この記事は2014年11月24日に書かれたものです。最新の情報とは異なる可能性があります。ご注意ください。

日本の競技規則にある弦とは何か

昨日、江戸川インドアに出場してきました。試合のほうがボロボロだったのですが、弓具検査でコンパウンドボウの弦についての解釈の話が出ました。決着はもうしていたのと思うのですが、ちょっとルールを考えるいい機会だと思うので記事にしてみました。

問題は「コンパウンドの弦とは何か」ということです。弦との弓以外の部品の接触についてについて、WAのルールではこのようになっています。

(リカーブ)
11.1.6. Stabilisers and torque flight compensators on the bow are permitted.
11.1.6.1. They may not:

Serve as a string guide;
Touch anything but the bow;
Represent any danger or obstruction to other athletes.

(コンパウンド)
11.2.1.6. Stabilizers may not touch anything but the bow.

簡単に言えば、リカーブ部門(11.1)においては弦という言葉が出てきますが、コンパウンド部門(11.2)には弦という言葉はありません。しかし、全ア連の競技規則を読むとコンパウンド部門の規則は

第203条 6項 スタビライザー(複数)およびTFC(複数)は使用することができる。ただし、弦のガイドとならないこと。
(全日本アーチェリー連盟競技規則 2014-2015年 一部省略)

と弦のガイドとならないことというWAのルールには含まれていない一文があります。この一文があると、問題になるのはコンパウンドの”弦”とは何かということです。

プライム_マシューズ_弦
競技規則を読みましたが、コンパウンドの弦とは何かを定義した一文はありません。では、メーカーの定義する弦とは何かというは、ノッキングポイントを装着する部分が弦で、それ以外の補助的なものをケーブルと呼ぶのが一般的です。しかし、この定義に従うのであれば、プライムの弦は写真上の左の赤線の部分だけで長さはONE MXでは81センチの部分のみ。対して、ワンカムシステムのマシューズでは、Apex7で242センチの部分がすべて弦です。写真の通り、プライムの弦はスタビライザーやガイドとなるものに明らかに接触していませんが、マシューズの長い弦はいろいろなものに接触しています。

ダンパー_弦そして、写真の部分のダンパーが弦に接触していると…マシューズではアウトで、プライムなら問題なしという、スタビライザーの装着場所・位置、およびその果たす機能に対しての規制ではなく、ストリング(弦)・カムシステムに対する規制になります。

このルールを厳密に適応するなら(自分も使用している)長い弦を使用するワンカム・バイナリーカムシステムに不利で、短い弦の使用するホイットやプライムにとって有利です。

もちろん、全ア連ではこのような意図はないのでしょうし、運用レベルでは問題は起きていない(弦はスタビライザー・ダンパーには接触してもよいという解釈になりました)のですが、全ア連では何をコンパウンドの弦としてとらえているのか気になるところです。

皆さんはコンパウンドの弦は何を指していると思いますか?


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Ryo

(株)JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、2021年よりターゲットベアボウに転向。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。次はベアボウでの出場を目指す。

4 thoughts on “日本の競技規則にある弦とは何か

  1. マシューズの上下のストリングサプレッサーは弦と接触しているが、これはルール上どうなのか?と、コンクエストを使い始めてからずっと気になってました。スッキリしました。ありがとうございます。

  2. 「弦のガイドにならいない」というルールの自分の解釈ですが、これは本来、競技に有利とか、不利といったレベルの話ではなく弓の定義の話です。

    > The bow is braced for use by a single string attached directly between the two string nocks,

    リカーブボウは2つのリムチップの間に1本の弦を張るということが最大の特徴であるので、弦がそれ以外の部分に触れることを許容してしまうと、リカーブボウとは何かを定義する競技規則の202条の1項(WAではBook 3.11.1.1.)と矛盾してしまいます。

    >11.2.1. A Compound Bow, which may be of a shoot-through type riser, is one where the draw is mechanically varied by a system of pulleys or cams. The bow is braced for use by bowstring(s) attached directly to the cams, string nocks of the bow limbs, cables or by other means as may be applicable to the design.

    しかし、コンパウンドボウの定義では弦というものは、全く大事な要素ではなく、弦、または、ケーブルを設計に応じて使用できるとなっているので、弦が何か触れていてもコンパウンドボウの定義を揺るがすことはありません。だからこそ、メーカーの方で勝手に弦を定義してくれという放置状態になっているのだと思っています。

  3. この記事を拝見させていただき、思い出しました。
    少し話はずれますが、ホイットのリカーブステルスショットが出た時点で驚いたのがその見た目以上に、WAがルールで許してしまうこと。
    コンパウンドでステルスショットを使うのに疑問は有りませんでした。しかしながらリカーブで使用するのは如何にと思いました。
    結局は、ホイットやイーストンが真新しい道具やアイデアを生み出したら、WAはそれに従うということでしょうか。
    またハンドルに関して、WINハンドルのイノカーボン以降はバック側にもプリントされてますが、とりあえずメーカーが作ってしまえばどうにでもなる、という感覚が見受けられました。
    つい最近ではアメリカのカミンスキー選手がハンドルの上側のバックに大きなシールを貼ってW杯に出場したりと。
    山口さんのお陰で、「何のためのルールなのか」を考え直すいいきっかけになりました。
    ありがとうございます。

  4. >結局は、ホイットやイーストンが真新しい道具やアイデアを生み出したら、WAはそれに従うということでしょうか。

    大きな話になりますが…ご存知かもしれませんが、リカーブの部門というのは”弓”であれば何でもよいことになっています。

    (WA)A bow of any type provided it complies with the common meaning of the word “bow” as used in target archery,
    (競技規則)202条 弓は、ターゲットアーチェリーで使用されるもので、常識的に「弓」という言葉に適合していれば、どのような形状でも使用することはできる。

    これは古くあるアーチェリー連盟の理念のようなもので、”弓であればよい” = “勝った人はもっと強いアーチャー”という考えは、19世紀からあり、結果、1937年の行われれた第一回の日米対抗アーチェリー大会は、日本側は和弓で参加しています。

    確かにWAはどんどんと新しいものを認めていますが、それは革新的なものではなく、むしろ保守性がベースにあると思っています。新しいものを積極的に認めて、WAの”傘下”に入れる。常識的に”弓”であれば、それを認めることで、WAターゲットアーチェリーの優勝者 = 最も強いアーチャーという「弓の中ではアーチェリー最強」説を守っているのだと思います。

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