この記事は2014年10月15日に書かれたものです。1年以上前の記事は内容が書かれた当時とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

ホイットの新しいチューニングシステム「VertaTune」システム

rest_button前記事でも書きましたが、この新しいホイットの「VertaTune」システム(レスト/プランジャーの高さを調節できるシステム)については、ちょっと否定的です。このシステムによって、どんな新しい可能性が手に入るのかあまりに明確ではないと思います。

今日、自分が個人的に信頼している(私信で返信してくれているので名前を控えます)何名かのベテランアーチェリー、ベテランコーチに連絡を取り、この問題について話し合いをしました。みなさん、この十年以内に世界大会に出場している現在の技術にも詳しい方です。

簡単に言うと、微妙な意見が多いです。ただし、このシステムの意味は理解できました。

ざっくり言えば、このシステムは弓の全体の長さの中において、矢が発射される場所を調整します。このシステムによって達成される同様の調整はおおよそすべてティラーのバランスでも調整できます。ただし、ティラーのバランスを調整することは矢の飛び出し、及びノックトラベルだけではなく、その後のリムの振動にも影響を与えますが、この「VertaTune」は、そこから独立して、調整することができます。

ティラー調整による矢の飛び出しのチューニングをする → 付随してノックトラベルと発射後のリムのばたつきにも影響を与える

VertaTuneによる矢の飛び出しのチューニングをする → ノックトラベルと発射後のリムのばたつきにほぼ影響を与えない

ここまで書くと、ティラーにかわる新しいチューニング方法のように思えますが、しかし、このアイデアがこれまで試みられても成功しなかったのは、矢がマウントされている位置をグリップから離すことはグルーピングに明らかに悪影響を与えることが多くの実験で実証されているからです。この部分を考量すれば、

ティラー調整による矢の飛び出しのチューニングをする

付随してノックトラベルと発射後のリムのばたつきにも影響を与える、またグルーピングにも影響与えるが、グルーピングを良くするかはバランスによって決定される。

VertaTuneによる矢の飛び出しのチューニングをする

ノックトラベルと発射後のリムのばたつきにほぼ影響を与えないが、矢のマウント位置を高くすればグルーピングが悪化し、下げれば改善される。

となります。最終的にアーチャーに求められるトレードオフの中に「グルーピングが悪化する」というものがあったときに、それを選択するアーチャーがいるのかという話になるのではないでしょうか。ハイトでは、安定性と矢速のトレードオフですので、高いが好きと言う人もいれば、低いのが好きと言う人もいますが、グルーピングと何かをトレードオフにしなければいけないときに、それを選択する人がいるのでしょうか。

と、ここまでアウトドアターゲットにおける一般論です。このために、結局私としては個人的にVertaTuneというシステムに否定的です。ただ、ロウで使用すればよいだけなので、使わなければ悪いシステムではないでしょう。

ただ、話の中でアウトドアターゲットではなく、インドアでX23/X7などを使用したシューティングにおいては、このチューニングが価値を発揮するシーンが存在するのではないかと意見があります。これに関しては、実物を見てから再度判断したいと思います。

また、ティラーチューニングよりも簡単に行える可能性があります。これによって、ティラーチューニングの必要性を理解していても、手間だから避けていた人が、簡単に行えるようになったことで、調整する気が起きれば、そのような方にとっても非常に良い機構でしょう。


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Ryo

Ryo

山口諒 - JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、2014年コンパウンドに転向、2018年よりベアボウに挑戦中。リカーブ・コンパウンド両方で全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。

13 thoughts on “ホイットの新しいチューニングシステム「VertaTune」システム

  1. 従来の製品よりも低い位置にも設定できるのであれば、多少は意味がありそうですが、どうなのでしょうか。

  2. そうですね。問題は(このハンドルの中で相対的に)高い位置で使う人がいるのか…そのメリットがあるのか… 

    従来との比較は届いたら行います。たぶん11月の1週目だと思います。

  3. どちらかしか使わない前提で新技術を否定するのは余りに的外れだと思いますが…
    コンパウンドではティラーとレストを独立して調整出来るのでそれを反映しただけの話では無いんですか?
    売り文句が良くないだけで、内容としてはとても有益なように感じます。

  4. >どちらかしか使わない前提で新技術を否定するのは余りに的外れだと思いますが…

    申し訳ないですが、ちょっと意味が理解できないです。どちらかしか使わないというのはどういう意味ですか? 誤解させてしまった部分があれば見直してみます。


    >コンパウンドではティラーとレストを独立して調整出来るのでそれを反映しただけの話では無いんですか?

    ではないんです。

    お客様はコンパウンドアーチャーですか?

    リカーブアーチャーであるという前提で基本から説明すると、コンパウンドは水平な状態でシューティングすることが大前提で開発されています。もちろん、それはテクニックレベルでの話だけではなく、運用上においても、水準器を使用が認められ、エイミング中に弓が傾かないよう努力しています。さらに、セッティング段階でも弓の水平は意識されており、サイトの反対側だけスタビライザーを付けて、ナチュラルな状態で左右の重心が真ん中に来るように設定します。コンパウンドのチューニングに興味があるのであれば、こちらが参考になります。

    これらの寛容なルール、または、アーチャーの努力によって、多くのコンパウンドアーチャーは水平な状態で弓を射つことができています。

    対して、リカーブでは、まず、水準器の利用が認められていません。練習の段階では使用できますが、経験上、弓をきっちりまっすぐ立てて射っている人はほとんどおらず、2014のワールドカップファイナルの動画でも確認できるように世界のトップでも弓を水平にして射っている人はほぼいません。そもそも、水準器で穴が真ん中に来るようセッティングをしていません(サイトの重さがある分、反対側の重さを重くする)ので、グリップに力みがなければ、ちょっとは傾くのが自然です。

    以上が、コンパウンドボウとリカーブボウの違いです。リカーブでレストを高くしてしまうことは、弓の傾きに対しての寛容性を低くし、グルーピングを悪くします。

    じゃ、リカーブでもそのような射法(弓をまっすぐ立ててうつことを最優先する)をどこかのプロコーチが開発すればよいではないか、という考えなら、その可能性は否定しませんが、ちょっと本質から離れていると考えます。

  5. 改めて読み直すと雑で不快な書き方をしていますね。失礼致しました。
    4点書き記しておきます。
    ①私にはこの記事はverta tuneとティラーチューンどちらかしか使わない前提でかかれているように見えます。コンパウンドではティラー調整とは別にノックトラベルを改善するためにレストとノッキングポイントの上下を調整しますよね?リムポケットといいコンパウンドで行うチューンの手法を取り入れているだけのような気がします。
    ②コンパウンドにおけるサイドロッドの主な役割は右回転のトルクの軽減の方が重要な役割のはずです。その条件に加えてリカーブよりも肉厚なライザーはサイト側に重心が寄りやすいために、サイドロッドはシングルで対応しているケースがほとんどだと思います。
    ③サイトの重さ分反対を重くするのであれば、普通は釣り合うように、もしくは腕に負荷がかからないようにセッティングしますよね?構造上トルクが発生しにくいリカーブで、わざわざサイトと反対側に傾き、なおかつ傾きを一定にできないほどウエイトを積む理由が不明です。
    ④弓の傾きと言う話に触れるならば、よりピボットから遠い「サイト」を考慮に入れる必要があるはずです。ライフルなどでは常識ですが、サイトとバレルはなるべく近くに配置します。理屈は考えればすぐわかるはずです。一切エイムをしないのであれば、傾きの影響が少ないピボット近くの方が有益でしょうね。レスト位置が高いとグルーピングが悪くなるという話はノックトラベルによるレストへの矢の押し付けに因るものが大きく、傾きがどうこう言う話ではないと思います。

  6. >①私にはこの記事はverta tuneとティラーチューンどちらかしか使わない前提でかかれているように見えます。コンパウンドではティラー調整とは別にノックトラベルを改善するためにレストとノッキングポイントの上下を調整しますよね?

    そのように見える部分がありましたら、文言を修正します。

    >リムポケットといいコンパウンドで行うチューンの手法を取り入れているだけのような気がします。

    コンパウンドと違う理由は前回のコメントで返信しました。

    >②コンパウンドにおけるサイドロッドの主な役割は右回転のトルクの軽減の方が重要な役割のはずです。

    サイドの主な役割(まずやるべきチューニングとして)は、左右のバランスをとること、弓を上カムにひもを通して釣った状態で水準器が中央に来るようにすると言ったりしている資料として下記のものがあります。

    http://www.lancasterarchery.com/compound-bow-setup-dvd-with-liam-grimwood-neil-wakelin.html

    お客様がおっしゃるコンパウンドのサイドロッドの主な役割は水平のバランスではなく、トルク軽減だというコーチングマニュアルを読んだことがないので該当する記事、本、DVDがあれば、読んでみます。その根拠を考慮したうえで回答させてください。

    >その条件に加えてリカーブよりも肉厚なライザーはサイト側に重心が寄りやすいために、サイドロッドはシングルで対応しているケースがほとんどだと思います。

    こちらも根拠がわかりませんが、PSEのドミネーターを使用している多くのアーチャーはシングルのサイドロッドです。このハンドルは左右対称です。

    >③サイトの重さ分反対を重くするのであれば、普通は釣り合うように、もしくは腕に負荷がかからないようにセッティングしますよね?

    具体的にどういったセッティングが腕に負荷がかかるセッティングで、どういったセッティングが腕に負荷がかかるセッティングでしょうか。負荷をハンドショック(うった瞬間に腕にかかる衝撃)と捉えると話が外れると思いますし、腕にかかるモーメントという意味であれば、腕に対する負荷を増やして、弓を安定させるというのが近年の傾向と感じています。

    >④弓の傾きと言う話に触れるならば、よりピボットから遠い「サイト」を考慮に入れる必要があるはずです。

    はい

    >ライフルなどでは常識ですが、サイトとバレルはなるべく近くに配置します。理屈は考えればすぐわかるはずです。

    サイトを配置するという概念がちょっとわからないです。サイトは目の高さ、ポンド、ドローレングスなどによって、自動的に決まってしまうもので、それを配置するというのがちょっとわからないです。

    >一切エイムをしないのであれば、傾きの影響が少ないピボット近くの方が有益でしょうね。

    同意できるかわかりません。一切エイムをしないとは、例えば目をつむって射つということかと思いますが、その時、ピボットに近い位置が有益かどうか…少し考える必要があるとは思います。少なくとも自明な問題ではないかと思います。

    >レスト位置が高いとグルーピングが悪くなるという話はノックトラベルによるレストへの矢の押し付けに因るものが大きく、傾きがどうこう言う話ではないと思います。

    正しいチューニング
    https://www.youtube.com/watch?v=CfaqA7lwEfc&list=UUjWpU1HbhnUIjv3_lT5VcGg

    誤ったチューニング(-10mmティラー)
    https://www.youtube.com/watch?v=0ORhatEk5G8&list=UUjWpU1HbhnUIjv3_lT5VcGg&index=30

    申し訳ないのですがわかりません。どういった現象でしょうか。上記の動画は弊社で撮影したものです。お客様がおそらく想定している現象はティラーチューニングを誤ったときには発生しますが、正しくチューニングしたときには発生しているようには見えません。レストと矢で何か起こっているのお考えなら、すべてこの動画でとらえていると思いますので、どの現象か教えてください。

  7. 1年以上前の記事に申し訳ないのですがこのシステム搭載のハンドルを買った場合はまず一番レストが低い位置で使ってみるべきということでしょうか?
    当時と今で状況が変わっているかもしれませんがよろしくお願いいたします

  8. X10シャフト、および、それに準ずるものであれば、そこがスタートになります。

    X23などの大口径のシャフトの場合はクリアランスとの兼ね合いになります。

  9. レスト位置が低い方が弓の傾きに寛容になり的中がよくなるから、VertaTuneはロウで使用すれば良いとのことですが、トップ選手でも、ロウ以外のミドルやハイの選手を見かけます。
    オ・ジンヘク選手もハイの位置で使用しているように見えます。https://worldarchery.org/pzqw92c

    的中を捨ててまで、どういった理由でミドルやハイを選択するのだと思われますか?


  10. 提供いただいた写真を拝見する限りでは、クリアランスの問題だと思います。他の写真でも、指から矢まで1cm程度か、それよりも近いように見えますので、この状態でレストを下げていくとクリアランスに問題が生じると思います。

    以前にも質問がありましたが、選手によってはグリップを下げることで解決している方もいます。

    http://archerreports.org/2018/04/%e3%82%a2%e3%83%aa%e3%82%be%e3%83%8a%e3%82%ab%e3%83%83%e3%83%972018%e7%b5%82%e4%ba%86%e3%80%82%e5%86%99%e7%9c%9f%e8%b2%bc%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%8a%e3%81%8d%e3%81%be%e3%81%99%e3%80%82/

  11. 回答ありがとうございます。
    アメリカの女性選手はピボットを下げていたけど、オ・ジンヘク選手はレスト位置を上げて対応したということですね。
    どちらにしても、ピボットとレスト位置が遠くなることで的中が悪くなってしまうけど、指の位置を下げて、矢(羽)に当たらないようなグリップにする(押し手の手の形を変える)よりも、今の押し手の形のままピボットとレスト位置を広げた方が当たるという判断なんですかね?

    アメリカの選手にしても、オ・ジンヘク選手にしても今のグリップだとピボットとレストの位置を遠くしないとクリアランスが悪くなる。

    でも、ピボット位置を下げたりレスト位置を上げると的中が悪くなる。

    じゃあ、ピボットとレストが近いままでも、矢(羽)が当たらないような押し手の形に変えよう。

    とはならないんですかね?

  12. >でも、ピボット位置を下げたりレスト位置を上げると的中が悪くなる。
    >↓
    >じゃあ、ピボットとレストが近いままでも、矢(羽)が当たらないような押し手の形に変えよう。

    レストまでの距離というのはあくまでシューティングマシンでの理論値です。そこには押し手のグリップの形状という要素は入っていないので、実際には選手の方でいろいろと試してベストの運用法を探すことになるかと思います。

    ただ、個人的には、例えば、ハンドルのグリップの形状が自分の押し手に合わなかった時、ハンドル側を変えるのではなく、自分の押し手を変えようとする選手はあまりいないと思います。基本的には道具を自分に合わせる方を取ります。

  13. 回答ありがとうございました。
    機械が射つのと、人間が射つのでは、やはり差があるのですね。

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