この記事は2016年12月28日に書かれたものです。最新の情報とは異なる可能性があります。ご注意ください。

“専門家”にだまされないために 栄養・栄養学について考える 2

栄養学についての記事の続きです。先日、根拠のないコピペ記事ばかりを書いていたDeNAのサイトが問題となり、謝罪会見にが行われました。アーチェリーについて書かれたサイトでもでたらめ情報を発信しているところがありますが、いろいろと検討した結果、否定する記事を書いて拡散させるよりは、放置するのがベストだと判断しています。

DeNA、「3時間謝罪」でも解明しない詳細経緯 ‐ キュレーション事業の現場責任者は欠席
http://toyokeizai.net/articles/-/148657

“弱者”のための栄養・栄養学について考える

さて、DeNAではでたらめな記事が問題となりました。当然ですが、嘘を書いてはいけません。しかし、ミスリードを誘う、読んだ人に誤解をさせる情報はグレーゾーンとなっています。この部分が栄養学においては、かなり大変なことになっています。アーチェリーをしない人はいますし、ネットを見ない人もいると思いますが、食事を取らないという人はまずいないでしょう。食に関する市場は莫大なものであり、その莫大な利益を目的として、グレー情報が多く出回っているのが現状です。

栄養について計算するうえで”根拠”となっているが食品成分表というものです。このデータ自体は文部科学省が無料でPDFとして公表していますが、よく使うのであれば、1000円程度で売っている製本されたものが便利だと思います。ここのデータが栄養の”根拠”となっていて、ここを疑い出したらきりがないので、これは正しいものとして使っていきます。

日本食品標準成分表2015年版(七訂)について
http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365295.htm

この記事は管理栄養士という立派な国家資格を持った専門家が監修した”ひじき”を称えた記事です。いわく、

「食物繊維が豊富」
「鉄分が豊富」
「カルシウムが牛乳の10倍以上」

だそうです。

(食品成分データベースより)
では、実際はどうなのか見てみましょう。これは食品成分表の「ひじき」の項目です。比較のために牛乳を追加しました。数値を見てみればわかると思いますが、食品栄養士の方は確かに”根拠”に基づいてこの記事を書いています。文部科学省のお墨付きです。しかし、それは”乾燥ひじき”の情報なのです。

ひじきを食べたことがある人は多い思いますが、乾燥ひじきを食べる人は…いますか?

シイタケなどと同じように乾燥したものは、水に戻してゆでて食べるのが一般的だと思っています。では、一般的な茹でられたひじきはどうでしょうか。鉄分は58.2mgから2.7mgと約95%まで減り、カルシウムは1/10に。牛乳とほぼ同じ値に…とはいっても牛乳をコップ一杯(約200ml)飲む人は多くても、ひじきを200g食う人は少ないでょう。食物繊維も51.8mgから3.7mgと約93%減です。

*豚レバー(生)の鉄分は13mg いわのり(素干し)の食物繊維は41.7mg(乾燥した状態の数値ですが、ひじきと違いのりは乾燥した状態で食べる人はいるでしょう)

別にこの管理栄養士の方だけ攻撃したいわけではありません。ひじきには鉄分が豊富というグレーな情報を広めているサイトは無数にあります。そして、このように栄養に関する情報では、専門家は間違ったことは書きませんが、データをうまく操作して、読者に誤解をさせるようにしているのです。

おまけに上記のサイトではこんなことまで書かれています(これが書かれていることが今回私がこの記事が悪質と判断した理由です)。

乾燥ひじきを水で戻した後に下茹でをすると半分以上も無機ヒ素の量が減ることがわかっています。50kgの人が仮にひじきの煮物を食べた場合、週に3回以上ひじきを食べ続けなければ摂取量の基準値を超えることはないので、それほど深刻になる必要はありません。

ひじきとヒ素との関連について書かれた部分ですが、栄養素の値は乾燥状態のものを意図的に使用しながら、実際の運用(調理)では茹でられることを前提に安全だと言っているのです。また、記事中にも乾燥した状態での値であることは明示されておらず、間違っているとは言わないものの、これは果たして正しい情報なのでしょうか。

これが栄養学の現状なのです。これは管理栄養士という資格を持つ人が、栄養学が正しく扱われる現場(*)だけではなく、フリーで国家資格を権威にお金をもらってグレーな情報を生産してい人がおり、そして、責任を取る必要がない状態であるのが原因でしょう。

*病院食など本当に正しく栄養価を計算しないと大変なことになり”責任を負って”栄養学を運用している方々

当然このサイトには、

-閲覧や情報収集は利用者ご自身の責任において行っていただくものとし、当社はいかなる責任も負いません。

という文書が添えられています。なぜ、責任を負わずに情報提供するのでしょうか(*)。

続く。

*その不便性は分かります。お客様から、改造・非推奨のセッティングについて可能かという問い合わせがあったりしますが、個人的には問題ないと思っていても、問題になった時に責任を取れないので、無理ですと答えなければいけないときがあります。しかし、それで良いと個人的には思っています。


参考

体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか」畑中 三応子 著 


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Ryo

(株)JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、2021年よりターゲットベアボウに転向。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。次はベアボウでの出場を目指す。

5 thoughts on ““専門家”にだまされないために 栄養・栄養学について考える 2

  1. もしかすると七訂が出る前の記事ではないですか?
    六訂(2010)では、ひじきの欄は干しひじきしかなかったですから、隣に茹でひじきがあるのにわざと干しひじきのデータを使ったというわけでは無さそうです。
    とはいえ、専門家なら乾燥状態での数値だと気づいてもいいとは思います。

  2. >文部科学省は12月25日付で「日本食品標準成分表2015年版 (七訂)」掲載「ひじき」の可食部100g当り鉄分含有量に関し、「鉄釜だと58・2mgの鉄分を含むが、ステンレス釜だと6・2mg」と発表しました。

    6訂と7訂の違いは、新しくステンレス釜が追加されたことだと理解しています。なので、公平性の担保のために、鉄釜の数値を使用しました。

    水に戻して10倍の体積になったら、栄養素が約1/10以下になるというのは、文科省の食品成分表などの話ではなく、料理においての常識だと思うのですが…。

    まぁ、専門家と呼ばれる人たちも間違えますよね…

    まさに、私が言いたいのはこの部分です。間違ったことを言っているわけではないのです。読者を誤解させる書き方をしているだけなので、問題になったときは間違えた、で、それ以上追求できなくなるように仕掛けてあることが問題だと思っています。

  3. アーチェリーについてデタラメを発信しているブログについて質問です。
    おそらく学生や一般競技者をも小馬鹿にしている例のブログの事でしょうか?
    自分以外の指導法が全て間違いと言わんばかり論調が非常に不愉快です。
    色々考えはあるでしょうが、可能な範囲でトップアーチャーの反論を聞きたいです。

  4. あまり詳しくは読んでいませんので、同じものかわかりません。以前に面白いブログがあると聞いてみた時の記事には

    と書いてありました。反論を書くほどのレベルの記事ですらないので…理論ではなく人間性について書きましょう。

    ちなみに「デブは自制ができない人間」という説は、私にとっては「巨乳は頭が悪い」と同程度に議論に値しないものと考えます。

    該当記事では肥満体型(ここではBMIが25以上とする)の人をばかにしていますね。指導論以前に、人を尊敬できない人間であることのほうが肥満であるよりもはるかに指導者として資質がないように感じます。指導者は強い選手を育てるだけではなく、教育者でもあるべきです。たとえ、この方の理論が正しいとしても、人を蔑むようなことを指導者として伝えるべきではないと考えます。人は理論的である以前に、倫理的であるべきだと思います。

    彼のもとで育った選手は肥満体型の方に対して、自制心のない人間という見方をするようになるかと思いますが、生きることはそれほど一面的なものではないと思います。そのような選手が育つのは残念なことです。

    私の学校では、多様性を重視する教育を行っていました。私も多様性を尊重する人間でありたいと思います。

    また、この方は以前バーテンダーさんをしていたそうですが、1996年の「IBA 世界カクテルコンクール(昨年はなんと東京開催でした♪)」で、世界チャンピオンとなり、世界に誇る銀座のバーで昨年NHKスペシャルでも特集された銀座のスタアバーのオーナーで、日本バーテンダー協会の会長さんでもある岸久さんもなかなかのBMIですが、彼は心の中で自分を律せないバーテンターとしてバカにしていたのでしょうか…自分としては尊敬する方の一人ですが。残念です。

    「たかが一杯のお酒を出す、ただそれだけのことであっても、されどどうなんだろう、もっといいものを作れるんじゃないかと考えれば、奥は深く、新しいことが見えてくる。そういうふうに誠心誠意やっていきたい」 -
     岸久

    岸久(2016年2月15日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
    http://www.nhk.or.jp/professional/2016/0215/

    さて、一般的に我々は仮説を持ち、それを現実や実験結果に当てはめて、仮説を修正していって、より正しい説に近づいていくのでしょう。これが理論的な考えとされるものの一つです。

    しかし、現実を見れば、トップアーチャーの中でBMIの数値が高い人なんで、リカーブの世界で何度も世界一となったエリソン選手やジンヘク選手。弊社で指導者としてお招きして事のあるチョン・ジェホン選手(オリンピック銀メダル・世界選手権金メダル)など、いくらでもいると思います。

    https://archerreports.org/2010/12/%e4%b8%96%e7%95%8c%e3%83%81%e3%83%a3%e3%83%b3%e3%83%94%e3%82%aa%e3%83%b3%e3%81%a8%e3%81%ae%e4%ba%a4%e6%b5%81%e3%81%ae%e3%81%8a%e6%89%8b%e4%bc%9d%e3%81%84/

    この時点で理論的な人間であれば、自分の説の方が間違っている(肥満は自分を律せない人間)と考え、自説の修正にかかると思うのですが、まぁ、それか自分を律せない人間でも世界一になれると、トップアーチャーの努力の否定にかかるのか、どちらかだと思いますが、自分の都合の悪い情報は入ってこないような方のようです。それは理論と呼べるものではないです。

    トップアーチャーとしてなどと自負はしていません。また、プロである私が素人を論破するのはみっともないことだと思いますので、アーチェリー以前の問題の部分について回答させていただきました。ご理解ください。

  5. 今週のターザンに古川選手の記事と情報が掲載されています。175cm、91kg(BMI 29)、体脂肪率26%とのことです。

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