下町のものづくり、技術力の行方。

(朝日新聞のHPよりスクショ)


本記事とはあまり関係ないのですが、今話題の下町ボブスレーはトップ選手のレスポンスも技術的なノウハウもないままお上が始めたのが問題なのかなぁとは思います。下町アーチェリーの考えうる最悪の結末が前例としてできたので、これを教訓に企画の修正ができればいいんですけどね…道具屋様の立場としまして、下町ボブスレーの件はどのように思われたのでしょうか。

上記のコメントへの回答となります。

>今話題の下町ボブスレーはトップ選手のレスポンスも技術的なノウハウもないままお上が始めたのが問題なのかなぁとは思います。

まず、このトラブルにはいくつかの問題があると思いますが、最終的な致命的点は下記の報道のところでしょうか(*)。

*ボブスレーに詳しいわけではないので、すべて報道より引用となります。


輸送トラブルで下町のそりが届かず、ジャマイカチームは急きょラトビア製のそりに乗った。
「すると驚異的に成績が伸びた。五輪出場権獲得へ大事な時期だった」とストークス会長は話す。
このそりに乗り続け、出場権を獲得した。

一方、下町のそりについて、ストークス会長は「遅い」「安全でない」「機体検査に不合格」の3点を強調。
「1月に行われた2度の機体検査に不合格だった。五輪でも失格の恐れがあった」と語る。

下町側は不合格を認めたうえで、「すぐに修正できる細かい違反だけ。一時は合格も出た。五輪には間に合う」と反論した。

調べてみると完成披露は2016年の10月に行われたようです。この時期(本番1年以上前)に完成したのであれば、十分な期間があり、代表チームにも使ってもらえたと思いますが、「滑れる」状態が完成とはらないでしょう。弓でいえば、矢が発射できれば、それが競技用の弓とはなりません。弓具検査を通って、100射以上の競技に耐えることが完成した競技用の弓です。

報道によると、「1月の機体検査に不合格」。それに対して、メーカー側も「細かい違反」と認めていることから、私意見としては、1月時点でも「完成」していなかったと考えます。そんなものでも、使ってもらえると思う方がどうかしています。税金でやっている以上、後に引けなかったという部分もあるとは思います。

完成していない状態での、このロゴの数(苦笑)、機体検査通ってから貼ったらどうかと…。

最終的問題はここに尽きる思いますが…そこに至る問題は、下記にあると考えます。


プロジェクトは町工場の高い加工技術をアピールしようと若手経営者たちが11年に始め、参加企業・団体は100を超える。
(完成!お披露目…ジャマイカチーム採用 / 毎日新聞)

1台のそりを下町工場100社以上で作る。これを聞いて、喜ぶのは〇人や政〇家などの「物を作った」ことがない人間だけだと思います(*)。100を超える企業・団体が関わって、1つのもの作るのは、実際にサプライチェーンの管理業務をやったことがある人ならどれだけ地獄かわかると思います。

*関係者が多いほど、税金を出しやすい。

現在、三菱ほどのグループが作っているMRJでも、「現在で設計変更領域の予備的な設計レビューを実施しており、数ヶ月で重要な設計段階に入るとのこと。また、過去5回起こった延期のうちの4回は共通して認証に関して何らかの不備があったために、開発作業をやり直す必要があった為という」、認証(*)の問題で5回納期を延長しています。

*問題を簡単に整理すると、認証の問題の場合、技術力をもつ、個々の会社が作ったパーツでトラブった可能性は低く、ぞれぞれの会社が作ったものを組み合わせて組だてたもので問題が発生する場合はほとんどです。人数が多ければよいものではなく、100以上の会社のアイデア・パーツを組み合わせて要求された性能を出すのは、2社でそれをやるよりはるかに困難です。もちろん、ボーイングやNASAのように成功できれば、かなり良いものができるのも間違いないです。

まとめると、より多くの税金を引き出すために関係者を増やし過ぎて、それを管理する能力があるだけのマネージャがおらず、今年の一月まで「完成しなかった」ことがすべてだと思っています。

>下町アーチェリーの考えうる最悪の結末が前例としてできたので、これを教訓に企画の修正ができればいいんですけどね

下町アーチェリーでは、4社なので、現状では、関係者が増えない限り、そのような事態に陥るとは考えていません。

アーチェリーの方の問題は、若干ボブスレーもかぶりますが、「技術力」を売りにしているところです。たとえば、下町工場で有名になった、痛くない注射針を作った岡野工業ですが、解決すべき問題は「痛くない注射」であるのに対して、ソリューションは「針を細くする」という単純なものです(*)。技術力があれば実現できます。

*細くすることが簡単という意味ではないです。

一方、競技用アーチェリーを弓を作るということは、解決すべき問題は「よりグルーピングする」であるのに対して、ソリューションがなにであるかすら、定まっているとは言えない状況でしょう。それに対して、技術力だけで答えを出せるとは考えていません。まずは、ソリューションを設計すべきであるのに、私が参加したミーティングでは、そういった話は全くありませんでした。

その部分が、今後の問題になるのではないかと思います。


<第5回プロジェクト桜ミーティング>
今回のアーチェリー弓具開発では、「グリップ」開発を担っており、現在プロトタイプ作成に取り組んでいます。
(フェイズブックより一部引用)

高い技術力で、精度の高いグリップが完成することは間違いないと考えていますが、ただ、アーチャーの視点からすれば、どんな設計(形)なのか、ピボットポイントとプランジャーの位置完成、ハンドルのセンターショットに対しての、左右の丸み、などのほうがよほど大事ではないでしょうか。

バリだらけでも、感覚的に自分に合えば、ヤスリかけてても使うし、どんなにきれいに高精度で仕上がっても、自分に合わなければ使わないのが競技者であると考えます。

国産アーチェリーのハンドルは2019年春の完成予定だそうです。たとえば、ホイットのハンドルは「完成」してから完成するので、出荷後、その次の試合でメダルを、物によっては、出荷前の試作品で結果を出しますが、どのレベルで完成するのかで、オリンピック前には結論が出ると考えています。


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Ryo

Ryo

山口諒 - JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、2014年コンパウンドに転向、2018年よりベアボウに挑戦中。リカーブ・コンパウンド両方で全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。

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