この記事は2014年1月26日に書かれたものです。最新の情報とは異なる可能性があります。ご注意ください。

テルフォード 1日目

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例年ニームで行われている展示会ですが、今年は世界インドア選手権がニームで行われる関係で、展示会はイギリスのテルフォードでの試合で行われることになりました。

テルフォードはロンドンから2時間ほど、今回は近いのバーミンガムという町に泊りましたが、ここからは35分ほどののどかな町です。

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会場の入り口には、初対面の地元イギリスメーカー・ランチテック(Launchtec)さんのブースが。

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社長さんには初めてお会いしました。素材技術のべラテンさんとは聞いていましたが、予想以上のベテランさんでした。いや…外国の方の声から年齢を推測するのは困難です。特に新商品はありません。現在弊社で在庫が切れているサイズをいくつかもらいましたので、帰国後在庫に復帰させます。

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次はウーカ(UUKHA)のブース。さっそく新しいリムVX1000を試射してみました。4月に発売が開始される予定です。UX100は素材のバランスをよくするために約8%ほどカーボン以外の繊維をブレンドしていましたが、UX100からの開発から4年、ついに完全にカーボン繊維だけで構成された”フル”カーボンリムの開発に成功しました。

UX100比で4%矢速が向上しています。実際の商品でスペックどおりの性能であれば、市場でもっと速いリムと同等、またはそれ以上の矢速となります。

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それを可能にしているのは、すべてカーボン素材から構成されることによって生まれた他のメーカーを圧倒するほどのリム全体の剛性です。これほど小さなリムチップのリムはこれまでなかったと思います。ラミネートリムでチップを小さくしようとすると、その部分に補強のカーボン素材が必要になり、結局リムチップは小さくできたけど、その分重くなって、意味あったのかとなることが多いです。ウーカのリムは全体が同じ高剛性のカーボン繊維素材でできていますので、そういった心配がなく、極限までリムチップを小さくしました。これ以上小さくするのは、リムの素材の性能の問題以前に、物理的に問題で無理ではないかと…。

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次には、極端に強調されたリカーブ。SK90クラスのまったく伸びない弦を使用できるリムで、これほどの強調されたリカーブを持ち、かつ、この軽さのリムはありません。これもカーボン繊維の剛性の賜物で、これまで強調されたリカーブを持つリムは、トラディショナルタイプで、伸びる弦(ダクロンなど)で使用する必要があるものか、ダイニーマに対応したものでは、衝撃にあえるためリムに厚みを必要としました。リカーブを深くすることで矢速はリムの安定性(後述)を得ることができますが、その分の伸びる弦やリムを重くする必要があったのでは、これまたプラマイゼロの世界になってしまい、そのバランスがメーカーの技術力ですし、その限界に挑戦しようとするから、エントリークラスのリムよりも、上位の競技用リムのほうが破損が多いのです。

このバランスでの設計もウーカの素材だからこそ、極限までリムを薄く、かつ、リムはラミネートリムのように長方形ではなく、台形(バック側からフェイス側にかけて広がっていく)で成型し、このリカーブを採用してもリムの耐久性にまったく問題が生じません。

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最後は、このリムの弦溝の長さが、このリムの性能を語っていると思います。黄色の部分がすべて弦溝になっていて、弦とリムが接触している(68インチです)のですが、W&Wやホイットなどの一般的なメーカーでは、この状態での使用はお勧めできません。おそらく、ハイトを6.5インチあたりに設定すると、これだけ長くリムと弦が接触するようになりますが、その状態での使用はラミネートリムでは破損の原因になります。プレース状態(引いていない状態)で弦とリムの接触の長さは、発射時に弦からのリムにダイレクトにもたらされる衝撃の量になります。通常のリムでは耐えられません。

試射し、リムの形状を確認した限り、100%フルカーボンという特質をフルに生かした設計になっています。非常に発売が楽しみです。ただ、問題は高性能な素材を使いすぎたため、値段は8万円を超え、弊社で販売するものの中では最も高いリムになります。5万円台で買えるお得な韓国製のINNO EX POWERなどと比べると、割高感は否めないので、量を販売することは無理でも、わかる人には使っていただきたいリムです。

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次にトップハット社。高性能で低価格のポイントの製造を得意とするメーカーで、昔から連絡は取っていましたが、取引は直接はしていません。代理店を通して購入しています。その商品のうちの、シャフトをカバーするポイントです。昔、同じタイプのもので精度が低く、シャフトを入れると、逆にカバーする部分がシャフトを削って、保護する以前にシャフトを破壊するという笑えないものがありましたが、この会社ならそんなことはないでしょう。

ここにはまだ書けませんが、既存のビジネスとは関係ないところで打ち合わせしてきました。

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これは、ガスプロのW&Wの黒・金ハンドルにぴったりな羽です。W&Wのブースで営業部長と話したら、ガスプロの人とは長い付き合いだそうで、協力関係にあるそうです。面白いコラボです。3月の入荷予定。

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ガスプロの新しいサイトピンです。フードを長くすることで、ピンに当たる光の量をコントロールし、また、ピンの破損を防ぐこともできるようです。アイデアは良いと思いますが、ファイバーが太いような…気が。

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こちらはインフィテックのコンパウンドレスト。低価格ながら、左右の調整、ブレードの角度の調整、プレートのテンションの調整。

 

SONY DSCまた、ブレードの取り付け位置が2つあり、ブレードを長く使うこともできます。ただ、なぜか、ここまでできて、エレベーション(上下)調節機能がありません。新興メーカーにありがちなちょっと残念な感じです。

いったんここまで。


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Ryo

(株)JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、2021年よりターゲットベアボウに転向。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。次はベアボウでの出場を目指す。

16 thoughts on “テルフォード 1日目

  1. これほど小さなリムチップですけどどうやって弦を張るのでしょうか。
    プルプッシュで張るのか専用のボウストリンガーがあるんでしょうか。
    事故がなければよいのですが。

  2. フォーミュラー対応のストリンガーで行けそうな気もしますが、難しい場合は逆のチップから張ることで対応できると思います。入荷後テストしてみます。

  3. uukhaつながりで。
    GMX(プロテイラーボルト)にux100(2013ver)で
    組み立てがかなりきつい(接合部が狭い?)ケースが
    ありました。
    2011verリムでは普通に付くためリムの個体差と
    思われます。使用に問題はなく表面コーティングが
    剥離する程度ですが、一事例として報告まで。
    (役に立つ情報かどうかはわかりませんが^^;)

  4. 情報ありがとうございます。UUKHAのリムは製法上そのような問題は生じないと思います。
    金型を使って製作されるため、例えば、材料の充填の失敗で、設計されたサイズよりも小さく製造される可能性はあっても、
    設計されたサイズよりも大きく製造されることは起こりえないことです。

    また、この問題(リムボルトとのフィット)はリムは出荷時の検品ですべてチェックしているものです。

    測定可能であれば、リムボルトの径を教えていただければ幸いです。

  5. 回答ありがとうございます。
    リムボルトは外径9㎜、リムの接合部(半円部の直径)が
    10㎜(ノギスがないため金尺での測定ですので誤差
    大きいです)でした。ためしに元々GMXに付いていた
    アルミリムボルトを接合部にはめると問題のない下
    リムはすっと入りますが、上リムはカチッと音がして
    咥え込みます(アルミボルトも径9㎜)。
    このため組み立て時にボルトに対し斜めに入るため
    固いのだと思われます。

  6. >リムボルトは外径9㎜

    リムボルトの適切なサイズは9.4mm(+-1mm)程度ですので、外径が9mmということであれば、かなり細いリムボルトで交換対象になる誤差です。

    >リムの接合部(半円部の直径)が10㎜(ノギスがないため金尺での測定ですので誤差大きいです)でした。

    お客様の説明ですと、オス側(リムボルト)が9mmで、メス側(リム)が10mmということでしょうか?
    その場合、1mmものスペースがあるので問題なく装着できるように思いますが…。再度確認していただければ幸いです。

  7. ライザー装着状態のボルトを金尺で見ていますので、
    1㎜以下は誤差と思われます。おっしゃる通り、リム側が
    広いので問題ないはずなのですが、リムにボルトのみを
    はめて見ると前記のように音がして、手を放してもボルト
    が落ちない(咥え込む)状態になります。感触からメス側の
    内側壁面に一部突起があるような感じです(内側側面の平面度が測定できませんので確認はできませんが)。
    製法が金型キャストであることも考慮すると、リム成形後
    の表面コーティング(透明層があり、接合摺動部で剥離
    したりしているところ)のムラで引っかかっているのかと。
    であれば、使用しているうちにこなれてくるのでは
    ないでしょうか。

  8. >感触からメス側の内側壁面に一部突起があるような感じです。

    もしそのような状況であれば、サンドペーパーで突起を落としていただいて問題ありません。また、サービスとして弊社でも対応いたします(無料です)。
    コンポジットリムですので、仕上げは必須ではありませんが、落とした後はクリアコートを薄く塗っていただければ良いかと思います。

  9. UX100はリムチップがRのかかった長方形ですぐにサービングを割って原糸を露出させていく困ったさんでしたが、VX1000ではなだらかになってる様に見えますね。
    いつぞやのボウガン用の原糸でも使えるかな?決して良くはなさそうですけど。
    発売楽しみに待ってます。

  10. ありがとうございます。入荷次第写真等アップします。

    >いつぞやのボウガン用の原糸でも使えるかな?決して良くはなさそうですけど。

    ウーカのリムは非常に硬いです。そのために、弦も”硬い”ものを使用すると、金属同士が接触したようなあまり快適ではない弦音になる場合があります。クロスボウ用の原糸はお勧めできません。

  11. 今週末にパッキングが完了するとメーカーから返信がありました。
    1週間程度で入荷すると思います。

  12. サイトピンについて質問です。今自分は渋谷のファイバーピンを使っているのですが、正面から日が当たると眩しくてピンが見えなくなるときがあります。このようなとき、ガスプロのサイトピンのようなフードタイプのピンの方がいいのでしょうか?対処法をお教えくださいよろしくお願い致します。

  13. ガスプロに買い替えるのも良い方法だとは思いますが、ファイバーは自身の長さによって光を集めます。ですので、ファイバーの長さを調整することで明るさを調整できます。明るすぎる場合は、カットするか、その一部を黒のテープで覆うことなどによって、ピンを暗くすることができます。買い替えるよりも安く済みますので、ご検討ください。

  14. uukhaのリムって、物凄く安心感がありますよね。x0使ってますが、異常なまでの剛性の高さは本当にありがたいです。

    すでに4000射以上射ってますが、折れる気配なしです。夏場はガンガンいけましたが(笑)

    ただ、ストリングの長さはH25のM68では163cmぐらいにしないとハイトは稼げないですね。本当は162cmほしいんですが。

    分かる人には分かる。uukhaはそんな良いメーカーでしょうね。

  15. 高く評価していただきありがとうございます。

    このリムは200度を超える高温、50トンのプレス機によるプレスで成形しているので、夏場の高くても50-60度程度の高温で壊れることはありえないです。おっしゃる通り、リムはリカーブが強い独自の設計のために短い163cm程度でちょうどよいハイトになります。

    メーカーの社長兼設計担当のエンジニアさんも、価格的な面で優位性を持つことができないので、技術面で他社が作れないものを追い求めていくという姿勢を明確にしています。これからもUUKHAのリムを愛用していただけると幸いです。

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