この記事は2014年2月2日に書かれたものです。1年以上前の記事は内容が書かれた当時とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

FIVICSのトップセーバーについて

SONY DSCFIVICSから新しく発表されたトップセーバー(弦とリムの間に入れるタイプのダンパー)が届き、間もなく実射テストの予定です。シューティングマシンと測定センサ類がある大久保店が朝から大忙しとのことで、現在近射レーンの順番待ちです。

なので、この商品に関して少し書きます。

販売する前のテストで一つびっくりしたのが、この商品がヤマハによって、特許が取られていたことです。特許公開2003-75095というもので、その後アーチェリー事業から撤退したためか、特許は放棄され、権利消滅日は平成20.2.4です。また、もう一つ、2004年にも同様の特許申請がされていますが、こちらはその後自主的に取り下げられています(未審査請求によるみなし取下)。

実際に特許になった申請 – 洋弓及び振動吸収部材並びに振動吸収方法
取り下げられた申請 – 洋弓及びその振動吸収部材

特許の中身を知りたい方はリンクの先で見ていただくとして…特許の仕組みにはあまり詳しくありませんが、発明しなくても簡単に特許ってとれるんですね…。

この商品はリカーブというものが使われ始めた時から、おそらく500年前から存在しているものです。それで特許が取れるとは…。

longbow
前に、京都店の米田からリカーブの定義を聞かれたことがありますが、言葉上の定義はともかく、アーチェリー屋の定義としては「弦がリムのチップ以外の場所でリムと触れている弓」がリカーブボウです。なぜ、そのように定義されているかというと、伝統的なロングボウと呼ばれる弓ではリムチップのみで弦とリムが接触しています。このタイプの弓は非常に静かです。リムチップでしか弦が弓と接触していないので、弦がリムに当たって発する音がありません。

対して、リカーブボウではリムチップ以外で、弦とリムが接触しているので、発射時に弦がその場所に当たり音が発生します。リカーブボウではロングボウは違い、その対策が必要になります。

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上の写真のものは「リムサイレンサー」と呼ばれるものです。その理由は、現在の競技においては振動を吸収し弓を安定させることが目的ですが、このアイテムがはるか昔にアーチャーによって発明されたときには、獲物に逃げられないようリカーブ構造によって発生する音を消し、獲物に気づかれないようにするのが目的でした。そのため、ダンパーやセーバーではなく、サイレンサー(消音器)と呼ばれます。ただ、働きは同じです。
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革の切れ端やゴムの切れ端で自作するのが一般的ですが、商品としても販売されています。商品としては60年前くらいから販売されていると思います。

もうヤマハの特許は失効しているので、現状でトップセーバーなどの「リムサイレンサー」を販売することには何の問題もないと思いますが、何百年もリカーブスタイルのボウハンターたちによって使われてきた商品で特許を取れることは驚きです。失効していなかったら、この商品を販売できなかったことを考えると、「特許」というのは恐ろしいものですね。


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Ryo

Ryo

山口諒 - JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、その後コンパウンドに転向。リカーブ・コンパウンド両方で全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。

4 thoughts on “FIVICSのトップセーバーについて

  1. 特許制度に誤解があるようですね。

    60年前から販売されているものが販売できなくなる特許であれば、特許権を侵害していると訴えられてからでも60年前から販売している実績を提示すれば特許は無効になるはずですよ。

  2. もう一つの補足コメントも確認はしました。公開はしません。

    事実としては、これで特許が取れたこと。次に、この部品はただの切れ端を貼るだけなので、市販品よりも自作する人が多く、動物の革・食物繊維(リンネル等)・ゴムなどが使われてきました。この二つが事実です。

    >特許制度に誤解があるようですね。

    誤解はおおいにあると思います…詳しくないです。もう失効している特許で、訴えられることはないと思いますが、実際そんなことがあったら、審判の結果どんなことになったのかは予想できません。リカーブが発明されたときにハンターが使用した革製のリムサイレンサーについて知識がなければ、大会社に訴えられた時点が、販売を終了していたと思います。戦えないですよ…。

  3. 前提がはっきり分かりませんのでひとつだけ補足します。

    特許成立前に販売していた事実が立証できれば、どんなに大きな企業に特許侵害を訴えられようと、販売を中止する事態に追い込まれることはありません。

    特許庁は過去の特許に侵害しないかは調べますが、すでに市場に流通しているすべての技術に対して侵害しているかは調査仕切れませんので、特許認定後も公知の技術(過去に販売実績がある等)であれば特許の認定を取り消します。

    他者から特許の申請があっても、自社に公知の技術とする事実があればわざわざ他者の特許申請の際につぶしに行かないのが通例です。

    特許侵害を訴えられて初めて、申請前に販売実績があるとして特許自体が無効と反論するのが通例です。

    過去に販売していた事実の立証自体が難しいと言う話ですか?

  4. 特許制度の実務について大変わかりやすい解説をありがとうございます。

    >前提がはっきり分かりませんのでひとつだけ補足します。

    今回の前提ですが、この特許を持っていたのは、ヤマハというメーカーで、特許を申請したということは、他者に使わせずに自社だけで使用したかったということだと思います。
    (公開する前提なら特許を申請しなくても、公知の技術で保護されるようですので)

    そして、ヤマハは現在アーチェリー市場で何のプレゼンスもありませんが、
    2001年までは国内のハンドル・リム市場でシェア5割以上の大変存在感のある会社でした。
    自分もユーザーで撤退した時は大変困ったものでした。

    >特許成立前に販売していた事実が立証できれば、どんなに大きな企業に特許侵害を訴えられようと、販売を中止する事態に追い込まれることはありません。

    国内でプロショップを営業する以上、取り扱いを避けては通れない会社です。
    自分のコメントはそんな大メーカーから、「特許に引っかかる」といわれれば、
    販売を中止にしない訳にはいかないという意味です。

    >過去に販売していた事実の立証自体が難しいと言う話ですか?

    公正取引委員会に対する訴えも同様かと思いますが、大企業と戦えないのは、自社の正しさを立証する困難さにあるのではなく、
    メーカーに流通を止められたら、資本力に乏しい会社は審判ができる前に干上がってしまうことにあると考えています。

    ブログなどでイーストンやホイットやFIVICSなどのメーカーの商品について批判含め言いたいことをかけるのは、
    それらのメーカーがフェアであるという信頼関係があってできることです。
    信頼できないメーカーについては、ややこしいことを避けるために商品の評価をせず、ただ販売しています。

    また、逆に言えば、ケンカしたときに持ちこたえる資本力のない(お金がない)自分たちに問題があるのであり、特許制度が悪いという意味ではありません。

    正しく表現できなかったことをお詫びいたします。

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