この記事は2020年6月5日に書かれたものです。最新の情報とは異なる可能性があります。ご注意ください。

プロとしてボウガンとその規制についての知識提供です。

(グッディより)
昨日ボウガンによって死亡するという痛ましい事件が起きました。事件そのものに関しては、自分はコメントできるほどの知識は全くありませんが、この事件に関連して、ボウガンに関して、知識を有しているとは到底思えない人々が「マスコミ」にて発言しているので、私としては、ボウガンのプロとまで言わないものの、ある程度の知識を有していることから発言したいと思います。

*一般の方が読めるようにアーチェリーの知識がなくても読めるようにしています。

ボウガン(クロスボウ)競技の講習会に行ってきました。

グッディという番組で、安藤優子さんが「(モデルによって)そんなに性能が変わるのか、私、ド素人なのでわからないのですが…」と発言し、元警察の人が「非常に威力が高い」と何の根拠もなく発言していますが、なぜ専門家を呼ばないのか、勝手にしゃべるのでしょうか。

性能は変わります。殺傷能力も一律に高くありません。モデルによる違いはパワー(破壊力)です。エアガンはジュールによってレイティングされていますが、ボウガン(クロスボウ)はポンド(弓の重さ)、または、FPS(矢速)によってレイティングされています。競技においては、95ポンドという上限(*)が決められています。つまり、競技においては、95ポンド以上のボウガンは必要ありません。他国ではハンティングに使用されていて、つまり、今回使用され、今後、規制するとしたら対象になるのは、95ポンド、誤差があるので100ポンド以上のボウガンでしょう。

*競技用には他にも多くの規制があります


こんなものです。矢速は450FPS、パワーは180(Kinetic Energy)ft-lbです。ウィキによれば、9mmブローニング銃のパワーが200ft-lbなので、その9割のパワーがあり非常に殺傷能力が高いと言えます。規制するかは国の方針次第だと思いますが、規制されて困る人はほぼいないと思われます。


次には、上記のような競技用のボウガンがあります。本格的なものは20万円以上するオーダーメイド品ですが、このような5万円前後のエントリーモデルもあります。上記のものは、矢速が160fps、パワーは23ft-lbです。ハンティングモデルの約1/10程度のパワーしかなく、殺傷能力をどのように評価すればよいかわかりませんが、まぁ、実感では、成人男性が投げた手裏剣とかと同等程度かと思います。このあたりの規制に関しては必要かわかりませんが、競技用は多く見積もっても国内に100台程度しかないので、登録制で十分運用可能です。


プロの競技者向けのボウガンはこんな感じ。オーダーメイドで、1500-3000ユーロ程度です。

最後にはレジャー用のものになります。レーティング表示は存在しませんが、6メートル飛ぶとカタログにありますので、20ポンド程度と想像します。競技用モデルのさらに1/4程度です。まぁ、殺傷能力があるとは思えないので、こんなものを規制するのは馬鹿げているの一言でよいと思います。

以上、ボウガンには3種類あります。

ハンティング用: 弓を引くのに必要な力が95ポンド以上、多くは160-200ポンド。殺傷能力大。ハンドガン相当。
競技用: 95ポンド以下で多くは70-95ポンド。殺傷能力は高くないものの、当たれば怪我はする。
レジャー用: レーティングはされていないものが多い。スペックで判断する限り10-30ポンド(飛距離5-15メートル相当)、殺傷能力はないと考える。

マスコミの皆様、この知識を知ったうえでの議論をお願いします。

【追記】
ネット上で、競技もあるから、規制が難しいという根拠のない意見が見られますが、規制は簡単です。国内でハンティング用のボウガン(クロスボウ)を製造している企業はありません。販売されている殺傷能力のあるハンティングモデルはすべて輸入品です。すでに輸入された国内在庫をどうするかを別にすれば、100ポンド以上の弓の輸入を禁止すれば簡単に規制できます。競技用で使用されている弓、リカーブ・コンパウンド・ボウガンはすべて100ポンド以下です。競技者には何ら問題なく規制可能です。

・アーチェリー(リカーブ) 規制はないものの60ポンド以上のものは基本的に製造されていません。

・アーチェリー(コンパウンド) 60ポンド上限規制

・和弓 規則はないが重くても30キロ程度(66ポンド)

・ボウガン 95ポンド上限規制


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Ryo

(株)JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、2021年よりターゲットベアボウに転向。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。次はベアボウでの出場を目指す。

5 thoughts on “プロとしてボウガンとその規制についての知識提供です。

  1. 殺傷能力は有る。
    こんな物は当たりどころの問題だからだ。
    逆に言えば高威力でも鏃がゴムやスポンジで充分緩衝出来れば当たりどころによっては何も起こらないで済むだろう。
    根本的に和弓、洋弓は良く行われているからOKと言う方が筋が通らない。
    何がしたいのか?其れは安全性の確保だと信ずる。
    ならば、其れを担保して危険度が高い物はコントロールすれば良い。ボウガンが許可制になるなら、良い機会なのだから和弓、洋弓も許可制にして講習や更新をしたら良い。
    中高生が使うとか関係ない。寧ろこの年代の方が危ない。

  2. >根本的に和弓、洋弓は良く行われているからOKと言う方が筋が通らない。

    どのような筋を考えていらっしゃるのかわかりかねますが、現実があっての法律かと思います。

    現実として、近年ボウガンによる殺傷・殺人事件が多発したため、規制されることとなりました。
    和弓には詳しくないですが、私の記憶によれば、近年故意の殺傷、殺人事件は起きていないと思います。
    洋弓に関しては、関わっているので、ボウガンをアーチェリーを間違えて、アーチェリーと書かれることがありますが、
    被害にあった動物の写真を見る限り、どれも、矢ではなくボルトです(見分け方は長さと矢じりの形状です)。

    チェンソーはナイフ以上の切断・殺傷能力がありますが、ナイフによる殺傷・殺人が多発しているために、銃刀法で持ち歩きが規制されていますが、
    チェンソーによる殺人は映画以外ではほぼ発生していないために、(少なくとも東京では)持ち歩きは自由です。

    洋弓・和弓による殺人・傷害事件が発生するのか、どれだけ発生するのか、その点が、今後の議論での筋かと考えます。


  3. データが有りました。故意による殺傷は洋弓・和弓が0件に対して、クロスボウが13件です。このデータが今回の改正の筋になっています。

  4. ほなエアライフルみたいに弩毎の許可制すればよろしいやろ。
    鳥獣駆除にクロスボウも当てがって欲しいものやわ。

  5. 現在、3Dプリンタで作成した銃が問題となっていますが、それよりも遥かにクロスボウは自作することが簡単ですので、基本的にメーカーより購入することでしか手に入れることのできないエアライフルとは違った規制になったと理解しています。

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