この記事は2017年1月18日に書かれたものです。最新の情報とは異なる可能性があります。ご注意ください。

プロテインの中身はプロテインか 栄養・栄養学について考える 5

今回はサプリについて取り上げます。まず、大前提として、私は日本の制度には問題があると思います。

日本にはJADA(日本アンチドーピング機構)というものがありますが、JADA認定というものを行っていて、国内でサプリメントなどの安全性を保障していますが、この制度は非常にグレーなものであるとされています。

日本アンチドーピング機構(JADA)は、分析費用ほか「別途、大手広告代理店を通じた協賛費が必要」(ドームの青柳清冶・サプリメント・メディカル事業部部長)で、認証に数百万円のコストがかかる場合もあるという。

健康産業流通新聞より

こういった報道に対して、JADAはコメントをしないという姿勢のようです。また、そもそもアンチドーピング機構が認定をすること自体に問題があるという批判があります。WADA(世界アンチどーピンク機構)では、自身の解析能力をメーカー側にばれないようにする、メーカーに対して第三者であることを貫くために、認証はしないという姿勢を取っています(*)。

*The World Anti-Doping Agency (WADA) is not involved in the testing of dietary/nutritional supplements.

ドーピングを防ぐために、メーカー側ずぶずぶの関係にはならない、緊張関係を持つことを宣言していますが、JADAはその真逆のことを、検査費用だけではなく、協賛まで(しかも、別途大手広告代理店を通して)求めているようです。

もちろん、その費用はサプリメントの価格に反映されます。よく言えば、日本のサプリメント(*)はその価格の半分が保険料なので安心だと言えますし、悪く言えばメーカーと検査機関がタッグを組んでアスリートからぼったくっている状態です。

*カロリーメイト・ネイチャーメイド・アミノバイタル・ウィダー・ザバスなどが該当する

さら、本題に戻り、サプリのはどういうものか。今回は主要のプロテインの中身を見ることにしましょう。初回に書きましたが、大事なのは「自分が何を食べているのか知ること」です。

下記がウィダーのプロテインの内容物です。目的別に4つ販売されているようです。

筋肉のため

ホエイたんぱく(乳成分を含む)、カゼインカルシウム、ココアパウダー、砂糖、食用油脂、ぶどう糖、炭酸Ca、乳化剤、酵素処理ルチン、グルタミン、香料(大豆由来)、甘味料(アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、スクラロース)、ピロリン酸鉄、ナイアシン、パントテン酸Ca、V.B6、V.B2、V.B1、葉酸、V.B12

回復のため

デキストリン、砂糖、ホエイたんぱく(乳成分を含む)、ココアパウダー、食用油脂、香料、乳化剤、V.C、グルタミン、酵素処理ルチン、ロイシン、ナイアシン、パントテン酸Ca、V.B6、V.B2、V.B1、葉酸、V.B12

減量のため

ホエイたんぱく、砂糖、ミルクカルシウム、L-カルニチンL-酒石酸塩、食用油脂、貝Ca、クエン酸、炭酸Ca、香料、乳化剤、ヒスチジン、甘味料(アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、スクラロース)、酵素処理ルチン、V.C、ピロリン酸鉄、パントテン酸Ca、ナイアシン、V.E、V.B1、V.B2、V.B6、V.A、葉酸、V.D、V.B12

増量のため

デキストリン、カゼインカルシウム(乳成分を含む)、果糖、ドロマイト、食用油脂、カラメルパウダー、オルニチン、香料、乳化剤、甘味料(アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物)、ナイアシン、パントテン酸Ca、V.B6、V.B2、V.B1、葉酸、V.D、V.B12

原料にはタンパク質、糖質、ビタミン、特定の目的のための成分、味のため、または機能性を高めるため(水に溶けやすくするなど)のものが大量に含まれているのがわかるかと思います。プロテインということは「タンパク質(Protein)」という意味ですが、商品としてのプロテインは必ずしも、中身がタンパク質であるとは限りません。

*それぞれの成分の役割は最後に簡単にリストにしています。

筋肉のためとされているものは、すぐに消化されるたんぱく質(ホエイたんぱく)とゆっくりと消化されるたんぱく質(カゼインカルシウム)が両方入っています。それに補助的な代謝を促進する栄養素と、味付けが入っている商品です。プロテイン中のプロテイン量(タンパク質)は70%程度です。

回復のためにとされているのは、なんと、主成分は糖質です。タンパク質ではありません。糖分を68%含み、タンパク質は23%程度しか入っていません。タンパク質は消化が早い方のホエイたんぱくが選択されていて、味はダイレクトに”砂糖”が選択れています。これはプロテイン…というよりもエネルギーバーのような構成になっていますね。

減量のためにとされているのは…減量のためにプロテインが必要な理由がよくわかりませんが、ホエイたんぱくが50%程度、その次が砂糖(糖質)?! 減量のために糖質を摂取する理由が理解できませんが(*)、が入っていますね。脂質の代謝に必要なL-カルチニンと食欲を低減させるとされるヒスチジンが入っています。1食で55kcalです。

*もちろんエネルギーとしては糖質は必要ですが減量の選手が”補助食品”でまで糖質を摂取させる必要性は私には理解できません。

最後の増量のためのものは…最もプロテインではないです。タンパク質の量は16%で、商品の73%が糖質です。商品としてプロテインの具体的な定義はないですが、少なくとも半分くらいは入っていないと…これ以上のコメントは控えます。

今回の記事で知っていただきたいのはプロテインとして販売されているものがプロテイン(タンパク質)とは限らないということです。物によっては、16%しか入ってないものがあります。また、たんぱく質を摂取する・糖質を摂取するにしても、物によっては、食用油脂やスクラロースなどの人工甘味料も摂取することになってしまっていることにご注意ください。プロテインを選択するときには必ず、中身を確認することをお勧めします。

そもそもプロテインは”たんぱく質”を摂取する手段です。なぜなら、タンパク質を70%以上含む食品はほぼ存在しておらず、そのために高いお金を払ってプロテイン(タンパク質)を補助的に摂取する必要性があるのです。炭水化物なら砂糖は100%が糖質で、値段はプロテインの1/20程度でしょう。三大栄養素の脂質にしても、オリーブオイルなどの油は100%が脂質なので、こちらも高いお金を払って購入するようなものではないです。自然界になく、高いお金を払って購入する必要があるのは高たんぱく質だけです。

(こちらの商品はタンパク質97.6% 原料はホエイたんぱく、乳化剤、増粘剤の3つのみ)

また、飲みやすさを重視する方、パッケージされたものが好きな方は味付けまで全部メーカーがやってくれるようなものがよいと思いますが、トップを目指すはアスリートは、余計な味付けが入っていないものを購入して、それを”我慢”して飲むか、自分が納得できる最低限の味付けをして飲めべきではないかと思います。もともとパウダーなので、無味のもの買って、味付けするのは結構簡単ですよ。

続く。


それぞれの成分について

ホエイたんぱく : タンパク質(プロテイン)の部分の一つですぐに消化されます。原材料は牛乳であることが多く、製法によって純度が違います。現状ではWHIという製法が最も純度が高く、乳糖不耐性のリスクが最も低いのもこの製法です。

カゼインカルシウム : タンパク質(プロテイン)の部分の一つでゆっくりと消化されます。そのため長時間作用する(血中アミノ酸濃度を高いレベルで維持)と言わています。

L-カルニチンL-酒石酸塩 : L-カルニチンは脂肪の代謝に必要。L-酒石酸塩の方は水溶性を高めるために入っていると思われる。

ブドウ糖 : グルコース。脳の一般的な栄養源だが、血糖値を上げる。

炭酸Ca : カルシウム。

酵素処理ルチン : ポリフェノールの1つ。たんぱく質の合成をサポートすると言われています。

グルタミン : グリコーゲンの回復を促進する効果があるとされる準必須アミノ酸。

ピロリン酸鉄 : 鉄分。

ナイアシン : ビタミンB3、タンパク質の代謝に必要。

パントテン酸Ca : パントテン酸は糖代謝に関わる。カルシウムの方は水に溶けやすくする役割。

ビタミンA : 免疫力を高めるとされる

ビタミンB1 : 糖質の代謝に必要。

ビタミンB2 : 多くの代謝に必要。

ビタミンB6 : アミノ酸の代謝に必要。

ビタミンB12 : アミノ酸の代謝に必要。

ビタミンC : コラーゲンの合成などに必要。

ビタミンD : カルシウムの吸収を促進。

ビタミンE : 抗酸化作用。

葉酸 : アミノ酸の合成に必要。

デキストリン : ゆっくりと消化される糖質(炭水化物)

貝Ca : …すみません、炭酸Caとの違いが判りません。

クエン酸 : 疲労回復を早めるとされる。

ヒスチジン : 食欲低減効果。

ドロマイト : カルシウムとマグネシウムを含む。

オルニチン : 成長ホルモンを増やす。


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Ryo

(株)JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、2021年よりターゲットベアボウに転向。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。次はベアボウでの出場を目指す。

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