この記事は2014年10月13日に書かれたものです。最新の情報とは異なる可能性があります。ご注意ください。

【アーチェリーテクノロジーを読む1】パワーストロークに対しての新しいアプローチ

この3連休、アーチェリーテクノロジーを読んでました。全日本前なのですが…ちょっと肩を痛めています。

下記、専門的な話です。興味がある方だけに。

先週届いたアーチェリーテクノロジーの中身を少し紹介できたらいいかなと思い。記事にまとめました。

90年代の日本メーカーのアーチェリー技術に対しての理解について残されている資料はアーチェリー教本(2000年版)などしかないのですが、そこに書かれていることが本当に2000年段階での最新の知識であれば、その知識はあまり古いとしか言えません。誤りも多数あります(もちろん2014年の段階で2000年に書かれた本を指摘するのはフェアではありません)。

日本の弓が世界を席巻した時期もあったので、おそらくはそうではなく、欧米と違い、公立の研究組織に所属している(メーカーから)独立した研究者が存在せず、アーチェリー技術を研究していた研究者がみんな商業メーカーの人間だったので、最新の理論を発表できなかったのが理由なのではないかと推測しています。

ヒックマン博士の次に有名な研究者にボブ・コーイ(Bob Kooi)さんがいるのですが、工学ではなく、数学者の方で、論文が(自分には)難解すぎて、何度か挫折しました。

Bob_kooi
(Bob Kooi, On the mechanics of the bow and arrowより)
この本の中では、新しいコーイ博士の理論を解説してくれているのですが、それが上のグラフです。昔の日本メーカーのカタログを読むと、とてもfx曲線を大事にしていることがわかります。理由はわかりませんが。

弓を引いた時のドローフォースカーブ(fx曲線)とリリースした時に発生するフォースカーブは異なります。後者はよく、ダイナミックフォースカーブと呼ばれます。それは測定することが困難です。測定のためのセンサの自重が結果を狂わせるためです。

1937年にヒックマンはそれを計算より導き出し、E(Hickman)のようなカーブになることを発表しました。リリース時にいったん落ち込み、最後でドローフォースカーブを超えて一気に矢にエネルギーを伝えます。自分も考える時にこのカーブをもとに考えてしましたが、ボブ・コーイさんは83年の論文で、違うカーブを発表します。それが、グラフのE(This theory)の方です。正直、この理論は知りませんでした。

そして、その根拠、ヒックマン博士との違いはどうやら、弦を直線として計算するかということにあるようです。

コンパウンドボウのストリングの変化Youtubeより

リカーブボウのストリングの変化Youtubeより
上の2つは適当なハイスピード動画から撮ったキャプションですが、リリース時に弦が直線ではなく曲がっていることが確認でするかと思います。これによって、弦にかかる力は一定ではなく、その力も静的と動的では違いがあり、それを織り込んで計算するとリリース後のフォースカーブは2つの山と2つの谷を持つ形になるというのが、83年、現在で最も新しい理論です。

ボブ・コーイ(Bob Kooi)博士の論文はこちら。大学レベルの知識が必要です。

On the Mechanics of the Bow and Arrow
http://www.bio.vu.nl/thb/users/kooi/thesis.pdf

第三章(The Bow)ではこのあたりの話について書かれています。(第一章は単位の話、第二章はアルミやカーボンの素材の特性について)

第四章(Limb Design)に続く。


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Ryo

(株)JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、2021年よりターゲットベアボウに転向。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。次はベアボウでの出場を目指す。

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