレスは同じであることを示す。


ホイット2017年の変更を理解するための前提知識。

%e3%83%9b%e3%82%a4%e3%83%83%e3%83%882017%e3%83%aa%e3%83%a0%e3%83%9c%e3%83%ab%e3%83%88もの事には順番があり、それによってより正しく物事を捉えることができるようになります。

ホイットの2017商品も納品されました。データもほぼ揃いました。ただ、販売開始はもう少し待ってください。まずは正しい情報を提供してからだと思ってます。

今回は自分が知る限り、ホイット史上、競技用モデルでは最大の変更量です。競技用の上位モデル、プロディジーシリーズ3種類、GMX、GPXと競技用の上位モデル5つがすべて販売終了です。この思い切り、かつ、販売店にも痛みをもたらす(全部の在庫がモデル落ちになる)変化を決定した裏には、以前に書いた問題があります

今回、ホイットではリムボルトの精度をコレット式に変更することで高め、問題に一掃を狙っていますが、その結果がどのなるかはレビューだけでは不十分だと思います。時間による検証が必要でしょう。

今回の問題は主にアメリカとヨーロッパで起きました。日本では大手が沈黙したこともあったかもしれませんが、あまり大きく取り上げられることはなかったと思います。その理由は、この問題を正しく理解するには知識が必要だったからだというのが自分の結論です。

ホイットの解決策の裏を取れば、ホイット自身が理解していた問題を知ることができます。最新のモデルでは軽量化がはかられと書いてあれば、前作は少し重かったというマーケティングのフィードバックがあったと考えてよいでしょう(もちろん、違う理由もあり得ます)。

今回、ホイットはリムポケットのシステム変更により、「究極の正確さとリムアライメントが得られる(The result is ultimate accuracy and precise limb alignment.)」としています。

この言葉は理解できますか? …理解できる方は下記の記事を読む必要はないです。

%e3%83%aa%e3%83%a0%e3%82%a2%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%a1%e3%83%b3%e3%83%88リムアライメント(limb alignment)とは、簡単に言えば、日本ではセンターショットとされているものです。信じられない方はグーグルで”center shot recurve”と検索してみてください。結果はほとんどが弦と矢の関係の話となるはずです。日本では、名前がついていないように感じますが、ポイントを弦から1/2幅程度出すといったチューニングが英語のCenter Shot(センターショット)です。

*違った意味で日本に伝えられた理由は知りません。

%e3%83%aa%e3%83%a0%e3%82%a2%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%a1%e3%83%b3%e3%83%882では、(日)センターショットと(英)リムアライメントが同じ作業からというと、作業は違うが結局同じことをしているのだと考えられます。アライメントとは一直線にするという意味ですが、この場合には4つの線が水平に並ぶことが求められます。

1. ハンドルの平面部
2. ハンドルとリムU字部分の接合部
3. ハンドルのダウエルピン(Dowel)がリムと接する部分
4. リムの面

リムがねじれていない限り、この4点揃っていれば、リムアライメント(日本でいうセンターショット)には問題がないと判断できます(*)。

*リムがねじれている、ハンドルがねじれている、センタースタビライザーのブッシングがまっすぐではない、センタースタビライザーがまっすくで出ない場合などは異なる

さて、ウィンでもホイットでも、この4点がそろうことを目標としています。違いはそのやり方です。ウィンやGMXでセンター調整をしてリムを左右に動かす(図でいえば3を赤線上で移動される)と、センタースタビライザーが的に対して、右に行ったり、左に行ったりすることが確認できると思います。これは、3と4の位置を変えることで、リムの力によってハンドルをねじり、1の線のアライメントを得る(1の線の2・3・4の線に対して水平に持っていく)作業だと考えられます。

逆にいくつかのメーカーで採用されている偏芯型のリムボルトによってリム根元の位置を2の直線状で移動させる作業も同様の効果をえます。

しかし、ホイットが採用した新しいシステムでは、2も動き、3も動き、さらに3は2軸で調整できます。胴部が多いと考える人もいるかもしれませんが、それは受け入りられませんでした。

私の方ではこの問題に対して、可動部が多すぎることがプロディジーシステムを不安性にさせていると判断し記事を書きました。それに対して、今回ホイットのエンジニアは可動部を減らすのではなく、そのかなめであるリムボルトの精度を向上させることで問題を解決しようとしています。

%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%83%81%e3%82%a7%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%b3%e3%83%ac%e3%83%83%e3%83%88%e5%bc%8f%e3%83%aa%e3%83%a0%e3%83%9c%e3%83%ab%e3%83%88ちなみに、コレット式は写真の通り、2016年のホイットのプロティラーがただのボルトなのに対して、SFなどの低価格モデルでも古くからコレット式は採用されています。

ホイットは精度という一言で片づけていますが、この意味はブレース時というよりも、リムボルトをよりしっかりとハンドルに固定し、可動部という範囲からこのボルトを逃すことだと考えています。

以上、予備知識として。残りはレビューに書きます。


初めの弓を購入する方へのアドバイス(リカーブ向け)

%e3%82%ab%e3%83%81%e3%83%a7%e3%82%ab%e3%83%90%e3%83%ad_%e7%a5%9e%e6%a5%bd%e5%9d%82週末行われた社会人フィールドに出場した弊社の通販スタッフの坂本が好成績を収めたようです。おめでとう!!

この半年間、自分は試合に出場・練習はお休みして、料理ばっかり作っています。先日は珍しい形のチーズ(カチョカバロ)を焼いてました…しかし、これはアーチェリーのための練習ですので頑張ります。料理とアーチェリーがどうつながるのかは後日記事にします。まだ、いい書き出しが思いつかなくて。

今日は初めて弓を購入する方で予算が決められない方向けの記事です。弊社では幅広い価格の弓を扱っていますので、見積もりを依頼されるときにいつも予算を確認しているのですが、逆にいくら必要なのですかと逆質問されることが多く、今回の記事では、初めて弓を買うときにどう予算を決めるべきかについて書きます。

*一式の場合、3万円~30万円くらいまでの幅があります。

6月に書いた記事をお客さま目線で書き直したものです。

低価格帯商品をいかにして日本で売ればよいか

アーチェリーは趣味・余暇であり、弓は嗜好品の一つだと思っていますので、予算がある方は自由に購入をしていただければよいと思います。最初から最高級の弓を買って塗装の美しさを楽しむのも、ベテランの方がエントリー向けの弓を使って当たらなさを楽しむのも、楽しむことが大事ですので、人が口を出すものではないと考えています。


要約
・弓はバランス重視
・ハンドルとリムの値段から決める
・人によって変わるのはケース

さて、予算が決まらず、「程よい」セットをそろえたい場合、アーチェリーにおいては一点豪華主義というものはあまり一般的ではなく、その効果も確認されてはいません。バランスよくそろえることをお勧めします。高い弓と安い矢、安い矢と高い弓など、ほかのパーツの予算を削ってても、一つのパーツにお金をかけるべきという意見はあまり一般的ではなく、弓は全体で働くので、競技向けの弓はバランスを重視で選択されるのが一般的です。

そのバランスの中心はハンドルです。まずはハンドルの予算を決めましょう。ハンドルは安いもので1万円、高いもので10万円弱です。しかし、値段が変わることでの変わるものと変わらないものがあります。例えば、チューニング性(簡単にチューニングできるか)はどの価格帯でも大きくは変わりません(*)。

*以前にチューニングすることは大変困難なミザールという弓がありまして…苦労したのはいい思い出です。。。この弓、センター調整機構が外からはアクセスできず、リムを外さないとインジケータすら見ることができないという恐ろしい仕様でした。

初心者としてのハンドルの評価(*)を大きく分けると、性能、品質、メンテナンス性、仕上げ、塗装、補修の6個かと思います。このうち、予算をあげていっても大きく変わらないのは、品質とメンテナンス性、3万円(実売)を超えると大きく変わらないのは性能、予算を上げれば上げるほど変わるのが仕上げと塗装と補修です。

*経験者であれば、この部分は変わり、グリップの形が自分に合うか、重さ、剛性、重心などと異なりますが、初めての弓を買う方にそれを提示して選択していただくことは困難だと思います。

まず、品質とメンテナンス性。これは高いほど良いということはありません。特に品質に関してはそうです。よく誤解されている方がいるのは品質の部分で、高いハンドルのほうが耐久性が高いと勘違いされていますが、これまでの10年近いプロショップ勤務での経験でいうと、むしろ低価格モデルのほうが故障が少なく耐久性が高いです。上位モデルではコストがかかった最新の技術が採用されているのに対して、下位モデルでは何年、何十年前の実績あるローコストの技術が採用されるからです。

100km当たりの故障率と価格が軽自動車とF1では反比例するのと一緒です。最新技術を使用したF1仕様の車のほうがはるかに価格は高いですが、故障は実績ある車台を採用する軽自動車のほうが少ないです。

次に、性能ですが、これは一般論とすることが難しいものの、10年ほど前にナショナルチームの選手の方が実売2万円後半のサミックのアスリートハンドルでシングル(WA1440)で1330点近くを射ち、近年の世界大会(ターゲット)でのメダル実績があるハンドルの中で最も安いハンドルがウィンのWINEXで、4万円台であるので、3万円台前後から上では性能は大きく変わらないというのが個人的な意見です。もちろん、上位モデルではハンドルの重量が簡単に調整できるなどの付加機能があり、これを性能の一つとしてとらえれば別です。

最後に仕上げ、塗装、補修(部品)ですが、この部分は大きく差が出ます。塗装はハンドルの価格に応じた手法が採用されていて、低価格モデルの場合は質があまり良くない場合もあります。これも3万円台が目安で、これ以上高いモデルでは見栄え(発色等)が大きく変わることはないのですが、コーティングの違いにより、耐久性・傷のつきにくさが変わってきます。塗装に関しては製造時のミスを除き、メーカーの保証対象外ですので、気にされる方は上位モデルを検討してください。

仕上げに関しては、ここでは見えない・性能に影響しない部分への配慮です。低価格のものでも、もちろん見える部分は塗装はされていますが、リムポケットの内部(リムを装着すると見えない部分)や、グリップが装着される部分(グリップを取りはずした時に初めて見える部分)のバリ取りや塗装は、されていないか、適当なものが多いです。対して、高いものはこの部分もしっかりとしているものが多いです(すべてではありません)。ただ、性能には影響しないし、使用時には見えない部分なので、見えない部分も丁寧に作られたかどうかという…メーカーの気持ち、心意気の差といったところでしょうか。

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最後の補修については故障したときの対応の違いです。この部分は価格差というよりもメーカーの規模が反映します。グリップが故障したとき、ホイットやウィンであれば、10年程度前のモデルくらいまでであれば、入手はできます。逆に小さいメーカーでは、生産が終了したら、1年程度でもう交換用のパーツが手に入らなくなることもあります。

長く使用し保証が終わっても、補修パーツを手に入れてメンテナンスしていきたいという気持ちがあれば、ホイット、ウィン(KAP/SF)の2大メーカーのものを選択することをお勧めします。

初心者の方で、予算が決まらない方は以上の観点で選択することをお勧めします。

ハンドルが決まれば、次はリムの選択です。リムは単純に高ければ性能が高いと考えていただいてもかまいません(*)。それ以外で低価格帯のモデルと高価格帯のモデルの違いはほぼありません。

*上達し、自分の好み、相性が良いスペックがわかってくれば別です。

ただ、ハンドルと違い、リムはサイズとポンドで同じリムでも多くの種類があり、最初のリムが自分のぴったりでずっと使っていくというケースは稀です。2-3年のうちに買い替えるケースが多いので、最初のリムは低価格でも全く問題ないと思います。また、リムを買い替える場合、同時に矢も買い替える(リムのポンドが変わると矢のスパインも合わなくなる)ので、結構な出費となります。基本的にリムは初心者の方にとっては消耗品です(**)。最初のリムは矢とセットで考えて、2年以内にまるっと買い替えても痛くない程度の金額で考えていただくのが良いかと思います。

**上達し、自身の引き尺・体力(ポンド)が決まってくれば、3-5年は使用できるようになります。リムが消耗品なのはリムの寿命が来るからではなく、自分に合わなくなってくるからです。

一式購入時にケースの購入する場合は事前にご自身でどうするか決めておいてください。基本的には4種類の選択があります。自分で用意するのが一番安くつきます。アーチェリー用でも他のスポーツ用でもメーカー原価はほぼ変わりませんが、大量に販売されるメジャースポーツ用のケースはコンテナ輸送で送料が非常の抑えられているので、アーチェリーショップでは到底対抗できない価格となっています。こればかりは企業努力ではどうしようもないので…安くしたい方は自分で用意することをお勧めしています。

次に、プロショップで販売されるソフトケース。ソフトケースは非常に軽く、電車移動などで段差が多い移動手段で射場に通われる方に最適です。価格は1万円前後です。

最後はハードケース。電車移動時の段差が弱点ですが、保護能力が高く、収納量も多いです。ジャージくらいまでであれば、どのケースでも基本的には入りますが、シューズやスコープも全部収納したい方は大型のものを選択してください。2万円前後です。

ケース類に関しては店舗側からのお勧めというよりも、お客さまがどのような環境での使用を予定しているかによって最適なものが決まるので、お客様の希望をお伝えください。

ハンドルとリムの合計額が決まれば、その金額をプロショップに伝え、残ったアクセサリー類にハンドル・リムに見合う程度のもので見積もりをとれば、初めての見積もりは完成です。あとは、財布の具合と相談しながら詳細を詰めていけばよいでしょう。1万円安くしたいなどの希望があれば、ショップの方にそのまま言えば全体のバランスから考えて調整してくれると思います。

以上、参考になれば幸いです。


コンパウンドボウの弦と追加ウェイトはどう働くのか

0.01.38.60先日、コンパウンド弦の働きについてお客様より質問があり、コメントで回答しました。お客様に伝わったのかどうかはともかく、非常に下手なイラストで説明したのが心苦しく、新しい記事とちゃんとした写真で再度説明させていただきます。

*理解には中学校レベルの物理学の知識が必要です。

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リムの数量化について

コメントの返信記事です。長くなりそうだったので、記事の方にしました。


リムを購入したいと思い、いくつかのサイトやショップを見て回って思ったのですが、ハンドルや矢については重さや硬さなどが具体的に数値化されて表示されていますが、リムについては殆どポンド数以外、なにも表示されていませんでした。

ショップで話を聞いても「このリムは返りが早い」「ちょっとバタつきます」「奥が軽くて引きやすい」と一つも数字が出てきませんでした。例えば「返りの速さ」などは、同じ長さ、スパイン重さの矢を使い、同じ引き尺で同じ実質ポンドに調整したリムで、リリーサーを使って撃った時の初速を計れば、リムそのものの「返りの早さ」の参考値が表示できると思います。

「バタつき」の強弱もリムを固定し、チップ(又はその下の平らな所)に特定のトルクをかけた時のネジレの角度を計測すればある程度の参考値が出せると思うのですが、なんとかならないものでしょうか。
12/09/15 mithi 様


コメントありがとうございます。それでも長くなりますが、話を短くするために、今回はリムの性能評価に限定して話させていただきます。

>ショップで話を聞いても「このリムは返りが早い」「ちょっとバタつきます」「奥が軽くて引きやすい」と一つも
>数字が出てきませんでした。

書いていて記事が長くなったので、エグゼクティブサマリーから書きます。

上のようにとなってしまっている理由は、矢速は評価が難しくある程度結果の操作が可能なので、データはプロショップに存在するものの、きちんとした説明と共に公開しないと悪用されたりお客様が混乱する場合もあり各社取り扱いが慎重。バタつきは数値化できるものの点数との因果関係が不明なので、口頭で伝えるのみ、気になるお客様はリムセーバーを使用すれば、大体改善できるので、数値化はしていない。リムの捩じれ剛性は各社大きな差があるため、手で触っても確認できるので、数値化していない。引き味は細かい点では、ハイトやリムボルトの位置で調整できるので、プロショップでは、普通・柔らかい・硬いの3分類で伝えることが多い。数値化して、F7のウッドはF7のフォームより29インチからの引きでfx曲線の傾きが3%違うとなっても、ハイト・リムボルトなどをちょっといじれば、逆転するので、あまり細かい数値はみんな不意味だと感じている。
ためです。

ただ、まったく数字を出さないと、全然違う事を言って、お客様に合っていない、プロショップが儲かるリムばかりを売りつけようとする人間がいることも確かなので、今後、ある程度の数字は公開していこうかと思っています。

さて、具体的な話はこれ以降に書きました。


数値化についてですが、テストの方法はすでにコンパウンドの世界で確立されています。それについて書きます。返りの速さは「矢速」として、バタつきはリムの動きを「撮影して評価」し、捩じれ剛性は「リムにトルクをかけて評価」します。奥の柔らかさは、「fx曲線」で表示できます。

1.矢速のテストはアメリカのATA規格(AMO)で、「矢の重さ 540gr 60ポンド 引き尺 30インチ」の時の矢速を表示する事になっています。コンパウンドのカタログを見ると、315fpsや358fpsなどの表示があります。

問題点として、なんでも表示することに意味があるわけではありません。例えば、Missionというコンパウンドのメーカーがありますが、ここは一部の弓でしか表示していません。上位競技モデルのラリーは矢速表示していますが、エントリーモデルのメナスというモデルでは表示していません。メナスはそもそも矢速を考えて設計されていないので、競うことに意味がないためです(表示するためには測定に必要な60ポンドモデルを特別に生産して測定する必要がありますが、Missionはそれ無意味だと考えています)。こういった例は多々あります。リカーブで言えば、W&WのINNO EX POWERリム(5万円のリム)がWIN/SFのElite Carbonリム(2万円のリム)よりも、矢速が早いことは間違いないですが、だからと言って、EX POWERの方が良いリムだと言って、みんなに薦めて販売しているわけではないです。きちんと、お客様の要望にあった物を販売するのが仕事ですので、一部のリムでは、そもそも矢速を目的に開発されておらず(3万円以下のリムはだいたいそう)、特に初心者のお客様に数字で語ることで、逆に悪用される(初心者にEX POWERを買わせる)可能性もあります。

次に、ATAでは30インチ60ポンドと言う規格を定めたものの、ATAはHOYTなどの大手が「談合」して、自分たちの良いように、その数字を定めているという主張も存在しています。確かに、なぜ、30インチなのか、実際に最も売れているのは、世界中で見ても、27-28インチで、30インチは決して売れ筋ではありません。ATAが30インチに定めた根拠は自分が知る限りでは、公表されていません。その為に、ATA規格(AMO)とは別に、IBOという別の矢速表示があります。

HOYTは自分たちが作ったATAだけしか表記していないですし、PSEなどは両方の主張に配慮し、ATA/IBOでの矢速を両方表示しています。また、BowtechはATAとIBOどっちでも同じと主張し(そんなはずはないのですが、IBOの方は測定をごまかす事が出来なくもないので、同じになるように調整はできます)、EliteやMissionは基本的にATAで矢速を表記しない状態になり、結局ユーザーの利便性が微妙な状態になっています。

aspeed.jpg

上は、それぞれのメーカーの矢速表示を抜き出したものです。メーカーで矢速を測定しているものの、結局どのモデルが速いのか、分かるでしょうか???…理論を飛び越えた人間しか答えがわからないと思います
HOYT : (A)330
PSE : (A)335 = (I) 327
Mission : (I) 330
Bowtech : (A) 330 = (I) 330
理論的に考えると
1.HOYTの(A)330よりもPSEの(A)335の方が速い
2.PSEの(A)335は(I)の327なので、Missonの(I)330の方が速い
3.しかし、(I)330はBowtechによると、(A)330なので、HOYTと同じ矢速のはず
結論 : MissonとBowtechは、HOYTと同じ矢速だが、HOYTよりも矢速の速いPSEよりも、矢速が速い
…という矛盾した結果に。
この数字を使って、そのメーカーのラインナップの中での評価はできますが、他社との比較は結局できないと思います。
もちろん、プロショップが独自に評価してもいいのですが、その時に、どの基準を採用したかで、結局結果が変わってきます。IBO規格は手心を加えることが出来るし、厳格なATA評価は非現実的です(30インチの60ポンドモデル…国内で使っている選手がいるかどうかも疑わしいスペックです)。
話を戻します。リカーブでも矢速の評価はできると思います。但しどうやるのか、話を簡単にするために、W&WとHOYTで言うと、EX POWERで一番売れているのはM38で、F7ではS38です(フォーミュラー規格の25インチハンドルではサイトが取れない人がかなりいるため、68インチは27インチハンドルとSリムで作る人が多い)。
では、評価するリムをどっちにするのか。また、HOYTのショートの低ポンドリムの出来がひどいのは昔から有名な話です。S32で評価テストをすれば、間違いなくW&Wの圧勝です。逆にロングリム、特にドローレングスが29インチ以上の場合は、HOYTの方が出来が良いので、結果が逆になるかもしれません。
また、F7はHPXと合わせて作られていますが、このハンドルには矢速が出るように設計されています。ハンドルの設計で矢速が出るのであって、リムの性能のおかげではないので、単純に比較すれば、HOYTの方が有利です。
また、HOYTのF7リムはハイトを低く設定するよう指示されています。しかし、ハイトを低く設定することは一般的には矢速の増加を意味するので、ハイトは同じ値に合わせないと不公平です。
EX POWERとF7だけで考えても、難しいです。
例え、某プロショップがリムの評価テストをしたとすると、プロが見ればその前提(ドローレングス・ポンド・リムのサイズ・ハイトなど)だけでも、意識的かどうかはともかく、どのメーカーが勝ちように設定してテストしたな、ということが分かります。経験豊富なプロショップの人間であれば、意中のメーカーが勝つように設定することが可能です。
逆に、そこまでの厳密のものではなく、目安になる程度の数字でいいよと言う考えもあると思いますが、であれば、個人的には公表する意味がないかなと思います。上位のリムでは、各社2%も差がないので。

gprime.jpg

2.バタつきのテストですが、これは有名なのは、G5 PRIME社のテストかと思います。ハイスピードカメラでカムを撮影して、そのバタつきの最大幅を測定しています。
動画は下記のリンクでご覧になれます。
http://www.youtube.com/watch?v=OzasR5L92Mg

ただし、このテストの再現を考えましたが、非常に追試することが困難です。数字を出したとしても、特に特定のメーカーだけを売りたいセールスマンは、いくらでも、言い逃れすることが出来ますし、ぼく自身この結果を見せられても、一番結果の悪いHOYTを売る自信がありますし、実際HOYTは日本で一番売れているコンパウンドボウです。
リカーブで言えば、そもそも、リムのバタつきがどう点数に響くのかイマイチ分かっていません。好みがあるので、リムの説明をするときには伝えますが、バタつきがあるリムは当たらないとは聞いたことがないです。
上の表で言えば、G5が0.4度、HOYか7.9度、なんと20倍もバタつきますが、だからと言って、HOYTの弓は当たらないとは聞きません。むしろ、トップアーチャーに一番使用されている競技用の弓です。バタつきと的中は弦の利き手(*)と同じくらいの都市伝説だと思います。
*左利き用と右利き用の弦があり、あっていない弦を使うと当たらないるという説がありますが、フランジィーリも本の中で触れていますが、そんな実証データは見たことがないです。
3.リムの捩じれ剛性ですが、これはリムチップにレーザーポインタを付けて、トルクレンチでリムチップにトルクをかけ、その時にポインタがどれだけ動いたかで評価できます。

1blimb.jpg

具体的なやり方については、細く硬いリムが売りのBowtechのテスト風景が公開されています。
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これに関しては、テストしてもいいとは思っていますが、ただ、逆に微妙な差を評価する必要がある矢速と違い、ここまで厳密にしなくても、最上位モデルでも、市場に出ているリムで最もねじれに強いUX100と、HOYTのF7なら、張ってある弓のリムチップを手で捩じってみればわかるくらいの差があり、トルクレンチなど使用しなくても、感覚的に分かるくらい違います。
このデータに関しては、逆に簡単にわかるので、データ化されていない項目です。
4.奥が引きやすいかに関しては、fx曲線で見ることが出来ますが、fx曲線はハイトとティラーとリムボルトの位置に大きな影響を受けます。もちろん、リム単体で持っている曲線がありますが、微妙な部分でそれらの影響を受けるので、精密に測定して「これです」というのは難しいです。

cam_fv.jpg

これに対しても、コンパウンドの世界では評価基準があり、大まかに3種類(ソフト・ミディアム・ハード)に分けています。もちろん、これ以上に例えば、スーパーソフトから、スーパーハードにまで分けることもできますが、実務上、3種類で十分とされていますし、お客様に説明するときでも、3種類で困ることはないです。
記事がかなりに長くなりましたが、最後まで読んでいただありがとうございます。結論は最初に書いたとおりです。