この記事は2015年11月20日に書かれたものです。1年以上前の記事は内容が書かれた当時とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

【追記あり】新しいPSEのLASシステムについての解説

20151118_173152先日に入荷したPSEのエクスプレッション(XPRESSION)とエクスプレッション3Dですが、新しくLAS(Wedge lock)というシステムが搭載されました。それについての解説です。

これがどういうシステムかというと、リカーブではおなじみのセンターショット調整機構、ボルトでリムを左右に振るという調整機構です。ただし、センターショットといってもリカーブのセンターショットとコンパウンドでは大きく違います。

リカーブではセンターショットで一番大事なのは正しいアライメントのリムの真ん中に弦があること。逆に、フィンガーリリースによるパラドックがあるために、矢はセンターショットのライン上にはありません。コンパウンドにおいてのセンターショットでは、複雑な機構の中において一意的にセンターショットを定めることは難しく、メーカーがおおよその目安を公表しています(ラリーによればそれはおおむねハンドルの重心の中心)。なので、センターショットが弓の見た目の真ん中にないかわり(自分の弓は3/4″-13/16″)に、リカーブとは違い、矢はセンターショットのライン上にあります。これを調整する時、このLASシステムは新しい調整機構ではなく、既存の調節方法に加わる第5の方法です。

LASシステム_PSEこれ以外にもやり方があるかもしれませんが、レスト、ケーブル、ケーブルガード(トルク量)、ワッシャーの4つが一般的だと思います。

レストの調整方法はレンチで左右を調整するというものです。たいていの弓では最終的な微調整のために使われます。

ケーブルガードを調整することでフルドロー時の弓の傾きが変わり、センターショットが変わり、カムの傾きも変わります。調整は簡単ですが、あまりにも多くの部分に影響を与えるので多くのチューニングがやり直しになります。

ケーブルの調整方法については、以前にApex7を調整した時の記事が参考になるかと思います。この弓ではこの手法を使いました。

ワッシャーの調整方法については、以前にEnergy 35を調整した時の記事が参考になるかと思います。この弓ではこの手法を使いました。

そして、第5の方法がLASです。

さて、正直この4つの方法でチューニングできないことはないと思います。それでも矢がまっすぐ飛ばないのであれば、ほかの部分に問題がある可能性が高いです。このLASの一番のメリットはこれらの調整を射場などで簡単にできるようにすることです。

ケーブルではプレスしてケーブルを外すこと、ワッシャーに至っては、カムを解体する必要があります。時間とともに環境的な制限も多く、近くにボウプレスがない出来ないものです。対して、LASシステムではこれをレンチ1つで出来るようにしました。便利なシステムではないでしょうか。また、長期間の使用において、クリープによって少しずれてくるケーブル調整に対して、このシステムの方がより堅牢性が高いと考えられます(それでもケーブルのクリープは発生しますが)。

エクスプレッションを手に入れた時には、ぜひこの新しいチューニング方法をお試しください。

追記

最初にアップした記事ではケーブルガードによる調整がリストから漏れていました。加筆しました。


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Ryo

Ryo

山口諒 - JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、その後コンパウンドに転向。リカーブ・コンパウンド両方で全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。

5 thoughts on “【追記あり】新しいPSEのLASシステムについての解説

  1. コンパウンドでは無く、リカーブの観点から、現ページと直接関係無いのですが、
    センターショットについての質問をさせて頂きたいです。

    >逆に、フィンガーリリースによるパラドックスがあるために、
    矢はセンターショットのライン上にはありません。

    この一部分に対しての事ですが、
    仮にパラドックス現象の大小が各アーチャーのリリース技術の差で起こるとすれば、
    コンパウンドでのリリースに近いフィンガーリリースが出来たとして、矢もセンターに合わせる、
    その方法がチューニングの一つとしてあるか?
    (要するに、センターショット上に矢を置くチューニングはあるか?)

    それとも、「矢がセンター上に無い」チューニング、
    即ちセンターよりもポイントが半分出る程度のプランジャーのチューニングを施す事で、
    センター上に矢を置くよりも、パラドックスの影響を受けないのでしょうか。
    (つまり、パラドックスの原因?であるミスリリースに寛容になるチューニングという事か?)

    以前、貴社HP記事にて、フィンガーリリースとリリーサーによる機械リリースの動画を拝見しました。

    そこでは、フィンガーリリースによるパラドックスが、リリーサーによるものだと、全く起きていない事が、
    動画の方を拝見してよく分かりました。

    つまりパラドックス現象の大小で、センターショットラインに対してシャフトの位置を動かすべきなのか?
    そう疑問に思い、さらに今回記事の一部に着目して質問をさせて頂いた次第です。

    主だった質問は上記です。以下個人意見です。

    個人的には、チューニングは、個々人の感覚に基づくものだと考えていました。
    (一般的に考えられるチューニングを施した上での、個々人の工夫という考え)

    チューニングにも、ある程度の基準が必要であるとは思いますが、
    最近は少々選手の判断に頼るものが多いような気がしています。
    (自分がその類{バータチューン等}にちんぷんかんぷんである事は確かなのですが…)

    個々人で選択できる自由はあっても、その選択に迷わされてしまっては、
    道具やショップの方々に対しても失礼な気がして、
    最近のチューニング手段の確立がなされていない現状が少し悩ましいです。
    (それとも自分がただ知らないだけでしょうか汗)

    ぶっちゃけた話、チューニングの事を抜きにシューティングの技術だけで争える競技であれば、
    恐らく皆ほぼ同じ点数を叩き出せる様な気がします。
    (全員がウッドボウになるとか?)

    それだけチューニングに悩まされる競技もまあないと思っています。
    (チューニングに煩わしさを感じているとも言えます)

    昔、少しだけヤマハのα-EX?のハンドルとリムを使用していたのですが、
    ある程度のチューニングを抜きにして、とても扱いが簡単だった事を覚えています。

    リムの差込角度の調整が必要なかったのが大きかったかもしれません。

    現在の弓が昔に劣るかといえば、そんな事は無く、むしろ技術の発達で、
    かなりアーチャーに負担になりにくくなってきました。
    (振動減衰の大きさとコストや主にポンドに対する矢速)

    ただ、チューニング前提でリムハンドルを購入するのではなく、
    既にシュートできる状態から、個々人のチューニングをする、
    そんな時代になってもいいのではないか?と思うようになってしまいました。

    かなり大雑把な個人の意見になってしまいましたが、何らかのレスポンスを頂ければ幸いです。

    長文かつ多忙中の質問大変申し訳ありません。

    毎度の回答いつも楽しみにしております。
    (弦作成の動画を挙げて頂き感謝です!)

  2. >つまりパラドックス現象の大小で、センターショットラインに対してシャフトの位置を動かすべきなのか?
    >そう疑問に思い、さらに今回記事の一部に着目して質問をさせて頂いた次第です。

    そういうチューニングもあります。一般的には同じ位置に置いた状態で、プランジャーのテンションを調整していくことでよい矢飛びを得るようにします。

    ただ、現実は理想とは違い、例えば、720番が正しいのに850番をたまたま先輩からタダでもらって、
    850番で何とか飛ばそうとするときには、よりプランジャーを出して、より強くプランジャーに当たるようにします。
    (必ずそれでよい結果が得られるとは限りません)

    >個人的には、チューニングは、個々人の感覚に基づくものだと考えていました。
    >チューニングにも、ある程度の基準が必要であるとは思いますが、
    >最近は少々選手の判断に頼るものが多いような気がしています。

    これは、話の流れで行くと、個人の状況に大きな幅があるからだと思います。
    正しい道具を選んでいれば一般論(ある程度の基準)で大抵はうまく行きますが、
    予算の関係や、思想的なもの、またはタダで、もしくは安くゲットできたから少し合わなくてもこれを使う、
    世の中には関係者にホイットしか使わせないといったクラブもあると聞きます。
    プロショップをやっているとお客様の個人の事情には大きな幅があります。
    そのためではないでしょうか。

    >最近のチューニング手段の確立がなされていない現状が少し悩ましいです。

    チューニングの手法は確立されていると思いますが…何に悩んでいるのでしょうか。

    >ぶっちゃけた話、チューニングの事を抜きにシューティングの技術だけで争える競技であれば、
    >恐らく皆ほぼ同じ点数を叩き出せる様な気がします。

    想定している状況(レギュレーション)がわからないです。

    例えば、全員が68インチの40ポンドの弓にするとしたら、
    今まで36ポンドを引いていた人には不利になるし、45ポンドの人にも不利でしょう。
    たまたま40ポンドを使っている人が有利ですね。
    68インチなら、引き尺が28インチの人は有利ですが、32インチ引く人にはきついです。
    24インチの人なら矢が飛ばないでしょう。
    じゃ、弓の長さは個人の自由というなら、それはそれでチューニングの要素の一つ(どの長さを選ぶか)になります。

    ただ、WAの考え方は”最強”を決めるというものなので、そうはならないかと思います。

    >昔、少しだけヤマハのα-EX?のハンドルとリムを使用していたのですが、
    >ある程度のチューニングを抜きにして、とても扱いが簡単だった事を覚えています。

    競技用でオリンピックで使用されるような弓は使いやすさよりも、より、高い点数を出せるように進化しているので…間違ってはいないと思います。
    時代の流れでいえば、古い弓は発売当時の競技フォーマット、例えば、288本のタブルFITAを想定して作られていました。現在の弓は72本射の70mwを想定して作られています。
    なので、そもそもの設計思想が違います。

    >リムの差込角度の調整が必要なかったのが大きかったかもしれません。

    これを調整する必要がないと考えるのか、調整できないと考えるのか。これは考え方の問題です。
    角度を調整する必要がないと考える人はいません(これは200年前からある調整です。古くはリムにやすりをかけて行うものでした)が、
    プロディジーの3軸調整などは議論がある状態ですね。

    >ただ、チューニング前提でリムハンドルを購入するのではなく、
    >既にシュートできる状態から、個々人のチューニングをする、
    >そんな時代になってもいいのではないか?と思うようになってしまいました。

    自分の技術レベルであれば、70mwで580点くらいなら、ハンドルとリムを買って、ティラーだけ合わせればそのくらいは出せます。

    すべてはより高い点数というゴールのためではないでしょうか。
    高い点数が必要ないならチューニングはいりません(腕に当たって痛いのでティラーは調整が必要)

    また、チューニングがなくても当たる弓…という話ら、人間全員が同じ手の大きさ、同じ腕の長さ、同じ指の長さである必要があるかと思います。

    という返信でよいのでしょうか?

    また、個人的な意見ですが、チューニングする所が多いほうがチューニングは気が楽です。
    チューニングする箇所が少ないほど、個々のチューニングをより高い精度で行うことが求められる気がします。

    >(弦作成の動画を挙げて頂き感謝です!)

    良かったです。わかりにくい点があったらコメントください。

  3. 返信頂き、大変感謝です。
    毎度の事ながら、浅慮振りをあらわにしてしまい、お恥ずかしい限りです。

    返信頂いた文末あたりの、
    >すべてはより高い点数というゴールのためではないでしょうか。
    確かにこの一言に尽きると思います。
    ミドルクラスや、フラッグシップモデルの違いは、各々の予算に合わせたものであり、
    選択できる自由があるのが、良いのではないか?ということですね。

    チューニングの多様性は、それぞれの身体的特徴を元に、
    その人自身に合わせるために必要である、
    そう考えると、とても納得です。

    それと、
    >最近のチューニング手段の確立がなされていない現状が少し悩ましいです。

    この文は、私自身の浅慮の最たるものでして、かなりアバウトな表現であった事をお詫びしたいです。

    上記の、チューニングは、各々のためにある、という前提であれば、
    この文は記述する必要が無かったと思いました。

    毎度の事ながら、かなりアバウトで申し訳ないです。

    ですが、お忙しい中ご回答頂き、大変感謝しております。

    再度、気になった点があれば、ご質問させて頂ければと思います。

  4. チューニングの方法が確立していないという意見は少し賛同です。
    なんというか絶対的なものがない感じがします。
    例えばベアシャフトチューニングをするにしてもピッタリベアシャフトが羽根つきシャフトと同じところに行くようにはしなくても良いという風に聞きます。
    ティラーにしても感覚の問題があるから(僕の場合は2〜5mmくらいの間で)自分で調節しろとプロショップの方にも言われました。

  5. >なんというか絶対的なものがない感じがします。
    >例えばベアシャフトチューニングをするにしてもピッタリベアシャフトが羽根つきシャフトと同じところに行くようにはしなくても良いという風に聞きます。

    それはチューニングが個人的(あなたの道具によって変わる)なものだからです。

    アーチェリーにはいろいろな要素が関わっています。
    たとえば、お客様がスピンを使っていれば、ベアと完成矢の間では2gr程度の変化しかありません。
    しかし、極論では、FFP470では、33grとポイントを120grを90grに変更したほどの違いが生まれます。

    それではベアと完成矢が同じところに行くわけがありません。

    それだけではなく、ポンドも影響し、スピン(2gr)でもACE1250番を使っているようなアーチャーの場合には変化が生まれますが、
    X10の410番でスピンなら、30mでは同じところに飛ぶはずです。


    >ティラーにしても感覚の問題があるから(僕の場合は2〜5mmくらいの間で)自分で調節しろとプロショップの方にも言われました。

    その通りです。

    例えば、振動というものをとる方法は日々進化していますが、
    アーチャーによっては、フィードバックとして必要な振動もあると考えている人もいます。
    自分もその考えです。ただ、一般論ではないので記事で書いたりはしていません。

    昨日、ワールドカップで優勝したステファン・ハンセン選手もおそらくその一人で、
    彼が使っている弓にはバックストップ(リカーブのステルスショットのうなもので振動をとり、弦を素早く安定させる)が標準でついていますが、
    彼は取り外しています。

    個人の感覚の問題です。

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